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Drug Atlas · A15 Other / その他

インドシアニングリーン

indocyanine green

分類
Diagnostic dyes (near-infrared fluorescence imaging agents) / 診断用色素(近赤外蛍光造影剤)
商品名(日本)
ジアグノグリーンオフサグリーン
商品名(EU)
Spy Agent Green
科目
OphthalmologySurgery
トピック
ML-02: Anatomy of the eyeball II: posterior segment, slit lamp, OCT and angiographyG/09: Role of laparoscopy in abdominal surgery
副作用
悪心嘔吐皮疹

🧠 全体像:(ICG)はと結合して血管内にとどまり、で光り、肝だけが取り込んで胆汁へ捨てる色素である。この3つの性質から、一見ばらばらな用途——肝機能検査・循環・の造影・術中の血流/胆管/の蛍光観察——がすべて説明できる。とは別物(X線ではなく近赤外蛍光で見る)だが、微量のを含むためヨード過敏症の扱いが国で違う点が試験でも臨床でも落とし穴になる。

薬効群の中での位置づけ

造影・色素 見る光 得意な対象 要点
ICG 近赤外(約805 nm吸収、約830〜835 nm蛍光) 、深部の血流、、胆管 はや組織を透過して深部に届く12
(青) と はに隠れて見えにくい
X線 血管・臓器 ICGはX線造影剤ではない。ICGが含むのは5%以下の3

機序

flowchart TD
    A["ICGを静注"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma proteins'>血漿蛋白</span>(約80〜98%)と結合し<br>血管内にとどまる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='near-infrared light'>近赤外光</span>を吸収して蛍光を発する<br>(励起約805 nm、蛍光約830〜835 nm)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='near-infrared light'>近赤外光</span>は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal pigment epithelium'>網膜色素上皮</span>や組織を透過<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>・深部血管・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymph flow'>リンパ流</span>・胆管が見える"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic parenchyma'>肝実質</span>細胞だけが取り込み<br>変化せず胆汁へ排泄(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Enterohepatic circulation'>腸肝循環</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal excretion (renal elimination)'>腎排泄</span>なし)"]
    E --> F["血中からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elimination rate'>消失速度</span>=肝血流と肝細胞機能の指標"]

結合率は文献により約80〜98%と幅がある234。いずれの報告でも、大部分が蛋白と結合して血管内にとどまることが性質の中心である。

薬物動態

項目 内容
消失 静注後の血中濃度は約15分までに低下し、は3〜4分2
肝への取り込み 健常者で肝は70%超。約97%が未変化のまま胆汁へ排泄される。代謝ももない4。は投与後2時間で0.2%以下1
肝疾患での変化 肝硬変ではが20〜30%に低下する。(PDR)の正常は18〜24%/分超、15分停滞率(R15)の正常は10%未満で、肝疾患では停滞率が高くなる42

💡 消失が遅い=肝機能が悪い、とは限らない。 ICGの消失は肝血流にも依存する。低灌流(心拍出量の低下など)では消失が遅れ、ではビリルビンが同じ輸送体を取り合って値が歪む。短時間に再投与するとがずれる4。

適応

領域 日本(ジアグノグリーン)2 日本(オフサグリーン)1 3
肝・循環の検査 肝機能検査(・・肝血流量)、循環(心拍出量など) — —
の造影 対象外(血管の造影には、用法・用量が承認された他の製剤を用いるよう求める) 血管の造影 眼科適応なし
術中の蛍光観察 血管・組織の血流評価、の描出、の評価 — 血管・血流・、
乳癌、悪性黒色腫、、 — ・、乳癌()

⚠️ 眼底の造影には眼科用の製剤を使う。 日本では眼科用が別の販売名(オフサグリーン)で、手術・検査用のジアグノグリーンの電子添文は眼底造影に他の承認製剤を用いるよう求めている。

眼科で何が見えるか

ICGAはの循環そのものを見る検査で、では捉えにくい病変に使う。

用法・用量

用途 日本の用量
肝機能(・) 体重1 kgあたり0.5 mg相当を5 mg/mL程度に希釈し、30秒以内に静注2
血管・組織の血流評価 0.04〜0.3 mg/kgを静注(脳血管造影は0.1〜0.3 mg/kg)2
眼底造影 25 mgを添付の注射用水2 mLに溶解し、肘静脈から速やかに注射1
米国の血流評価 1.25〜5 mgを静注。総量は2 mg/kg以下3

の同定は、乳癌で皮下、悪性黒色腫で皮内、・で子宮頸部へので、液量は癌種ごとに異なる。電子添文で確認する2。

⚠️ 必ず添付の注射用水で完全に溶かす。 では溶解せず、不溶のまま注入すると悪心・発熱・ショック様症状を起こしうる。溶解後は直ちに使う21。

禁忌・注意

国 禁忌
日本(ジアグノグリーン・オフサグリーンとも) 成分に対する過敏症の既往、ヨード過敏症の既往(ヨウ素を含有するため)21
米国 ICGへの過敏症の既往のみ。(5%以下)を含むが、ヨード過敏そのものは禁忌に挙がっていない3

アレルギーやは、日米の電子添文の禁忌欄には挙がっていない。

  • ⚠️ アナフィラキシー:重篤な反応はヨード過敏反応によるとは限らず、確実な予知法もない。のうえ血管を確保し救急処置を準備する。口の・・・充血・はで、出たら直ちに中止する。注入から検査終了まで安静を保つ12。米国ではアナフィラキシーによる死亡例が報告されている3。
  • 甲状腺の検査への影響:ヨウ素を含むため、検査は少なくとも1週間あける23。
  • 肝機能検査の誤差要因:、高度の・溶血、浮腫、痩せ・肥満、多量のではで測定する。胆嚢造影剤、利胆薬、リファンピシン、は肝への取り込みを阻害しうる2。
  • 妊婦:診断上の有益性が危険性を上回る場合に限る2。

副作用

頻度 内容
少ない 悪心・嘔吐・蕁麻疹・発熱・皮疹などの過敏症状、静注時の血管痛2。眼科用の国内試験(25 mg投与57例)ではの1例(1.8%)のみ1
重篤・まれ ショック、アナフィラキシー(頻度不明)2。有害事象全体では約4万例に1例とする報告がある4

まとめ

  • ICGは蛋白結合・近赤外蛍光・肝だけの取り込みと胆汁排泄という3性質を持つ色素で、肝機能検査、循環、造影、術中の蛍光観察に使う。
  • 肝機能の指標は(正常18〜24%/分超)と15分停滞率(正常10%未満)。肝硬変のは15分停滞率15%未満が一つの目安。
  • の造影はでは見えにくい循環を見る検査で、などで決め手になる。日本では眼科用(オフサグリーン)を使い、手術・検査用のジアグノグリーンは造影の対象外。
  • 禁忌は日本がヨード過敏症を含み、米国はICG過敏症のみ。いずれもアレルギーは禁忌欄にない。
  • 溶解は注射用水のみ。アナフィラキシーに備え、甲状腺ヨード検査は1週間あける。

出典

  1. 1.オフサグリーン静注用25mg 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(参天製薬、2021年8月・第1版)・2021)眼科用の電子添文(2021年8月・第1版)で確認した。効能は網脈絡膜血管の造影のみで、成人にインドシアニングリーン25 mgを添付の注射用水2 mLに溶解して肘静脈から速やかに注射すること、禁忌が成分への過敏症の既往とヨード過敏症の既往であること、重篤な反応はヨウ素過敏反応によるとは限らず確実な予知法もないため血管確保と救急処置の準備が必要なこと、近赤外光が網膜色素上皮を透過して脈絡膜に達すること、国内第II/III相試験で25 mg投与57例の副作用が嘔気の1例(1.8%)であったこと、尿中排泄は投与後2時間で0.2%以下であることを確認した。閲覧 2026-10-29
  2. 2.ジアグノグリーン注射用25mg 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(2026年2月改訂・第3版)・2026)日本の電子添文(2026年2月改訂・第3版)で確認した。効能は肝機能検査(血漿消失率・血中停滞率・肝血流量)、循環機能検査、血管および組織の血流評価、センチネルリンパ節の同定(乳癌・悪性黒色腫・子宮頸癌・子宮体癌)、肝外胆管の描出、リンパ管静脈吻合術に係るリンパ流の評価で、網脈絡膜血管の造影には承認された他の製剤を用いること、禁忌が本剤の成分への過敏症の既往とヨード過敏症の既往(ヨウ素を含有するため)であること、肝機能検査の用量が体重1 kgあたり0.5 mg相当を30秒以内に静注すること、血管および組織の血流評価が0.04〜0.3 mg/kg、注射用水でのみ溶解し生理食塩液では溶かさないこと、ショックとアナフィラキシー(頻度不明)が重大な副作用で、口のしびれ・嘔気・胸内苦悶・眼球結膜充血・眼瞼浮腫が前駆症状であること、甲状腺放射性ヨード摂取率検査に影響するため1週間以上あけること、胆嚢造影剤・利胆薬・リファンピシン・抗痛風薬が肝への取り込みを阻害しうること、健康成人で消失半減期が3〜4分で、肝に選択的に取り込まれ遊離形で胆汁中に排泄され腸肝循環も腎排泄もないこと、励起光は約805 nm・蛍光は約835 nmであることを確認した。閲覧 2026-10-29
  3. 3.SPY AGENT GREEN (indocyanine green for injection) — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Stryker、2023年6月改訂版)・2023)米国添付文書(2023年6月改訂)の全文を取得して確認した。適応が手術時の血管・血流・組織灌流の可視化、肝外胆管の可視化、子宮頸癌・子宮体癌および乳癌のリンパ管マッピングで、血流評価は1.25〜5 mgを静注し総量は2 mg/kgを超えないこと、禁忌はインドシアニングリーンへの過敏症のみで、アナフィラキシーによる死亡例が報告されていること、1バイアルは25 mgで5%以下のヨウ化ナトリウムを含み、甲状腺放射性ヨード摂取率検査は1週間以上行わないこと、血中で805 nmに吸収ピークを持ち830 nm付近で蛍光を発すること、血漿蛋白と98%結合して血管内にとどまり、肝実質細胞にほぼ限って取り込まれて胆汁へ分泌され腸肝循環は無いことを確認した。閲覧 2026-10-29
  4. 4.Indocyanine green kinetics to assess liver function: Ready for a clinical dynamic assessment in major liver surgery?(World Journal of Hepatology(De Gasperi A, Mazza E, Prosperi M)・2016)PMC(PMC4779164)の本文のうち前半(約10万字)で確認した。ICGが約95%を蛋白に結合する不活性の水溶性色素で、健常者の肝摂取率が70%超、約97%が未変化のまま胆汁へ排泄され代謝も腸肝循環も無いこと、血漿消失率(PDR)の正常が18〜24%/分超、15分停滞率(R15)の正常が10%未満であること、肝硬変では肝摂取率が20〜30%に落ちること、肝硬変の肝切除は一般にR15が15%未満で行われ、肝障害度の区分がA 15%未満・B 15〜40%・C 40%超であること、高ビリルビン血症や低灌流・シャントが値を歪めること、有害事象が約4万例に1例と少ないことを確認した。閲覧 2026-10-29