薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B7 Calcium channel blockers / カルシウム拮抗薬

イスラジピン

isradipine

分類
Calcium channel blockers / カルシウム拮抗薬
商品名(EU)
Lomir
科目
Pharmacology
トピック
B7: Ca++-channel blockers and other vasodilators
禁忌疾患
大動脈弁狭窄症
副作用
末梢浮腫頭痛顔面紅潮動悸
対象疾患
糖尿病性自律神経障害

🧠 全体像:イスラジピンは(DHP)の中では半減期が短く(約8時間)1日2回投与を要する薬で、この一点が同じDHP系でも1日1回のとの対比を作る。としての立ち位置は地味だが、パーキンソン病のとして期待され(STEADY-PD III)まで進んだもののを達成できず開発がしたという経緯を持ち、DHP系Ca拮抗薬の「以外への応用と限界」を示す例として学ぶ価値がある。

薬効群の中での位置づけ

まずをDHP系()か非DHP系()かで分ける。イスラジピンはDHP系。

分類 代表薬 主な標的 特徴
DHP系 ・・イスラジピン・ が主体。・・
非DHP系 ・ ・ ・。β遮断薬併用で徐脈リスク

DHP系の中でも半減期・適応で棲み分けがある。

薬剤 半減期の目安 特徴的な適応
約35〜50時間 高血圧・慢性安定/の第一選択級
は数時間 ・・(局所)にも使用
イスラジピン 約8時間 高血圧のみ。1日2回投与が前提
約1〜2時間 。SAH後の予防に特化

⭐ イスラジピンとの一番の違いも半減期。 が半減期35〜50時間で1日1回投与により緩徐な効果発現・消失を実現するのに対し、イスラジピンはが約8時間と短く、安定したを得るには1日2回投与が必要になる1。この違いから「短時間作用型のDHP系Ca拮抗薬」として位置づけられる。

機序

flowchart TD
    A["イスラジピンが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle cell'>血管平滑筋細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='L-type calcium channel'>L型Caチャネル</span>に結合"] --> B["脱分極した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>で選択的に結合<br>(心筋より<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resting membrane potential'>静止膜電位</span>が浅いため)"]
    B --> C["Ca2+流入↓"]
    C --> D["細胞内Ca2+低下→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myosin light chain kinase (MLCK)'>ミオシン軽鎖キナーゼ</span>活性↓"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle relaxation'>血管平滑筋弛緩</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral vascular resistance'>末梢血管抵抗</span>↓→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afterload'>後負荷</span>↓(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antihypertensive (blood-pressure lowering)'>降圧</span>)"]

💡 他のDHP系と同じ「の選択的結合」で血管に効き心臓にはほぼ効かない。 機序自体は・と共通で、が脱分極状態でDHPと強く結合するため、が浅いに選択的に作用する。

薬物動態

項目 値・特徴
率 90〜95%1
約15〜24%(広範なのためよりかなり低い)1
蛋白結合率 約95%1
代謝 肝で完全に代謝され、未変化体は尿中にほぼ検出されない1
半減期 :早期半減期約1.5〜2時間、約8時間1
投与回数 1日2回(b.i.d.)が前提1

⭐ 半減期が短いため、のような「飲み忘れへの耐性」は期待できない。 約8時間はの35〜50時間より一桁短く、安定した効果を保つには規則的な1日2回投与が必要になる。

適応

領域 使いどころ
循環器 高血圧症。単独またはとの併用1

⚠️ パーキンソン病のとしての開発は失敗に終わった。 疫学研究でDHP系Ca拮抗薬とパーキンソン病リスク低下の関連が示唆されたことを受け、早期パーキンソン病患者336例を対象にイスラジピン(1回5 mg 1日2回)を36か月間投与しと比較する(STEADY-PD III)が実施されたが、(UPDRS Part I〜IIIスコアの変化)に有意差はなく(群間差-0.27点、P=0.85)、でも治療効果は認められず、長期投与は早期パーキンソン病の臨床的進行を遅らせなかったとづけられている2。イスラジピンをパーキンソン病治療に用いる適応はない。

用法・用量

高血圧では1回2.5 mgを1日2回から開始し、2〜4週間の間隔をあけて必要に応じて増量する(通常は1日5〜10 mg程度)1。実際の用量は年齢・肝機能・で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対する過敏症の既往1
  • ⚠️ 重度のでは慎重投与。 低下により血行動態が悪化しうる(他のDHP系Ca拮抗薬と共通の注意点)
  • :血管拡張に伴うの代償性活性化により・頻脈が生じうる(DHP系共通)
  • :。毛細血管の拡張による(DHP系共通)
  • ・高齢者ではの低下によりが上昇しうるため低用量から開始する1

副作用

頻度 内容
高頻度 、頭痛、、めまい(STEADY-PD IIIで多かった有害事象)
注意 ()
重篤・まれ 高度な低血圧

まとめ

  • DHP系Ca拮抗薬の中ではが約8時間と短く、1日2回投与が前提の短時間作用型。半減期35〜50時間で1日1回のと対照的。
  • 機序は他のDHP系と共通(のを状態依存的に遮断)。適応は高血圧症のみ。
  • パーキンソン病のとして期待され(STEADY-PD III、336例・36か月)まで進んだが、に有意差はなく開発は失敗に終わった。パーキンソン病への適応はない。
  • 禁忌・注意はDHP系共通(、、重度)。
  • ・高齢者ではの低下でが上昇しうる。

出典

  1. 1.ISRADIPINE capsule [package insert](Teva Pharmaceuticals USA, Inc. (DailyMed)・2026)イスラジピンカプセルの適応が高血圧症(単独またはサイアザイド系利尿薬との併用)であること、消化管吸収率90〜95%だが広範な初回通過代謝を受けバイオアベイラビリティが約15〜24%にとどまること、消失が二相性で早期半減期約1.5〜2時間・終末半減期約8時間であること、血漿蛋白結合率が約95%であること、肝で完全に代謝され未変化体は尿中にほぼ検出されないこと、通常用量が1回2.5 mgを1日2回(b.i.d.)から開始する点で1日2回投与が前提であることを確認した閲覧 2026-09-08
  2. 2.Isradipine Versus Placebo in Early Parkinson Disease: A Randomized Trial(Annals of Internal Medicine (Parkinson Study Group STEADY-PD III Investigators)・2020)早期パーキンソン病患者336例を対象に速放性イスラジピン1回5 mg 1日2回とプラセボを36か月間比較した多施設二重盲検無作為化試験で、95%が試験を完了したこと、主要評価項目(ON状態でのUPDRS Part I〜III合計スコアのベースラインから36か月までの変化)はイスラジピン群2.99点・プラセボ群3.26点で群間差-0.27点(95%信頼区間-3.02〜2.48、P=0.85)と有意差がなく、副次評価項目でも治療効果は認められなかったこと、結論として長期の速放性イスラジピン投与は早期パーキンソン病の臨床的進行を遅らせなかったとしていることを確認した閲覧 2026-09-08