Pediatrics

Pediatrics · 28

肺炎、年齢別の主要原因菌

Pneumonia. Age related most common pathogens

前提:病態
肺炎球菌非定型肺炎の起因体と診断

🧠 全体像:小児肺炎の診療は「年齢別の原因菌」と「定型/非定型/ウイルス性の臨床パターン」という2つの軸で組み立てる。年齢が低いほどGBS・大腸菌・Listeriaなど周産期由来の菌が、年齢が上がるほどMycoplasma・Chlamydia pneumoniaeなどが重要になり、この年齢軸が経験的抗菌薬選択の根拠になる。

定義・分類

肺胞および/または肺間質の急性または慢性の炎症。

分類軸 内容
病原体 ウイルス性/細菌性/真菌性/その他(原虫性)。治療上は定型細菌性/非定型細菌性/ウイルス性に分ける
臨床経過 急性(軽症・中等症・重症)、慢性
浸潤パターン 性/気管支肺性/間質性
定型/非定型
罹患場所 (基礎疾患のない児に典型的症状)、(HAP:入院48時間超で発症し、入院時に感染の潜伏を示す所見がない)

症状

分類 症状
全身症状 発熱、脱力、
呼吸器症状 咳嗽、頻呼吸、喘鳴、呼吸困難徴候、の増加、チアノーゼ
その他 嘔吐、下痢、腹痛、落ち着きのなさ、頻脈

定型細菌性・非定型細菌性・ウイルス性肺炎の比較

項目 定型細菌性 非定型細菌性 ウイルス性
年齢 全年齢 学童期以降に多いが全年齢で起こりうる 全年齢、とくに就学前児
季節 病原体・流行状況による 通年 病原体・流行状況による
発症 比較的急激 比較的緩徐 急激〜緩徐
発熱 高熱が多い 〜高熱 無熱〜高熱
咳嗽 湿性が多いが、乳幼児は喀痰を出せない 乾性が多い 乾性〜湿性
呼吸困難 起こりうる 比較的少ない 起こりうる
随伴症状 腹痛、敗血症 炎、 カタル症状、
多彩 びまん性・
X線 肺胞浸潤影 多彩 間質性浸潤影
胸水 他群より多い まれ〜時に伴う まれ

⚠️ これらは典型像を整理するための目安で、症状やX線像は大きく重なる。画像パターンだけで細菌/ウイルスや定型/非定型を断定せず、年齢、流行状況、重症度、検査を統合する。

年齢別の主要原因菌

年齢 主な原因菌
生後0〜20日 Streptococcus agalactiae(GBS)、大腸菌などの腸内グラム陰性桿菌、Listeria monocytogenes。黄色ブドウ球菌も鑑別
生後3週〜3か月 RSVなどの、S. pneumoniae、Chlamydia trachomatis。周産期背景によりGBS・Listeriaも考慮
生後4か月〜5歳 が最多。細菌ではS. pneumoniaeが中心で、重症・インフルエンザ後では黄色ブドウ球菌も考慮。Mycoplasma pneumoniaeも起こりうる
5歳超 、S. pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia pneumoniae

年齢別表は鑑別の出発点であり、就学前でも、学童でもウイルスや肺炎球菌を除外しない。新生児〜若年乳児の肺炎は敗血症・髄膜炎を同時に評価する。

診断

検査

血算、CRP、などは重症度や経過評価を補助するが、単独でウイルス性と細菌性を確定できない。「好中球5 G/L未満」は細菌性肺炎の一般的ではない。外来軽症例に血液検査を一律に行う必要はない。

画像検査

  • 胸部X線:形態像から病原体を確定できない。外来で診療可能な典型例にはルーチン撮影せず、低酸素・著明な呼吸困難、診断不確実、治療不応、・気胸などの合併症疑いで行う。
  • 超音波:胸の評価、横隔膜運動の評価。
  • CT/MRI:膿瘍、で問題がある場合。

病原体別の特異的検査

  • 血液培養:外来軽症例には不要。中等症〜重症で入院する細菌性CAP、敗血症、合併症例で抗菌薬前に1セットを基本として採取し、などの理由がなければ機械的に2〜3回反復しない。
  • 胸水:十分量がありドレナージする場合は細菌培養と分子検査へ提出する。は重症・免疫不全・診断困難例などに限る。
  • Mycoplasma pneumoniae:培養は特殊で遅く通常診療には不向きだが「培養不能」ではない。利用可能ならを用い、単回IgG陽性だけで急性感染と断定しない。
  • ウイルス:RSV、インフルエンザ、SARS-CoV-2などは流行状況と治療・感染対策への影響に応じて抗原/核酸検査を選ぶ。

浸潤パターン

パターン 特徴 主な原因
均一な陰影、 主に細菌
間質性 の増強、びまん性・斑状の浸潤 主にウイルス、
両側性の性浸潤が末梢に向かう 主に細菌

合併症

、膿瘍、中耳炎(肺内のガス貯留腔)。

治療

入院適応

、全身症状を伴う場合、敗血症状態、反復性肺炎、既往の抗菌薬治療の失敗。

危険因子:新生児・乳児期早期、重篤な基礎疾患、免疫抑制状態、劣悪な環境、治療コンプライアンス不良。

細菌性肺炎の治療

就学前児ではウイルス性が多く、細菌性を示唆しない軽症例には抗菌薬を投与しない。一方、細菌性CAPを疑う場合は年齢だけを理由に無治療としない。

診療場面 の考え方
生後3か月未満 重症化・周産期病原体のリスクが高く、原則として入院評価。敗血症/髄膜炎を含め施設の新生児・乳児プロトコルで静注治療
3か月超・外来、定型細菌性を疑う 肺炎球菌を標的とするアモキシシリンが第一選択。直近の抗菌薬、ワクチン歴、併存症、地域耐性で調整
学童・思春期、非定型肺炎を強く疑う マクロライドを検討。ただし肺炎球菌も重要であり、5歳超というだけでマクロライド単独にしない。定型/非定型の区別が困難ならβラクタムへの追加を検討
入院・合併症なし ワクチン歴と地域耐性に応じてアンピシリン/またはセフトリアキソン/が疑わしければマクロライド追加
重症・/・MRSA疑い 第3世代などにバンコマイシンまたはクリンダマイシンを追加し、培養・地域感受性に基づき化。呼吸・循環支持と胸水評価を並行

抗菌薬選択・用量・期間は地域の耐性、ワクチン歴、腎機能、アレルギー、重症度、に合わせ、48〜72時間で反応を再評価する。

予防:ワクチン接種。

まとめ

  • 小児肺炎は年齢が低いほど周産期由来菌(GBS、大腸菌、Listeria)、年齢が上がるほど(Mycoplasma、Chlamydia pneumoniae)が重要になる。
  • 定型細菌性(急性発症・高熱・・肺胞浸潤・胸水を伴いやすい)、非定型細菌性(緩徐発症・軽度発熱・)、ウイルス性(急性発症・間質性浸潤)という3パターンの臨床像の違いがの手がかりになる。
  • 胸部X線は病原体の確定はできないが、合併症(、気胸)の評価に有用である。
  • は年齢だけでなく、診療場所、重症度、ワクチン歴、定型/非定型所見、耐性状況で選ぶ。外来細菌性CAPはアモキシシリンが軸で、5歳超でもマクロライド単独を自動選択しない。