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GnRH刺激試験

GnRH stimulation test

別名
LH-RH負荷試験GnRH負荷試験ゴナドトロピン放出ホルモン負荷試験
臓器系
内分泌・代謝小児生殖・産婦人科
科目
PediatricsObstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
小児科 40:思春期成長・性成熟の異常小児科 3-18:思春期発来異常婦人科 11:小児婦人科学
関連疾患
Kallmann症候群機能性視床下部性無月経思春期早発症

🧠 全体像:GnRH刺激試験は、GnRH(日本ではLH-RHとも呼ぶ)を1回投与し、下垂体のがLH・FSHをどれだけ放出できるかを直接見るである。基礎値だけでは分からない「下垂体の」と「思春期のスイッチが入っているか」を映す。使い道は3つに絞れる——①中枢性のの診断、②GnRH作動薬の治療中に抑制が足りているかの確認、③での障害部位(視床下部か下垂体か)の推定。ただし③のうちとの鑑別は苦手で、結果を単独で確定診断に使わない。

何を見ている検査か

GnRHは視床下部から拍動的に分泌され、のを介してLHとFSHの放出を促す。外から同じ刺激を1回与えると、下垂体が反応できる状態かが見える。

  • 下垂体が正常で視床下部のGnRH分泌が止まっているだけなら、刺激に反応してLHが立ち上がる()。
  • 下垂体そのものが障害されていれば、刺激しても反応しない(下垂体性)。
  • 性腺が壊れていれば、フィードバックが外れてが高く、刺激後もさらに高い(原発性)。
  • 思春期では視床下部-下垂体-が活性化して下垂体のLH反応が大きくなるため、思春期前の小児で大きなLH反応が出れば軸がすでに動いていることになる。

同じ「下垂体刺激試験」でもは、はの反応を見る検査で、軸が違う。は下垂体でなく精巣ののを見る。

実施法

日本で診断に使うのは、の注射薬(効能は)である1。薬剤そのものの性質はを参照。

項目 内容
投与 1回1管(0.1 mg)を、皮下またはに注射する。では5〜10 mLに混和して徐々に注射する1
採血のタイミング 電子添文は正常人で投与後30分にLHがピークに達するとする1。小児のでは、朝8時台に静脈ラインを確保し、基礎値と投与後20・40・60・90分にLH・FSHを測る施設の報告がある2
判定に使うホルモン LHのピーク値。FSHやLH/FSH比は診断能がLHより低い2
薬の半減期 100 μg静注で第一相5.3分、第二相27.4分と短い1。反応を見るが短いので、採血の時点が重要になる

⭐ 時間点を減らす工夫:Kandemirらの女児263例の検討では、ピークが40分に出る検査が71%で、40分の1点だけでも感度98%・特異度100%(5 IU/L)だった2。ただし単一施設のな報告なので、自施設の採血スケジュールを置き換える根拠にはならない。

GnRH作動薬で代用する方法もある。ガイドラインはGnRHとGnRH作動薬の刺激試験を並べて扱い、刺激120分のピークLH 4.52 IU/L以上という報告を引いている3。⚠️ 刺激薬ごとに最適な採血時点とが違うので、薬を変えたら基準も変える。

判定と解釈

障害部位の推定(日本の電子添文)

24機関830例の成績から、の障害部位をLH反応のパターンで推定する1。

病態 負荷前のLH 負荷後30分のLH 反応
正常(成人の男女・小児) 30 mIU/mL未満 30 mIU/mL以上 +
正常(50歳以上) 40 mIU/mL以上 40 mIU/mL以上(高値) +
正常(の女性) 60 mIU/mL以上 200 mIU/mL以上 +
の 30 mIU/mL未満(低値) 30 mIU/mL以上 ±〜+
下垂体性の 30 mIU/mL未満(低値) 30 mIU/mL未満(低値)のまま -
原発性(性腺そのもの)の 30 mIU/mL以上 30 mIU/mL以上(高値) +

と下垂体性は「が低い」点では同じで、刺激への反応が分かれ目になる。原発性は刺激しなくてもの時点で高い。⚠️ 年齢・で正常域が動く。50歳以上との女性は負荷前から高く、小児では反応が低い。同じ「30」を全員に当てはめない。

中枢性思春期早発症の診断

思春期徴候が早く現れた小児で、中枢性(GnRH依存性)か末梢性かを分ける。

項目 内容
診断の基準 刺激後のピークLHが5 IU/L以上を中枢性とみなすのが慣用的で、特異度は97〜100%と報告される3
ガイドラインでの位置づけ 初回検査は高感度測定による。刺激試験を最初には行わず、が低いのに臨床的に強く疑うとき、あるいは早く診断をつけたいときの次の一手とする3
の目安 Tanner B2の女児でが0.2 IU/L超なら、ピークLH 5 IU/L超を予測するとされる3
年齢による注意 3歳未満ではピークLHが10 IU/L超でも中枢性の確認に十分とは限らない3
flowchart TD
    A["思春期徴候が早く現れた小児"] --> B["高感度の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal LH'>基礎LH</span>を測定"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal LH'>基礎LH</span>は<br>思春期域か"}
    C -->|"高い"| D["中枢性を支持<br>刺激試験を省けることが多い"]
    C -->|"低いが臨床的に強く疑う"| E["GnRH刺激試験<br>またはGnRH作動薬刺激試験"]
    C -->|"低く疑いも強くない"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal LH'>基礎LH</span>の再測定や経過観察で再評価"]
    E --> G{"ピークLH<br>5 IU/L以上か"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central precocious puberty'>中枢性思春期早発症</span>"]
    G -->|"いいえ"| I["末梢性・緩徐進行型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='premature thelarche'>早発乳房</span>を鑑別"]

💡 だけでは取りこぼす。Kandemirらの検討では、刺激に思春期反応を示した152検査のうち13検査(8.5%)でが(0.07 IU/L)未満、単独の感度は69.1%・特異度は79.6%だった2。が低いことは中枢性の否定にならない。

治療中の抑制確認

にGnRH作動薬(など)を使っているときは、がされて刺激に反応しなくなっているかを同じ試験で確かめる。同施設の基準では、ピークLHが2 IU/L未満なら抑制良好で、270検査のうち13.3%が抑制不十分と判断されて作動薬を増量した。抑制の確認は20分の1点でも感度・特異度とも100%(1.98 IU/L)だった2。診断時(40分)と抑制確認時(20分)でピークが出る時点が違う点に注意する。

思春期遅発と低ゴナドトロピン性性腺機能低下症

思春期が遅れた小児で、一過性の(CDGP)と、永続的な(CHH、を含む)を分けたい場面でも使われてきたが、力は弱い。男性232例の検討では、CHHの47%はピークLHがCDGPと重なった。CDGPでピークLHが4.0 IU/L未満の例はなく、CHHの53%がこの値未満だった4。つまりこの集団では4.0 IU/L未満の反応はCHH側にしか出なかったが、CHHのほぼ半数はそれより大きな反応を示し、CDGPと見分けられない。

下垂体予備能の評価

でのを見るとき、反応が保たれていれば(など)、反応が乏しければ下垂体の障害を考える(上の表)。ただしでも反応が「±」と乏しいことがあり、反応の有無だけで下垂体性との境界は引けない。画像検査や他のの評価と合わせて判断する。

⚠️ 測定上の注意と安全性

  • 測定法で値と閾値が変わる:LHのは測定法により異なる2。電子添文の「30 mIU/mL以上」はで測った正常人の反応で、電子添文自身が「正常反応は個々の施設で設定されるべき」と述べ、30分値だけで判定できないときはに測るよう求めている1。の「5 IU/L以上」は小児の思春期反応を判定する基準(Kandemirらはで測定)で、目的も測定系も違う。mIU/mLとIU/Lは数値としては等しいが、閾値を使い回さない。
  • :電子添文は、皮下・での血中LH反応は注射より低いと考えられるとする1。静注時の基準を皮下・筋注にそのまま使わない。
  • 体格と年齢:肥満(BMI SDS 2以上)では刺激後のピークLHが低く出やすく、3歳未満では解釈が変わる3。
  • の患者では、まれに(頭痛、視力・)を起こす。頻度は0.1%未満で、ショックも重大な副作用に挙げられている。妊婦には投与しないことが望ましい1。
  • 添加剤にD-を含むため、の患者では低血糖や肝不全などの危険がある1。
  • 診断薬として使う場面と、同じ薬を拍動的にして治療する場面()は別である。

まとめ

  • GnRH刺激試験=GnRHを1回投与して下垂体のLH・FSH放出能を見る検査。判定の主役はLHのピーク値。
  • 日本の電子添文はLH反応のパターンで・下垂体性・原発性を推定する。は反応あり、下垂体性は反応なし、原発性は基礎値から高い。
  • ではピークLH 5 IU/L以上が慣用的な基準。ただしガイドラインは高感度のを先に行い、刺激試験はが低いのに疑いが強いときの次の一手に置く。が低くても否定できない。
  • 治療中の抑制確認は同じ試験で、ピークLHが低いままなら抑制が効いている。診断時と確認時では採血の最適時点が違う。
  • との鑑別には使いきれない。CHHの約半数がと同程度の反応を示し、部分型CHHを見逃しうる。
  • 閾値は測定法・刺激薬・年齢・体格で動くので、数字だけを持ち出さず、施設の基準と臨床像で読む。

出典

  1. 1.LH-RH注0.1mg「ニプロ」 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/ニプロ株式会社・2025)電子添文を開いて確認した。一般的名称はゴナドレリン酢酸塩注射液、効能・効果は「下垂体LH分泌機能検査」で、効能欄は、正常反応は個々の施設で設定されるべきとしたうえで、正常人では投与後30分に血中LHがピークに達しラジオイムノアッセイで30 mIU/mL以上になり、30分値だけで判定できない場合は経時的に測定して判定することが望ましいとする。用法は1回1管(0.1 mg)を静脈内、皮下または筋肉内に注射し、静脈内では5〜10 mLに混和して徐々に注射する。効能欄は皮下・筋肉内注射での血中LH反応は静脈内注射より低いと考えられること、排卵期の女性は投与前値と反応が高く小児では低いことも述べる。24機関830例の臨床成績の判別表は、正常人を成人(男女)・小児(投与前30未満→30分値30以上)、50歳以上(40以上→40以上)、排卵期女子(60以上→200以上)に分け、いずれも反応+とする。性腺機能低下症は視床下部性(投与前LH低値、30分値30以上、反応±〜+)、下垂体性(投与前低値、30分値低値、反応-)、原発性(投与前30以上、30分値高値、反応+)の判別表がある。下垂体腺腫患者の下垂体卒中(0.1%未満)とショック(頻度不明)が重大な副作用で、妊婦には投与しないことが望ましい。添加剤D-ソルビトールのため遺伝性果糖不耐症の患者には注意が要る。100 μg静注後の血中半減期は第一相5.3分、第二相27.4分。閲覧 2026-11-03
  2. 2.GnRH Stimulation Test in Precocious Puberty: Single Sample is Adequate for Diagnosis and Dose Adjustment(Journal of Clinical Research in Pediatric Endocrinology(Kandemir N, Demirbilek H, Özön ZA, Gönç N, Alikaşifoğlu A)・2011)PMC全文(CC BY)を読んで確認した。単一施設で診断目的314検査(女児263例)と治療中の抑制評価270検査を解析した後方視的研究。検査は朝8時〜8時30分に静脈ラインを確保し、基礎値とゴナドレリン静注後20・40・60・90分にLH・FSHを測る(測定は化学発光免疫測定法、検出下限0.07 IU/L)。刺激後LH 5 IU/L以上を思春期反応とした診断群で、40分値は感度98%・特異度100%(至適カットオフ4.93 IU/L)、ピークが40分に出た検査は71%だった。FSHやLH/FSH比は診断能が低く、基礎LHも感度69.1%・特異度79.6%にとどまり、刺激に反応した152検査のうち13検査(8.5%)は基礎LHが検出限界未満だった。GnRH作動薬治療中は同施設の基準でピークLH 2 IU/L未満を抑制良好とし、20分値が感度・特異度100%(カットオフ1.98 IU/L)、270検査中36検査(13.3%)が抑制不十分で増量された。LHのカットオフは測定法により異なる。閲覧 2026-11-03
  3. 3.Central precocious puberty: an Endocrine Society clinical practice guideline(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism(Endocrine Society)・2026)OUPの掲載ページ(本文の先頭10万字分)を開いて確認した。推奨3は初回検査を高感度測定による基礎LHとし、刺激試験を最初には行わないことを提案する。基礎LHが低いのに臨床的に中枢性が疑われるときは、GnRH/GnRH作動薬刺激試験が「次の一手」で、疑いが強い場合や早い診断が要る場合に特に有用とする。ピークLH 5 IU/L以上が中枢性の慣用的な基準で特異度は97〜100%と記載される。3歳未満ではピークLHが10 IU/L超でも中枢性の確認に不十分なことがあり、肥満(BMI SDS 2以上)では刺激後ピークが低くなりやすい。Tanner B2の女児で基礎LHが0.2 IU/L超ならピークLH 5 IU/L超を予測するとされ、トリプトレリン刺激120分のピークLH 4.52 IU/L以上という報告も引用されている。高感度LH測定法は0.05〜0.1 IU/L未満を検出できるべきとされる。刺激試験の用量・採血スケジュールは読んだ範囲に無い。閲覧 2026-11-03
  4. 4.GnRH stimulation testing and serum inhibin B in males: insufficient specificity for discriminating between congenital hypogonadotropic hypogonadism from constitutional delay of growth and puberty(Human Reproduction(Mosbah H, Bouvattier C, Maione L, et al.)・2020)抄録を読んで確認した(全文は未取得)。フランスの2施設で2008〜2018年に男性232例(先天性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症127例、体質性思春期遅発症74例、健常31例)を評価した。CHH患者のLH反応は非常にばらつき精巣容積と相関し、47%はCDGP群とピークLHが重なった。CDGP患者でピークLHが4.0 IU/L未満の例は無く、CHHの53%はこの閾値未満だった。インヒビンBも50%が重なった。抄録は、両検査とも特異度・感度が不十分で、部分型CHHを誤ってCDGPと見なしうると結論づけている。閲覧 2026-11-03