眼科学

眼科学 · ML-66

未熟児網膜症

Retinopathy of prematurity

前提:正常
眼:網膜・虹彩・毛様体

🧠 全体像:網膜の血管はに乳頭から周辺へ向かって伸び、満期ごろにようやく周辺に届く。早産で生まれると、血管が途中までしか伸びていない網膜が子宮の外の酸素環境にさらされる。第1相では酸素が多すぎて VEGF が減り、血管の成長が止まって一部が消える。第2相では、育っていくの網膜が酸素不足になって VEGF が増え、境目から異常なが伸びて、進めばから失明に至る。だから、危険の高い児を決まった時期から網膜を診続け(スクリーニング)、治療が要る段階(type 1)を見逃さず72時間以内に治療する(レーザーか抗VEGF)ことが、失明を防ぐ唯一の道である。記録は ICROP の「zone(どこまで血管が伸びたか)・stage(境目の変化の強さ)・plus(の血管の拡張と)」の3つで行う。

歴史:保育器と「新しい失明」

  • 1941年2月14日、Boston の小児科医 Stewart H. Clifford が、早産児の失明に気づいた。
  • 眼科医 Theodore Lasater Terry(1899〜1946年)は、1942〜1945年に117例の「新しい」失明を報告し、その原因を眼の血管の発達と結びつけて考えた。の後ろにの膜ができることから、当時は後部線維増殖症と呼ばれた。
  • 1895年ごろのは簡素な木箱であったが、1950年ごろには密閉型のが使われるようになった。と酸素投与の普及が早産児の生存を増やし、同時にこの病気を増やした。

💡 は、新生児医療の進歩が生んだ病気である。救命できる早産児が増えるほど、また酸素管理が不十分な地域ほど多くなる。

網膜の血管の発達

  • 網膜の血管は胎生14〜15週にから伸び始め、胎生38〜45週に()に届く。
  • 血管は、前駆細胞がその場で血管になると、既存の血管から枝が伸びる血管新生の2つの仕組みで作られる。
  • 胎生14〜15週・18週・21週の網膜の伸展標本(乳頭・血管の索・を描き分けた図)では、14〜15週には乳頭の周りに(血管の前駆細胞)が密に分布し、18週にはその分布が乳頭から離れた周辺側へ移っている。21週の標本にはの印が描かれていない。
  • 早産児の眼底は、には細い血管があるが、周辺は血管の無い灰白色の網膜である。ROP の無い未熟な網膜でも、周辺はであることが正常である。

💡 在胎週数が短いほど血管は乳頭の近くまでしか伸びておらず、の網膜が広い。だから早く生まれた児ほど重症化しやすく、病変も寄りの zone I に出やすい。

病態:2つの相と VEGF

flowchart TD
    A["子宮内:低い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial pressure of oxygen'>酸素分圧</span>のもとで<br>IGF-1 と VEGF は正常<br>血管は周辺へ正常に伸びる"] --> B["早産で出生<br>相対的な高酸素・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incubator'>保育器</span>の酸素"]
    B --> C["第1相:VEGF が減る<br>IGF-1 も下がる"]
    C --> D["血管の成長が止まり<br>毛細血管が消える(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular occlusion'>血管閉塞</span>)"]
    D --> E["網膜が成熟して代謝が増える<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='avascular'>無血管</span>の網膜が低酸素になる"]
    E --> F["第2相:VEGF が大きく増える<br>IGF-1 がゆっくり上がり閾値に達する"]
    F --> G{"VEGF はその後<br>どうなるか"}
    G -->|"VEGF が下がる"| H["正常な血管の成長が再開<br>ROP は自然に退縮"]
    G -->|"VEGF が高いまま"| I["網膜外の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proliferative retinopathy'>増殖性網膜症</span>)<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='tractional retinal detachment'>牽引性網膜剥離</span>"]
  • 第1相(高酸素期):高酸素 → VEGF の低下 → と毛細血管の退縮。
  • 第2相(低酸素期):低酸素 → VEGF の上昇 → 血管の異常増殖。
  • VEGF に加えて IGF-1 も関わる。IGF-1 は出生後に下がり、成熟とともにゆっくり上がる。IGF-1 が一定の「閾値」に達すると、VEGF による血管の増殖が起こりやすくなる。

VEGF のはたらき

部位 役割
網膜 網膜の発達、血管の形成、血管の透過性の調節
中枢神経 神経の保護
肺 肺の発達を支える
心臓・腎臓など 各臓器の血管形成

⚠️ VEGF は網膜の病的なを起こすだけでなく、早産児の全身の臓器の発達に必要な因子でもある。をに注射すると血中にも移るので、全身への影響(特に神経の発達)が懸念され続けている(後述)。

スクリーニング

誰を検査するか

⭐ スクリーニングの基準は、その国の新生児医療の水準に合わせて国ごとに違う。

基準 出生体重・在胎週数 追加の対象
ハンガリーの基準 出生体重1,500 g以下または在胎32週以下 出生体重1,500〜2,000 g、または在胎32週を超える児でも、臨床経過が不安定なら検査する
・米国眼科学会などの合同方針(2018年) 出生体重1,500 g以下または在胎30週以下1 出生体重1,500〜2,000 g、または在胎30週を超える児で、担当医が危険ありと判断した児(を要する低血圧、数日を超える酸素投与、飽和度を監視しない酸素投与など)1
英国の指針(2022年、2024年改訂) 在胎31週未満(30週6日まで)または出生体重1,501 g未満2 在胎31週0日〜31週6日生まれも対象として考慮する2

💡 どの基準も「体重か週数のどちらかを満たせば対象」で、さらに「大きめでも経過が悪い児は拾う」という二段構えである。重症の ROP が大きめの早産児にも起こりうる地域(新生児医療の資源が限られた地域)では、基準を広く取る必要がある。基準の考え方とハンガリーでの位置づけは失明の原因・スクリーニング・予防も参照。

初回検査の時期

重い ROP が現れる時期は、生後の日数よりも修正週数(在胎週数+生後週数)とよく相関する。つまり早く生まれた児ほど、発症までの生後日数が長い。初回検査の時期は次の表で決める。

在胎週数 修正週数:従来の表 生後週数:従来の表 修正週数:米国の2018年方針1
22 30〜31 9 31(生後9週)
23 30〜31 8 31(生後8週)
24 30〜31 7 31(生後7週)
25 30〜31 6 31(生後6週)
26 30〜31 5 31(生後5週)
27 31 4 31(生後4週)
28 32 4 32(生後4週)
29 33 4 33(生後4週)
30 34 4 34(生後4週)
31 35 4 危険因子のある児は生後4週
32 36 4 危険因子のある児は生後4週
  • 在胎27週以下では修正週数(約31週)で、28週以上では生後4週で初回検査を行う、と読むとよい。従来の表は在胎22〜26週を修正30〜31週とし、在胎32週まで載せている(ハンガリーの基準が32週以下を対象とするため)。米国の2018年方針は22〜27週を修正31週に揃え、30週までを載せている。
  • 米国の2018年方針は、在胎22〜23週の値は生存例が少ないため根拠に基づかない暫定値としている1。
  • 英国の指針では、在胎31週未満生まれの初回検査を修正31週0日〜31週6日と生後満4週(28〜34日)の遅いほうで行う2。

検査の方法

項目 内容
との点眼
麻酔 オキシブの点眼()
標準の方法 双眼による(最も信頼できる標準の方法)
器具 した針金の、を押して周辺を見るための鈎
レンズ 20 D、28 D、40 D
  • 介助者が児の頭を支え、で眼を開いて検査する。
  • が不十分なときに点眼を繰り返すと、心肺や消化管の状態を悪くしうるので注意する。しにくいこと自体が進行した ROP の徴候のことがある1。
  • 器具は児ごとにしたものを使い、感染を持ち込まないようにする1。

遠隔医療によるスクリーニング

要素 内容
撮影 訓練を受けたが撮影する
装置 持ち運べる広角デジタルを施設間で運ぶ
保存 安全なデータベースに画像を送る
判定 端末で専門の眼科医が判定する

広角デジタル眼底撮影は、双眼と比べて特異度が高く(78〜100%)、感度には研究によって幅がある(57〜99%)2。治療が要ると判断した段階では、で直接診察する1。の流れは失明の原因・スクリーニング・予防で扱う。

分類:ICROP

所見は国際分類 ICROP で記録する。現在の版は2021年の第3版(ICROP3)で、2005年の改訂版を引き継いでいる。

zone:どこまで血管が伸びたか

zone 範囲
zone I 乳頭中心を中心に、乳頭中心からまでの距離の2倍を半径とする円3
寄りの zone II zone I の境界から2つ分の周辺の輪。ICROP3 で新たに定義した3
zone II zone I の外縁から、鼻側のまでの距離を半径とする輪3
zone III zone II の外に残る、耳側のの3
  • 記録用の図は左右の眼それぞれに、乳頭を中心とする zone I と zone II の2つの円を描き、黄斑を乳頭の耳側に置く。外周はで、乳頭は眼球の中心より鼻側にあるため、zone II の外には耳側だけにの zone III が残る。病変の広がりは時計の(12・3・6・9時)に見立てて何時間分かで表す。
  • 実際には 28 D のレンズで乳頭の鼻側縁を視野の端に置くと、反対側の端がおおよそ zone I の境界になる3。
  • :病変が水平経線に沿って1〜2時間分だけ、よりの zone に食い込んでいるもの。「による zone I」のように記録する3。
  • zone III と判定するには、鼻側の血管がまで達し、鼻側の2時間分に病変が無いことを確かめる3。

💡 zone の番号が小さいほど重い。zone I の ROP は血管がほとんど伸びていない最も未熟な網膜に起こり、の範囲が広いので VEGF が多く、急速に進みやすい。

stage:血管のある網膜と無い網膜の境目の変化

stage 名称
1 血管のある側の網膜と、のを分ける平らな白い線
2 隆起 が幅と高さをもつ隆起になる。白〜
3 網膜外の 隆起から側へとが伸びる。ICROP3 では平坦なもここに含める3
4 部分的 4A:が剥がれていない、4B:が剥がれている
5 5A:乳頭が見える(開いた状の剥離)、5B:乳頭が見えない(後方のや閉じた状の剥離)、5C:5B にの変化(の著しい浅化、・角膜・の癒着、)を伴う3
  • 同じ眼に複数の stage があれば、最も重い stage で分類する3。
  • stage 4 の眼底では、白いが網膜を引き寄せ、網膜がひだ状に持ち上がる。
  • stage 5 では、剥がれた網膜とがの後ろに白く見え、になる。超音波ではに剥がれた網膜が膜状のとして描出される(の鑑別は)。
flowchart TD
    A["未熟な網膜<br>周辺は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avascular'>無血管</span>(正常)"] --> B["stage 1:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='borderline; boundary'>境界線</span>"]
    B --> C["stage 2:隆起"]
    C --> D["stage 3:網膜外の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrovascular proliferation'>線維血管増殖</span>"]
    D --> E["stage 4:部分的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span><br>4A <span class='jp-term jp-term-diagram' title='fovea'>中心窩</span>は付着・4B <span class='jp-term jp-term-diagram' title='fovea'>中心窩</span>も剥離"]
    E --> F["stage 5:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total retinal detachment'>全網膜剥離</span><br>5A・5B・5C"]
    B -.-> G["多くは自然に退縮<br>血管が周辺へ伸びきる"]
    C -.-> G

plus 病変

所見 内容
plus 病変 のの拡張と(静脈の異常な拡張、)。を伴うことがある
前 plus 病変 異常な拡張・があるが plus には満たない3
従来 plus に含めた所見 血管の怒張、瞳孔の硬さ(しにくい)、血管の怒張、の
  • 従来は血管の拡張と瞳孔の硬さも plus の徴候として扱われた。ICROP3 は、これらを進行した病気の徴候だが plus の診断には必要ないとし、plus は zone I の血管で判定すること、正常から前 plus・plus までは連続した変化であることを明記した3。
  • plus 病変の有無は、stage の数字や病変の時間数より、治療を決める上で重要である1。

急速進行型:AP-ROP から A-ROP へ

項目 内容
従来の定義(2005年) (zone I または寄りの zone II)に起こる、急速に進む重症型。網膜上の平坦なに、静脈の拡張・・出血を伴う
現行の定義(ICROP3、2021年) 大きめの早産児や以外にも起こり、特に資源の限られた地域で見られることから、場所を名前から外してA-ROP と改めた。特徴は、典型的な stage を順にたどらずに病的なと強い plus 病変が急速に現れることである3

眼底では、乳頭から放射状に強く拡張・した血管がに広がり、を伴う。A-ROP の stage 3 は、はっきりした隆起を作らない平坦なのとして現れ、目立たないので見落としやすい。28 D のレンズでは見えにくく、より拡大できる 20 D のレンズやが役立つ3。

⚠️ A-ROP は stage 1→2→3 と順に進まず、短期間にへ向かう。zone I・寄りの zone II に plus の強い血管を見たら、境界の隆起がはっきりしなくても重症として扱う。

経過観察の間隔

再検査の間隔は、zone と stage で決める。米国の2018年方針の目安は次のとおりである1。

間隔 所見
1週以内 zone I の未熟な血管化(ROP なし)、zone I の stage 1・2、zone I と II の境界近くまでの未熟な網膜、A-ROP の疑い(zone I の stage 3 は経過観察ではなく治療)
1〜2週 寄りの zone II の未熟な血管化、zone II の stage 2、zone I の明らかに退縮している ROP
2週 zone II の stage 1、zone II の ROP の無い未熟な血管化、zone II の明らかに退縮している ROP
2〜3週 zone III の stage 1・2、zone III の退縮している ROP

急性期の検査を終えてよい目安は、網膜の血管が360°にわたっての近くまで伸びたこと、zone I・II の ROP を経ずに zone III まで血管化したこと、修正45週で type 1 以上の ROP が無いこと、ROP の退縮などである1。

治療の適応:type 1 ROP

⭐ 治療が要る ROP を type 1 ROP と呼ぶ(ETROP 試験に基づく)。

zone type 1 ROP(治療する)
zone I plus を伴う任意の stage
zone I plus を伴わない stage 3
zone II plus を伴う stage 2 または 3
  • 眼底で type 1 に当たる典型は、の血管が乳頭から放射状に強く拡張・し出血を伴う眼(zone I の plus)と、境目に幅のある隆起ができ、その側の血管が太くする眼(zone II の隆起と plus)である。
  • この定義は米国の2018年方針でも治療の基準として使われている1。
  • より軽い type 2 ROP、すなわち zone I の plus を伴わない stage 1・2 と zone II の plus を伴わない stage 3 は、治療せずに密に経過を見て、type 1 へ進めば治療する。
  • 以前は CRYO-ROP 試験の「閾値 ROP」(stage 3 が連続5時間分または合計8時間分以上で plus を伴う)を治療の基準にしていた。ETROP 試験で、より早い段階で治療したほうが視力の転帰が良いことが示され、閾値 ROP は type 1 の中に含まれるようになった1。
  • ⚠️ 治療が要ると判断したら、できるだけ早く、遅くとも72時間以内に治療する。の危険を減らすためである1。
flowchart TD
    A["スクリーニングの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus examination (fundoscopy)'>眼底検査</span><br>zone・stage・plus を記録"] --> B{"type 1 ROP か<br>(zone I の plus あり・zone I の stage 3・<br>zone II の stage 2〜3 で plus あり)"}
    B -->|"いいえ"| C["所見に応じた間隔で再検<br>1週以内〜2〜3週"]
    C --> A
    B -->|"はい"| D["72時間以内に治療"]
    D --> E{"どの治療を選ぶか"}
    E -->|"標準"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avascular'>無血管</span>網膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laser photocoagulation'>レーザー光凝固</span>"]
    E -->|"zone I・A-ROP・<br>レーザーができない"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-VEGF agent'>抗VEGF薬</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>注射"]
    F --> H["3〜7日後に再診<br>凝固不足の追加"]
    G --> I["3〜7日後に再診<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>に備えて修正65週以上まで<br>長く経過観察"]
    H --> J{"stage 4A へ進んだか<br>活動性が続くか"}
    I --> J
    J -->|"はい"| K["早期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span>温存<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitrectomy'>硝子体手術</span>"]

治療

治療の第一の目標は、眼内の VEGF を減らすことである。方法は2つある。VEGF を作っているの網膜を壊す(レーザー)か、VEGF そのものを中和する()かである。

レーザー光凝固:従来の標準

  • のを、双眼に付けたレーザーで一面に凝固する。VEGF を出す低酸素の網膜を減らすことで、を退縮させる。
  • 周産期センターで、のそばで治療を行う。装置と条件は失明の原因・スクリーニング・予防に示す。
  • 治療直後は、境界より周辺の網膜が白い凝固斑で密に埋まる。数週後には、凝固した範囲が色素を伴う萎縮した瘢痕の帯になる。
  • A-ROP では、網膜上に平坦なが広がり、網膜内に動静脈の短絡ができる。凝固は、平坦なの下にあるの網膜も対象にする。
  • 治療の3〜7日後に再診し、凝固が足りない部分があれば追加する。3〜7日後の再診はで治療した場合も同じである1。

💡 レーザーはを永久に壊す。その代わりはまれである3。周辺の視野が少し狭くなるが、と失明を防ぐ効果のほうがはるかに大きい。

抗VEGF薬の硝子体注射

次のような場合に考える。

  • ができないとき
  • zone I の type 1 ROP
  • A-ROP(従来の AP-ROP)

薬には、、がある(点眼・注射薬の薬理は眼科の薬理)。

試験 比較 主な結果
BEAT-ROP(2011年) 単剤とレーザー(zone I または寄りの zone II の stage 3 で plus あり) zone I ではレーザーより構造的な転帰が良かったが、zone II では差が無かった。安全性や脳の発達への影響を評価するには小さすぎた1
RAINBOW(2019年) 0.2 mg・0.1 mg とレーザー(出生体重1,500 g未満の225人) 24週時の治療成功は0.2 mg群80%、0.1 mg群75%、レーザー群66%。0.2 mg群のレーザーに対するは統計学的な有意差にわずかに届かなかった(p=0.051)。不良な構造的転帰は0.2 mg群1人、0.1 mg群5人、レーザー群7人。死亡と有害事象は3群で同程度だった4
  • のあとも、の血管は伸び続ける。レーザーのようにを壊さないことが利点である1。
  • 2018年の時点で、が ROP に承認したは無く、用量・時期・安全性・全身の転帰に未解決の問題があるため、詳しい説明と同意のうえで使うとされた1。その後、米国では2023年に(0.4 mg)が ROP の治療薬として承認された。承認後も、全身への影響と晩期のが未解決の課題であることは変わらない。

抗VEGF治療のあとの問題

問題 内容
血管化が完了しない に遺残網膜が残ることがある。位置と範囲を記録する3
(の再発) 後は後より多く、完全なレーザー後にはまれ3。後の再発はレーザー後よりかなり遅い(16±4.6週と6.2±5.7週)1
の時期 多くは修正37〜60週3。危険が最も高いのは修正45〜55週で、修正65〜70週でのの報告もある1
全身への影響 神経の発達などへの影響はまだが出ていない。重い神経発達の問題が多かったという報告と、差が無かったという報告がある1

⚠️ で退縮させた児は、急性期の検査を少なくとも修正65週まで続ける。終了の基準として信頼できるのは網膜の血管化が完了したことだけであり、「一度退縮した」「修正45週を過ぎた」だけで検査を終えない。血管化が完了しないまま残る児では、長い経過観察と個々の臨床判断で終了や追加治療を決める1。晩期のと長期の経過観察はので詳しく扱う。

早期の水晶体温存硝子体手術

  • 適応:治療後も活動性の所見が続く眼、stage 4A(がまだ付いている部分的)。
  • を残したまま、の前の部分から器具を入れてとを取り除き、網膜を引く力を解く。
  • 眼底では、レーザー瘢痕の帯の内側で、隆起から伸びたが網膜を引いて持ち上げ、を伴う。
  • が剥がれる前(4A)に手術するのが要点である。stage 5 まで進むと、手術をしても視機能の回復は限られる(の一般はの病気と)。

予防とチーム医療

  • :早産そのものを減らし、新生児の酸素投与を適切に管理して ROP の発症を減らす。
  • :スクリーニングで治療が要る ROP を早く見つけ、決められた基準で適切な時期に治療する。
  • 眼科医の役割は次の3つである。
    1. 治療が要る type 1 ROP を時期を逃さず診断する
    2. 基準に従って時期を逃さず治療する
    3. 治療後も経過を見続ける
  • 医・眼科医・が一つのチームとして働くことが、子どもの視力と精神運動の発達を守る。早産の全身の合併症はと早産の合併症(BPD・ROP・NEC・IVH)で扱う。

まとめ

  • 網膜の血管は胎生14〜15週に乳頭から伸び始め、38〜45週に周辺へ届く。早産児では周辺がのまま生まれる。
  • 第1相は高酸素で VEGF が減り血管が閉塞・退縮し、第2相は低酸素で VEGF が増え血管が異常に増殖する。IGF-1 も関わる。VEGF は全身の臓器の発達にも必要である。
  • スクリーニング基準は国ごとに違う:ハンガリーは1,500 g以下または32週以下(1,500〜2,000 g・32週超でも不安定なら)、米国の2018年方針は1,500 g以下または30週以下、英国の2022年指針は31週未満または1,501 g未満。
  • 初回検査は在胎27週以下では修正約31週、28週以上では生後4週。(・)とのうえ、とを使い双眼で見る。の撮影も使われる。
  • ICROP3(2021年):zone I(乳頭〜の距離の2倍の半径)・寄りの zone II・zone II・zone III、。stage 1 ・2 隆起・3 網膜外の・4A/4B 部分剥離・5A/5B/5C 全剥離。plus は zone I の血管の拡張・で判定し、前 plus との連続として扱う。AP-ROP は A-ROP に改められた。
  • type 1 ROP は zone I の plus を伴う任意の stage、zone I の stage 3、zone II の plus を伴う stage 2・3 で、72時間以内に治療する。
  • 治療は(網膜の凝固、従来の標準、はまれ)と(zone I・A-ROP・レーザー不能で考える。BEAT-ROP、RAINBOW)。
  • 後は遺残網膜と遅い(多くは修正37〜60週、最も危険なのは45〜55週)に備え、修正65週以上かつ血管化の完了まで診る。
  • stage 4A や活動性が続く眼には早期の温存を行う。
  • と、医と眼科医のチーム医療が失明を防ぐ。

出典

  1. 1.Screening Examination of Premature Infants for Retinopathy of Prematurity(American Academy of Pediatrics, American Academy of Ophthalmology, American Association for Pediatric Ophthalmology and Strabismus, American Association of Certified Orthoptists・2018)誌上版PDF(Pediatrics 2018;142:e20183061)で、出生体重1500 g以下または在胎30週以下のすべての児と、出生体重1500〜2000 gまたは在胎30週超で担当医が危険ありと判断した児(昇圧薬を要する低血圧、数日を超える酸素投与、飽和度を監視しない酸素投与など)をスクリーニングすること、散瞳後に開瞼器と必要に応じた強膜圧迫を用いた双眼倒像鏡で行い、散瞳薬の反復は心肺・消化管に悪影響を及ぼしうるので注意すること、初回検査の時期は修正週数に基づき、在胎22〜27週生まれは修正31週(生後9〜4週)、28・29・30週生まれは修正32・33・34週(生後4週)、それ以上の在胎週数で危険因子のある児は生後4週で、22・23週の値は根拠に基づかない暫定値であること、再検査の間隔を zone と stage で1週以内・1〜2週・2週・2〜3週に分けること、zone I の任意の stage で plus あり、zone I の stage 3 で plus なし、zone II の stage 2 または 3 で plus ありを type 1 ROP として治療し、治療可能と判断してからできるだけ早く遅くとも72時間以内に治療し、レーザー光凝固でも抗VEGF注射でも治療後3〜7日で再診すること、BEAT-ROP でベバシズマブ単剤療法がレーザーに比べ zone I では構造的転帰を改善したが zone II ではそうでなかったこと、同試験は安全性と脳の発達への影響を評価するには小さく、2018年時点で米国食品医薬品局が承認した抗VEGF薬は無かったこと、ベバシズマブ後の再発はレーザー後よりかなり遅く(16±4.6週と6.2±5.7週)再燃の危険が最も高いのは修正45〜55週で、修正65〜70週での再治療も報告されていること、抗VEGF薬で退縮させた場合は急性期の検査を修正65週以上まで続け、完全な血管化だけが信頼できる終了基準であり、完全な血管化に至らない場合は長期の観察と臨床判断に頼ること、修正45週で type 1 以上の ROP が無いことを終了の目安の一つとすることを確認した(監査で誌上版全文を再照合)。閲覧 2026-09-29
  2. 2.UK Screening of Retinopathy of Prematurity Guideline(Royal College of Paediatrics and Child Health・2024)2022年3月発行・2024年10月改訂の本文で、在胎31週未満(30週6日まで)または出生体重1501 g未満のいずれかを満たす児を全例スクリーニングし、31週0日〜31週6日生まれも対象として考慮すること、31週未満生まれの初回検査は修正31週0日〜31週6日または生後満4週(28〜34日)の遅いほうで行うこと、広角デジタル眼底撮影は双眼倒像鏡と比べて高い特異度(78〜100%)と幅のある感度(57〜99%)を示したことを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.International Classification of Retinopathy of Prematurity, Third Edition(Ophthalmology(International Classification of Retinopathy of Prematurity Committee)・2021)PMC全文(PMC10979521)で、zone I が乳頭中心を中心とし乳頭中心から中心窩までの距離の2倍を半径とする円であること、zone II が zone I の外縁から鼻側の鋸状縁までの距離を半径とする輪状の領域であること、zone I の境界から乳頭径2つ分の周辺を「後極寄りの zone II」と定義したこと、病変が水平経線に沿って1〜2時間分だけより後極の zone へ入り込むものを「ノッチ」と呼び「ノッチによる zone I」のように記録すること、zone III は zone II の外の残りの三日月形の周辺網膜で、鼻側が鋸状縁まで血管化し鼻側2時間分に病変が無いことを確かめて判定すること、28 D のレンズで乳頭の鼻側縁を視野の端に置くと反対側の端がおおよそ zone I の境界になること、stage 1 が境界線・stage 2 が隆起・stage 3 が網膜外の線維血管増殖または平坦な新生血管で、同じ眼に複数の stage があれば最も重いもので分類すること、stage 4 が部分的網膜剥離で中心窩が付いている 4A と剥がれている 4B、stage 5 が全網膜剥離で、乳頭が見える 5A、水晶体後方の線維血管組織や閉じた漏斗状剥離で乳頭が見えない 5B、5B に前房の著しい浅化・虹彩角膜水晶体の癒着・角膜混濁などの前眼部の変化を伴う 5C に分けたこと、plus 病変は網膜血管の拡張と蛇行で定義し、前 plus 病変は plus に満たない異常な拡張・蛇行であり、正常から前 plus・plus までは連続した変化で zone I の血管で判定すること、1984年の原版が plus の所見に含めた虹彩血管の怒張・散瞳不良・周辺網膜血管の怒張と硝子体混濁は進行例の徴候だが plus の診断には必要ないとしたこと、急速に進む後極の重症型として2005年に加えた AP-ROP を、大きめの早産児や後極以外にも起こり特に資源の限られた地域で見られることから A-ROP に改め、その特徴を典型的な stage を経ない病的新生血管と強い plus 病変の急速な出現とし、A-ROP の stage 3 が目立たない平坦な新生血管の網目として現れ 28 D レンズでは見えにくく 20 D レンズや蛍光眼底造影が役立つとしたこと、退縮と再燃を定義し、再燃は抗VEGF治療後に自然退縮後より多く完全なレーザー光凝固後にはまれで、抗VEGF注射後の再燃は多くが修正週数37〜60週に起こるが薬剤・用量・再注射でさらに遅れうること、遺残無血管網膜の位置と範囲を記録すべきことを確認した。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Ranibizumab versus laser therapy for the treatment of very low birthweight infants with retinopathy of prematurity (RAINBOW): an open-label randomised controlled trial(The Lancet・2019)抄録(PMID 31522845)で、26か国87施設で出生体重1500 g未満の治療適応のある児225人をラニビズマブ0.2 mg・0.1 mg・レーザーに1対1対1で割り付けた非盲検の無作為化試験で、24週時の治療成功は0.2 mg群80%・0.1 mg群75%・レーザー群66%、0.2 mg群のレーザー群に対するオッズ比は2.19(95%信頼区間0.99〜4.82、p=0.051)で、不良な構造的転帰は0.2 mg群1人・0.1 mg群5人・レーザー群7人、死亡と全身・眼の有害事象は3群で同程度であったことを確認した。閲覧 2026-09-29