眼科学

眼科学 · ML-02

眼球の解剖 II:後眼部と細隙灯・OCT・眼底造影

Anatomy of the eyeball II: posterior segment, slit lamp, OCT and angiography

前提:正常
頭部:眼窩と眼感覚器:眼
薬剤
インドシアニングリーン

🧠 全体像:の病気は外から見えないので、光を当てて奥を見るで診断する。と前置レンズ・で「表面の色と形」を見て、 OCT で「網膜の断面(層構造と厚さ)」を測り、OCT で「造影剤なしに血流のある血管」を描き、で「が壊れて漏れているか」を、で「の奥の」を見る。どの検査が何を見ているのかを、網膜の層と2つの関門の解剖に結びつけて覚えると、所見の意味が読める。

眼球の区分と3層の壁

眼房と前眼部・後眼部

眼球の中には3つの腔があり、とを目印に区切られる。

区分 範囲 中身
角膜との間
との間
と網膜の間

とは瞳孔でつながる。の後面を境に、・とまでを、と網膜・・をとよぶ。

眼球壁の3層

眼球のは平均約24 mmで、壁はの3層からなる。

層 構成 働き
() と角膜 眼球の形を保ち、内容を守る
(中層、ぶどう膜) ・・ 栄養の供給、光量と焦点の調節
() 網膜(を含む) 光を受けてに変える

部位 特徴
(白目) でできた硬い膜。眼球の形を保ち、不透明で余分な光を遮る
角膜(眼の窓) 透明で血管がなく、光を眼内へ取り込む。眼のの大部分を担う

部位 働き
眼の色を決める部分。瞳孔の大きさを変えて網膜に届く光の量を調節する(で、で)
がを分泌し、がを介しての厚さ(ピント)を調節する
網膜のすぐ外側にある血管の層。に栄養を供給する

隅角付近の構造は、緑内障との流れを理解する土台になる。

構造 位置と役割
隅角 角膜とが接するの周縁
(Fontana腔) 隅角にある状の組織。の主な出口
(静脈洞) を通ったが集まり、静脈へ流れる
の後方のの張り出し。が付着する
角膜の と内皮の終わり。隅角の前方の目印
状 から隅角の壁へ伸びる細い線維
大動脈輪・小動脈輪 と近くを輪状に走る動脈
前静脈 輪部のを貫いて外へ出る静脈。からのもここへ流れる
に面したひだ。を分泌し、の線維が付く
の の後面を覆う2層の。網膜が前方へ続いたもの
(経線状線維・輪状線維) 収縮するとが緩み、が厚くなる
との間の潜在的な隙間

眼球と付属器の肉眼解剖は眼の解剖、の流れと緑内障は緑内障 Iで扱う。

網膜

  • の最で、10層からなる。最の1層が、残る9層が(感覚網膜)である。
  • 黄斑は中心視を担い、中心にがある。
  • はが眼球を出る場所である。
  • 栄養は()と()の2系統から受ける。

正常眼底では、が周囲より明るく境界鮮明に見え、その耳側にがやや暗く見える。層構造と血行の詳細は網膜の解剖と血液循環にまとめてある。

眼底を見る方法

を直接観察する方法(生体)は、光源と拡大系の組み合わせで次のように分かれる。

方法 見え方 使いどころ
直像鏡 手持ちのを患者の眼に近づけて見る。で高倍率、視野は狭い 乳頭と黄斑の手早い観察、救急外来や病棟
と前置レンズ の光と、眼前に保持する強いで見る。で立体的 黄斑・乳頭の詳しい観察。して行う
双眼 頭につけた光源と手持ちの集光レンズで見る。で視野が広い (・剥離)。臥位の患者にも使える

細隙灯顕微鏡の照明法

は光の帯の幅・向き・当て方を変えることで、同じ眼からまったく違う情報を引き出す。

照明法 当て方 見えるもの
拡散照明 幅広い光で全体を照らす 眼瞼・・角膜の全体像、充血の分布
直接焦点照明(光切片) 細い光の帯を斜めから当て、焦点を合わせる 角膜の厚さとの深さ、の深さ、の層
や眼底からの反射光で後ろから照らす 角膜の微細な、の萎縮(透ける部分)、の
散乱法 に光を当て、角膜内をさせる 角膜の淡いや浮腫
法 と観察角を等しくする の細胞
青色光と 染色して青色光で見る (緑色に光る)、、

正常所見の取り方は眼球の解剖と正常眼の診察、検査機器の総覧は眼科の診断法と検査機器を参照。

光干渉断層計 OCT

原理

は、超音波の代わりに光を使って組織の断面を描く1。組織から戻る光の遅れと強さを、干渉を利用して測る。使うのは波長の幅が広く可干渉性の低い光(低光)で、を用いる。「非干渉性の光」と説明されることもあるが、干渉を起こさない光では原理が成り立たず、正確には「干渉する距離がごく短い光」である。この短さが深さ方向の分解能を決める。

特徴 内容
非接触・非侵襲 眼に触れず、造影剤も使わない。数秒で撮れ、患者の負担が小さい
波長810〜840 nm前後の光で、多少ののがあっても通り、まぶしくない
の組み立て 1本の深さ方向の信号(Aスキャン)を横に並べて()を作る。組織を切らずに断面が見えるので「光学的生検」とよばれる
眼底の同時観察 で眼底を同時に撮り、どこを切った断面かを示す
パターン 円形(乳頭周囲)、ラスター(平行線)、立体(キューブ)
主な対象 、黄斑、

装置は時間領域型から型、型へと進化し、撮像速度は毎秒数百回から数万〜10万回以上の Aスキャンへと上がった1。

flowchart TD
    A["近赤外の低<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coherence'>コヒーレンス</span>光を眼内へ送る"] --> B["網膜の各層の境界で光が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reflection and scattering'>反射・散乱</span>する"]
    B --> C["戻った光を参照光と干渉させ<br>反射の深さと強さを求める"]
    C --> D["1本の深さ方向の信号<br>Aスキャン"]
    D --> E["横に並べて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-sectional image'>断面像</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='B-scan ultrasonography'>Bスキャン</span>"]
    E --> F["多数の断面を積み重ねて<br>立体像・厚さの地図"]

正常黄斑の OCT 像

正常の黄斑では、が状にくぼみ、網膜は高反射(白)と低反射(黒)の帯がに重なる縞模様として見える。側から順に次の帯が並ぶ。

帯(側から) 反射 内容
・ 高反射 の軸索。乳頭側で厚い
低〜中反射 の周りで厚く、では消える
中反射 シナプスの層
低反射 などの核
・ 中反射 の軸索がから放射状に斜めに走る
低反射 の核。で最も厚い
細い高反射線 との接着
の・の帯 高反射の線が複数 との接合部、先端
・ 強い高反射 最も外側の明るい帯
・ 不均一 大小の血管が低反射の管腔として見える

💡 帯の呼び名は変わってきた。 の帯は、かつて「接合部」「」「Verhoeff膜」などと呼ばれたが、どの反射がどの構造に当たるかは確かでなかった。国際的な合意では、対応が確定しない帯を「zone」とよび、エリプソイドゾーン・インターディジテーションゾーンなどの名称を用いる2。

前眼部 OCT

角膜・・・隅角を断面で描く。の深さ、角膜の厚さ、の長さや形、隅角の開き具合を数値で測れ、0〜180度・45〜225度・90〜270度・135〜315度のように複数の経線でして、隅角全周の狭さを評価する。閉塞隅角の評価と、・角膜手術の計画に使う。

視神経乳頭と網膜神経線維層の解析

乳頭を中心とした立体から、の厚さと乳頭の形を自動でし、同年代のと比べて色分けする。

色 意味
白 正常の5%より厚い
緑 正常範囲(5〜95%)
黄 境界域(1〜5%)
赤 異常(1%未満)
解析項目 読み方
平均厚 全周の平均。菲薄化は緑内障やを示す
左右の対称性 左右差が大きいと片眼の障害を疑う
乳頭面積・リム面積・・陥凹容積 陥凹が大きくリムが薄いほど緑内障性変化を疑う
4・12時方向の厚さ 上方・下方(上下の束)が先に薄くなるのが緑内障の典型
厚さのプロファイル 耳側・上方・鼻側・下方・耳側の順に並べると、正常では上方と下方に2つの山がある

読み方の例として、両眼とも8/10で撮れた次の結果を考える。

項目 右眼 左眼
平均厚 70 µm(赤) 76 µm(黄)
左右の対称性 85%(緑。両眼を比べた1つの値) ―
リム面積/乳頭面積 0.89/2.89 mm² 0.90/2.55 mm²
平均/垂直 0.82/0.78 0.79/0.76
陥凹容積 0.812 mm³ 0.704 mm³
4(上・鼻・下・耳) 74(赤)・67(緑)・93(黄)・47(黄) µm 84(赤)・71(緑)・100(緑)・48(黄) µm

厚さのプロファイルでは、上方の山が両眼とも正常域(緑の帯)より低い。左右は対称で、両眼とも上方が赤、が0.8前後と大きいので、両眼性にが菲薄化し陥凹が拡大した、緑内障を疑う所見と読み、視野と乳頭所見で確かめる。

⚠️ が低い(や)と厚さが薄くされる。色分けは統計的な比較であり、赤でも病気とは限らず、緑でも早期の緑内障は否定できない。視野と乳頭所見を合わせて判断する。

OCT の臨床的な使い道

領域 用途
緑内障 との厚さの経過観察
・でのの菲薄化
黄斑疾患 黄斑円孔・網膜上膜などの診断と手術計画、術後の経過観察
治療効果の判定 抗 VEGF 薬やステロイドのに対する反応(、、、術後の)
術中 OCT フェムト秒レーザー、網膜

💡 では網膜が厚くなり、やに低反射のが並ぶ。はの上の低反射腔、はドーム状のの隆起として見える。治療の反応は中心の網膜厚の変化で追う。関連する病態は、黄斑円孔、網膜上膜、。

OCT 血管撮影

原理と画像

同じ場所を短い間隔で繰り返し撮り、変化した信号だけを取り出すと、動いている赤血球、つまり血流のある血管だけが描ける(動きの)。造影剤は要らない。

項目 内容
撮像速度 毎秒約7万回の Aスキャン
撮像範囲 2×2 mm、3×3 mm、6×6 mm、8×8 mm
層ごとの画像 表層、、(正常では血管がない)、、乳頭周囲の・の血管網
正面像 層ごとに切り出した血管の地図。血流の有無という機能的な情報を与える
血流信号を重ねた 。どの深さにあるかという形態的な情報を与える
定量解析 血流のある面積、血流のない面積(など)、の色分け地図

血管密度の色分け地図(10〜100%)では、正常眼のは小さく円形で、その周りに均一なが広がる。では域が拡大してになり、周囲に毛細血管の脱落した領域が島状に散らばる。では、密度の低い暗い斑状の領域が閉塞した静脈の流域に偏って集まる。

長所と限界

限界
造影剤が不要で、繰り返し撮れる 色素の漏れ・貯留・組織染がないので、の破綻は分からない
層ごとに血管を分けて見られる 血流が遅いと信号が出ない(は写りにくい)
毛細血管の脱落やのがより鮮明に見える 眼の動きやの血管が下層に映り込むが多い
短時間で済む 視野が狭く、広く撮るとが落ちる

⭐ OCT は「血管があるか・流れているか」を見る検査で、は「血管が漏れているか」を見る検査である。

蛍光眼底造影

所見の読み方を疾患ごとに引くときはの所見ノートも使える。

造影剤と手順

項目 内容
造影剤 ナトリウム。水溶性の有機物で、血液の pH(7.4)で蛍光を発する
投与 肘静脈から500 mgを静注し、で連続撮影する3
到達時間 静注から10〜15秒でに現れる(腕時間)3
血中での状態 大部分が(主にアルブミン)に結合する。結合率は50〜80%(ほかに約15%が赤血球に結合)とも、約80%ともされる3。結合していない遊離型だけが血管壁や関門を越えて漏れうる
排泄 肝臓と腎臓が関わり、24〜36時間かけて尿へ出る3。その間、尿が濃い黄色になり、皮膚もしばらく黄色みを帯びる

は造影剤を静注する侵襲的な検査で、次の副作用がある3。

副作用 内容と対応
悪心・嘔吐 最も多い(悪心は0.06〜15%程度)。一過性で、嘔吐はあまり多くない
不安の強い患者で失神、徐脈・血圧低下。臥位で下肢を挙上する
軽いアレルギー反応 じんま疹・かゆみが最も多い型で、抗ヒスタミン薬で対処する
重いアレルギー反応 ・・は命にかかわり、アドレナリン・ステロイド・で緊急に治療する
皮下に漏れると激しい痛みとを起こしうる重い副作用。冷やして痛みを和らげる
死亡 全体で約22万件に1件と報告されている

⚠️ 過去に重いアレルギー反応を起こした患者には禁忌で、中等度の反応の既往があれば抗ヒスタミン薬やステロイドでする。妊婦ではとして、とくに妊娠初期は避ける。検査の前にアナフィラキシーに対応できる救急カートと薬を用意しておく3。

正常の血液網膜関門と造影像

構造 造影剤に対するふるまい
内側(内皮の) から色素が漏れない。正常ではは最後まで輪郭がくっきりしている
外側(の六角形の細胞と、閉鎖帯・からなる接合複合体) 側から網膜への色素の侵入を止める
(有窓) 血管壁の窓から色素が絶えずゆっくり漏れる。のメラニンが光学的なとなり、の細部は見えず、背景がぼんやり明るくなるだけである

💡 正常な黄斑が暗く見えるのは、にがなく()、しかものはメラニンが多く、黄斑色素も背景の蛍光を遮るからである。

正常造影の時間経過

flowchart TD
    A["造影前<br>自発蛍光の有無を確認"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroidal phase'>脈絡膜相</span><br>静注後10〜15秒・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>がまだらに明るくなる<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cilioretinal artery'>毛様網膜動脈</span>があればここで染まる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial phase'>動脈相</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroidal phase'>脈絡膜相</span>の1〜2秒後・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal artery'>網膜動脈</span>が白く染まる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arteriovenous phase'>動静脈相</span><br>静脈の壁に沿って色素が流れる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laminar flow'>層流</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous phase'>静脈相</span><br>静脈全体が染まる・黄斑は暗いまま"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recycling'>再循環</span>相(後期)<br>血管の蛍光が薄れ<br>約10分で排出・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic disc'>視神経乳頭</span>の縁は淡く染まる"]

の区切りは3による。病的な所見を読むときは「どので現れ、時間とともにどう変わるか」が決め手になる。

異常蛍光の用語

異常な蛍光は、正常より明るいと、暗いに大別する。

用語 かか 機序 代表例
自発蛍光 (造影前から) 組織そのものが蛍光を発する 、滲出物、石灰化(など)
蛍光遮断 前にある物が下の蛍光を隠す 出血、色素、、撮影の
血管に色素が入ってこない 網膜・の循環障害、毛細血管の脱落(無)
逆蛍光 ― 後期に背景の蛍光に対して暗く抜けて見える(陰性の) での評価
窓陰影(透過性) の萎縮部からの蛍光が直接透けて見える。早期から現れ、大きさも強さも時間で変わらず、背景とともに薄れる 、萎縮
組織染 線維性の組織に色素が結合する。境界が鮮明で、後期まで残る 瘢痕、
蛍光漏出 関門が壊れた血管から色素が漏れ、時間とともに大きさも強さも増す 、、の
蛍光貯留 あらかじめできた空間に色素がたまる。強さは増すが大きさは変わらない 、

漏出・貯留・組織染・窓陰影・遮断の時間的な違いは3にもとづく。

flowchart TD
    A["異常な蛍光を見つけた"] --> B{"正常より明るいか暗いか"}
    B -->|"暗い"| C{"暗さの原因は何か"}
    C -->|"前にある物が蛍光を隠す"| D["蛍光遮断<br>出血・色素・滲出物"]
    C -->|"血管に色素が来ない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filling defect'>充盈欠損</span><br>無<span class='jp-term jp-term-diagram' title='territory'>灌流域</span>・循環障害"]
    B -->|"明るい"| F{"時間とともにどう変わるか"}
    F -->|"大きくなり強くなる"| G["蛍光漏出<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span>・関門破綻"]
    F -->|"大きさ一定で強くなる"| H["蛍光貯留<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigment epithelial detachment'>色素上皮剥離</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serous detachment'>漿液性剥離</span>"]
    F -->|"大きさ一定で背景とともに薄れる"| I["窓陰影<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigment epithelium'>色素上皮</span>萎縮"]
    F -->|"境界鮮明で後期まで残る"| J["組織染<br>瘢痕・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drusen'>ドルーゼン</span>"]

インドシアニングリーン造影

がを得意とするのに対し、はの描出に使う4。(吸収790〜805 nm、発光835 nm)4を用いるので、のメラニンや薄い出血を透過して奥の血管が見える。色素の約98%がと結合する(は約80%)ため、有窓のからも漏れにくく、血管の形を追える4。排泄はもっぱら肝臓による。

時間(静注後) 見えるもの
1〜2秒 動脈が染まる。はまだ暗い
2秒の終わり と静脈が満たされる
3〜5秒 と太い静脈が見える
5秒〜3、4分 血管から色素が漏れ、静脈の蛍光が薄れる
4分以降 が暗くなり、太いと血管だけが見える

💡 早期にはの大血管が状にはっきり見え、中期には全体がびまん性に明るくなり、後期には背景がほぼ均一になって乳頭だけが暗く抜ける。、、の炎症や腫瘍の評価に向く。

⚠️ の製剤には少量のが含まれる。日本の眼科用の電子添文が禁忌とするのは、成分への過敏症の既往とヨード過敏症の既往の2つである5。アレルギーとを禁忌とするのはな総説の記載で4、日本の電子添文の禁忌欄には挙がっていない。重篤な反応はヨード過敏反応によるとは限らず確実な予知法もないため、のうえ血管確保と救急処置の準備をして行う5。薬としての詳細はを参照。

3つの血管検査の使い分け

検査 造影剤 得意なもの 見えないもの
静注 、漏れ(関門破綻)、無、の活動性 の奥のの細部
静注 血管、ポリープ状 からの細かな漏れ
OCT 不要 層ごとの、、の 漏れ、遅い血流、広い範囲

正常な後眼部所見の記載

診療録には、正常所見を決まった言い回しで簡潔に書く。

部位 正常の記載
透明
境界鮮明、色調良好(生き生きとした淡紅色)、陥凹は生理的
太さは正常で均一(口径不同・交叉現象なし)
黄斑 異常なし(反射あり)

💡 それぞれの記載は、裏返すと代表的な異常を否定している。乳頭の境界不鮮明は、蒼白は、陥凹拡大は緑内障、血管の口径不同は高血圧、黄斑の異常は黄斑疾患を考える入口になる(、、高血圧)。

まとめ

  • 眼内は(角膜〜)・(〜)・(〜網膜)に分かれ、は・・網膜の3層。は約24 mm。
  • は硬く不透明で形を保ち、角膜は透明での「眼の窓」。は光量、は分泌とピント調節、はの栄養を担う。
  • 網膜は10層(+9層)で、との2系統から栄養を受ける。
  • 眼底は直像鏡(正立・高倍率)、と前置レンズ(立体的)、双眼(周辺部まで広く)で見る。は照明法を変えて角膜の深さ・・を調べる。
  • OCT は低ので網膜の断面を描く非接触検査で、黄斑・乳頭・を測る。緑内障の経過、黄斑疾患の診断と手術計画、抗 VEGF 治療の効果判定に使う。
  • 解析はとの比較で色分けされ、上方・下方のの菲薄化と陥凹拡大が緑内障を示唆する。と視野を合わせて判断する。
  • OCT は造影剤なしに血流のある血管を層ごとに描くが、漏れ・遅い血流・広い範囲は苦手。
  • は500 mg静注、10〜15秒で網膜に到達し、 → → → → 相と進む。漏出は大きさと強さが増し、貯留は強さだけが増し、窓陰影は変わらず、組織染は後期まで残る。
  • 内側関門は内皮の、外側関門はの接合複合体。は有窓で正常でも漏れる。
  • はでを描く。日本の電子添文の禁忌は成分への過敏症とヨード過敏症の既往で、アレルギーやは禁忌欄に挙がっていない。
  • 正常所見は「透明、乳頭境界鮮明・色調良好・陥凹生理的、血管の太さ正常均一、黄斑異常なし」と記載する。

出典

  1. 1.The Development, Commercialization, and Impact of Optical Coherence Tomography(Investigative Ophthalmology & Visual Science・2016)Europe PMC の全文(PMC4968928)で、光干渉断層計が光のエコーの時間遅れと強度から画像を作る超音波の光学版として説明されること、最初の画像が1991年に示されたこと、初期のヒト網膜像が波長840 nm・組織中の軸方向分解能15 μmで得られたこと、第3世代の時間領域機が毎秒400 Aスキャンであったこと、スペクトラルドメイン機が現在の標準で毎秒25,000〜80,000 Aスキャン、市販の掃引光源機が毎秒10万Aスキャンを超えることを確認した閲覧 2026-09-04
  2. 2.Proposed lexicon for anatomic landmarks in normal posterior segment spectral-domain optical coherence tomography: the IN•OCT consensus(Ophthalmology(International Nomenclature for Optical Coherence Tomography Panel)・2014)抄録で、正常眼のスペクトラルドメイン光干渉断層計像の網膜・脈絡膜の層と帯の呼称を国際パネルが合意したこと、従来の各層の定義が頻繁に変わり解剖・組織像としばしば一致していなかったこと、特定の反射構造との対応が確かでない像に「zone」という語を導入し、myoid zone・ellipsoid zone・interdigitation zone を含めたことを確認した閲覧 2026-09-04
  3. 3.Fluorescein Angiography(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Wayback保存版(2023年8月25日更新版)の本文で、フルオレセインナトリウム500 mgを静注し10〜15秒で網膜に到達すること、血中では約80%が蛋白結合すること、24〜36時間かけて尿へ排泄され尿が着色すること、脈絡膜相・動脈相(脈絡膜相の1〜2秒後)・動静脈相・静脈相・再循環相(約10分で完全に排出)という時相、window defect・leakage・pooling・staining・blocking の時間的なふるまいを確認した。副作用として悪心が最も多く一過性であること(0.06〜15.29%)、血管迷走神経反射、じんま疹・かゆみなどの軽いアレルギー反応、気管支攣縮・喉頭浮腫・急性心筋梗塞などの重い反応、血管外漏出が重い副作用で皮膚壊死を起こしうること、死亡が全体で222,000件に1件と報告されていること、重いアレルギー反応の既往は絶対禁忌で中等度の既往には抗ヒスタミン薬かステロイドで前投薬すること、妊娠では相対的禁忌で特に第1三半期は避けること、アナフィラキシーに備えた救急設備を用意することを確認した閲覧 2026-09-29
  4. 4.Indocyanine Green Angiography(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Wayback保存版の本文で、インドシアニングリーン造影が主に脈絡膜循環の描出に用いられ、蛍光眼底造影は網膜循環の描出に優れるが脈絡膜循環の描出能は限られるという役割分担、吸収ピーク790〜805 nm・発光ピーク835 nm、約98%が蛋白結合して脈絡膜毛細血管板の壁をほとんど通らないこと(フルオレセインは約80%)、もっぱら肝臓から排泄されること、ヨードまたは甲殻類アレルギーの患者には行わず、尿毒症と重い過敏症の既往では禁忌とされることを確認した閲覧 2026-09-29
  5. 5.オフサグリーン静注用25mg 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(参天製薬、2021年8月・第1版)・2021)眼科用の電子添文(2021年8月・第1版)で確認した。効能は網脈絡膜血管の造影のみで、成人にインドシアニングリーン25 mgを添付の注射用水2 mLに溶解して肘静脈から速やかに注射すること、禁忌が成分への過敏症の既往とヨード過敏症の既往であること、重篤な反応はヨウ素過敏反応によるとは限らず確実な予知法もないため血管確保と救急処置の準備が必要なこと、近赤外光が網膜色素上皮を透過して脈絡膜に達すること、国内第II/III相試験で25 mg投与57例の副作用が嘔気の1例(1.8%)であったこと、尿中排泄は投与後2時間で0.2%以下であることを確認した。閲覧 2026-10-29