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Drug Atlas · B25 Laxatives / 下剤

ラクチトール

lactitol

分類
Laxatives / 下剤
商品名(日本)
ポルトラック
商品名(EU)
Pizensy
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
B25: Drugs used in constipation (laxatives) and diarrhea. Drugs promoting digestion. Pharmacology of liver and biliary tract05: Drug-induced liver injury
承認適応
肝硬変
禁忌疾患
古典型ガラクトース血症(GALT欠損症)イレウス・腸閉塞
副作用
下痢腹部膨満腹痛
影響検査値
アンモニア

🧠 全体像:ラクチトールはの仲間で、とがつながった消化吸収されないである。大腸まで届いて細菌に分解されるところから、「水を引いて便を軟らかくする」作用と「腸内を酸性にしてアンモニアを減らす」作用が同時に生まれる。覚えておくべきは、同じ物質なのに承認された目的が国で正反対という点——日本では肝硬変のの薬、米国ではの薬である。

薬効群の中での位置づけ

項目 ラクチトール
構造 と()1 との
日本の承認 に伴うのみ2 便秘・肝性脳症(詳しくはの項)
肝性脳症での位置 AASLD・EASLの指針が第一選択として挙げるのは3 同左

⭐ 肝性脳症では、ラクチトールをの代替・同等品として扱ってよいかが論点になる。 Cochraneの総説は、背景としてとラクチトールが第一選択として推奨されていると述べる一方、両者を直接比べた試験では、評価された転帰(QOLは未評価)に差が見いだされず、エビデンスの質は非常に低いとする4。

機序

flowchart TD
    A["ラクチトールを内服"] --> B["消化管粘膜に分解酵素がなく<br>ほぼ吸収されず大腸へ到達"]
    B --> C["大腸の細菌が分解して有機酸(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short-chain fatty acid'>短鎖脂肪酸</span>)を産生"]
    C --> D["浸透圧で水を引く → 軟便化(便秘への効果)"]
    C --> E["腸内pHの低下と腸管輸送の亢進"]
    E --> F["腸内アンモニアの産生・吸収が減る<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>への効果)"]

日本の電子添文は、有用菌()が増えること、による腸内pHの低下と腸管輸送の亢進を介して腸内アンモニアの生成と吸収が抑えられることを機序に挙げる2。米国の添付文書は、で小腸に水を引き、結腸で緩下作用を示すと記載する1。

薬物動態

項目 内容
吸収 ごくわずか。に5〜40 gを単回投与しても、24時間までのは投与量の0.2〜0.5%2
血中濃度(米国) 20 gを食後に投与して到達まで約3.6時間、半減期2.4時間。絶食下では・曝露が食後の2倍超になるため、食事とともに飲む1
排泄 未吸収分は結腸で有機酸に分解され、糞便中にはごくわずかしか出ない1

適応

国 適応
日本 肝硬変に伴う(便秘の適応はない)2
米国 成人の(肝性脳症の適応はない)1

日本の国内では、血中アンモニア濃度の改善率が73.5%(186/253例)、全般改善度が74.5%(196/263例)と電子添文に記載されている(対照の有無は記載がない)2。⚠️ 用量は血中濃度の数値ではなく、1日2〜3回の軟便が出る量を目安に調整する。アンモニア値の扱いはの項も参照。

米国の6か月プラセボ対照試験では、20 gを毎日投与した群のレスポンダー(が週3回以上かつベースラインより1回以上増える週が、12週のうち9週以上で、最後の4週のうち3週以上ある状態)が25%、プラセボ群が13%で、差は12%(95%CI 6.0〜18.5)だった。ルビプロストンを対照にした試験でも自発排便の頻度は同程度だった1。

用法・用量

日本2 米国1
用量 成人で1日18〜36 gを3回に分け、用時に水に溶かして内服。初回は18 g/日から、1日2〜3回の軟便が出る量まで増やす。36 gを超えない 成人で20 gを1日1回、なるべく食事とともに
減量 が出たら減量または 軟便が続くときは10 gに減量
併用薬 — 他のは本剤の前後2時間以上あける(吸収を下げうる)

日本は「1日2〜3回の軟便」を指標に用量を決める点が、米国の固定用量(20 g)と異なる。下痢が強いときの減量・の考え方はの項(過量の下痢・脱水が脳症の誘因になる点)と共通である。

禁忌・注意

出典 禁忌
日本の電子添文2 (分子中の骨格が腸内細菌により分解され、を生じうる)
米国の添付文書1 、機械的な消化管閉塞(疑いを含む)
  • ⚠️ に禁忌なのは、を含む骨格を持つため。 はGALTの欠損での代謝が行き詰まる疾患である。の食事管理を要する人には使わない。
  • 日本の電子添文は消化管閉塞を禁忌に挙げず、米国は挙げる。国ごとの差を意識して読む。
  • 妊婦・:吸収はごくわずかだが、胎児や乳児への曝露を評価できるだけのデータはない(米国)1。日本は妊婦に有益性が危険性を上回る場合にのみ投与し、授乳は継続か中止かを検討する2。

副作用

頻度 内容
高頻度 日本では下痢(1〜5%未満)。米国の試験では8%(3%)、下痢4%(同3%)、腹部膨満3%(同1%)21
少ない 悪心・嘔吐、腹痛、、排便回数の増加、、など(日本で1%未満)2
注意 米国では高度の下痢が1%(0%)、やCK上昇も3〜4%に報告された。291例中74例が一時的にでも減量した1

まとめ

  • ラクチトールはの類似体(との)で、吸収されず大腸の細菌に分解される。
  • 日本はに伴う、米国は成人ので承認されており、適応が国で正反対。
  • 肝性脳症の第一選択として指針が挙げるのは。ラクチトールとの直接比較に明確な差は見いだされていないが、エビデンスの質は非常に低い。
  • 日本は1日18〜36 gで、軟便1日2〜3回を目標に増量する。米国は20 gを1日1回。
  • 禁忌は(日米共通)。米国は機械的な消化管閉塞も禁忌。
  • 副作用の中心は下痢と腹部膨満・。が出たら減量またはする。

出典

  1. 1.PIZENSY (lactitol) for oral solution — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Braintree Laboratories、2020年2月改訂版)・2020)米国添付文書(2020年2月改訂)の全文を取得して確認した。適応は成人の慢性特発性便秘で、成人20 gを1日1回(なるべく食事とともに)、軟便が続けば10 gへ減量し、他の経口薬は本剤の前後2時間以上あけること、禁忌は機械的な消化管閉塞(疑いを含む)とガラクトース血症であること、化学名が4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルシトールでラクツロースの類似体であること、浸透圧で小腸へ水を引き結腸で緩下作用を示し、吸収はわずかで最高血中濃度到達が約3.6時間・半減期2.4時間・絶食下では食後の2倍超の曝露であること、未吸収分は結腸で有機酸に分解されること、6か月のプラセボ対照試験でレスポンダーが25%対13%(差12%、95%CI 6.0〜18.5)であったこと、頻度3%以上の副作用が上気道感染・鼓腸・下痢・CK上昇・腹部膨満・血圧上昇であること(鼓腸8%対3%、下痢4%対3%、腹部膨満3%対1%)を確認した。閲覧 2026-10-29
  2. 2.ポルトラック原末 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(日本新薬、2021年5月改訂・第1版)・2021)日本の電子添文(2021年5月改訂・第1版)で確認した。効能は非代償性肝硬変に伴う高アンモニア血症のみで、1包にラクチトール水和物6 gを含み添加剤は無いこと、禁忌はガラクトース血症のみ(分子中のガラクトース骨格が腸内細菌により分解されてガラクトースを生じうるため)であること、成人に1日18〜36 gを3回に分けて用時水に溶かして経口投与し、初回は1日18 gから1日2〜3回の軟便が出る量まで漸増して36 gを超えないこと、水様便が出たら減量または休薬すること、消化管粘膜に分解酵素が無く未分解で大腸に達し、細菌に分解されて短鎖脂肪酸が増え腸内pHの低下と腸管輸送の亢進を介して腸内アンモニアの生成・吸収を抑えること、吸収はわずかで健康成人で24時間までの尿中未変化体が投与量の0.2〜0.5%であること、副作用が下痢(1〜5%未満)のほか悪心・嘔吐・腹部膨満・腹痛・放屁など(1%未満)であること、国内臨床試験で血中アンモニア濃度の改善率が73.5%(186/253例)、全般改善度が74.5%(196/263例)であることを確認した。閲覧 2026-10-29
  3. 3.Hepatic encephalopathy in chronic liver disease: 2014 Practice Guideline by the American Association for the Study of Liver Diseases and the European Association for the Study of the Liver(American Association for the Study of Liver Diseases / European Association for the Study of the Liver・2014)AASLDサイト掲載の全文PDF(Wayback保存)で、ラクツロースが顕性肝性脳症の第一選択であること、リファキシミンはラクツロースへの上乗せとして2回目以降の再発予防に推奨されること、経口分岐鎖アミノ酸と静注L-オルニチンL-アスパラギン酸は通常治療に反応しない患者の代替・追加薬として使ってよく経口L-オルニチンL-アスパラギン酸は無効であること、ネオマイシン・メトロニダゾールは代替薬だが長期使用では耳毒性・腎毒性・神経毒性が問題になること、蛋白摂取は1日1.2〜1.5 g/kgとし低蛋白食を避け、総蛋白を減らすより乳由来・植物性蛋白への置き換えや分岐鎖アミノ酸の補充が望ましいこと、本ガイドラインが急性肝不全に伴う脳症を扱っていないことを確認した。閲覧 2026-09-26
  4. 4.Non-absorbable disaccharides versus placebo/no intervention and lactulose versus lactitol for the prevention and treatment of hepatic encephalopathy in people with cirrhosis(Cochrane Database of Systematic Reviews(Gluud LL, Vilstrup H, Morgan MY)・2016)Europe PMCに載る抄録(PMID 27153247)で確認した。肝硬変を対象にした38件の無作為化試験(1,828人)を統合し、非吸収性二糖類はプラセボまたは無介入に比べ死亡が少なく(RR 0.59、24試験)、肝性脳症の発生も少なかったこと、バイアスの危険が低い8試験(705人)に限った死亡のRRは0.63(95%CI 0.41〜0.97)だが試験逐次解析ではこの低リスク群でも結果が確認されなかったこと、背景としてラクツロースとラクチトールが第一選択として推奨されていること、ラクツロース対ラクチトールの試験はいずれもQOLを評価しておらず、それ以外の転帰には差が見いだされなかったがエビデンスの質は非常に低いことを確認した。全文は取得できず、抄録の範囲に限る。閲覧 2026-10-29