病理学

病理学 · A/01

細胞壊死

Causes, morphology and mechanism of cell necrosis

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
死の定義と死後変化
症状
皮膚壊死

🧠 全体像:壊死はどの原因(・毒性・感染など)から入っても、最終的にはとCa²⁺流入という同じ経路をたどり、膜が破綻して内容物が漏れ出すからこそを伴う——この「膜の破綻=炎症あり」という一点が、炎症を伴わないアポトーシスとの決定的な違いになる。

定義

  • 壊死 = で起こる、限局的で制御されない細胞・組織・臓器の死。を伴う。
  • 細胞膜が崩壊し、細胞内の酵素が漏出することで炎症反応が起こる。
  • 一般に病的な現象(アポトーシスがしばしば生理的なのと対照的)だが、常に望ましくないわけではない(例:腫瘍細胞の壊死はむしろ望ましい)。

原因

    • = O₂供給の低下(:肺炎など、または運搬能の低下:貧血・CO中毒など)。単独で壊死を起こすことは稀(均一に広がる)。
    • 虚血 = ある領域への血流の途絶・不足。より危険で、突然かつO₂も栄養も供給が断たれるため、適応する時間がない。
  • : (ブドウ糖・塩)、、を乱す物質、薬物。
  • : 真菌・ウイルス・細菌とその毒素。
  • : 機能タンパク質の欠損、やの蓄積。
  • 栄養の不均衡: 、あるいは過剰(肥満 → の破裂)。
  • : 外傷、極端な温度、放射線、圧の変化。
  • 免疫反応: 自己免疫・アレルギー。
  • 加齢: テロメアの進行性の短縮。

形態

形態変化は酵素による消化の結果として生じる。(白血球の酵素)または(細胞自身のリソソーム酵素)による。

核の変化

  • → クロマチンの凝縮、萎縮した好塩基性の核。
  • → 核の。
  • → DNaseによるクロマチンの溶解、好塩基性の消失。

細胞質の変化

  • 好酸性の増強(変性タンパク質がに結合、好塩基性のが減少)。
  • ・均質な外観(ATP低下 → の減少)。
  • (の消化)。
  • (リン脂質の。石灰化するととなる)。
  • 膜の。

細胞傷害のメカニズム

主な標的:ミトコンドリア、細胞膜、タンパク質合成、細胞骨格、遺伝装置。

  1. (低酸素・虚血 → の低下):
    • Na⁺ポンプの機能不全 → Na⁺とH₂Oの流入 → 細胞の腫大。
    • の亢進 → グリコーゲン減少・乳酸増加 → pH低下 → クロマチンの凝集。
    • からのリボソーム脱離 → タンパク質合成の低下(→ 肝細胞の)。
  2. (ROS・Ca²⁺・低酸素・毒素による)→ の形成、膜電位の消失、チトクロムc(cytochrome c)の漏出 → アポトーシス。
  3. Ca²⁺流入 —「」: 細胞質内Ca²⁺の増加が、(膜傷害)、プロテアーゼ(細胞骨格)、(DNA)、ATPアーゼ(ATP低下)を活性化する。
  4. ROS・ → 、タンパク質の架橋、の。
  5. 毒素: 型(例:、多くの)または (で活性型に変換される、例:)。
flowchart TD
    A["虚血・低酸素などの傷害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP depletion'>ATP枯渇</span>"]
    B --> C["Na+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pump function'>ポンプ機能</span>不全<br>Na+・H2Oの流入→細胞腫大(可逆的)"]
    C --> D["傷害の持続"]
    D --> E["Ca2+の細胞内流入(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='point of no return'>復帰不能点</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='phospholipase'>ホスホリパーゼ</span>・プロテアーゼ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endonuclease'>エンドヌクレアーゼ</span>活性化"]
    E --> F["細胞膜の破綻→酵素の漏出"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute inflammation'>急性炎症</span>"]

💡 「壊死=制御されない事故死」という定義自体、現在は一枚岩ではない。 細胞死委員会(NCCD)の2018年勧告は、ここまで述べてきた・毒性などによる古典的(偶発的)な壊死とは別に、・・・MPT依存性ネクローシスなど「壊死の形態をとる、制御された細胞死」をに基づき独立の様式として定義している1。

  • :で活性化された(非カノニカル経路ではカスパーゼ4/5/11)がDのドメイン間を切断し、遊離したN末端断片が細胞膜に孔を作る。水の流入・とIL-1β/IL-18の放出を伴う、病原体感染に応じた炎症性の細胞死である2。
  • :受容体刺激下でカスパーゼ8による活性化が阻害されると、RIPK1中間ドメインのリン酸化の程度に応じてRIPK1依存性アポトーシス・RIPK1非依存性アポトーシス・(RIPK3との結合)のいずれに進むかが決まる3。RIPK3はさらに下流のMLKLをリン酸化・重合させ、膜に孔を作る実行段階へ進む。
  • :システイン/グルタミン酸の阻害などで(、GPX4による活性)が失われると、鉄依存性にが蓄積して起こる。形態学的・生化学的・遺伝学的にアポトーシス・壊死・オートファジーのいずれとも異なる細胞死として報告されている4。

⚠️ ただし「アポトーシス=炎症なし/壊死=炎症あり」という対比の骨格は変わらない。 これら3様式はいずれも膜が破れて内容物が漏れるため、壊死と同様に炎症を伴う。分類が増えたのは「壊死という括りの内部」であり、アポトーシスとの対比軸そのものではない。下表の壊死の種類(・など)は形態からみた古典的な壊死の分類であり、これらの制御された細胞死とは別の軸で並存する。

壊死の種類

種類 主な特徴 典型的な部位
タンパク質の変性。組織の輪郭は保たれ、硬くなる 心臓・腎臓・脾臓()
酵素による消化 → 液状・膿。輪郭は消失 、膿瘍
凝固+融解。チーズ様。() 結核(肺・腎)
リパーゼ → +Ca²⁺ → 白墨様の 膵炎、乳房外傷
血管壁の免疫複合体+フィブリン。 血管炎、、
壊疽 乾性(凝固性・虚血肢)と湿性(感染を合併し融解性となる) 下肢、腸管

💡 ポイント: はを保ち、臓器ので起こる。脳は例外で、となる。

まとめ

  • 壊死はで起こる、制御されない細胞・組織の死であり、膜の破綻による内容物の漏出がを引き起こす。
  • 原因は(・虚血)、、感染、、栄養不均衡、、免疫反応、加齢に大別される。
  • 核の変化は・・の3つの型をとり、細胞質は好酸性化・・膜を示す。
  • 細胞傷害の中心機序はとCa²⁺流入(「」)で、・ROS・毒素も関与する。
  • は虚血(脳を除く)、は脳・化膿、は結核、は膵炎、は血管炎が代表。

出典

  1. 1.Molecular mechanisms of cell death: recommendations of the Nomenclature Committee on Cell Death 2018(Cell Death and Differentiation・2018)細胞死命名委員会(NCCD)の2018年勧告は、酸素欠乏・毒性などで生じる古典的(偶発的)な壊死とは別に、MPT依存性ネクローシス・ネクロプトーシス・フェロトーシス・パイロトーシス・パルタナトスなど「壊死の形態をとる、制御された細胞死」を分子機構に基づき独立の様式として定義しており、壊死=すべて制御されない事故死という古典的定義はこの点で修正されている閲覧 2026-08-27
  2. 2.Cleavage of GSDMD by inflammatory caspases determines pyroptotic cell death(Nature・2015)パイロトーシスの膜孔を形成するのはカスパーゼ1自身ではなくガスデルミンDである。カスパーゼ1(非カノニカル経路ではカスパーゼ4/5/11)がガスデルミンDのN末端・C末端ドメイン間リンカーを切断し、遊離したN末端断片が細胞膜に孔を形成して細胞浮腫・溶解・炎症性サイトカイン放出を起こす閲覧 2026-08-27
  3. 3.Regulation of RIPK1 activation by TAK1-mediated phosphorylation dictates apoptosis and necroptosis(Nature Communications・2017)TAK1によるRIPK1中間ドメインのリン酸化の程度(無し・一過性・持続的複数部位)に応じて、RIPK1依存性アポトーシス・RIPK1非依存性アポトーシス・ネクロプトーシス(RIPK3との結合を介する)のいずれに進むかが決まる閲覧 2026-08-27
  4. 4.Ferroptosis: an iron-dependent form of nonapoptotic cell death(Cell・2012)フェロトーシスは細胞内鉄に依存する制御された細胞死で、形態学的・生化学的・遺伝学的にアポトーシス・壊死・オートファジーのいずれとも異なる。システイン/グルタミン酸アンチポーター(system xc-)の阻害を起点として抗酸化防御が失われ、鉄依存性に酸化的な細胞死へ進む閲覧 2026-08-27