薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

テポチニブ

tepotinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
テプミトコ
商品名(EU)
Tepmetko
科目
PharmacologyPulmonology and Thoracic Surgery
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)呼吸器内科 32:肺癌の化学療法・免疫療法・分子標的療法
承認適応
非小細胞肺癌
副作用
末梢浮腫悪心倦怠感呼吸困難皮疹食欲不振
監視検査値
血清クレアチニン

🧠 全体像:テポチニブは、MET遺伝子エクソン14陽性のに対する2つ目の(1つ目はカプマチニブ)である。同じ標的・同じ適応を持つ2剤だが、用法(1日1回 対 1日2回)と浮腫の頻度が違う——「どちらもMET阻害薬で浮腫が主な副作用」という大枠は共通なので、用量スケジュールと国別の1日用量の違いで区別して覚える。⭐ 耐性後にMET増幅が検出された場合、との併用でも使われるという、に対応する治療としての位置づけも重要。

薬効群の中での位置づけ

項目 カプマチニブ テポチニブ
用法・用量(米国) 400 mgを1日2回、食事の有無を問わず1 450 mgを1日1回、食後2
用法・用量(日本) ― 500 mgを1日1回食後——米国より高い1日用量3
浮腫の頻度(米国添付文書) 59%(Grade 3-4が13%)1 81%(米国で最も頻度の高い重篤な有害事象)2
/ 4.8%(致死例0.3%)1 米国2%2、日本3.8%3
承認の根拠試験 GEOMETRY mono-1試験 VISION試験4

⭐ どちらも「MET exon14陽性NSCLC」という同じを狙う薬だが、施設・患者のや浮腫の管理しやすさで使い分けが議論される。 1日1回投与のテポチニブはの面で有利とされる一方、添付文書上の浮腫の頻度は米国データで比較するとテポチニブの方が高い。

機序

flowchart TD
    A["MET遺伝子エクソン14の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aberrant splicing'>スプライシング異常</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skipping mutation'>スキッピング変異</span>)"] --> B["MET受容体の分解に必要な<br>Cbl結合部位が失われる"]
    B --> C["MET受容体タンパクが分解されず異常に蓄積"]
    C --> D["HGF依存性・非依存性に<br>METチロシンキナーゼが持続的に活性化"]
    D --> E["下流のRAS-MAPK/PI3K-AKT経路が<br>持続的にON"]
    E --> F["腫瘍細胞の異常増殖・アポトーシス抑制"]
    G["テポチニブがMETの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP-binding site'>ATP結合部位</span>に<br>選択的に結合"] --> H["HGF依存性・非依存性の<br>METリン酸化を阻害"]
    H --> I["MET依存性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>を遮断"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth arrest'>増殖停止</span>・腫瘍縮小"]

💡 MET exon14は「MET遺伝子の変異」というより「METタンパクの分解が起きなくなる変異」と理解すると覚えやすい。 通常はCbl()がMETに結合して分解へ導くが、エクソン14が読み飛ばされるとこの結合部位が失われ、METタンパクが分解されずに細胞表面へ蓄積し、リガンド(HGF)が無くても、あるいはHGFが結合するとさらに強く、恒常的にシグナルを流し続ける。

薬物動態

項目 値・特徴
代謝 主にCYP3A4・CYP2C8で代謝される2
半減期 約32時間2
中央値8時間2
腎機能への影響 投与開始後21日で血清クレアチニンの中央値30%上昇がみられる。持続するが可逆的で、腎機能低下そのものではなくの阻害による見かけ上の上昇と考えられている2

適応・用法

⭐ MET遺伝子エクソン14陽性の(な進行・再発例、または転移例)に用いる23。

VISION試験(またはでMET exon14が確認された進行NSCLC患者を対象とした非)では、投与例のおよそ半数にが得られた4。

⚠️ 用法・用量が国で違う。

地域 用法・用量
米国 450 mgを1日1回、食後2
日本 500 mg(テポチニブ塩物として)を1日1回、食後3

実際の用量・は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:米国添付文書は明確な禁忌を設定していない2。日本の添付文書は本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者のみを禁忌とする3。
  • ⚠️ /:致死例を含み、米国2%・日本3.8%に発現する。呼吸器症状の悪化があれば速やかに評価し、他に原因が無ければ・中止を検討する23。
  • ⚠️ 肝毒性:米国添付文書でALT/AST上昇18%(Grade 3-4が4.7%)。定期的な肝機能検査が必要2。
  • ⚠️ ・浮腫:米国で81%と最も頻度の高い重篤な有害事象。日本の添付文書では・浮腫として61.5%が重大な副作用に挙げられている。を伴うことがあり、重症度に応じて・減量・利尿薬の使用を検討する23。
  • ⚠️ :日本の添付文書で20.0%。の見かけ上の上昇とそのものを区別して評価する32。
  • ⚠️ :治療中・治療終了後1週間は避妊が必要2。

副作用

頻度 内容
高頻度(米国20%以上) (81%)、悪心(31%)、倦怠感(30%)、(30%)、下痢(29%)、呼吸困難(24%)、(21%)、皮疹(21%)2
重大(日本添付文書) ・浮腫(61.5%)、(20.0%)、(13.1%)、(3.8%)3
モニタリング 血清クレアチニン(見かけ上の上昇に注意)、肝機能検査、体重・浮腫の評価

まとめ

  • テポチニブは、MET遺伝子エクソン14陽性のに対するで、カプマチニブに次いで承認された2番目の薬。
  • MET exon14は「METタンパクの分解が起きなくなる変異」で、Cbl結合部位の欠失によりMET受容体が蓄積し恒常的にシグナルを流し続ける。テポチニブはこのMETのを阻害する。
  • 用法がカプマチニブと違う。 テポチニブは1日1回(米国450 mg/日本500 mg)、カプマチニブは1日2回(400 mg×2)。
  • VISION試験(・で変異確認)でおよそ半数にが得られた。
  • 副作用の中心は・浮腫(米国81%と高頻度)で、カプマチニブの浮腫(米国59%)より添付文書上の頻度が高い。・・にも注意する。
  • 耐性後にMET増幅が検出された場合、標的化できるとしてとの併用でも用いられる。

出典

  1. 1.TABRECTA (capmatinib) tablets, film coated — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2024)カプマチニブ(カプマチニブ)の米国添付文書を確認した。適応はMETex14スキッピング変異陽性の転移性非小細胞肺癌。用法・用量は400 mgを1日2回、食事の有無を問わず経口投与。頻度20%以上の有害事象は浮腫(59%、Grade 3-4が13%)、悪心(46%)、筋骨格痛(40%)、倦怠感(34%)、嘔吐(28%)、呼吸困難(25%)、咳嗽(21%)、食欲減退(21%)。間質性肺疾患/肺臓炎(4.8%、致死例0.3%)、肝毒性(ALT/AST上昇15%、Grade 3-4が7%)も警告されている。閲覧 2026-09-26
  2. 2.TEPMETKO (tepotinib) tablets, for oral use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2024)米国添付文書(2024年2月改訂)を確認した。適応は「METex14スキッピング変異を有する転移性非小細胞肺癌」の成人患者。用法・用量は450 mgを1日1回食後経口投与。禁忌の設定はなし。警告として間質性肺疾患/肺臓炎(2%、致死例を含む)、肝毒性(ALT/AST上昇18%、Grade 3-4が4.7%)、胎児毒性(治療中・治療後1週間の避妊が必要)を挙げる。頻度20%以上の有害事象は浮腫(81%、最も頻度の高い重篤な有害事象でもある)、悪心(31%)、倦怠感(30%)、筋骨格痛(30%)、下痢(29%)、呼吸困難(24%)、食欲減退(21%)、発疹(21%)。機序はHGF依存性・非依存性のMETリン酸化とMET依存性下流シグナルを阻害するキナーゼ阻害薬。代謝はCYP3A4・CYP2C8、半減期32時間。投与開始後21日で血清クレアチニンの中央値30%上昇が認められ、投与中持続するが可逆的であることを確認した。閲覧 2026-09-26
  3. 3.テプミトコ錠250mg 添付文書(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)/メルクバイオファーマ株式会社・2025)日本の添付文書(2025年1月改訂第6版)を確認した。効能又は効果は「MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」。用法及び用量は、成人にテポチニブ塩酸塩水和物として1回500 mgを1日1回食後経口投与——**米国の450 mgより高い1日用量**。禁忌は本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者のみ。重大な副作用として間質性肺疾患(3.8%)、体液貯留・浮腫(61.5%)、肝機能障害(13.1%)、腎機能障害(20.0%)を確認した。閲覧 2026-09-26
  4. 4.Tepotinib in Non-Small-Cell Lung Cancer with MET Exon 14 Skipping Mutations(New England Journal of Medicine・2020)VISION試験(MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の進行NSCLC患者を対象とした非ランダム化第II相試験、液体生検または組織生検で変異を確認)で、テポチニブ投与例のおよそ半数に部分反応が得られたこと、Grade 3以上の主な有害事象が末梢浮腫であったことを確認した(PMID 32469185)。閲覧 2026-09-26