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Drug Atlas · B23 Antiulcer drugs / 抗潰瘍薬 · 必修

次サリチル酸ビスマス

bismuth subsalicylate

分類
Antiulcer drugs / 抗潰瘍薬
科目
Pharmacology
トピック
B23: Drugs influencing gastric acid secretion, protective drugs of gastric mucosa
標的微生物
Helicobacter pylori
対象疾患
胃炎機能性ディスペプシア消化性潰瘍旅行者下痢症

🧠 全体像:は、B23のの中で唯一直接的なを持つ薬である。イオンがに沈着して物理的に保護する一方、H. pyloriの細胞壁・ウレアーゼ・を直接障害するため、の「」に・2種の抗菌薬と並ぶ第4の柱として組み込まれる。

薬効群の中での位置づけ

機序
酸性下で重合しゲル化、物理的コーティング なし
PGE1誘導体、を薬理学的に補充 なし
保護層形成+直接的な あり(H. pylori)

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bismuth subsalicylate'>次サリチル酸ビスマス</span>を経口摂取"] --> B["胃酸で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bismuth'>ビスマス</span>塩と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salicylic acid'>サリチル酸</span>に加水分解"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bismuth'>ビスマス</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcer base'>潰瘍底</span>のタンパクと結合し保護層を形成"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bismuth'>ビスマス</span>が*H. pylori*の細胞壁を直接障害"]
    D --> E["ウレアーゼ活性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adhesin (adherence factor)'>付着因子</span>も阻害される"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salicylic acid'>サリチル酸</span>が吸収され<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prostaglandin synthesis'>プロスタグランジン合成</span>を抑制"]
    F --> G["抗炎症・抗分泌作用(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traveler&#39;s diarrhea'>旅行者下痢症</span>への効果の一部)"]

💡 のは単剤で除菌に足るほど強くないが、他の抗菌薬と組み合わせると効果がある。一次治療でを追加すると除菌成功のが1.63倍(95%CI 1.33〜2.00、ITT解析)になり、有害事象の頻度・に有意差はなかったと報告されている1。

⭐ (BQT)の構成は、・・テトラサイクリン・メトロニダゾールである2。ただしテトラサイクリンは常に入手しやすいわけでもが良いわけでもなく、使えない場合の代替として、二次除菌ではアモキシシリンへ置き換えた+アモキシシリン+メトロニダゾール+が考慮されうる1。

⚠️ 「最適化」を冠したは、未治療例の呼び名ではない。 2024年指針は、未治療で抗菌薬感受性が不明な例には14日間の(無印)を推奨レジメンとし、「最適化」を優先するのは既治療で感染が持続している例(まだ最適化を受けておらず感受性も不明な場合)としている3(胃炎・消化性潰瘍ノート参照)。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 自体はほとんど吸収されない(全身毒性が出にくい理由)
一部が吸収される。高用量・腎障害ではのリスク
排泄 未吸収分は便中へ。便・舌が黒くなるが無害

適応

領域 使いどころ
消化器 、
消化器 H. pylori除菌:(などのPPIまたはなどの++テトラサイクリン+メトロニダゾール)2

⚠️ 日本ではをに使えない——は国外のレジメンとして理解する。 日本ヘリコバクター学会のガイドラインは、本邦の率が30%以上でどの地域でも15%以上であり、Maastricht VI/Florence合意に従えばを含むが適切な推奨レジメンになるとしながら、本邦ではを使用することができないため、をメトロニダゾールに変更した非含有の4剤併用療法が推奨レジメンと考えられると述べる。除菌レジメンで用いるクエン酸は国内未承認薬で、日本人における安全性は確立していない。日本で保険診療上認められている一次除菌はまたは+アモキシシリン+の7日間であり、同ガイドラインのCQ2-5は、をしない一次除菌として+アモキシシリン+、または+アモキシシリン+メトロニダゾールのいずれかを推奨している(推奨の強さ「強い」、エビデンスの確実性A)4。

用法・用量

PO。目安:525mgを1日4回、の一部として10〜14日間。施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:ウイルス感染症(水痘・インフルエンザなど)に罹患中の小児・思春期患者(のリスク、成分のため)、アスピリンアレルギー
  • 高用量・腎障害では(、アシドーシス)に注意
  • ・の前は偽陰性を避けるためを守る

副作用

頻度 内容
高頻度 便・舌の黒色化(無害、患者への説明が重要)
注意 便秘または軟便
重篤・まれ 高用量での、小児の

まとめ

  • 上表の(・)の中で唯一、直接的な抗H. pylori作用を持つ。
  • が保護層形成+、成分が抗炎症・抗分泌作用を担う。
  • の広がりを背景に、(++テトラサイクリン+メトロニダゾール)がH. pylori除菌の主要な選択肢になっている。Maastricht VI/Florence合意は、個別のが利用できない場合、率が高い(15%超)か不明の地域の一次治療をこのレジメンとする(治療WG Statement 2、合意率92%、Grade B1)2。 2024が14日間のこのレジメンを推奨レジメンとするのは未治療で感受性不明の例で、「最適化」を冠したは既治療の例向けである3。
  • ただし日本ではをに使えず、保険診療の一次除菌はを含むである4。
  • 便・舌の黒色化は無害だが説明を要する。ウイルス感染中の小児にはリスクのため禁忌。

出典

  1. 1.Treatment of Helicobacter pylori Infection in Korea: An Evidence-Based Analysis of the Upcoming 2025 Guideline(The Korean Journal of Helicobacter and Upper Gastrointestinal Research・2026)全文を確認した。ビスマス四剤療法(BQT)の構成をPPI・ビスマス・テトラサイクリン・メトロニダゾールと明記していること(`BQT uses PPI, bismuth, tetracycline, and metronidazole.`)。テトラサイクリンは常に入手しやすいわけでも忍容性が良いわけでもないため、テトラサイクリンが使えないか忍容できない場合には、二次除菌の代替としてPPI+アモキシシリン+メトロニダゾール+ビスマスを考慮しうるとすること。ビスマスの追加は一次治療の除菌成功のオッズを1.63倍(95%CI 1.33-2.00、ITT解析)に高め、有害事象の頻度と服薬遵守に有意差はなかったこと閲覧 2026-09-08
  2. 2.Management of Helicobacter pylori infection: the Maastricht VI/Florence consensus report(Gut(European Helicobacter and Microbiota Study Group ほか、29か国41名の専門家)・2022)リポジトリ版(repositorio.uam.es)から全文PDFを取得して確認した。取得できたのは Gut 2022;0:1-39 と表記されるonline-first 版で、誌上版 71(9):1724-1762 とはページ番号が異なる。H. pylori 感染はICD-11で感染症として正式に位置づけられ、原則として感染者全員が治療対象になる。診断ワーキンググループのStatement 9は「Clarithromycin susceptibility testing, if available through molecular techniques or culture, is recommended before prescribing any clarithromycin containing therapy.」(合意率91%、Grade A1)で、分子生物学的手法または培養による感受性検査が利用できる場合という条件つきの推奨である。治療ワーキンググループのStatement 2(合意率92%、Grade B1)は、個別の感受性検査が利用できない場合、クラリスロマイシン耐性率が高い(15%超)か不明の地域の一次治療をビスマス四剤療法とし、それも利用できなければビスマス非含有の併用(concomitant)四剤療法を考慮しうるとする。図1の凡例はビスマス四剤療法をPPI・ビスマス・テトラサイクリン・メトロニダゾール、クラリスロマイシン三剤療法をPPI・クラリスロマイシン・アモキシシリンと定義し、後者は局所で有効性が示されているかクラリスロマイシン感受性が判明している場合にのみ用いるとする。治療Statement 1(Grade D2)は一次治療前でも感受性検査をルーチンに行うことを reasonable とするが、原文自身が「そのような感受性検査に基づく戦略を日常診療で一般的に用いることの妥当性はまだ確立されていない」と続けている。なおMethodsの定義により、Gradeの英字はエビデンスの質(A高〜D非常に低)、数字は推奨の強さ(1強い/2弱い)を表す閲覧 2026-09-08
  3. 3.ACG Clinical Guideline: Treatment of Helicobacter pylori Infection(American College of Gastroenterology・2024)抄録のみ閲覧(誌上版本文は取得できず)。未治療で感受性が不明な例では14日間のビスマス四剤療法が推奨レジメンであること。「最適化」ビスマス四剤療法が優先されるのは既治療で感染が持続している例であること。クラリスロマイシンまたはレボフロキサシンを含むサルベージレジメンは感受性が確認された場合にのみ用いるとされること。ビスマス四剤療法の構成薬は抄録に無い閲覧 2026-08-03
  4. 4.H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024 第2章「治療」(日本ヘリコバクター学会・2024)第2章「治療」のPDF全文を確認した。総論は、本邦のクラリスロマイシン耐性率が30%以上でどの地域でも15%以上でありMaastricht VI/Florenceに従えばビスマス製剤を含む4剤療法が適切な推奨レジメンとなるが、本邦ではビスマス製剤を使用することができないため、ニトロイミダゾールをメトロニダゾールに変更した4剤併用療法が推奨レジメンと考えられると述べる。CQ2-7の解説は、クエン酸ビスマスとフラゾリドンが国内未承認薬であり日本人における安全性は確立していないと明記する。CQ2-5は、本邦で一次除菌に感受性検査をしないときはボノプラザン+アモキシシリン+クラリスロマイシン、またはPPI+アモキシシリン+メトロニダゾールのいずれかを推奨する(推奨の強さ「強い」、エビデンスの確実性A)閲覧 2026-09-08