眼科学

眼科学 · ML-49

眼の鈍的外傷

Blunt trauma of the eye

前提:正常
頭部:眼窩と眼

🧠 全体像:は、ボール・拳・シャンパンの栓のようなとがっていない物が眼に当たる外傷である。当たった瞬間に眼球は前後につぶれてが横へ引き伸ばされ、その衝撃波が眼の奥へ伝わる。だから壊れる場所は前から順に、 → (前房出血)→ と隅角(・・)→ (・)→ と網膜(・・)→ (破裂)と並ぶ。そして最も重いのが、そのものが内側から裂けるである。受傷直後に見るべきは、①眼球が開いていないか ②前房出血と ③眼底の3つである。

のうち眼窩の骨折(吹き抜け骨折)と視神経の外傷は眼窩外傷・視神経外傷・、鋭的な物による外傷とは鋭的な物による機械的、は・熱傷・で扱う。

眼外傷の用語をそろえる

BETT による分類

の国際標準用語 BETT は、(角膜と)に全層の穴が開いたかどうかで、まず閉鎖性とに分ける。の記録・紹介・研究はこの用語で行う。

flowchart TD
    A["機械的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe wall'>眼球壁</span>に全層の創があるか"}
    B -->|"ない"| C["閉鎖性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>"]
    B -->|"ある"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open globe injury'>開放性眼外傷</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contusion (blunt injury)'>打撲</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe wall'>眼球壁</span>は保たれ、内部が傷つく)"]
    C --> F["層状裂傷<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe wall'>眼球壁</span>の途中までの裂け目)"]
    D --> G["破裂<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='blunt force'>鈍的外力</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surge'>急上昇</span>し<br>内側から外へ裂ける"]
    D --> H["裂傷<br>鋭的な物で外から切れる"]
    H --> I["穿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative'>通性</span>損傷<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='entrance wound'>入口創</span>だけ"]
    H --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular foreign body'>眼内異物</span><br>異物が眼内に残る"]
    H --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetrating injury'>穿孔性損傷</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='entrance wound'>入口創</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exit wound'>出口創</span>がある"]
用語 定義 典型的な原因
に全層の創がない。衝撃で内部の組織が傷つく ボール・拳
層状裂傷 の途中までの裂け目 紙・葉・爪による角膜の浅い傷
による全層の創。ので内側から裂ける 強い、転倒
裂傷 鋭的な物による全層の創。外から切れる ナイフ・ガラス・金属片

で起こるのは、主に・層状裂傷・(の破裂を含む)の3つである。

💡 「破裂」と「裂傷」を分ける意味は、創のできる場所と予後が違うことにある。破裂はの弱いところ(、直筋の付着部の後ろ)で内側から大きく裂けるので、眼内容の脱出が多く視力予後が悪い。

予後の目安:Ocular Trauma Score

Ocular Trauma Scoreは、受傷直後の所見から6か月後の視力を予測するスコアである。初診時の視力で生点を決め、悪い所見の分を引く1。

項目 点
初診時視力:20/40以上/20/50〜20/200/1/200〜19/200/・/ 100/90/80/70/60
−23
−17
−14
−11
RAPD −10

合計を5つのカテゴリー(1:45点未満、2:45〜65、3:66〜80、4:81〜91、5:92〜100)に分け、カテゴリーが低いほど予後が悪い1。⭐ 減点が最も大きいのはの−23点である。では、のほか、の−11点と、視神経や網膜の広い障害を示す RAPD の−10点が点を下げる項目になりやすい。

疫学と重症度を決めるもの

  • 鈍的なは、人口10万人あたり年3〜4人ほどに起こる。
  • 典型的な原因は、スカッシュのボール、荷物を留めるゴムひも(付きのバンジーコード)、シャンパンの栓などである。
  • 重症度は次の要素で決まる。
要素 内容
の大きさ 当たった物の、力の向き
物の形 角があるか丸いか
物の大きさ サッカーボール → テニスボール → スカッシュボールの順に眼球へ直接当たりやすくなる

💡 小さいボールほど危ない。 サッカーボールは眼窩の縁(骨)で止まるので、衝撃の多くを骨が受ける。眼窩の入口より小さいスカッシュボールやシャンパンの栓は、縁をすり抜けて眼球そのものを直撃する。ゴルフボールや小さい栓も同じ理由で重いを起こす。

眼球に何が起こるか

の瞬間、眼球には2つの力が働く。

  1. 前後方向の圧迫との伸展:前から押された眼球は前後につぶれ、その分だけが横へ引き伸ばされる。に付く組織(、、を支える、周辺部の網膜と)が引きちぎられる。
  2. 衝撃波の伝わり:衝撃が眼球の中を前から後ろへ伝わり、と反対側の(黄斑・の周り)に傷を作る()。
flowchart TD
    A["鈍的な物が眼球に当たる"] --> B["眼球が前後につぶれる"]
    A --> C["衝撃波が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior pole'>後極部</span>へ伝わる"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='equator (equatorial zone)'>赤道部</span>が横へ引き伸ばされる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris root'>虹彩根部</span>・隅角:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iridodialysis'>虹彩離断</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angle recession'>隅角後退</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zonular fibers'>毛様小帯</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subluxation'>亜脱臼</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dislocation'>脱臼</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous base'>硝子体基底部</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral retina'>周辺網膜</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal tear'>網膜裂孔</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ora serrata'>鋸状縁</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>"]
    B --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surge'>急上昇</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe rupture'>眼球破裂</span><br>(輪部・直筋付着部の後ろ)"]
    C --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior pole'>後極部</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='commotio retinae'>網膜振盪</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Berlin edema'>Berlin浮腫</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>破裂・黄斑円孔"]

浅い傷:角膜の層状損傷

とがっているがの小さい物(紙の端、木の葉、爪)がかすると、の全層は裂けず、角膜の表面だけが傷つく。

深さ 経過
上皮だけ(浅い) 上皮はすぐに治るが、上皮と基底膜の接着が弱いまま残り、を起こしうる。朝の目覚めに瞼を開けた瞬間の激痛が典型
実質まで(深い) 実質の瘢痕を残して治ることがある

💡 爪や紙による傷は、刃物より浅いのにあとから何度も再発することで問題になる。基底膜ごと上皮がはがれるので、新しい上皮がしっかり接着できないためである。

前眼部の鈍的外傷

症状と所見の一覧

症状は痛みと見え方の異常である。には次の所見が出る。

部位 所見 見るポイント
、の裂傷 360度に及ぶ高度なとの浮腫は、下に隠れたを疑う
角膜 上皮欠損 で染まる
前房出血 下方に赤い血液の水平面をつくる
、 瞳孔が大きく、形がいびつで反応が鈍い
隅角 、 で見る。あとから緑内障になる
、の・ 白く濁る、が揺れる、瞳孔の中にの縁が見える

前房出血

前房出血は、やの血管が裂けてに血液がたまった状態である。座位では血液が下方に沈み、上縁が水平な赤い層として見える。典型例では、強い充血の中での下方に暗赤色の血液の水平面を認める。

重症度の分類2

grade に占める血液
0 微小前房出血 赤血球がしているが、層をつくらない
I 1/3未満
II 1/3〜1/2
III 1/2〜全体未満
IV 全前房出血 全体。のもの、または暗赤〜黒色のもの(黒色前房出血)

治療の原則

状況 対応
1/3未満の前房出血 保存的治療。を管理する
50 mmHgを超える(現行の基準では、最大限の薬物治療でも5日を超えて続く) 手術()
角膜に血液がしみ込む() 手術()

保存的治療の中身は、保護、活動の制限、45度以上の、ステロイド点眼、(の痙攣とを和らげる)、そしてアスピリンと NSAIDs を避けることである。が上がればを抑える点眼(など)で下げる。(、)も選択肢に挙げられている2。

💡 前房出血が大きいほどは上がりやすい。235例の報告では、は grade I〜II で13.5%、grade III で27%、grade IV で52%にみられ、再出血した例では50%を超えた2。ただし鎌状赤血球症では、少量の出血でもが上がる。

は外傷の範囲を知り、やを見つけるのに欠かせない。ただし、とくに角膜を圧迫して隅角を開いて見る検査は、再出血の危険が高い最初の5日間を過ぎてから行ってよい2。

手術の目安として「50 mmHg超」をまず覚える。ただし現行の整理では、一度50 mmHgを超えたらすぐ手術というわけではなく、最大限の薬物治療をしても50 mmHg以上が5日を超えて続くことが基準である。まず最初の4日ほどは薬物治療で経過を見て、その後もコントロールできない緑内障、、大きい前房出血・全前房出血の持続、内の活動性の出血があれば手術を考える。実際に手術を要するのは約5%である2。

⚠️ 再出血に注意する。 再出血は前房出血の3.5〜38%(全体では5〜10%程度)に起こり、多くは受傷後5日以内である2。最初のが縮んで溶けるときに、傷んだ血管から再び出血するためである。再出血は最初の出血より重くなりやすく、緑内障・・癒着を起こしやすい。再出血の危険因子は、または、の半分以上を占める出血、全身の高血圧、アスピリンの服用であり、黒人の患者でも危険が高いとされる2。

⚠️ 鎌状赤血球症と保因者では基準が厳しくなる。 赤血球がの中でしてを詰まらせやすく、視神経もに弱い。最大限の薬物治療でも25 mmHg超が24時間を超えて続けば手術を考える。薬の選び方も変わる。(など)はを酸性にして内のを強めるので一般に避け、薬()は脱水状態の鎌状赤血球症の患者での発作を誘うので避ける。α1作用の強いも、血管を収縮させて血管内のを促すおそれがあり懸念される2。前房出血の患者で人種・家族歴から鎌状赤血球症の可能性があれば、保因者かどうかも含めて検査で確認する(アフリカ系の患者では全員に鎌状赤血球のスクリーニングを行うよう勧められている)2。

合併症

合併症 内容
赤血球がを詰まらせてが上がる
角膜が黄褐〜橙色にびまん性に濁る。高いと大きな前房出血で起こりやすい。消えるのに長い時間がかかり、小児ではの原因になる
の癒着 ・
再出血 上記

外傷性虹彩炎

の後、数日のうちにに炎症細胞が出て、痛み・・充血が起こる。ステロイド点眼とで治療する。瞳孔の癒着を防ぐこともの目的である。前部ぶどう膜炎全般はぶどう膜炎の分類と前部ぶどう膜炎で扱う。

虹彩・隅角の損傷

損傷 起こること 所見
の・麻痺 瞳孔が大きく、が鈍い。に切れ込み
の根部がからはがれる 瞳孔の横にもう一つの黒い隙間(偽瞳孔)ができ、単眼のやまぶしさの原因になる
のとの間が裂ける でが異常に広く見える
の周辺部が角膜の裏に張り付く 隅角が閉じてが上がる
  • は、瞳孔の異常の鑑別はを参照。
  • ⚠️ を動眼神経麻痺と取り違えない。 の患者で片側の瞳孔が大きいとき、眼そのもののによる(の切れ込み、前房出血、眼瞼の痕を伴う)か、頭蓋内の病変によるかを区別する。

⭐ は「何年も後の緑内障」を起こす。 受傷直後はが正常でも、年月を経てが線維化してが上がる。緑内障になるのはのある眼の一部だが、は受傷後1年以内と数年後の2つの時期に起こりうる。前房出血を起こした眼、とくにの範囲が広い眼では、生涯にわたって定期的にを測る。詳しくはを参照。

水晶体の損傷

損傷 所見
が白く濁る。や前房出血と一緒に見られることが多い
の の一部が切れてがずれる。すると瞳孔の中にの縁が見え、のない部分から眼底の赤い反射が見える。やが眼球運動で揺れる
の がすべて切れ、がまたはへ落ちる

の位置異常の全体は、の手術はの疾患とを参照。

⚠️ がへすると、による急なとの障害を起こすので、早く手術を考える。

後眼部の鈍的外傷

所見の一覧

時期 所見
受傷直後 、網膜の浮腫()、、、破裂
しばらくたって 黄斑円孔、網膜上膜

網膜振盪と Berlin 浮腫

は、衝撃で網膜の(の)が傷つき、が光沢のある灰白色にする状態である。を受けた部位にも、反対側の部位にも起こる。病院を受診するの約30%にみられる3。

部位 所見
周辺部の 周辺の網膜が広く白っぽくし、その上をが走る
黄斑に及ぶ浮腫(Berlin 浮腫) の網膜が白っぽくし、だけが相対的に赤く目立つ
  • 見た目のは1週間以内に消え、多くは4週間以内に回復する3。
  • 一方、黄斑に及んだ例の26%では視力障害(20/30未満)が残る。黄斑の外だけの例で視力障害が残るのは3%にとどまる3。
  • 確立した治療はなく、経過を見る3。

💡 黄斑の中心だけが赤く見えるのは、の網膜が薄く、した網膜の下のの赤さが透けるからである。この偽桜実紅斑は閉塞の桜実紅斑に似るが、外傷歴と経過で区別できる3。

網膜裂孔・網膜剥離

の伸展で、が網膜を引きちぎる。周辺部に大きな裂孔(あるいはでの)ができ、そこからに進む。

  • 典型例では、周辺部の網膜に縁のめくれた大きな裂け目を認め、周囲に出血を伴う。
  • 外傷によるは、受傷からしばらくたって起こることがある。・・視野の欠けが出たらすぐ受診するよう伝える。
  • の全体はを参照。

脈絡膜破裂

破裂は、・Bruch 膜・のである4。

型 部位 頻度
直接破裂 を受けた周辺部 少ない
間接破裂 。衝撃が反対側へ伝わって起こる 多い
  • に、との白〜黄色のの線として見える4。すると、白い線の周りに色素沈着を伴う。
  • 受傷直後はに隠れて見えないことがある4。
  • 破裂そのものは自然に瘢痕となって治る。
  • ⚠️ あとからが出ることがある。 破裂の7.9%に起こり、その88%はに及ぶ破裂だった。別の研究では、受傷から診断まで平均5.7か月(2〜12か月)かかっていた。抗 VEGF 薬で治療する4。受傷から数か月は、ゆがみ()を自分でも確かめるよう伝える。
  • の下を通る破裂は視力予後が悪い4。

💡 乳頭とになるのは、Bruch 膜が伸びにくく、という固定点の周りでが引き伸ばされたときに、乳頭を中心とする円弧に沿って裂けるからである。

遅れて出るもの

強膜の潜在性破裂と眼球破裂

⭐ の最重症型はである。 とくに危ないのは、の下でが裂けているのに、が破れていないため創が見えない破裂である。

裂けやすい場所

場所 理由
に沿って 角膜との境目で構造が変わる
直筋の付着部に沿って(その後ろ) が最も薄い
以前の ・などの創が弱い

によるは、輪部の周り、直筋付着部のすぐ後ろの最も薄い、以前の手術の創に起こりやすい1。

疑う手がかり

手がかり 内容
が低い(すでに測っていた場合) 眼球が開いて・が漏れている
高度な・の浮腫 とくに360度に及ぶもの。下のの創を隠す
が異常に深い、または浅い 後方の破裂ではが深くなる
瞳孔の変形 が創に引き込まれて涙滴状になる
高度の、RAPD の広い損傷

⚠️ 「疑うこと」が診断の第一歩である。 が低く、が強く、見え方が悪いでは、創が見えなくても破裂を考え、手術室でを開いてを確かめる(外科的な検索)。確定するまではとして扱い、眼球を押さない。⚠️ を疑った時点で、・・点眼はしない(眼球を押して眼内容を押し出すおそれがある)。は疑いの手がかりだが、疑わしい眼でわざわざ測って確かめるものではない。

flowchart TD
    A["鈍的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe rupture'>眼球破裂</span>を疑う所見があるか<br>(高度な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subconjunctival hemorrhage'>結膜下出血</span>・瞳孔変形・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber depth'>前房深度</span>の異常・高度の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>)"}
    B -->|"ある"| C["眼球を押さない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonometry'>眼圧測定</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid eversion'>眼瞼翻転</span>・点眼をしない<br>硬い保護カップを当てる"]
    C --> C2["破傷風の予防・全身の抗菌薬<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='analgesic'>鎮痛薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiemetics'>制吐薬</span>・絶食"]
    C2 --> D["CT で眼球・眼窩・異物を評価"]
    D --> E["緊急で手術室へ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>を開いて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>を検索し縫合"]
    B -->|"ない"| F["視力・瞳孔・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior segment'>前眼部</span>を評価"]
    F --> G{"前房出血があるか"}
    G -->|"ある"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>を測る・安静と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head-of-bed elevation'>頭部挙上</span><br>鎌状赤血球症を確認<br>再出血を5日ほど見張る"]
    G -->|"ない"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>して眼底を評価<br>(意識障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head injury (head trauma)'>頭部外傷</span>で瞳孔を経過観察中なら<br>先に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurosurgery'>脳神経外科</span>と相談)"]
    H --> I
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='commotio retinae'>網膜振盪</span>・裂孔・剥離・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>破裂の有無を確認"]

初期対応の手順(保護カップ、絶食、破傷風の予防など)はと共通であり、鋭的な物による機械的とで詳しく扱う。

吹き抜け骨折(概要)

眼窩の入口より大きい物(野球のボールなど)が当たると、眼窩の中の圧が急に上がり、最も薄い眼窩の床(の天井)が下へ抜ける。や眼窩の組織がへ落ち込んで挟まる。

所見 起こる理由
上下方向の眼球運動の制限、 ・眼窩組織が骨折部に挟まる
の出血
眼瞼の腫れ 軟部組織の
頬の感覚の低下 の損傷
同じ側の への出血

💡 眼窩の床が抜けることで、眼球にかかる圧が逃げ、眼球そのものの破裂が防がれるとも説明される。吹き抜け骨折の診断と手術の適応は眼窩外傷・視神経外傷・とで扱う。

損傷別の治療

損傷 治療
抗菌薬の点眼・、上皮の修復を助ける治療
前房出血 安静と、ステロイド点眼・。の治療。薬物治療でも50 mmHg以上が5日超(鎌状赤血球症では25 mmHg超が24時間超)やでは
ステロイド点眼、
・ 急性期には手術しない。まぶしさやが残れば、あとで他の手術(など)と組み合わせてを縫う
の損傷 による炎症(起因性ぶどう膜炎)やを起こせば手術。そうでなければ、急性期の炎症が落ち着くまで手術を延ばす
多くは自然に吸収される。が隠れていないか超音波で確かめる
で裂孔の周りを固める
手術(、)
破裂 自然に瘢痕となって治る。が出れば抗 VEGF 薬
生涯にわたるの経過観察。緑内障になれば治療

💡 のを急がない理由:受傷直後の眼は炎症が強く、出血しやすく、どこまで壊れているかも分かりにくい。炎症が引いてから、・・隅角をまとめて一度の手術で直すほうが、手術の回数も合併症も少なくなる。ただし、がへ落ちた場合、による炎症やがある場合、がある場合は待たない。

⚠️ で眼底が見えないときは、B モード超音波でを確かめる。 ただしが否定できないときは、眼球を押す超音波は行わない。

予防

  • 鈍的なの多くは、スポーツ・作業・遊びの場面で起こる。
  • ポリカーボネート製の(スカッシュ・ラケットボール用のゴーグル、作業用の)で大部分を防げる。
  • シャンパンの栓は人に向けず、手で押さえながら開ける。ゴムひもはが外れて顔に跳ね返る。

まとめ

  • は、とがっていない物が眼に当たる外傷。BETT ではに全層の創がない閉鎖性(・層状裂傷)と、全層の創があるに分け、で内側から裂けるものをと呼ぶ。
  • Ocular Trauma Score は初診時視力の生点から−23・−17・−14・−11・RAPD −10 を引き、5つのカテゴリーで6か月後の視力を予測する。
  • 年に人口10万人あたり3〜4人。スカッシュボール・ゴムひも・シャンパンの栓が典型。重症度はの大きさ(・向き)、物の形と大きさで決まり、眼窩の入口より小さい物ほど眼球を直撃する。
  • で眼球は前後につぶれてが伸び、衝撃がへ伝わる。壊れる順は角膜 → → ・隅角 → → ・網膜 → 。
  • 爪・紙・葉による浅い角膜の傷はを起こし、治りにくければ PTK。深い傷は実質の瘢痕を残す。
  • 前房出血:1/3未満は保存的治療と管理、50 mmHg超(現行では薬物治療でも5日超続く場合)やで。再出血は多くが受傷後5日以内。鎌状赤血球症では25 mmHg超が24時間を超えれば手術を考え、・薬は避け、にも注意する。は再出血の危険期を過ぎてから。
  • ・・・・の。は何年も後の緑内障を起こすのでを生涯見る。
  • :、(は Berlin 浮腫。多くは4週間以内に回復するが黄斑例の26%に視力障害)、・剥離、破裂(乳頭との。7.9%に)。あとから黄斑円孔・網膜上膜。
  • の破裂は輪部と直筋付着部の後ろに起こる。・高度な・なら疑い、眼球を押さずに外科的に検索する。
  • 吹き抜け骨折は上下の・・眼瞼の腫れ・頬の・同側の(詳細は ML-52)。
  • 治療は損傷ごと。は多くが自然に吸収、はレーザー、は手術、破裂は自然に。の再建はあとでまとめて行う。予防は。

出典

  1. 1.Open Globe Injuries: Classifications and Prognostic Factors for Functional Outcome(Diagnostics(Mayer CS, Reznicek L, Baur ID, Khoramnia R)・2021)Europe PMC 経由の全文(PMC8534971)で、Ocular Trauma Score が初診時視力の生点から眼球破裂23点・RAPD 10点・眼内炎17点・網膜剥離11点・穿孔性損傷14点を引いて算出し、カテゴリー1〜5(45点未満、45〜65、66〜80、81〜91、92〜100)に分けること、鈍的外傷による眼球破裂が角膜輪部の周囲、直筋付着部のすぐ後ろの最も薄い強膜、以前の手術創に起こりやすいことを確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Hyphema(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)前房出血の grade 0〜IV の区分(grade I は前房の1/3未満、II は1/3〜1/2、III は1/2から全体未満、IV は全前房)、再出血が3.5〜38%(全体では5〜10%程度)に起こり通常受傷後5日以内であること、鎌状赤血球症・保因者では眼圧25 mmHg超が24時間を超えれば手術を考え、一般には50 mmHg以上が5日を超える場合とすること、鎌状赤血球症で炭酸脱水酵素阻害薬(房水の酸性化)を一般に避け、高浸透圧薬を脱水状態で避け、α1作用の強いアプラクロニジンが血管内の鎌状化を促しうる懸念があること、アフリカ系の患者全員に鎌状赤血球のスクリーニングを行うこと、Coles の235例で眼圧上昇が grade I〜II 13.5%・III 27%・IV 52%で再出血例では50%超だったこと、隅角鏡検査を再出血の危険が高い5日間の後に遅らせてよいこと、保護眼帯・安静・45度以上の頭部挙上・ステロイド点眼・調節麻痺薬・アスピリンとNSAIDsの回避・抗線溶薬の選択肢、最大限の薬物治療でも眼圧が下がらない場合の基準であること、最初の4日ほどは薬物治療で経過を見てその後もコントロールできない緑内障・角膜血染・大きいまたは全前房出血の持続・前房内の活動性出血があれば手術を考えること、再出血の危険因子が低眼圧または眼圧上昇・前房の50%以上の出血・全身の高血圧・アスピリンの服用で黒人でも危険が高いこと、手術を要するのは約5%であることを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Commotio Retinae(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)網膜振盪が打撃部位(直撃)と離れた部位(対側)に起こりうること、病院を受診する眼外傷の約30%にみられること、中心窩に及ぶと偽桜実紅斑がみられること、後極部のものを Berlin 浮腫と呼ぶこと、所見が神経網膜の灰白色の混濁であること、見た目は1週間以内に消え、多くは4週間以内に回復するが、黄斑に及んだ例の26%で視力障害(20/30未満)が残り黄斑外では3%であること、確立した治療がないことを確認した。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Choroidal Rupture(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)脈絡膜破裂が脈絡毛細血管板・Bruch膜・網膜色素上皮の断裂であること、後極部に視神経乳頭と同心円状の白〜黄色の三日月形の線として見える間接破裂が多いこと、受傷時には網膜下出血に隠れること、脈絡膜新生血管が7.9%(101眼中8眼)に起こり、その88%が中心窩に及ぶ破裂であったこと、別の研究で受傷から診断まで平均5.7か月(2〜12か月)だったこと、抗VEGF薬で治療できること、中心窩下の破裂は視力予後が悪いことを確認した。閲覧 2026-09-29