泌尿器科学

泌尿器科学 · N-06

前立腺癌の頻度・症状・診断

Incidence, symptoms and diagnosis of prostate cancer

前提:病態
前立腺癌
前提:正常
男性生殖:付属腺と陰茎
疾患
前立腺癌
症状
血精液症腰痛
スコア
Gleasonスコア

🧠 全体像:前立腺癌は欧州男性で最も頻度の高い悪性腫瘍で、限局期(T1〜T2)はほぼ無症状である。早期発見はに基づく検査を起点とし、年齢・家族歴・ densityなどのリスクと生検前mpMRIを統合する。DREは診察・病期評価には使うが、無症候者の一次スクリーニングでと同格ではない。確定診断は標的生検と系統的生検をに応じて組み合わせた組織診断による。1

疫学

  • 欧州男性における悪性疾患の中で最も頻度が高い。

病因

  • 遺伝的要因:人種差、家族内集積。
  • 加齢、。

組織学的異型度

腫瘍の腺構築をGleasonパターンで評価し、は2つのパターン番号の合計で表す。生検標本では最も多い主パターンと最もの副パターンを、標本では最も多い主パターンと2番目に多い副パターンを合計する。2

現行の評価要素 意味
Gleasonパターン 腺構築をパターン3〜5で評価する
主パターン+副パターンで表す
ISUP Grade Group スコアと主パターンを統合して1〜5に分類する
  • 例:Gleason 4+3=合計スコア7()。
  • 理論上の最小スコアは2だが、現在の診断では実際には用いられない(パターン1・2は現在ほぼ診断されない)。
  • 最大スコアは10。
  • は予後と高く相関する。

⚠️ 現行のでは、に加えて「ISUP(国際泌尿器病理学会)Grade Group(グレードグループ)1〜5」を併記するのが標準である(2014年ISUPコンセンサス、 2016年分類以降)。同じ合計スコア7でも、主パターンが3か4かで予後が異なる(3+4=Grade Group 2、4+3=Grade Group 3)ことを明確にするために導入された。2

Grade Group
Grade Group 1 ≤6(3+3以下)
Grade Group 2 3+4=7
Grade Group 3 4+3=7
Grade Group 4 8(4+4、3+5、5+3)
Grade Group 5 9〜10

病期分類(TNM、臨床病期)

DRE・・に画像検査を組み合わせてを判定する。には分類を用いる。

flowchart TD
    A["T1:臨床的に指摘できない腫瘍"] --> B["T2:前立腺内に限局する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpable'>触知可能</span>な腫瘍"]
    B --> C["T3:前立腺被膜を超えて進展"]
    C --> D["T4:膀胱・括約筋・直腸など隣接臓器へ浸潤"]
  • N0:なし、N1:あり。
  • M0:遠隔転移なし。M1は非所属リンパ節(M1a)、骨(M1b)、その他の臓器(M1c)への転移に分ける。1

症状

病期 症状
限局期(T1〜T2) 通常は無症状! を基盤とするリスク適応型で発見される
局所進展期(T3〜T4) 、血尿、、頻尿、部分的または完全な尿閉、、
転移例 、痛、下肢痛が初発症状となることがある
  • T4かつ例では尿管閉塞→水腎症・腎不全に至ることがある。
  • M1(遠隔転移)例では、肺・肝・脳転移による症状を呈することがある。

💡 限局期がほぼ無症状であることが、を用いるが重視される理由である。ただしは前立腺特異的であって「腫瘍特異的」ではなく、前立腺炎やでも上昇しうる。検査は死亡リスク低下の可能性と偽陽性・過剰診断などの害を説明し、個人のリスクと希望に基づいて決める。3

診断

DRE(直腸診)

  • の前立腺を触知することがある。
  • 前立腺癌はに好発し、直腸から触知しやすい。
  • DREは診察・評価の一部だが、無症候者の一次としてへ追加する利益は限定的である。4

腫瘍マーカー:PSA

評価要素 診断での位置づけ
年齢や既往を踏まえて再検し、単一の固定閾値だけで生検を決めない
density 前立腺体積で補正し、所見と組み合わせて有意癌リスクを見積もる
DRE・家族歴・ と合わせて・精査方針に反映する
mpMRI 生検前に行い、と生検適応を評価する
  • は前立腺から分泌される(前立腺特異的)マーカーであり、腫瘍特異的ではないため前立腺炎・BPHでも上昇する。
  • Total/free 比、 velocity(変化速度)、 density(体積補正)、年齢、家族歴、機などを組み合わせて評価する。3

画像・生検

  • では原則として生検前mpMRIを行い、所見と臨床リスクを統合する。陰性かつ有意癌リスクが低い場合は生検を省略して監視とする選択肢がある。1 この生検前の位置づけ(不要な生検を避けるための、生検時の標的生検と領域生検の併用)は2026年版でも維持されている。5
  • 生検が必要:
    • 陽性病変には標的生検を行い、初回生検かか、病変所見、見逃しリスクに応じて系統的または病変周囲生検を組み合わせる。6
    • は経会陰または経直腸を選べるが、経会陰経路は感染合併症を減らせるため優先される傾向にある。血尿・・尿閉・感染などの合併症を説明する。1
    • 生検未経験者でも標的診断経路は有意癌の検出を改善し、陰性例の一部で生検を回避できる。7

遠隔転移のスクリーニング

  • 胸部X線・:肺転移の評価。
  • :の評価。
    • 前立腺癌では体幹骨(脊椎・骨盤など)に多発性病変を来しやすい。
    • では四肢骨に孤立性病変を来しやすい(対比して覚える)。

まとめ

  • 前立腺癌は欧州男性で最も頻度の高い悪性腫瘍で、限局期はほぼ無症状のため、に基づくを起点としたリスク適応型が重要。
  • は主パターン+副パターンの合計で表し、現行診療では同じ合計スコアでも予後を区別できるISUP Grade Group(1〜5)を併記する。
  • 症状は局所進展期以降に顕在化し、が体幹骨優位という点での(四肢骨・孤立性)と対比できる。
  • 診断は生検前mpMRIを組み込み、標的生検と系統的・病変周囲生検をに応じて組み合わせて確定する。

出典

  1. 1.EAU-EANM-ESTRO-ESUR-ISUP-SIOG Guidelines on Prostate Cancer-2024 Update. Part I: Screening, Diagnosis, and Local Treatment with Curative Intent(2024)PSAを基盤とする個別化早期診断、生検前MRI、画像所見と臨床リスクに応じた生検、現行病期・悪性度評価を確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.The 2014 International Society of Urological Pathology (ISUP) Consensus Conference on Gleason Grading of Prostatic Carcinoma: Definition of Grading Patterns and Proposal for a New Grading System(2016)現行Gleasonパターンの定義と、Gleason 3+4と4+3を区別するGrade Group 1〜5の導入根拠を確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Early Detection of Prostate Cancer: AUA/SUO Guideline Part I: Prostate Cancer Screening(2023)PSAを第一のスクリーニング検査とし、利益と過剰診断などの害を踏まえ共有意思決定で個別化する原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Comparing the Performance of Digital Rectal Examination and Prostate-specific Antigen as a Screening Test for Prostate Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis(2024)無症候者の早期発見でDREをPSAへ追加する利益が限定的で、DRE単独をスクリーニング検査としない根拠を確認した。閲覧 2026-08-13
  5. 5.EAU-EANM-ESTRO-ESUR-ISUP-SIOG Guidelines on Prostate Cancer-2026 Update. Part I: Screening, Diagnosis, and Local Treatment with Curative Intent(European Urology・2026)2026年版の要約(抄録、PubMed 42457454、Eur Urol 90(3):254-269)で確認した。不要な生検を避けるためにマルチパラメトリックMRIの使用を推奨し、生検を行う場合は標的生検と領域生検を組み合わせること、発見は一般に50歳から個別の余命に基づくリスク適応型で行うことを確認した閲覧 2026-09-24
  6. 6.Early Detection of Prostate Cancer: AUA/SUO Guideline Part II: Considerations for a Prostate Biopsy(2023)MRI、バイオマーカー、標的・系統的生検を組み合わせ、臨床的に意義のある癌を検出し不要な生検を減らす診断原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  7. 7.MRI-Targeted or Standard Biopsy for Prostate-Cancer Diagnosis(2018)生検未経験でPSA上昇のある男性において、生検前MRIを用いる経路が臨床的に意義のある癌の検出を改善し、不要な生検を減らしたことを確認した。閲覧 2026-08-13