眼科学

眼科学 · ML-50

鋭的な物による機械的眼外傷

Mechanical eye injuries caused by sharp objects

前提:正常
頭部:眼窩と眼

🧠 全体像:鋭的な物(ナイフ、ガラス、金属片、針金、筆)によるは、に全層の穴を開けるになりやすい。⭐ 医学生に求められる必須能力はを疑ったときの初期対応であり、その幹は一つ:眼球を押さない。硬い保護カップで覆い、もも点眼もせず、刺さった物は抜かず、破傷風の予防と全身の抗菌薬を始め、絶食にして、CT でを探しながら緊急で眼科医へ渡す。⚠️ 金属の異物が疑われる眼に MRI は禁忌である。は取り出しが遅れるほどと金属の毒性が増え、見逃すともう一方の眼まで失うの火種にもなる。

の用語 BETT とは眼の、眼窩と視神経の外傷は眼窩外傷・視神経外傷・、は・熱傷・、外傷後のはで扱う。

なぜ眼外傷が重要か

  • は、防げるはずの片眼の失明との最大の原因である。発展途上国で多い。
  • 外傷とそのは、患者に心理的・経済的なを与える。
  • 職場で多い外傷であり、労働衛生の問題である。

疫学

項目 内容
年齢 2つの山:小児と若年成人、70歳を超える高齢者
性別 男性が女性の3〜5倍
原因 仕事、スポーツ、高齢者では転倒
位置づけ 労働衛生上の問題

⭐ の危険因子は、金属どうしを打つ作業(ハンマーで鉄を叩く、グラインダー)、を着けていないこと、男性である1。

眼外傷の分類

眼外傷の全体の地図

はまず、眼そのものの外傷(局所)、他の部位の外傷との関係、受傷した環境の3つの観点で整理される。

観点 内容
局所の外傷:非機械的 化学、熱、放射線、電気、超音波、気圧
局所の外傷:機械的(付属器) 眼窩、眼瞼、、
局所の外傷:機械的(眼球)の構造による分け方 (角膜・・ぶどう膜・・瞳孔)、(・網膜・・・)
局所の外傷:機械的(眼球)の病態による分け方 閉鎖性(・層状裂傷、眼球の外の異物・の中の異物・を含める整理もある)、(破裂・穿通・穿孔・)、破壊的な損傷(外傷による眼球内容の脱出・眼球の脱出、眼球の周囲の1/3以上に及ぶ全層の裂傷)
他の部位の外傷との関係 ()、顔面外傷、
受傷した環境 先天性(分娩時)、産業、娯楽・スポーツ、交通、犯罪、農業、偶発

💡 この地図のうち、眼球の機械的外傷を「閉鎖性かか」で分けたのが、現在の国際標準である BETT の骨格になっている。

BETT

の国際標準用語 BETT は、世界で受け入れられた分類で、単純で後から追いやすいことがである。基準は(角膜と)の全層に創があるかどうかである。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>"] --> B["閉鎖性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe wall'>眼球壁</span>に全層の創がない"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open globe injury'>開放性眼外傷</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe wall'>眼球壁</span>に全層の創がある"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contusion (blunt injury)'>打撲</span>"]
    B --> E["層状裂傷"]
    C --> F["破裂<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='blunt trauma'>鈍的外傷</span>による"]
    C --> G["裂傷<br>鋭的な物による"]
    G --> H["穿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative'>通性</span>損傷<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='entrance wound'>入口創</span>だけ"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular foreign body'>眼内異物</span>"]
    G --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetrating injury'>穿孔性損傷</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='entrance wound'>入口創</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exit wound'>出口創</span>"]
用語 定義
破裂 でが急に上がり、が内側から裂けた全層の創
裂傷 鋭的な物による全層の創。角膜裂傷、角裂傷、裂傷がある
穿損傷 だけがある裂傷
異物が眼内に残った裂傷(厳密には穿損傷の一つ)
同じ物によるとの両方がある裂傷

⚠️ 「穿通」と「穿孔」を取り違えない。 は眼球を突き抜けてがある損傷で、Ocular Trauma Score では14点を引く重い所見である。

開放性眼外傷の4つの記述項目

は、型・視力の段階・瞳孔・創の位置の区域の4項目で記述する2。

項目 区分
型 1 破裂、2 穿通、3 、4 穿孔、5 混合
視力の段階 grade 1〜5 1 20/40以上、2 20/50〜20/100、3 19/100〜5/200、4 4/200〜、5
瞳孔 陽性:受傷眼に RAPD あり/陰性:受傷眼に RAPD なし
創の位置の区域 zone I〜III I 角膜だけ(を含む)、II 輪部から後ろへ5 mm まで、III それより後ろへ及ぶ

zone は、全層の創の最も後ろの点で決める2。

flowchart TD
    A["全層の創の最も後ろの点はどこか"] --> B["角膜と輪部だけ"]
    A --> C["輪部から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>へ5 mm まで"]
    A --> D["輪部から5 mm より後ろ"]
    B --> E["zone I<br>比較的予後がよい"]
    C --> F["zone II<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary body'>毛様体</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span>に及びうる"]
    D --> G["zone III<br>網膜・視神経に及び予後が悪い"]

💡 zone が後ろほど予後が悪いのは、網膜と視神経という再生しない組織に傷が届くからである。147眼の解析で、網膜・視神経が障害された眼の術後視力は有意に悪く、良好な視力の予測因子はよい初診時視力と zone I・II に限られた外傷だった2。

Ocular Trauma Score

Ocular Trauma Scoreは、受傷直後の所見から6か月後の視力を予測する。

生点の計算3

項目 生点
初診時視力: 60
初診時視力:・ 70
初診時視力:1/200〜19/200 80
初診時視力:20/200〜20/50 90
初診時視力:20/40以上 100
−23
−17
−14
−11
RAPD −10

カテゴリーと6か月後の視力の見込み

Kuhn らの2002年の報告に基づく表では、生点の合計に応じて最終視力の分布が次のように予測される3。

生点の合計 カテゴリー ・ 1/200〜19/200 20/200〜20/50 20/40以上
0〜44 1 74% 15% 7% 3% 1%
45〜65 2 27% 26% 18% 15% 15%
66〜80 3 2% 11% 15% 31% 41%
81〜91 4 1% 2% 3% 22% 73%
92〜100 5 0% 1% 1% 5% 94%

💡 同じ Kuhn 2002 を出典とする表でも、転載によって確率が数%ずつ違う版が流布している(たとえばカテゴリー1で73%・〜17%、カテゴリー5で20/40以上92%とする版。はこちらを載せている)。カテゴリーの境界と配点はどの版でも同じなので、大まかな見込みとして読めばよい。

例:初診時に(70点)、(−23)と(−11)があれば36点でカテゴリー1となり、を失う見込みが最も高い群に入る。

💡 Ocular Trauma Score は患者と家族への説明に使うもので、これだけでなどの治療を決めてはならない。予測には外れがあるからである。

患者の診察

外傷の評価の流れ

  1. 全身の診察(・を見落とさない)
  2. 最高の測定
  3. 可能な範囲での詳しい眼科診察

⚠️ だけは順番が逆になる。 短くしたらただちに洗浄し、詳しい評価はその後に行う(・熱傷・)。

問診で聞くこと

項目 内容
見え方 受傷の直後から急に見えなくなったか、一部だけか
症状 痛み、、
いつ・どこで・どういう状況で 受傷の時刻と場所、周囲の状況
受傷の機転 何がどう当たったか
事故か故意か 事故、偶発、暴行
場所 家庭、職場
保護具 を着けていたか
異物の可能性 異物を伴う機械的外傷か。大きさと形、どのくらいの距離から飛んできたか、入った正確な位置
異物の性質 材質と組成(鉄・・ガラス・植物・土)、どこから来たか、1個か複数か
動物による外傷 動物の種類と外傷の型。感染症(など)を評価するため、その動物を確認できるか
物質の名前。物質の試料があれば pH

💡 「ハンマーで鉄を叩いていて何かが飛んできた」は、を疑う最も典型的な病歴である。高速の小さな金属片は、痛みも小さく創も目立たないまま眼内に入ることがあり、本人も「ゴミが入った」程度にしか感じていないことがある。

障害の部位

部位 含まれるもの
角膜、、瞳孔、
、網膜、黄斑、視神経
保護器官 眼瞼、、
眼窩 骨、、の組織

眼科の診察

検査 ポイント
視力 両眼を別々に測る。最高を測り、矯正がなければピンホールで測る。も測る。すべて記録する
視力が出なければの有無と方向を確かめる
眼底 直像鏡とで見る
を詳しく見る
写真による記録 所見を写真で残す
正確な記録 法的な問題になることがあるので、記録を正確に残す

⚠️ 片眼だけを診ない。 反対の眼にも異物や外傷があることがあり、またを考えるうえでも、受傷時の反対眼の状態の記録が必要になる。

画像検査

検査の使い分け

検査 向いているもの 注意
CT 、の評価、眼内・の異物と出血、。骨の損傷が疑われるとき 第一選択
MRI 眼の周りの軟部組織、血管病変・・視神経病変の疑い、磁性のない眼内・の異物 では禁忌。などの・体内の金属がある人も原則として撮れない
超音波() 出血、、・剥離、破裂、出血、、・・軟部組織・異物 では最大限の注意(眼球を押さない)
単純X線 CT も MRI も使えないとき。眼窩の正面像と側面像で、眼内・の異物 X線を通さない異物しか写らない
血液検査・心電図 全身麻酔の手術に備える ―

CT のポイント

  • 造影なしでも造影ありでも撮れる。
  • で眼球と眼窩の・、で眼窩の天井と床を見る。
  • ⭐ の大きさ・形・位置の評価では、CT がである1。

MRI の禁忌

⚠️ 金属のが疑われる眼に MRI を撮ってはならない。 強い磁場で異物が動き、眼内の組織をさらに裂く。MRI は、異物が非金属であると100%確かな場合に限る1。

超音波のポイント

  • が濁って眼底が見えないときでも、を細かく描出できる。
  • では、眼球を押すと眼内容が押し出されるので、最大限の注意を払う補助検査である1。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>で眼内・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraorbital'>眼窩内</span>の異物<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open globe injury'>開放性眼外傷</span>を疑う"] --> B["CT の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axial image'>横断像</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronal plane'>冠状断</span>"]
    B --> C{"金属の異物の可能性があるか"}
    C -->|"ある"| D["MRI は禁忌<br>CT で位置を決める"]
    C -->|"非金属と確実"| E["必要なら MRI で<br>軟部組織・視神経を評価"]
    B --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular media'>中間透光体</span>が濁っているか"}
    F -->|"濁っている"| G["眼球を押さないよう<br>慎重に B モード超音波"]

初期対応

⭐ の初期対応は、医学生の必須能力である。

救急の現場でやること

すること 理由
異物・は十分に洗い流す(眼球が開いていないとき) 表面の異物とを除く
創の周囲をきれいにする 感染を防ぐ
眼球を押さない 眼内容(・・・網膜)が創から押し出される
硬い保護カップで覆う 眼球に触れずに守る。ガーゼので押さえない
刺さっている物は抜かない 抜くと眼内容が出る・出血する。手術室で抜く
破傷風の予防 免疫歴に応じて・免疫グロブリン
全身のと抗菌薬 痛みとを減らし、を防ぐ
絶食 全身麻酔の手術に備え、嘔吐によるも避ける。を使う

初期対応では、で押さえずに保護具で覆い、破傷風の状況を確かめ、Bacillus と Clostridium を含む広域の抗菌薬を静注で予防的に始め、手術の計画のために最後の飲食の時刻を確かめる1。抗菌薬の選び方は施設で異なり、たとえばの全例に1.5 g を1日3回、1週間静注し、必要なら破傷風のを行った報告がある2。破傷風の予防の考え方は破傷風を参照。

⚠️ を疑ったら、してはいけないこと

  • ()
  • 眼瞼をする、瞼を無理に開ける
  • 点眼薬・を入れる(手術の前に、眼内に入る可能性がある)
  • 眼球を圧迫する超音波
  • 刺さった異物を抜く

💡 眼球は、内圧で形を保つ風船のようなものである。穴が開いた風船を外から押せば、中身が穴から出ていく。「何もしないで覆う」ことが、非専門医にできる最善の治療である。

flowchart TD
    A["鋭的な物・高速の破片による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open globe injury'>開放性眼外傷</span>を疑う所見があるか<br>(全層の創・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris prolapse'>虹彩脱出</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='teardrop pupil'>涙滴状瞳孔</span>・<br>Seidel 陽性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypotony'>低眼圧</span>・360度の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subconjunctival hemorrhage'>結膜下出血</span>)"}
    B -->|"ある"| C["眼球を押さない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonometry'>眼圧測定</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid eversion'>眼瞼翻転</span>・点眼をしない"]
    C --> D["硬い保護カップで覆う<br>刺さった物は抜かない"]
    D --> E["破傷風の予防・全身の抗菌薬<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='analgesic'>鎮痛薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiemetics'>制吐薬</span>・絶食"]
    E --> F["CT で異物と眼窩を評価<br>金属の疑いがあれば MRI は禁忌"]
    F --> G["緊急で眼科へ<br>手術室で創を閉じる"]
    B -->|"ない"| H["視力・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein'>フルオレセイン</span><br>眼底を評価"]
    H --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular foreign body'>眼内異物</span>の病歴があるか<br>(金属を叩く作業など)"}
    I -->|"ある"| F
    I -->|"ない"| J["閉鎖性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>として評価"]

開放性眼外傷

定義と種類

  • 破裂:での全層が裂けたもの。
  • 裂傷:鋭的な物による全層の損傷。部位によって、角膜裂傷・角裂傷・裂傷に分ける。

による破裂はと眼ので扱う。

所見

所見 意味
360度に及ぶ 下に隠れたの創を疑う
の浮腫 同上
の深さの変化 浅い:より前の創(角膜・輪部からが漏れる)/深い:より後ろの創(が後ろから漏れて・が後ろへ下がる)
でが透ける を貫いた小さな穴(欠損)
の損傷 局所の
Seidel 試験陽性 を創に塗ると、流れ出るが蛍光の筋として見える
除外すべきもの 眼内出血、、

💡 の深さで創の位置を推し量れる。 角膜や輪部の創ではが前へ漏れてが浅くなる。より後ろのの創では、が後ろへ漏れ、とが後ろへ引かれてが異常に深くなる。反対眼と比べるとよい。

⚠️ Seidel 試験は、自然に閉じた小さな創を見つけるのに役立つが、陰性でもは否定できない。明らかなでは、眼を押さないことを優先する。

治療

  • 硬い保護カップで覆い、眼球をいじらない。
  • 手術の時期は、患者の全身状態で決まる(では救命が優先)。
  • 麻酔は周囲のか、による全身麻酔で行う。
  • 全身の抗菌薬(と施設によってはステロイド)を使う。

手術

手術用顕微鏡の下で眼を詳しく調べ、治療の方針を立てる。

目標 内容
すべての創を閉じる できるだけ組織をいじらずに、水密に閉じる
脱出した組織を戻すか取り除く は戻せれば戻し、壊死・汚染した組織は切除する
見落とした創を探す 眼球全体を調べる(を開いてを確かめる)
を防ぎ、機能を取り戻す可能性を最大にする 感染予防と、後のに備えた形の回復

一次手術の中心は、細い糸で創の縁を水密に合わせることである。が傷ついていればになり、を入れ替える手術(の挿入)は急性期の後にに行うことが多い2。

眼内異物

特徴

  • にが加わると、にとって本当に難しい外傷になる。
  • はの17〜40%を占め、58〜88%がに入る1。
  • 診断の柱は、詳しい、眼科の診察、画像検査の3つである。

詳しくはを参照。

所見

所見 内容
、の欠損 異物が通った道筋
前房出血、局所の を通過した跡
角膜・の裂傷 。小さく自然に閉じていることがある
の損傷 の中に異物が残ることもある
、網膜内・網膜下の出血 への到達
相対的な の穴
見える異物 ・眼底で直接見える。眼底では、網膜の上にに光る塊として見えることがある
で隅角の異物 小さな異物が隅角に落ち込んでいることがある
B モード超音波、CT 眼底が見えない・異物が見えないときの検索

異物の材質と眼への影響

材質 眼への影響
ガラス・石・ 比較的おとなしい(不活性)
鉄 眼球:鉄イオンが眼内に広がり、の(茶色くなる)、瞳孔の、、網膜の変性を起こす
:の高いは急性の強い炎症(無菌の)、合金では角膜の周辺()の緑褐色の輪やのひまわり状の
植物・土などの有機物 の危険が高い

鉄は眼球、はを起こし、有機物はの危険が大きい1。

異物の取り出し

の異物

  1. 角膜のを閉じる。
  2. 受傷部位から離れた輪部に、または透明角膜切開を置く。
  3. 用の手術レンズ(Koeppe レンズ)で異物を見ながら操作する。
  4. 異物を取り出す(両手の器具で操作することもある)。
  5. 金属の異物はで引き寄せる。

典型例では、の中に細いの異物を認める。

の中の異物

  • 超音波吸引術と一緒に異物を取り出す。

の異物

  • ただちに取り出すことが勧められる。
  • 手順:創を安定させる → でを摘出(必要なとき)→ で網膜を安定させる → 鑷子またはで取り出す → 必要に応じて・眼内タンポナーデ(ガス・)。
  • 予防的なの注射をどうするかは議論がある。予防的なでが13.6%から4.7%に減ったという報告がある1。

の異物の標準はで、が傷ついていればも摘出する1。の全体はの疾患とを参照。

⚠️ なぜ早く取り出すのか。 はの2〜48%に起こり、取り出しの遅れ、の損傷、汚染された環境、の破綻が危険因子である1。植物片や筆記具(筆)の破片は、とくに急いで取り出す1。さらに鉄とは、残っているあいだ眼内を毒し続ける。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular foreign body'>眼内異物</span>を CT で確認"] --> B{"異物はどこにあるか"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>・隅角"| C["角膜の創を閉じる<br>離れた輪部から切開"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gonioscopy'>隅角鏡</span>用レンズで見ながら<br>鑷子または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnet'>磁石</span>で取り出す"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span>の中"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='emulsification'>乳化</span>吸引術と<br>一緒に取り出す"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>・網膜"| F["ただちに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitrectomy'>硝子体手術</span>"]
    F --> G["創の安定 → 必要なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens extraction'>水晶体摘出</span><br>→ 網膜の安定 → 鑷子・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnet'>磁石</span>"]
    G --> H["必要に応じて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='scleral buckling'>強膜バックリング</span>・眼内タンポナーデ"]

眼球の外傷の晩期合併症

合併症 内容
の炎症。ステロイド点眼・
の破綻・衝撃で濁る
外傷による 隅角の癒着による/に伴う(赤血球・溶血産物が流出路を詰める)/の損傷による(の蛋白・膨化)
外傷そのものによる、またはの増殖と牽引による()
金属による眼球の反応 眼球、
受傷していない眼にも起こる両眼性のぶどう膜炎
の傷跡から新しい血管が伸びる
。では割合が大きく上がる

外傷後のの割合と治療は、隅角の癒着とは緑内障 IIを参照。

交感性眼炎

  • 定義:外傷や手術で、それまで免疫から隔離されていた眼内の抗原(ぶどう膜・網膜)が露出して起こる、まれな両眼性のである4。受傷した眼(刺激眼)だけでなく、受傷していない眼(交感眼)にも炎症が起こる。
  • しくみ:露出したぶどう膜・網膜の組織に対する T 細胞による4。
  • 頻度と時期:後の発生は6か月で0.13%、10年で0.18%で、74.3%は最初の6か月に起こる。受傷から発症までの間隔は5日〜66年と幅がある4。
  • 所見:のびまん性のと、と Bruch 膜の間のの集まり(Dalen-Fuchs 結節)が特徴である4。受傷していない眼の、、充血で気づく。
  • 予防:受傷した眼の摘出・内容除去で予防を図る考え方があるが、時期と必要性については議論がある4。
    • 従来は「視機能の見込みのない眼を受傷後およそ2週間以内に摘出すれば予防できる」と教えられてきた(歴史的な整理)。
    • 現在は、30日以内の早期の眼球除去でものリスク低下とは関連しなかったという報告があり、がまれで治療が有効になったことから摘出に反対する立場もある。受傷眼も治療で有用な視力を保ちうる4。
    • ⚠️ が起きてから刺激眼を除去する利点は知られていない4。視力の見込みだけを理由に急いで摘出を決めない(Ocular Trauma Score も摘出の根拠にしない)。
  • 治療:ステロイドが基本で、急性期はの、・などのを併用する4。

⚠️ の後は、受傷していない眼の見え方の変化(・・近くが見にくい)をすぐ伝えるよう患者に説明する。は数十年たってから起こることもある。ぶどう膜炎の全体はを参照。

臨床での教訓

教訓 理由
ただちに治療する さらなる損傷を防ぎ、最大の結果を得る
片眼だけを診ない。両眼を見る 反対眼の外傷・異物、の基準
最高を必ず測る 予後の最大の指標であり、法的な意味をもつ
視力がよくても重い外傷がありうる 小さなは視力を落とさずに眼内に入る
片眼の赤目を単なる結膜炎と決めつけない や小さな穿孔を見逃す
記録を残す 医学的にも法的にも必要
で予防する の多くは防げる

⚠️ 「片眼の赤目+金属を叩く作業」は、結膜炎ではなくを疑う。 赤目の鑑別は赤目の鑑別を参照。

まとめ

  • は防げる片眼の失明の最大の原因。小児・若年成人と70歳超の2つの山、男性が3〜5倍、仕事・スポーツ・高齢者の転倒。労働衛生の問題。
  • の全体は、局所(非機械的・機械的)、他部位の外傷との関係、受傷環境で整理される。眼球の機械的外傷は BETT で閉鎖性(・層状裂傷)と(破裂・裂傷)に分け、裂傷は穿(入口だけ)・・穿孔性(入口と出口)に分ける。
  • は型・視力の段階・瞳孔の RAPD・創の区域で記述する。zone I は角膜と輪部、II は輪部から5 mm まで、III はそれより後ろ。後ろの zone と網膜・視神経の障害は予後不良。
  • Ocular Trauma Score:初診時視力の生点から−23・−17・穿孔性−14・−11・RAPD −10。合計でカテゴリー1〜5(カテゴリー1は74%が、5は94%が20/40以上)。説明のであり、治療の決定には使わない。
  • 評価は・全身・最高・眼科診察の順。だけは洗浄が先。では受傷の機転、保護具、異物の大きさ・距離・材質・数、動物、と pH を聞く。視力は両眼別々に測り、すべて記録する。
  • 画像は CT が第一(の評価の)。⚠️ ・・体内金属では MRI 禁忌。超音波はでは押さないよう最大限の注意。X線は CT・MRI がないとき。
  • ⭐ 初期対応:眼球を押さない、硬い保護カップ、・・点眼をしない、刺さった物は抜かない、破傷風の予防、全身のと抗菌薬、絶食、緊急で眼科へ。
  • の所見:360度の、、の深さ(浅い=より前、深い=後ろ)、欠損、損傷と局所の、Seidel 試験。手術は顕微鏡下にできるだけいじらず全創を水密に閉じ、見落とした創を探す。
  • はの17〜40%、58〜88%が。の異物は離れた切開から用レンズで見て鑷子・、内は吸引術と同時、はただちに。は2〜48%で取り出しの遅れが危険因子。
  • :、、(・・損傷)、、眼球・、(後6か月で0.13%、74.3%が6か月以内)、、。
  • 片眼の赤目を安易に結膜炎としない。視力がよくても重い外傷はありうる。予防は。

出典

  1. 1.Intraocular Foreign Bodies (IOFB)(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)眼内異物が穿通性眼外傷の17〜40%を占め、58〜88%が後眼部に入ること、危険因子が金属どうしを打つ作業・保護眼鏡の不使用・男性であること、CT が大きさ・形・位置の評価のゴールドスタンダードで、金属異物では位置がずれる危険から MRI は禁忌、非金属と100%確実な場合に限ること、超音波は慎重に行う補助検査であること、初期対応として眼帯で押さえず保護具で覆い、破傷風の状況を確認し、Bacillus と Clostridium を含む広域の抗菌薬を静注で予防的に始め、手術の計画のために最後の飲食の時刻を確かめること、植物片と筆記具の破片は緊急に取り出すこと、鉄で眼球鉄症・銅で眼球銅症が起こること、眼内炎が2〜48%に起こり、取り出しの遅れ・後眼部の損傷・汚染環境・水晶体嚢の破綻が危険因子で、予防的な硝子体内抗菌薬で13.6%から4.7%に下がったこと、前眼部の異物は輪部切開から磁石か鑷子で、後眼部の異物は硝子体手術で取り出し、水晶体が障害されていれば水晶体を摘出することを確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Open Globe Injuries: Classifications and Prognostic Factors for Functional Outcome(Diagnostics(Mayer CS, Reznicek L, Baur ID, Khoramnia R)・2021)Europe PMC 経由の全文(PMC8534971)で、開放性眼外傷を型(破裂・穿通・眼内異物・穿孔)、grade(術前視力:1 >20/40、2 20/50〜20/100、3 19/100〜5/200、4 4/200〜光覚、5 光覚なし)、zone(創の最も後ろの点が I 角膜と輪部、II 輪部から強膜へ5 mm まで、III それより後ろ)、Ocular Trauma Score のカテゴリーで分類すること、Ocular Trauma Score の減点項目(眼球破裂23・RAPD 10・眼内炎17・網膜剥離11・穿孔性損傷14)とカテゴリー境界、147眼で後眼部(網膜・視神経)が障害された眼の術後視力が有意に悪く、良好な転帰の予測因子が良い初診時視力と zone I・II に限られた外傷だったこと、眼内異物は147眼中38眼(25.9%)で84.2%が金属だったこと、全例に眼内炎予防のセフロキシム1.5 g 1日3回を1週間全身投与し必要なら破傷風の予防接種を行ったこと、一次手術の目標が細いモノフィラメント糸による創の水密な閉鎖であることを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Open globe injuries in a croatian cohort: characteristics and prognostic value of the ocular trauma score in predicting the final visual outcome(Eye(Borjan I, Pleština-Borjan I, Stanić R, Znaor L)・2025)PMC 全文(PMC12210725)の表1・表2で、Kuhn ら2002年の Ocular Trauma Score の配点(初診時視力 光覚なし60・光覚〜手動弁70・以下80・90・100、眼球破裂−23・眼内炎−17・穿孔性損傷−14・網膜剥離−11・RAPD −10)と、生点0〜44・45〜65・66〜80・81〜91・92〜100のカテゴリー1〜5ごとの6か月後視力の確率(1:74/15/7/3/1%、2:27/26/18/15/15%、3:2/11/15/31/41%、4:1/2/3/22/73%、5:0/1/1/5/94%)が Kuhn 2002 からの転載として示されていることを確認した(表2の2行目の生点の範囲は「45–46」と誤植されている)。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Sympathetic Ophthalmia(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)交感性眼炎が外傷や手術で免疫学的に隔離されていた眼内抗原が露出して起こるまれな両眼性の肉芽腫性ぶどう膜炎で、T細胞による自己免疫反応であること、開放性眼外傷後の発生が6か月で0.13%、10年で0.18%で、74.3%が最初の6か月に起こること、発症までの間隔は5日〜66年であること、脈絡膜のびまん性肉芽腫性炎症と Dalen-Fuchs 結節が特徴であること、受傷眼の摘出・内容除去で予防を図るが時期と必要性には議論があること、30日以内の早期の眼球除去が交感性眼炎のリスク低下と関連しなかったこと、発症後に刺激眼を除去する利点は知られていないこと、交感性眼炎がまれで現代の治療が有効なため眼球除去に反対する立場があり、刺激眼も治療後に有用な視力を保ちうること、治療の基本がステロイド(急性期はメチルプレドニゾロンのパルス療法)とシクロスポリン・アザチオプリンなどの免疫調整薬であることを確認した。閲覧 2026-09-29