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Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ダトポタマブ デルクステカン

datopotamab deruxtecan

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
ダトロウェイ
科目
Pulmonology and Thoracic SurgeryPharmacology
トピック
32: Chemo-, immune- and targeted therapy of lung cancerB36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)
承認適応
乳癌肺癌
副作用
口内炎悪心便秘嘔吐発疹呼吸困難咳
監視検査値
好中球数

🧠 全体像:は、TROP2というを宛先として、を運ぶADC()である1。と同じ「」(+)を積み、宛先だけが抗HER2抗体から抗TROP2抗体に替わった薬と捉えると覚えやすい。⚠️ 適応は国で大きく違う。 米国は乳癌2種と陽性肺癌、日本は乳癌2種のみで肺癌は適応外2。

薬効群の中での位置づけ

肺癌の既治療例で使う3つのADCは、宛先も、患者を選ぶ検査も違う。

薬 宛先 患者を選ぶ目印
HER2 HER2変異、またはHER2 IHC 3+
TROP2 (TROP2の検査は求められない)
c-Met MMAE c-Met蛋白高発現()

⭐ 肺癌では「宛先分子の検査」ではなく「があり、との後」というで選ぶ。 ここが他のADCと違う。抗体1分子あたりのは平均約4分子である。

機序

flowchart TD
    A["抗TROP2抗体部分が腫瘍細胞表面のTROP2に結合"] --> B["複合体が細胞内へ取り込まれる(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internalization'>内在化</span>)"]
    B --> C["リソソームの酵素が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='linker'>リンカー</span>を切断"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topoisomerase I inhibitor'>トポイソメラーゼI阻害薬</span>が遊離"]
    D --> E["DNA損傷を起こし<br>アポトーシスによる細胞死"]

放出されたは細胞膜を通過しやすい1。標的を持たない周囲の腫瘍細胞にも作用しうるという考え方は、のと共通する。

適応——米国と日本で範囲が違う

適応 米国(2026年5月改訂)1 日本(2026年9月改訂、第4版)2
陽性の(EGFRとの後) あり() なし
・HER2陰性の乳癌(と化学療法の後) あり あり(化学療法歴のある・再発乳癌)
・転移性の あり(PD-1/PD-L1阻害薬の適応にならない例) あり(効能は「陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」。試験の対象はPD-L1陰性、またはPD-1/PD-L1阻害薬の適応にならない例)

⚠️ 肺癌の適応はとに基づくであり、臨床的有用性は確認試験の結果に委ねられている。 日本の学習者は、肺癌診療ガイドラインや海外のレジメンにこの薬が出てきても、国内では肺癌への承認がないことを区別して読む。

用法・用量

  • 6 mg/kg(最大540 mg)を3週毎にする。初回は90分かけ、が良ければ2回目以降は30分に短縮できる。
  • 減量は4 mg/kg → 3 mg/kgの2段階で、再増量はしない。3 mg/kgに耐えられなければ中止する。
  • :抗ヒスタミン薬と(必要なら、ステロイド)でと悪心を減らす。
  • 対策:投与開始時から(0.1 mg/mL)を1日4回用い、中は氷片または氷水を口に含む。
  • 眼のケア:のを1日4回以上用い、コンタクトレンズは避ける。眼科診察(視力、、、眼底)を開始時と終了時に行い、投与中は3サイクルごとに視力とを行う1。

有害事象

米国添付文書にはなく禁忌も「なし」だが、日本の電子添文はとしてを掲げ、投与前に胸部CTとで既往のないことを確認するよう求める。三本柱は・眼障害・である。

事象 頻度(米国添付文書の集計) 要点
・ 484例で7%(致死8例、1.7%)、乳癌841例で3.0%(致死2例、0.2%) 肺癌では発現が早い(中央値1.4か月)。乳癌では5.3か月。ステロイドが必要になる割合は肺癌で79%。確定したGrade 2以上は恒久中止
眼障害 38%(18%、角膜炎16%、6%、結膜炎5%) 発現の中央値2.3か月。Grade 3が3.1%。眼科診察とが前提
63%(Grade 3が8%) 発現が早い(中央値0.5か月)。とアイスで予防する
悪心・疲労・脱毛・便秘 悪心51%、疲労42%、脱毛38%、便秘30% ほかに嘔吐23%、食欲低下22%、発疹20%(1,365例の集計)
  • への対応:咳、呼吸困難、発熱を確認する。Grade 1なら副腎皮質ステロイドを検討(換算0.5 mg/kg/日以上)、症状のあるGrade 2以上はただちに1 mg/kg/日以上を開始して少なくとも14日続け、4週以上かけてする。はする1。腎機能が軽度〜中等度に低下した例(30〜90 mL/分未満)でのが高かった。
  • 日本の電子添文の頻度(主に乳癌)は、3.1%、角膜障害15.5%、Infusion reaction 6.0%で、骨髄抑制として貧血13.1%、好中球数減少11.5%がある2。
  • 陽性肺癌の安全性解析(125例):重篤な有害事象26%、致死的な有害事象1.6%、有害事象による恒久中止8%、43%、減量26%。は71%(Grade 3が9%)だった。
  • :はを持つ。妊娠可能な女性は最終投与後7か月、男性は4か月、避妊を続ける。授乳は避ける。

肝・腎機能障害と相互作用

  • 肝機能:軽度は調整不要。中等度(がの1.5〜3倍)では有害事象を注意して観察し、重度では推奨用量が確立していない。中等度ではのAUCが約2.5倍だった。
  • 強いCYP3A阻害薬()やでも、のに臨床的に意味のある変化は予測されていない。ただしではなくモデルによる予測である。
  • 半減期は抗体複合体が約4.8日、が約5.5日。蛋白結合率は約98%で、約17%にが生じたが、効果や安全性への明らかな影響は認められなかった1。

根拠となる試験

適応 試験 結果
陽性NSCLC(既治療) TROPION-Lung05(単群第2相)とTROPION-Lung01(第3相)のサブグループを統合した114例 45%(95%CI 35〜54)、4.4%、中央値6.5か月。が12か月以上続いた割合は18%
・HER2陰性乳癌(既治療) TROPION-Breast01(732例、選択化学療法と比較) 6.9か月 対 4.9か月(HR 0.63)。は18.6か月 対 18.3か月(HR 1.01)で差なし
(未治療) TROPION-Breast02(644例、選択化学療法と比較) 10.8か月 対 5.6か月(HR 0.57)、23.7か月 対 18.7か月(HR 0.79)。64% 対 30%
  • 肺癌の根拠は比較対照のない単群の解析を含む統合サブグループで、前治療が多い集団(3ライン以上が57%、既往が84%)のである。⚠️ TROPION-Lung05ではの(45%)が担当の判定(34%)より高く、判定法で値が動く1。探索的な(117例)でも43%、5.8か月、中央値15.6か月だった3。
  • 乳癌はで化学療法に勝ったが、生存期間では差がない。 最終解析では後治療のADC使用の偏り(化学療法群24.0%、本剤群12.3%)が指摘されている4。のTROPION-Breast02は、に加えてでも化学療法を上回った。

まとめ

  • TROP2を宛先とし、を運ぶADC。と同じ「」を使い、3週毎・6 mg/kgで投与する。
  • 日本の適応は乳癌のみ(・HER2陰性の既治療、陰性・HER2陰性)。陽性肺癌への使用は米国のである。
  • 重大な副作用は・眼障害・。は早期に出るのでとアイスで予防し、は眼科診察とで管理する。
  • 乳癌ではは延びたがは延びていない。効果の読み方は適応ごとに変える。

出典

  1. 1.DATROWAY (datopotamab deruxtecan-dlnk) for injection, for intravenous use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Daiichi Sankyo, Inc.)・2026)Drugs@FDAの米国添付文書(改訂表示「Revised: 5/2026」)を全文読んで確認した。適応は、①前にEGFR標的治療と白金製剤化学療法を受けた局所進行・転移性のEGFR変異陽性非小細胞肺癌(奏効率と奏効期間に基づく迅速承認)、②PD-1/PD-L1阻害薬の適応にならない切除不能・転移性トリプルネガティブ乳癌、③内分泌療法と化学療法を受けたHR陽性・HER2陰性(IHC 0、1+、2+/ISH陰性)の切除不能・転移性乳癌。肺癌の患者選択はEGFR変異で行いTROP2検査の記載はない。用法は6 mg/kg(体重90 kg以上は最大540 mg)を3週毎に点滴し、減量は4 mg/kg、3 mg/kgの2段階。禁忌は「None」で枠組み警告の記載はない。警告はILD/肺臓炎(NSCLC 484例で7%、致死1.7%)、眼障害(プール安全性集団で38%)、口内炎(63%、Grade 3が8%)、胎児毒性(避妊は女性で最終投与後7か月、男性で4か月)。有効性解析114例(TROPION-Lung05とTROPION-Lung01のEGFR変異サブグループ)で奏効率45%(95%CI 35〜54)、奏効期間中央値6.5か月。閲覧 2026-11-02
  2. 2.ダトロウェイ点滴静注用100mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/第一三共株式会社・2026)改訂「2026年9月改訂(第4版、効能変更、用量変更)」の電子添文を開いて確認した。効能又は効果は「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」と「ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」の2つで、肺癌は含まれない。警告に間質性肺疾患(死亡例あり)、禁忌は成分への過敏症の既往。用法は1回6 mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注し、初回の忍容性が良好なら2回目以降は30分まで短縮でき、1回量は540 mgを超えない。重大な副作用は間質性肺疾患3.1%、角膜障害15.5%、Infusion reaction 6.0%、骨髄抑制。避妊は女性で最終投与後7か月、男性で4か月。閲覧 2026-11-02
  3. 3.A Pooled Analysis of Datopotamab Deruxtecan in Patients With EGFR-Mutated NSCLC(Journal of Thoracic Oncology・2025)抄録で確認した。TROPION-Lung05(第2相)とTROPION-Lung01(第3相)のEGFR変異陽性例のうちダトポタマブ デルクステカン6 mg/kg群117例を統合した探索的解析。前治療ラインの中央値は3、確定奏効率43%(95%CI 34〜52)、奏効期間中央値7.0か月、無増悪生存期間中央値5.8か月、全生存期間中央値15.6か月。Grade 3以上の治療関連有害事象は23%。閲覧 2026-11-02
  4. 4.Datopotamab deruxtecan versus chemotherapy in previously treated inoperable/metastatic hormone receptor-positive, HER2-negative breast cancer: final overall survival analysis of the phase III TROPION-Breast01 study(Annals of Oncology・2026)抄録で確認した。TROPION-Breast01の最終全生存期間解析で、ダトポタマブ デルクステカン群と医師選択化学療法群の全生存期間は統計学的有意差に至らず(ハザード比1.01、95%CI 0.83〜1.22)。後治療としてのADC使用は化学療法群24.0%、本剤群12.3%と偏っていた。無増悪生存期間などの副次評価項目は引き続き本剤に有利だった。閲覧 2026-11-02