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Drug Atlas · B17 Pituitary & hypothalamic hormones / 下垂体・視床下部ホルモン

ゴナドレリン

gonadorelin

分類
Pituitary & hypothalamic hormones / 下垂体・視床下部ホルモン
商品名(日本)
LH-RH注ヒポクライン
科目
PharmacologySurgeryPediatrics
トピック
B17: Thyroid and antithyroid drugs. Pituitary hormones. Hypothalamic hormones, hormonanalogs and antagonistsG/06: Surgical oncology II. Basic principles of the treatment40: Disorders of pubertal growth and sexual maturation
承認適応
Kallmann症候群成長ホルモン分泌不全症下垂体機能低下症
影響検査値
黄体形成ホルモン卵胞刺激ホルモン
対象疾患
男性性腺機能低下症

🧠 全体像:は、視床下部が出すGnRH(日本ではLH-RHとも呼ぶ)そのものを合成した、天然型のペプチドである1。同じ分子でも与え方で役割が真逆になる——1回の注射なら下垂体のLH・FSH分泌を一過性に引き出す診断薬、2時間毎の拍動的ななら生理的なパルスを模倣して性腺を働かせる治療薬、持続的な刺激に切り替えると下垂体が反応しなくなる。この「で抑制に転じる」性質を利用したものがなどの持続作用型作動薬である。

薬効群の中での位置づけ

薬 受容体への与え方 下垂体・性腺の反応 使いどころ
(天然型) 単回、または拍動的 LH・FSHの分泌を刺激 の検査、症の治療
、(作動薬) 持続的 初期に一過性の上昇(フレア)の後、受容体ので抑制 前立腺癌、乳癌、など
デガレリクス(拮抗薬) 受容体をに遮断 フレアなしで抑制 前立腺癌

⭐ は「拍動的に刺激される」ことを前提に働く。 天然のGnRHはが短く(静注で第一相5.3分、第二相27.4分)、この性質がとよく合う。同じ受容体に持続的な刺激を与えると、かえってゴナドトロピンが下がる——刺激と抑制を分けるのは薬の種類より投与パターンである。

機序

flowchart TD
    A["視床下部がGnRHを拍動的に分泌"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GnRH receptor'>GnRH受容体</span>を刺激"]
    B --> C["LHとFSHが分泌される"]
    C --> D["性腺が性ホルモンの産生と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gametogenesis'>配偶子形成</span>を行う"]
    E["拍動の間隔を保って補充する<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gonadorelin'>ゴナドレリン</span>の間歇投与)"] --> B
    F["持続的に刺激し続ける"] --> G["受容体が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desensitization'>脱感作</span>しLH・FSHが低下"]

視床下部を障害したでは、1回6 μgを1時間間隔で間歇投与するとゴナドトロピンが上昇して維持され、に切り替えると下降し、間歇投与を再開すると再び上昇した2。

診断薬としての使い方——LH-RH負荷試験

検査の側から見た判定・限界はGnRH刺激試験にまとめてある。

  • 効能は「」。1回0.1 mg(1管)を、皮下またはに注射し、血中LHを測る。ならなどで5〜10 mLに希釈して徐々に注射する。
  • 男性に100 μgを静注すると、LHは10分後から上がって30分後に最大(約80 mIU/mL)に達し、FSHも30分後に最大(約19 mIU/mL)になるが、FSHの上がり幅はLHより小さい。

国内830例の成績では、LH反応のパターンからの障害部位を次のように推定する1。

病態 負荷前のLH 負荷後30分のLH 反応
正常(成人・小児) 30 mIU/mL未満 30 mIU/mL以上 +
の 30 mIU/mL未満(低値) 30 mIU/mL以上 ±〜+
下垂体性の 30 mIU/mL未満(低値) 30 mIU/mL未満(低値) -
原発性(性腺そのもの)の 30 mIU/mL以上 30 mIU/mL以上(高値) +
  • 💡 下垂体が反応しない(下垂体性)か、反応が乏しい()かが鑑別の軸になる。30分値だけで判定できないときは、投与後ににLHを測って判定することが望ましいとされている。
  • ⚠️ この検査の限界:の診断では、GnRH刺激試験の診断価値は乏しい。反応が全くなければ重度のGnRH欠損を裏づけるが、との鑑別(特に部分的なCHH)はほとんどできない3。結果は、他のホルモン値と合わせて解釈する。
  • 皮下・の反応はより低い。の女性は負荷前のLHが高く、小児では低い。
  • 重大な副作用は、の患者でまれに起こる(頭痛、視力・)とショックである。妊婦には投与しないことが望ましい1。

治療薬としての使い方——パルス療法

視床下部の障害でGnRHが分泌されないが対象である。日本の適応は、(ゴナドトロピン分泌不全を伴う)、視床下部障害、における症の3つ2。

項目 内容
用法 1回10〜20 μgを2時間間隔で1日12回、皮下に投与する
投与方法 間隔を保てないとゴナドトロピンと性ホルモンが下がるため、を用いる
効果判定 12週間投与しても、血中ゴナドトロピンや性ホルモンが上がらなければ中止する
禁忌 悪性腫瘍(乳癌、)、悪性腫瘍(前立腺癌)、およびその疑い
使ってはいけない場面 (効果が期待できない)、単にを目的とする使用
  • 国内の32例(最長59週間)で27例が有効だった。内訳は、(ゴナドトロピン分泌不全を伴う)11例中8例、視床下部障害10例中8例、11例中11例。副作用は3例(発疹、発赤、)だった。
  • 使用の前に、LH-RHで下垂体がゴナドトロピンに反応することを確認する。(発育を促進しうる)、(増悪しうる)、乳癌の既往、がある患者では慎重に扱う。
  • 注射部位は腹壁の皮下とし、同じ部位への長期の注射を避ける。

海外の合意文書は、このをの治療の一つに挙げている。男性ではが4 mL未満のとき、GnRH(25 ng/kgを2時間毎)かゴナドトロピン併用療法が古典的な選択肢で、女性のでは1回3〜10 μgを90分毎に皮下注射する。では、よりとのリスクが低い3。妊孕性を希望する場合の選択肢はhCG(+FSH)との使い分けになる。

体内動態

  • 静注した100 μgのは第一相5.3分、第二相27.4分で、24時間までに尿へ排泄されるのは投与量の1.6%にとどまる1。
  • 20 μgをした外国人のデータでは、15分後に(260 pg/mL)に達し、半減期は27.4分だった2。
  • 半減期が短いので、2時間毎の投与が必要になる。

まとめ

  • =天然型のGnRH(LH-RH)。投与パターンで役割が変わる。単回は検査(LH-RH)、拍動的なは症の治療、持続的な刺激はによる抑制(持続作用型作動薬の原理)。
  • 日本の適応は、診断薬()と、症の治療(ポンプで2時間毎に)の2系統。
  • は障害部位の推定に使われてきたが、との鑑別には向かない。治療薬はには無効で、ホルモン依存性悪性腫瘍には禁忌。
  • の患者にを行うと、まれにを起こす。

出典

  1. 1.LH-RH注0.1mg「ニプロ」 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/ニプロ株式会社・2025)電子添文(2025年4月作成、第1版)を開いて確認した。一般的名称はゴナドレリン酢酸塩注射液、効能・効果は「下垂体LH分泌機能検査」のみ。1回1管(0.1 mg)を静脈内、皮下または筋肉内に注射する。正常人では投与後30分で血中LHがピークに達し、ラジオイムノアッセイで30 mIU/mL以上になる。皮下・筋肉内注射の反応は静脈内より低く、排卵期の女性は高く小児では低い。国内臨床試験830例の反応パターンから視床下部性、下垂体性、原発性の性腺機能低下症を鑑別する表がある。重大な副作用は下垂体腺腫患者の下垂体卒中(0.1%未満)とショック(頻度不明)。静注の血中半減期は第一相5.3分、第二相27.4分。妊婦には投与しないことが望ましい。閲覧 2026-11-02
  2. 2.ヒポクライン注射液1.2/ヒポクライン注射液2.4 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/ニプロ株式会社・2025)電子添文(2025年4月作成、第1版)を開いて確認した。効能・効果は、成長ホルモン分泌不全性低身長症(ゴナドトロピン分泌不全を伴う)、視床下部器質性障害、ゴナドトロピン単独欠損症における視床下部性性腺機能低下症。用法は1回10〜20 μgを2時間間隔で1日12回皮下投与し、12週間投与してゴナドトロピンや性ホルモンの上昇がなければ中止する。適切に調節された自動間歇注入ポンプで投与する。禁忌はエストロゲン依存性悪性腫瘍(乳癌、子宮内膜癌)とアンドロゲン依存性悪性腫瘍(前立腺癌)およびその疑い。単に排卵誘発を目的として使用しない、原発性性腺機能低下症には使用しない。国内の32例で27例が有効。薬効薬理の項は、視床下部障害のアカゲザルで間歇投与はゴナドトロピンを上昇・維持し、持続注入に変えると下降することを記載している。閲覧 2026-11-02
  3. 3.Expert consensus document: European Consensus Statement on congenital hypogonadotropic hypogonadism—pathogenesis, diagnosis and treatment(Nature Reviews Endocrinology・2015)全文(無料PDF)を読んで確認した。先天性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(CHH)では、GnRH刺激試験の診断価値は乏しく、ゴナドトロピン反応が無ければ重度のGnRH欠損の確認には役立つが、体質性思春期遅発症と部分的CHHの鑑別は通常できない。治療として、精巣容積が4 mL未満の男性では拍動性GnRH(25 ng/kgを2時間毎、血中テストステロンで調整)またはゴナドトロピン併用療法が古典的な選択肢で、女性の排卵誘発では1回3〜10 μgを90分毎に皮下注射するパルス療法が用いられる。排卵誘発のGnRHポンプは多胎妊娠と卵巣過剰刺激症候群のリスクがゴナドトロピン療法より低い。閲覧 2026-11-02