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Microbe Atlas · 細菌

Rhodococcus equi

分類
G+ 桿菌・非芽胞 / Gram+ rods (non-spore)Rhodococcus
性状
Gram陽性 (G+)球桿菌 Coccobacilli偏性好気性 Obligate aerobic
科目
Medical Microbiology
トピック
2/32: Corynebacterium diphtheriae, diphtheroids and the Propionibacterium genus
原因となる疾患
HIV感染症・AIDS

🧠 全体像Rhodococcus equi抗酸菌ではない——を含む細胞壁のためを示すグラム陽性コッコバシラスで、NocardiaMycobacterium属に近縁な類の一員である。名が示すとおりウマをとする土壌・糞便由来の環境菌だが、ヒトでは進行したHIV/AIDS患者の重症空肺炎を起こす病原体としての側面が臨床上の核心になる。

微生物学的な特徴

  • グラム染色:陽性。培養条件により桿状からへ形態が変化する「rod-coccus cycle」を示すで、コロニーは日数を経ると鮭肉色(サーモンピンク)を呈する1
  • を含む細胞壁により弱くに陽性となる——Nocardiaと同じ「のグラム陽性菌」というグループに属し、真の抗酸菌(Mycobacterium属)とは区別する
  • 生化学的性状:、ウレアーゼ陽性、、非、鞭毛なし1
  • の顕微鏡像に類似するため、喀痰培養で「の一部」と誤認されやすい1

💡 属名は今も動いている。 本菌はかつてCorynebacterium equiと呼ばれ、1980年にRhodococcus属へ移された。さらに2022年には新属Prescottellaが有効出版され、本菌はPrescottella equiが正式な学名となった2。ただしこの分離には反対意見があり(PrescottellaRhodococcusの亜属に留めるべきとする提案など)、臨床文献・検査室報告では現在もRhodococcus equiが広く使われ続けている——本ノートも慣用に従ってR. equiで記述する。

病原性の仕組み

  • はウマ(とくに幼駒)・その糞便、および放牧地の土壌1
  • 伝播経路は——糞便に汚染されたを吸入することでヒトへ伝播する1
  • 細胞内で生存・増殖するで、マクロファージによる殺菌に抵抗する。この性質のため細胞性免疫が破綻した宿主(進行HIV/AIDS、臓器移植後など)で重症化しやすい
flowchart TD
    A["ウマの糞便・放牧地土壌に由来する<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dust'>粉塵</span>を吸入"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar macrophages'>肺胞マクロファージ</span>に貪食される"]
    B --> C{"宿主の細胞性免疫は保たれているか"}
    C -->|"保たれている(健常者)"| D["多くは無症候・自然治癒"]
    C -->|"破綻している<br>(進行HIV/AIDSなど)"| E["マクロファージ内で生存・増殖"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavitation'>空洞形成</span>を伴う肺炎<br>(上葉優位)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematogenous dissemination'>血行播種</span>:菌血症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extra-pulmonary TB'>肺外病変</span>"]

感染経路と疫学

  • 報告された感染者の50%超がウマなどとの接触歴を有する1
  • 報告例の大多数が免疫不全者で、そのうち約3分の2がHIV感染者である3
  • HIV感染はヒト感染の主要リスク因子(一連の報告で61.5%を占める)で、未治療(非施行)のHIV患者は治療を受けた患者と比べて死亡のが著明に高い1

起こす疾患

  • 肺が病変の主座で、症例集積では76%に肺炎を認め、そのうち82%は肺が唯一の病変部位であった1。系統的レビューでも80%が何らかの肺病変を有する3
  • 臨床像は発熱・咳嗽・胸痛・感・体重減少と非特異的で、結核との鑑別が問題になる
  • 画像所見は境界不明瞭な浸潤影上葉優位の空洞形成が特徴的1
  • すると菌血症・皮下膿瘍・などを伴うことがある

診断

  • 血液・喀痰・胸水・膿瘍穿刺液・・髄液など複数検体からの培養を行う。免疫不全者では血液培養が高率に陽性となるため必ず提出する1
  • 喀痰培養で「」「常在呼吸器フローラの一部」と誤って報告されることがあるため、免疫不全者での反復陽性を安易に汚染と決めつけない1
  • のためでも検出されうるが、これのみで真の抗酸菌感染としないよう注意する

治療と予防

まとめ

  • Rhodococcus equiは抗酸菌ではなく、のグラム陽性コッコバシラスで「rod-coccus cycle」を示す——Nocardiaに近縁な類の一員。2022年にPrescottella equiとして再分類されたが、臨床ではR. equiの呼称が続いている。
  • ウマ・その糞便由来の土壌の吸入で伝播し、細胞性免疫が破綻した宿主(とくに進行HIV/AIDS)で重症化する
  • 肺が病変の大半を占め、上葉優位の空肺炎として現れることが多い。
  • ほぼ全株がバンコマイシンに感受性で、マクロライド・・キノロン・リファンピシンも90%超が感受性——2剤以上を数か月併用する長期治療が基本。
  • 喀痰培養で「」「常在菌」と誤認されやすく、免疫不全者では血液培養を必ず提出する。

出典

  1. 1.Rhodococcus Equi(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)グラム陽性・部分抗酸性でrod-coccus cycleを示すコッコバシラスであること、ウマ・その糞便・放牧地土壌を自然宿主とすること、HIV感染がヒト感染の主要リスク因子(61.5%)で肺が病変部位の76%を占め上葉優位の空洞性浸潤影を呈すること、治療はマクロファージ移行性の良い薬剤を含む2剤以上の併用で数か月に及ぶことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Rhodococcus equi: an emerging pathogen(Clinical Infectious Diseases・2002)報告されたR. equi感染症患者の大多数が免疫不全者で、うち約3分の2がHIV感染者、80%が何らかの肺病変を有することを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.A stable home for an equine pathogen: valid publication of the binomial Prescottella equi gen. nov., comb. nov., and reclassification of four rhodococcal species into the genus Prescottella(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology・2022)新属Prescottellaとその基準種Prescottella equi(=Rhodococcus equi)が有効出版され、他に4菌種がRhodococcus属からPrescottella属へ再分類されたことを確認した閲覧 2026-08-10