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Symptoms · Published

Romberg徴候

Romberg sign

別名
ロンベルグ徴候Romberg試験閉眼起立検査
臓器系
神経
科目
NeurologyENT
トピック
神経内科 G2-10:歩行障害の分類神経内科 07:小脳機能の診察(Cerebellar function examination)耳鼻咽喉科 08:神経耳科学の基本的診察法神経内科 G1-36:多発ニューロパチーの症候と主な原因

🧠 全体像は症状ではなく、姿勢制御が視覚に依存しているかどうかを調べるの手技である。からに切り替え、その瞬間に姿勢が保てなくなるかどうかだけを見る——測っているのは「で悪化するという差分」であり、前からすでに不安定な患者ではこの差分自体が測定不能になる。診断的価値が本来発揮されるのはの同定であり、障害の除外には使えない。

定義と用語の整理

「Romberg陽性」という言葉を、時からすでに不安定な患者に使わない。 の陽性とは、では姿勢を保てるのにで崩れることを指す。のように時から不安定な患者では、によって新たに何かが破綻したのかを判定しようがなく、「で安定→で悪化」という差分そのものが測れない。この状態に「Romberg陽性」という語を当てはめるのは誤用である。

手技は次の順で行う。①靴を脱がせ両足の内側を揃えてを取らせ、腕は体側または胸の前で組ませる。②まずのまま姿勢を観察し、著明ながないことを確認する。③その状態からへ切り替え、約1分間姿勢を保たせる1。④検者は転倒・受傷を防ぐため患者のすぐ横に立ち、いつでも支えられる姿勢を取る1

陽性と判定するのは、著明にが増す、転倒する方向へ足が動く、または実際に転倒する場合であり1、健常者でもで多少揺れる程度の変化は正常範囲として区別する。「が増える」ことと「倒れる」ことは同じ陽性でも重みが違い、後者は特に緊急性の判断材料になる。通常ので判定に迷う軽症例には、両足を一直線に前後させるSharpened(Tandem)Rombergや、足底からの入力を打ち消すゴム上での実施が、感度を高める変法として使われる1

病態生理

立位の姿勢制御は視覚・という3系統の入力が支えており、そのうち2系統が機能していれば姿勢は保てる2が後索・末梢神経の障害で途絶えても、視覚がその代わりを果たせる限りでは安定する。はこの視覚という代償系だけを人為的に取り去る操作であり、残るだけでは支えきれないときに初めて姿勢が崩れる——これが本来の意味でのRomberg陽性であり、成立するのはが実際に障害されているである。

同じ理屈はにも当てはまるはずだが、実際には障害でのRomberg試験の感度は低い。慢性のでは中枢性のが進み、視覚・の2系統だけで姿勢を保てるようになるため、で確認されたがあってもRomberg試験は正常化しやすい(ある研究では感度わずか10.6%、先行研究でも55〜70%程度)2。逆に急性・では、で患側へ偏って倒れるような見かけ上の陽性を示すことがあるが、これは障害とは機序が異なる。

はこの3系統いずれの入力障害でもなく、入力を統合して運動を協調させる小脳自体の障害であるため、視覚を消しても新たに露呈するものがない。時からすでに不安定であることが多く、Romberg試験の前提(での安定)が成立しないためになる。

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ 検査そのものが転倒を招く。 で崩れる患者は反射的に支えられないまま倒れることがあるため、検者は必ず患者のすぐ横に立ち、転倒方向へすぐ手を出せる位置を取る1

⚠️ 陽性のまま経過観察に回さない。 Romberg陽性は治療可能な原因を積極的に検索する入り口であり、ビタミンB12欠乏、梅毒)、糖尿病性・薬剤性の、傍腫瘍性ののいずれも治療可能または進行を止められる。詳細な原因検索と管理はのノートに譲るが、Romberg陽性という所見だけを記録して終わらせない。

⚠️ の見かけ上の陽性・陰性を失調と取り違えない。 急性期のでの性の転倒を安易に失調と解釈しない一方、代償が進んだ慢性期のはRomberg陰性でも障害を否定する根拠にならない。眼振・頭位変換による誘発・などめまいの評価で使うの所見と統合して判断する。

⚠️ 陰性のRomberg試験はを除外しない。 時からすでに不安定なため、この試験自体が成立せず「陰性だからではない」という推論は誤りである1。歩行観察・・眼振の有無など他の所見と併せて判断する。

⚠️ 機能性()疾患では、の大きさと転倒の少なさが解離する。 大きく振れながらも実際にはほとんど転倒しない、注意をそらすとが軽減する、支持なしでは崩れそうに見えるのに軽く触れる程度の支持で急に安定するといった反応は、な姿勢制御が保たれていることを示唆する所見である。で挙げられるなどと同じく、保存された機能を示す所見として扱い、患者を試す目的で使わない。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='feet-together stance'>閉脚立位</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spontaneously'>開眼</span>で安定を確認"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spontaneously'>開眼</span>時から不安定か"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indeterminate'>判定不能</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar'>小脳性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular'>前庭性</span>・機能性を評価"]
    B -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eye closure'>閉眼</span>へ切り替え約1分間観察"]
    D --> E{"著明な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='swaying (postural instability)'>動揺</span>・転倒方向への<br>ステップ・転倒があるか"}
    E -->|"いいえ(軽微な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='swaying (postural instability)'>動揺</span>のみ)"| F["Romberg陰性<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar'>小脳性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular'>前庭性</span>は除外できない"]
    E -->|"はい"| G["Romberg陽性"]
    G --> H{"急性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deviation / lateralization'>偏倚</span>性で<br>眼振等の前庭所見を伴うか"}
    H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular involvement'>前庭障害</span>を優先して評価"]
    H -->|"いいえ"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory ataxia'>感覚性運動失調</span>として原因検索<br>B12・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serologic test for syphilis'>梅毒血清反応</span>・HbA1c・脊髄MRI"]

軽症例で判定に迷えばSharpened Rombergやゴム上での実施へ進め、時からすでに不安定な患者では無理にを試みず、歩行観察・小脳徴候・前庭徴候の評価へ切り替える。

対応の考え方

そのものを治療する対象ではなく、陽性という所見が確定した時点で次の一手は原因検索へ移る。

  • 血液検査から始める。 血清B12(境界域ならを追加)、、HbA1c、必要に応じを測定し、で扱う原因検索の枠組みに乗せる。
  • 分布で画像・を絞る。 の分布であれば・急性〜亜急性であれば脊髄MRIや傍腫瘍性抗体の測定を検討する。
  • 転倒予防は原因検索と並行して今すぐ始める。 環境調整・の導入は診断確定を待たない。ただしのように、明らかな小脳徴候もRomberg陽性も伴わずに生じる浮動性の不安定性もあり、Romberg陰性・小脳徴候陰性を「原因なし」の根拠にしない。
  • が疑われれば専門評価へ。 眼振・頭位変換による誘発が陽性であれば、Romberg試験ではなく・眼振・(HINTS)やで確認する。

まとめ

  • は症状ではなく、からに切り替えたときに姿勢制御が保てるかどうかを見る診察手技である。
  • 陽性とはで安定しで著明に崩れる(増強・転倒方向へのステップ・転倒)ことを指し、時からすでに不安定なにこの語を当てはめるのは誤用である。
  • 姿勢制御は視覚・の3系統で支えられ、2系統が保たれていれば立てるという原理から、障害()で本来の陽性が成立する。
  • 障害ではRomberg試験の感度が低く、慢性期のにより陰性化しやすい一方、急性・では性の見かけ上の陽性を示すことがある。
  • 陰性はを除外しない。機能性()疾患ではの大きさと転倒の少なさが解離する。
  • 陽性が確定したら、ビタミンB12欠乏・梅毒・糖尿病性/薬剤性などの治療可能な原因検索へただちに進める。

出典

  1. 1.Romberg Test(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)手技(閉脚位で開眼から観察を始め、閉眼へ切り替えて約1分間保持させ、検者は転倒防止のため患者のすぐ近くに立つ)、陽性の判定基準(著明な動揺の増強、転倒方向への足の動き、または実際の転倒)、Sharpened/Tandem Rombergや発泡ゴム使用が感度を高める変法であること、陰性のRomberg試験が小脳機能障害を除外しないことを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Sensitivity of Romberg Test in Diagnosis of Peripheral Vestibular Disorders in Comparison with Caloric Test: Psychometric Study(Journal of Research in Rehabilitation Sciences・2021)立位の平衡が視覚・前庭覚・深部感覚の3系統の協調で保たれ、1系統が障害されても残り2系統で代償しうること、末梢前庭障害47例で温度刺激検査と比較したRomberg試験(閉眼)の感度がわずか10.6%と低く、先行研究でも55〜70%程度にとどまること、慢性期には中枢性の前庭代償が進みRomberg試験が陰性化しやすいことを確認した。閲覧 2026-08-03