眼科学

眼科学 · ML-01

眼科の診断法と検査機器

Ocular diagnostics

前提:正常
視覚の生理学レンズの式

🧠 全体像:眼科の診察は「見え方を測る → 光の通り道を見る → 圧と形を測る」の順に組み立てる。まず視力と屈折で「どれだけ見えるか・で良くなるか」を決め、瞳孔・・・・・視野で視機能の中身を分解する。次にとで角膜から網膜まで光の通り道を順に観察し、と度を数値で押さえる。どの検査も「片眼ずつ・右眼から・矯正して」測るのが原則で、測った値の意味(正常範囲と限界)を知っていることが、検査機器の名前を覚えることより大切である。

検査の全体の流れ

眼科の外来では、のあと次の順に検査を進めることが多い。するとと屈折が正しく測れなくなるので、を要するは最後に回す。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medical interview (history-taking)'>問診</span><br>いつから・片眼か両眼か・痛みの有無"] --> B["視力検査<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='naked eye / unaided eye'>裸眼</span>視力 → ピンホール"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refraction test'>屈折検査</span><br>自動屈折計 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='subjective refraction'>自覚的屈折検査</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corrected visual acuity'>矯正視力</span>の決定"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pupillary response'>瞳孔反応</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular alignment'>眼位</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='binocular vision'>両眼視</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonometry'>眼圧測定</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp examination'>細隙灯顕微鏡検査</span><br>眼瞼・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>・角膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span>"]
    G --> H["必要に応じて視野・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='color vision'>色覚</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='contrast sensitivity'>コントラスト感度</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>度"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>して<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus examination (fundoscopy)'>眼底検査</span><br>直像鏡・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indirect ophthalmoscope'>倒像鏡</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>と前置レンズ"]
    I --> J["画像検査(OCT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein angiography'>蛍光眼底造影</span>・超音波)"]

の取り方と正常所見の記載法はと正常所見、画像検査の原理はの解剖と画像検査と眼組織の透明性とで扱う。

健常な眼の外観

検査の出発点は、正常な外眼部の姿を知っていることである。健常な眼では次の所見がそろう。

部位 正常所見
眼瞼 上眼瞼が角膜の上縁をわずかに覆い、下眼瞼は角膜下縁に接する。睫毛は外向きに生える
・ 白く、細い血管がわずかに透見される程度で充血がない
角膜 透明で光沢があり、光源の反射()が鋭く一点に映る
・瞳孔 の紋理がはっきり見え、瞳孔は正円で中央にあり、左右同大

💡 がぼやける・崩れるのはの障害やの異常を、反射の位置が左右の瞳孔で対称でないのはを疑う手がかりになる。

視力と屈折の検査

視力表

視力は「どれだけ小さな文字を見分けられるか」を測る。国際的な臨床研究の標準は ETDRS で、各行に5文字を並べ、行ごとに文字の大きさを一定の比率(0.1 logMAR ずつ)で小さくしていく1。各行の難易度をそろえ、変わるのは文字の大きさだけにしてあるので、行を読めた数・文字を読めた数をそのまま数値として比べられる。右眼と左眼で文字の並びが違う表を使い、暗記による誤差を防ぐ1。

ETDRS の縁には、同じ行を小数視力と Snellen 視力の両方で読めるよう換算値が刷られている。検査距離を4 mから2 mに縮めると、同じ行の小数視力は半分になる(4 mで0.10の最上段は、2 mでは0.05)。

小数視力 Snellen(20フィート法) logMAR 目安
0.10 20/200 1.0 ETDRS 表の最上段
0.125 20/160 0.9
0.16 20/125 0.8
0.20 20/100 0.7
0.25 20/80 0.6
0.32 20/63 0.5
0.40 20/50 0.4
0.50 20/40 0.3
0.63 20/32 0.2
0.80 20/25 0.1
1.0 20/20 0.0 正常視力の基準
1.25 20/16 −0.1
1.60 20/12.5 −0.2
2.0 20/10 −0.3 表の最下段

⭐ logMAR は「最小(分)の」で、値が小さいほど良い。0.1 logMAR が1行、1文字が0.02 logMAR に相当するので、平均値の計算や統計に使える。小数視力は平均をとってはいけない。

最上段も読めないときは、表に近づいて測るか、次の段階で記録する。

段階 方法
眼前で示した指の数が分かる距離を記録する
眼前で手を動かすのが分かる
光の有無だけが分かる(光の方向が分かるかも記録する)
光も感じない

片眼ずつ、右眼から

視力は片眼ずつ測る。試験枠の片側に板(黒い不透明な板)を入れて左眼を隠し、右眼から測るのが慣例である。手で押さえて隠すと、眼球を圧迫して後で測る眼の視力を下げたり、指の隙間から見えたりするので避ける。

ピンホール

黒い円板の中央に小さな孔をあけたピンホール板をのぞかせると、瞳孔を通る光が中心の細いだけに絞られ、屈折のずれによるボケが小さくなる。

ピンホールで視力が 考えられること
改善する (・・)が主因。で良くなる見込みが高い
改善しない 屈折以外の原因:・の一部・網膜(黄斑)・視神経の病気

💡 細い溝をあけた同じ形の板(スリット板)は、溝の向きを回して最もよく見える方向を探すことで、の軸の見当をつけるのに使う。

⚠️ ピンホールで改善しないは、を処方して終わりにせず、眼底と視神経を必ず調べる。

屈折検査の道具

構成・特徴 使い方
検眼レンズセット (用)・(用)の球面レンズ、(用)、、補助レンズが度数順に並ぶ。度数の刻みは0.12〜0.25 D から 試験枠に入れて、的に最もよく見えるレンズを探す
試験枠 左右のレンズ受けに0〜180度の軸目盛りがあり、の軸を合わせる。上部に瞳孔間距離の目盛り(片側25〜40 mm)がある 瞳孔間距離を合わせて顔にかけ、レンズを差し込む
ホロプター 球面・とその軸、、補助レンズ(遮閉・ピンホールなど)を回転盤で切り替える器械 患者の顔の前に据え、レンズを素早く切り替えて比べる
自動屈折計 眼底からの反射光を解析して屈折度をに測る。据え置き型のほか、手持ち型、離れた位置から両眼の屈折・・視線を同時に測る写真屈折型がある の出発点。手持ち型と写真屈折型は小児や臥位の患者に使える

💡 自動屈折計の値は、そのままの度数にはならない。特に小児や若年者では調節が働いて寄りに出やすいので、(・)を点眼して測ることがある。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='naked eye / unaided eye'>裸眼</span>視力を測る"] --> B{"1.0に届くか"}
    B -->|"届く"| Z["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractive correction'>屈折矯正</span>は不要なことが多い"]
    B -->|"届かない"| C["ピンホールで再検"]
    C --> D["自動屈折計で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='objective'>他覚的</span>な度数を得る"]
    D --> E["試験枠またはホロプターで<br>球面度数 → 円柱度数と軸 → 球面の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fine tuning'>微調整</span>"]
    E --> F["最高の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corrected visual acuity'>矯正視力</span>を記録"]
    F --> G{"矯正で視力が出るか"}
    G -->|"出る"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractive error'>屈折異常</span>。<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spectacles'>眼鏡</span>・コンタクトレンズを検討"]
    G -->|"出ない"| I["角膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span>・網膜・視神経の器質的疾患を検索"]

そのものは視力・屈折と、調節と・は調節・・・で詳しく扱う。

視機能の中身を分けて調べる

コントラスト感度

は白地に黒の高の文字で測るが、日常ではもっと淡い濃淡を見分けている。検査は、明暗の縞模様()を印刷した円形の視標を使う。

構成 内容
行(A〜D) 縞の細かさ()。A が最も粗く、D に向かって細かくなる
列(1〜8) 縞の。1が最も濃く、8に向かって淡くなる
各列の上下2つの円 どちらか一方に縞がある。患者は縞の見える円(上か下か)を答える
各行の左端の見本の円 その行の縞の細かさを示す、はっきりした縞の見本

各行で答えられた最も淡い列を記録すると、ごとの感度が曲線として得られる。

💡 視力が1.0でもが落ちていることがある。(まぶしさ・かすみ)、緑内障、、の後などで、「視力は良いのに見えにくい」という訴えを裏づける検査になる。

色覚

仮性同色表(石原表)は、明るさの似た色の点を並べ、色の違いだけで数字が浮かび上がるように作った表である。の人は、正常者が読む数字を読めないか、別の数字を読む。

表の種類 意味
検出表 正常者と者で読みが分かれ、異常の有無をふるい分ける
分類表(例:「26」「42」) 正常者は2桁とも読むが、1型は右の数字(6、2)、2型は左の数字(2、4)だけを読みやすい

⚠️ は主に先天のふるい分け用で、青黄の異常や程度の判定には向かない。後天的な(、などの)は片眼ずつ比べると気づきやすい。

両眼視と立体視

両眼で一つの像にまとめる力()と、奥行きを感じる力()を調べる。をかけて検査帳を見ると、左右の眼に少しずれた像が別々に入り、ができていれば一部の図形が浮き上がって見える。

視標 見え方と判定
ランダムドットの図形 単眼では点の集まりにしか見えず、があるときだけ形が浮かぶ
1〜10番の円(各3つ) 3つのうち1つが浮き上がる。番号が進むほど視差が小さく、難しい
A〜C 列の動物 各列の5匹のうち1匹が浮き上がる。小児向け
R・L の文字 左右の眼がそれぞれ正しい像を見ているか(片眼の抑制がないか)を確かめる

💡 が良好なら、やが隠れている可能性は低い。小児でが得られないときはとその異常、、の検索へ進む。

瞳孔反応

ペンライトで片眼ずつ光を当て、直接反応(照らした眼の)と間接反応(反対眼の)を見る。暗めの部屋で、患者に遠くを見てもらい(によるを避ける)、光を斜め下から当てる。

手順 見るもの
瞳孔の大きさと形 明所と暗所での左右差()
直接反応・間接反応 光を当てた眼と反対眼が同じようにするか
点滅試験 光を左右に素早く移し、光が入った瞬間にする眼があれば相対的入力異常 RAPD 陽性
近くを見たときの(は消えてもが残る病態がある)

⭐ RAPD は片側の視神経または広範な網膜の障害を示すな所見で、やでは出ない。の原因が「光の通り道」か「神経」かを分ける強力な手がかりになる。瞳孔の詳細はと。

視野

視野は「一点を見つめたまま見える範囲」と、その中の各点の感度である。

方法 原理 記録 得意なこと
Goldmann 動的視野計 大きさと明るさを決めた光点を周辺から中心へ動かし、見えた位置を結ぶ 等感度線()を描く 全体、神経眼科の視野(など)、視力の悪い患者
自動 決まった位置に光点を固定し、明るさを変えて見える最小の明るさ(閾値)を求める 各点の感度を dB で表す 中心30度以内の小さな感度低下、緑内障の早期発見と経過観察

Goldmann 視野計の読み方

  • 光点の大きさは0〜V の6段階で、面積が1/16・1/4・1・4・16・64 mm² と4倍ずつ大きくなる。明るさは減光1〜4(1段5 dB)と細かい段階 a〜e(1段1 dB)で調節する。
  • 同じ条件の光点が見えた点を結んだ線が等感度線で、大きく明るい光点ほど外側に広がる。
  • 正常なは、耳側約90度、下方約70度、鼻側・上方約60度で、鼻とに遮られて上方と鼻側が狭い。
  • から耳側約15度、水平線のやや下に、に対応するが描かれる。

自動の結果の読み方

中心30度の範囲で59点を測った正常例では、次のような項目が並ぶ。

項目 意味 正常例の値
検査条件 光点の大きさ III、提示時間100ミリ秒、背景4アポスチルブ ―
各点の感度 dB が大きいほど淡い光まで見える(感度が高い)。中心ほど高い 中心付近で33〜34 dB、周辺で24〜31 dB
平均感度 MS 全点の感度の平均 29.2 dB
平均欠損 MD 年齢別の正常値からの平均のずれ。正常では0前後 −0.3 dB
損失分散 LV 感度低下のばらつき。局所的な欠損で大きくなる 2.5
偽陽性・偽陰性 光を出していないのに押した回数、確実に見えるはずの光を見逃した回数。の指標 偽陽性0/7、偽陰性0/8
示 各点の感度を年齢別正常値と比べ、正常範囲内の点を「+」で示す 全点が+
欠損曲線 各点の欠損を小さい順に並べた曲線。正常範囲の帯の中にあれば正常 帯の中に収まる
確率表示 各点が正常から外れる確率(P<5%、2%、1%、0.5%)を記号の濃さで示す 異常な点なし

💡 平均欠損が全体に悪いのに損失分散が小さければ、やのような「全体が暗くなる」原因を考える。損失分散が大きければ、緑内障ののような局所の欠損を疑う。

⚠️ は患者の応答に頼る的検査で、初回はで悪く出やすい。偽陽性・偽陰性・が多い結果は信頼せず、再検で確かめる。視野の型から病変部位を読む方法は、、を参照。

光の通り道を観察する

細隙灯顕微鏡

は、細く絞った光の帯()を斜めから当て、双眼の顕微鏡で拡大して見る器械である。患者は額当てとに顔を固定し、検者は操作桿で焦点を前後左右に動かす。眼瞼・・角膜・・・・前部を立体的に観察でき、前置レンズを加えれば眼底や隅角まで見られる。照明法と所見の読み方はの解剖と画像検査、正常所見の実習は眼球の解剖と正常眼の診察で扱う。

眼底検査

方法 像 倍率と視野 と短所
直像鏡検査 手持ちの。光源とレンズ盤(検者と患者の屈折を補正)をもつ 約15倍、視野は狭い(数度) 持ち運べなしでも乳頭と黄斑を見られる。周辺部と立体感は得にくい
検査 頭につける光源と、患者の眼前に手で持つ(集光レンズ) 上下左右が逆の 数倍、視野が広い まで広く立体的に見える。が必要で、像の向きに慣れが要る
と前置レンズ の光と、眼前に保持する強い(非接触)または接触レンズ (非接触レンズ) 拡大率が高く、立体的 黄斑と乳頭を立体的に詳しく見られる。周辺部や隅角は、鏡を組み込んだ接触レンズ(三面鏡)を下で角膜に当てて見る

💡 の光を少し離れた位置から瞳孔に当てると、正常では瞳孔が一様に赤く光る()。反射が暗い・欠けるのは角膜・・のを、白いのはなどのを示し、乳幼児のふるい分けに使う。

⚠️ (、)は、が浅く隅角が狭い眼での発作を誘発しうる。前にでの深さを確かめる。後は数時間まぶしさとピントの合いにくさが残るので、運転を控えるよう伝える。

眼圧と眼球突出度を測る

眼圧測定

はの産生と流出の釣り合いで決まる。はどれも角膜を平らにするかへこませ、その変形量からをする2。

原理と手順 特徴
Goldmann に取り付けた直径約3 mmの測定子で角膜の中央を平らにする。とでを染め、青色光で見える2つの半円の内縁が接する力を読む 世界の標準。座位でに顔をのせられる患者に使う
手持ち式の電子 ペン型で、使い捨てのカバーをかぶせた先端を角膜に軽く数回当てる。複数回の平均値と、測定のばらつき(5%・10%・20%・20%超)が表示される 臥位・小児・手術室・角膜不整の眼でも測れる
自己 患者自身が眼に当てて測る家庭用の器械 受診時以外の(夜間・早朝のピークを含む変動)を知る手がかりになる
の目安 値
統計学的な(欧米) 21 mmHg。と視野に異常がないままが平均より2を超えて高い状態をとよぶ3
日本人の 約20 mmHg2

⭐ 正常を超えることと緑内障であることは同じではない。緑内障はと視野の変化で診断し、が正常範囲でも緑内障は起こる()。逆にが高くても視神経が傷まないもある。

💡 角膜の厚さが測定値を左右する。 角膜が厚いとは高めに、薄いと低めに測られる2。ただし個々の患者の値を補正式で直すことは勧められていない3。は1日の中でも季節によっても変動するので2、1回の値で判断しない。緑内障の評価は緑内障 I、の値の扱いはも参照。

⚠️ が疑われる眼には、角膜に触れるを当てない。眼球を圧迫して内容物を押し出すおそれがある。

Hertel 眼球突出計

計は、左右の外側に器械の脚を当て、鏡に映る角膜頂点の位置を目盛りで読んで、から角膜頂点までの距離を測る。

項目 内容
測り方 左右の脚の間隔(基準距離)を記録し、次回も同じ基準距離で測る
正常 成人でおよそ12〜21 mm。平均は白人で男性約16.5 mm・女性約15.4 mm、アフリカ系では1〜2 mm大きい4
異常を疑う 人種・性別ごとのを超える(白人男性で約22 mm、女性で約20 mm、アフリカ系ではさらに2〜3 mm高い)、または左右差が2 mm を超える4
主な原因 ()、、、

💡 は正面より、患者の頭の上から見下ろすと左右差が分かりやすい。突出の鑑別はの鑑別、症候としてはを参照。

眼を守る被覆

検査や処置のあとに眼を覆う方法も、眼科の基本手技である。目的によって使い分ける。

被覆 形 使う場面
時計皿(湿潤室) 皮膚に貼るパッドの中央に透明な半球状の窓がある できない眼(、意識障害・中の患者)で、眼の前に湿った空間を作り角膜の乾燥を防ぐ
(ガーゼ) ガーゼや不透明な保護カップをテープで固定する 手術後やびらんの保護、光を遮る
透明な保護カップ 穴のあいた硬い透明なカップをテープで固定する 手術後の眼の保護。外から眼の様子を見られる

⚠️ やが疑われるときは、眼球を押さない硬い保護カップで覆い、ガーゼで圧迫するはしない(鋭的外傷と)。の眼はなどで角膜が露出し、性角膜症を起こしやすい。

症状から検査を選ぶ

訴え まず行う検査 次に行う検査
見えにくい(徐々に) 視力・ピンホール・屈折 ()、眼底と OCT で黄斑、視野(緑内障)
急に見えなくなった 視力・RAPD・ (・剥離・)
見え方がゆがむ 視力・状の表で片眼ずつ 眼底と OCT で黄斑疾患を確認
物が二重に見える 片眼を隠して消えるか(単眼性か両眼性か) ・眼球運動・
眼が出てきた 計・眼球運動 甲状腺機能、眼窩の画像検査
眼が赤い・痛い 視力・・・ 原因に応じて培養など(赤目の鑑別)

まとめ

  • 検査は「見え方を測る → 光の通り道を見る → 圧と形を測る」の順に、片眼ずつ右眼から行い、を要するは最後に回す。
  • ETDRS は各行5文字で、行ごとに0.1 logMAR ずつ文字が小さくなる。logMAR は小さいほど良く、統計に使える。小数視力1.0=Snellen 20/20=logMAR 0.0。
  • ピンホールで改善すれば、改善しなければ角膜・・網膜・視神経の器質的疾患を疑う。
  • 屈折は自動屈折計でな値を得てから、検眼レンズと試験枠(またはホロプター)で的に決める。小児では下で測る。
  • は(A〜D)と(1〜8)の縞視標で、視力に表れない見えにくさをとらえる。は仮性同色表、はと検査帳で調べる。
  • RAPD は片側の視神経または広範な網膜の障害を示し、では出ない。
  • 視野は Goldmann 動的視野計で周辺の等感度線を、自動で中心30度の各点の感度(単位は dB)と平均欠損・損失分散・を読む。はの耳側約15度。
  • 眼底は直像鏡(・高倍率・狭い視野)、(・広い視野)、と前置レンズ(立体的・高倍率)を使い分ける。前にの深さを確かめる。
  • の標準は Goldmann で、は欧米21 mmHg・日本人約20 mmHg。とに影響され、だけで緑内障は診断しない。
  • 計は外側から角膜頂点までの距離を測る。は人種・性別で異なり(白人でおよそ20〜22 mm)、上限超えか左右差2 mm超で異常を疑う。
  • できない眼には時計皿(湿潤室)、には圧迫しない硬い保護カップを使う。

出典

  1. 1.New visual acuity charts for clinical research(American Journal of Ophthalmology・1982)抄録(PubMed 7091289)で、臨床研究用の新しい視力表は白地に高コントラストの文字で、各行に5つのSloan文字を並べ、各行の難易度をそろえたうえで行ごとに文字の大きさが等比級数的に変わること、そのため各行で文字の大きさだけが変数になること、右眼と左眼で文字の並びが異なる表を使うことを確認した閲覧 2026-09-29
  2. 2.緑内障診療ガイドライン(第5版)(日本緑内障学会 緑内障診療ガイドライン改訂委員会・2022)日本人の疫学調査(多治見研究)に基づく統計学的正常眼圧上限が約20 mmHgであり欧米で慣用される21 mmHgとは異なること、眼圧計は角膜を変形させてその変形量から眼圧を逆算するため中心角膜厚など角膜の物理的性質が測定値を系統的に左右すること、眼圧に日内変動・季節変動があることを確認した閲覧 2026-09-08
  3. 3.Primary Open-Angle Glaucoma Suspect Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2025)2025年版のPDF本体で、高眼圧症が視神経乳頭と視野に障害のないまま眼圧が集団平均より2標準偏差を超えて高い状態と定義され、米国ではこれが通常21 mmHg超を意味すること、測定眼圧と中心角膜厚の関係について一般に受け入れられた補正式はないとされていることを確認した(2026-09-16の逐語確認による)閲覧 2026-09-16
  4. 4.Exophthalmometry(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)Hertel眼球突出計の正常範囲がおよそ12〜21 mmで、平均は白人男性16.5 mm・女性15.4 mm、アフリカ系男性18.5 mm・女性17.8 mm、正常上限は白人男性21.7 mm・女性20.1 mm、アフリカ系男性24.7 mm・女性23.0 mmと人種・性別で異なること、左右差が2 mmを超えれば異常とされることを確認した閲覧 2026-09-29