眼科学

眼科学 · ML-40

網膜剥離

Retinal detachment

前提:正常
感覚器:眼眼:眼胞と眼杯

🧠 全体像:は、がから剥がれ、その間に液がたまる状態である。2枚はもともとの内外の壁が向き合っているだけなので離れやすい。最も多いは、加齢でしたが網膜から離れるとき()に周辺の網膜を引きちぎり、その裂孔からが網膜の下へ流れ込んで起こる。症状は「 → → カーテン状の」。裂孔の段階なら・で瘢痕の垣根を作って剥離を防げ、剥離したら内陥術・・で裂孔を閉じる。黄斑が剥がれる前に治すほど視力が残る。

疾患としての整理は、症状からの入り口はとにある。の詳細は疾患と、界面の病気は界面の疾患で扱う。

硝子体と網膜は一体で病む

疾患という言葉のとおり、の病気と網膜の病気は互いに結びついている。の多くは、の変化から始まる。

硝子体の構造

部位 内容
をまたぐ帯状の部分。が網膜と最も強く癒着する
Wieger の前面がの後面と接する輪状の付着
Berger 腔 Wieger の内側で、後面との間のすき間
Cloquet 管 乳頭からの後ろへ前後に走る管。のの通り道の名残
Martegiani 輪 の縁でが付着する輪

と網膜が生理的に強く付着している場所は、、の周囲、黄斑()である。この3か所が、が収縮・剥離するときに網膜が引っ張られる病的な接点になる。

付着部 引っ張られたときに起こる病気
(周辺部) →
乳頭上の出血、
黄斑 、黄斑円孔

成分と加齢変化

  • とが状に結びついたゲルである。の網の中をコラーゲン細線維が走り、水を抱えて形を保つ。
  • 加齢でし、液の袋(ラクナ)ができる。
  • コラーゲンが寄り集まって束になり、網膜に影を落とす。これがである。

眼球から取り出した若いは、形を保つ透明なゲルの塊である。加齢眼のを暗視野で照らすと、細い線維が束になって前後に走り、した腔と混在して見える。

硝子体は必要か

役割 内容
光を通す 透明な媒体
発生での役割 眼球の成長と、の血管の支持
眼球の弾性骨格 形を保ち衝撃を吸収する
から・網膜を守る

しかし、網膜との病的な接点(・乳頭・黄斑)があるため、は網膜の病気の起点にもなる。成人ではを取り除いても眼は機能するので、が成り立つ。

網膜の構造と眼底での位置関係

網膜は側から、、、、(・・・Müller 細胞の核)、、(杆体と錐体の核)、杆体(の)と並び、その外にがある。光は側から入り、網膜全層を通ってに届く。Müller 細胞は網膜の全層を貫いて支える。

で剥がれるのは、のとの間である。ここには細胞どうしの結合がなく、のポンプと、間を満たす基質のだけで貼り付いている。

眼底では、から上下の耳側・鼻側へ網膜の動静脈が出る。黄斑は直径約5,000 µm、は約1,500 µm、中心小窩は約500 µm で、その中央に反射がある。

網膜の層構造の詳細は網膜の解剖と血液循環にある。

💡 はの、はに由来する。発生の途中で2枚が向き合って閉じた「継ぎ目」なので、大人になっても液が入り込めば簡単に分かれる。

硝子体と網膜の診察

方法 内容
周辺部の網膜を見るには必須
前部の・色素(の粉のような)・出血を見る。非接触の前置レンズ(90 D などのレンズ)や、三面鏡などの接触レンズを併用すると眼底と周辺部を立体的に見られる
直像 拡大率が高いが視野が狭い。周辺部は見えない
倒像(双眼) 頭につけた光源と手持ちのレンズで広く立体的に見る。を併用してまで見る

で前部を照らすと、光の帯の中に白い点状のや、剥がれたの膜が線として見える。の眼では、瞳孔の奥に浮かぶ剥がれたの後面が線状に見える。

米国眼科学会の指針は、症状だけでは裂孔の有無を区別できないため、を併用した倒像による周辺部の検査を必須としている1。

網膜剥離の分類

型 仕組み 裂孔 主な原因 網膜の形
裂孔からが網膜下へ流れ込む ある に伴う裂孔、、、後、外傷 波打つ胞状の剥離。体位で液が大きくは動かない
や網膜上のが網膜を引きはがす ない(牽引で裂孔ができると混合型) 、、、 牽引部に向かってテント状・平らに張る。周辺へ広がりにくい
(漿液性) ・網膜の血管から網膜下へ液が漏れる ない 炎症(、)、腫瘍(悪性黒色腫・転移)、・、Coats 病、 表面がなめらか。体位で液が移動し、座ると下方に集まる

💡 3つの型で治療は全く違う。は裂孔を閉じる手術、は膜を取り除く、は原因の病気の治療(炎症ならステロイド、高血圧なら)で、に手術は原則不要である。まず「裂孔があるか」「牽引があるか」を見分ける。

関連する疾患は、、、、を参照。の剥離はで扱う。

裂孔原性網膜剥離ができるまで

flowchart TD
    A["加齢・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myopia'>近視</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liquefaction'>液化</span>・収縮"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior vitreous detachment'>後部硝子体剥離</span><br>(網膜から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>後面が離れる)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous base'>硝子体基底部</span>や<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lattice degeneration'>格子状変性</span>など<br>癒着の強い所で網膜を牽引"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photopsia'>光視症</span><br>(牽引が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photoreceptor'>視細胞</span>を刺激)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal tear'>網膜裂孔</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='horseshoe shape'>馬蹄形</span>裂孔)"]
    E --> F["血管が切れて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous hemorrhage'>硝子体出血</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigment epithelium'>色素上皮</span>の細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>へ"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='floaters'>飛蚊症</span>の急増・黒い雪"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liquefied vitreous'>液化硝子体</span>が裂孔から網膜下へ"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span>の拡大"]
    I --> J["剥離した範囲に一致する<br>カーテン状の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual field defect'>視野欠損</span>"]
    I --> K["黄斑に及ぶと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central visual acuity'>中心視力</span>の低下"]
  • は通常45〜65歳に起こり、外傷とでは早い1。
  • 裂孔の典型は(弁状)裂孔で、剥がれたが裂孔の弁(先端)を前方へ引っ張り続ける。この牽引が残るので、液が網膜下へ入り込み続ける。
  • の中の萎縮性円孔は、なしに若い眼でゆっくり剥離を起こすことがある。

疫学と危険因子

  • 年間は人口10万人あたり10〜15人。米国眼科学会の指針はの年間を10万人あたり約10〜18人とし、その20〜40%に歴、10%に外傷歴があるとする1。
危険因子 内容
の既往(など) の・を早める
によるなど
眼軸が長く網膜が薄い。が多い
反対眼の 非の剥離の既往があると、反対眼にも約10%に起こる1
その他(米国眼科学会の指針) 、YAG レーザー、、、の家族歴1
  • 一般の人に効く予防法はない。予防できるのは、症状のある裂孔を見つけて治療する段階である。

症状

⭐ ・の疑いは必須能力である。次の症状が急に出たら、できるだけ早く、して周辺部まで眼底を診られる眼科へ送る。視野の影やを伴うときは、剥離が黄斑に迫っている可能性があるので当日のうちに紹介する。米国眼科学会の指針も、症状のある患者には緊急の眼科的評価が要り、倒像に習熟した眼科医ができるだけ早く診るべきだとしている1。

症状 仕組み 患者の訴え
で浮いたの・出血 黒い虫・糸くず・輪が視界を漂い、目を動かすと遅れてついてくる
の牽引が網膜を機械的に刺激する 暗い所で視野の端に稲妻のような光が走る
黒い雪 裂孔からの出血と色素 急に無数の黒い点が降るように見える
黒いカーテン 剥離した範囲の 視野の端から影・幕が迫ってくる
  • によるでは、裂孔が伴っていることがある(従来の整理では約20%)。米国眼科学会の指針では、急性のの症状で受診した初診時の裂孔の頻度は5.4〜8%で、が多いほど裂孔の可能性が高い1。
  • 裂孔は数週たってから現れることも多い。初診で裂孔がなくても数週のうちに約2%が裂孔を生じるので、の色素・出血・牽引があれば6週以内に、新しい症状が出ればすぐに再診させる。再診の目安は、がなければ4〜6週後、があれば1〜2週後、は消えるまで毎週(必要なら超音波で裂孔を探す)である1。

💡 は剥がれた網膜と反対側に出る。上方の網膜が剥がれると下方の視野が欠け、景色の一部が影に覆われる。視界に漂う影()が増え、やがて視野の一部が黒い幕に覆われる、という順で進むのが典型である。上方の剥離はで液が下がって早く広がり、黄斑に届きやすい。

⚠️ ・は多くが無害なだが、症状だけでは裂孔の有無を区別できない1。「よくある」と決めつけず、で周辺部まで確かめるまで裂孔を疑い続ける。

flowchart TD
    A["急な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='floaters'>飛蚊症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photopsia'>光視症</span>・<br>視野の影"] --> B["できるだけ早く眼科へ<br>(視野の影・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>があれば当日)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>して倒像<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ophthalmoscope'>検眼鏡</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scleral depression'>強膜圧迫</span>"]
    B --> C{"何が見つかったか"}
    C -->|"裂孔なし"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-risk findings'>高リスク所見</span>なし:4〜6週後<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal hemorrhage'>網膜出血</span>あり:1〜2週後<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous hemorrhage'>硝子体出血</span>:消えるまで毎週<br>新しい症状ならすぐ受診"]
    C -->|"症状のある<span class='jp-term jp-term-diagram' title='horseshoe shape'>馬蹄形</span>裂孔"| E["速やかに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photocoagulation'>光凝固</span><br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryotherapy'>冷凍凝固</span>"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span>"| F["黄斑に及ぶ前に<br>できるだけ早く手術"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous hemorrhage'>硝子体出血</span>で眼底が見えない"| G["B モード超音波で<br>剥離・裂孔を探す"]

診断

眼底検査

  • した眼を倒像とでまで診る。では非接触の前置レンズや三面鏡を使う。
  • 剥離した網膜は灰白色に濁って盛り上がり、表面が波打ち、が暗くして見える。の赤みが透けなくなる。
  • 裂孔は、周辺部の網膜に弁状の赤い欠損として見え、弁の先端が側へ引かれている。周辺には(白い線状のの中に小さな円孔が並ぶ病変)を伴うことがある。
  • 剥離の形から原因の裂孔の位置を推定する:網膜下の液はで下がりながら広がるので、剥離の境界の高い側や、剥離が乳頭をまたいで上がる側に裂孔があることが多い。下方に胞状の剥離があれば、上方の裂孔から液が下がってきたことを考える。見つけた裂孔ひとつで満足せず、すべての裂孔を探す。

周辺部のの合成では、周辺の網膜に白い線状の変性巣と、それに沿って並ぶ複数の小さな裂孔を認め、その周りの網膜が浮いている。

超音波検査

  • やで眼底が見えないときに、B モード超音波で剥離を確かめる。
  • B モードでは、の中にに付着する膜状の強いエコーが浮かぶ。A モードでは、その膜で振幅の高い(100%近い)が立つ。
  • の膜はエコーが弱く、眼を動かすと大きく揺れ、乳頭に付かないことがある点で区別する。

超音波の原理と所見は眼組織の透明性とにある。

治療

治療の考え方は2段階である。

  1. の段階:裂孔の周りに網膜の瘢痕を作って、液が網膜下に入る道を塞ぐ(・)。
  2. の段階:裂孔を閉じて網膜を戻す手術(内陥術・・)。

網膜裂孔の光凝固

  • 症状のある → 50%がになる。
  • 治療すれば 50% → 5% に下がる。

米国眼科学会の指針でも、牽引の残る未治療の症候性裂孔(裂孔など)の少なくとも半数がになり、裂孔の周りに速やかに網膜の癒着を作ると、その危険は5%未満になる1。

三面鏡で周辺部を見ると、裂孔を取り囲むように白っぽい凝固斑が輪になって並ぶ。凝固斑は数週かけて色素を伴う瘢痕になり、網膜とを縫い合わせる。

病変ごとの対応(米国眼科学会の指針)1

病変 対応
急性の症候性裂孔 速やかに治療
急性の症候性弁蓋のある円孔 治療が不要なこともある
急性の症候性 速やかに治療
の裂孔 通常は治療
無症候の裂孔(なし) 慢性の徴候がなければ治療を考慮
無症候の弁蓋のある円孔・萎縮性円孔 治療はまれ
無症候の(円孔なし) で裂孔ができない限り治療しない

💡 牽引が残る裂孔は危険で、牽引が外れた弁蓋のある円孔は安全、というのが分かれ目である。治療で作るのは「網膜を貼る糊」ではなく「液が回り込めない瘢痕の土手」なので、裂孔の周りを隙間なく、特に前縁(側)まで囲む。治療が失敗する最多の原因は、見えにくい前縁の凝固不足である1。

冷凍凝固(強膜外からの凍結)

項目 内容
目的 網膜の癒着(瘢痕)を作る
仕組み の上から凍結のを当て、・・・・網膜を一度に凍らせて癒着させる。制御された炎症を起こす
使う場面 周辺部でが届きにくいとき、が濁っているとき、内陥術と組み合わせるとき
欠点 痛み、網膜の過剰な線維化(の誘因)

凍結すると、を当てた部位の網膜が白く凍り、数週かけて色素を伴う瘢痕に変わる。治療後の眼底では、周辺部に色素を伴う瘢痕が帯状に並ぶ。

💡 はの細胞をへ散らしやすく、それがの材料になる。が使える場面ではを選ぶ理由の一つである。

強膜内陥術

  • 倒像で裂孔を見ながら、の外からで裂孔の周りを凍らせる。
  • 裂孔の位置に合わせて、のバックル(帯やスポンジ)をの外に縫い付け、眼球の壁を内側へへこませる。
  • へこんだ壁が剥がれた網膜に近づいて裂孔を押さえ、の牽引をゆるめる。必要ならをから排出する。
  • 眼の中に器具を入れない。若く、のまだ起きていないの、の円孔やによる剥離に向く。

硝子体手術(経毛様体扁平部硝子体切除)

手順 内容
1. 切開(ポート) 毛様体扁平部に3本の小さなポートを作る:灌流、眼内照明、カッター
2. の切除 網膜を引っ張っているを取り除く
3. すべての裂孔を探す 裂孔の周りの牽引を解除する
4. の排出 裂孔などから網膜下の液を抜き、網膜を戻す
5. 裂孔を閉じる 裂孔の周りを眼内レーザー(または)で凝固する
6. 眼内タンポナーデ 眼内を空気・ガス(SF6、C3F8)またはで満たし、網膜を内側から押さえる
7. 体位の保持 が裂孔に当たるよう、術後に頭の位置を保つ(上方の裂孔なら座位、なら下向きなど)

手術中の眼では、から少し離れたに3本の小さなポートが刺さり、灌流の管がつながっている。

  • や強い牽引・を伴う剥離、の裂孔、の剥離に向く。
  • ガスが残る間は飛行機に乗れず、麻酔も使えない(ガスが膨張してがする)。
  • では術後にが進みやすい。

の器具・タンポナーデ・合併症の詳細は疾患とで扱う。

気体網膜復位術

  • 診察室で、膨張性のガスを少量に注射し、患者の頭の位置を調節してで裂孔を内側から塞ぐ。
  • 裂孔の周りは(事前)か(網膜が戻ってから)で閉じる。
  • 上方の、範囲の狭い裂孔による剥離が対象になる。

PIVOT 試験は、剥離した網膜の裂孔が単一か1時間の範囲内の一群で、8時〜4時より上方にある176例を、とに無作為に割り付けた2。

結果(12か月)
ETDRS 視力 79.9文字 75.0文字(差4.9文字)
1回の手術での復位 80.8% 93.2%
追加手術を含めた復位 98.7% 98.6%
の 16% 65%

この条件を満たす患者では、を第一選択として考慮すべきとされた2。

術式の選び方

術式 向く剥離 利点 欠点
内陥術 若い、のない剥離、・の円孔 眼内に入らない、になりにくい 屈折()の変化、、バックルの露出・感染
、に伴う剥離、、の裂孔、 眼内を直接見て牽引を解除できる の進行、術後の体位、ガスの制限
上方の狭い範囲の裂孔 外来で行え、侵襲が小さい 1回での復位率がやや低い、体位の協力が要る

米国眼科学会の指針は、と内陥術で解剖学的・視力の成績にほとんど差がないとする系統的レビューを挙げている1。どの術式を選ぶかは、裂孔の位置と数、の状態、の有無、患者の協力で決める。

予後と合併症

  • 合併症のないの95%超は復位できるが、2回以上の手術が要ることもある1。
  • 黄斑に及ぶ前に早く修復するほど、復位の成功率も視力もよい1。
  • 復位しなかった原因で最も多いのはで、網膜の表面と裏に膜ができて網膜を縮め、再剥離を起こす。
  • 裂孔を治療した後も、5〜14%に新しい裂孔が生じる。治療後も・・視野の影が出たらすぐ受診するよう伝える1。

⚠️ 黄斑がまだ付いている剥離は、黄斑が剥がれる前に手術する緊急性が高い。黄斑がすでに剥がれていても、日がたつほどが戻らなくなるので先延ばしにしない。PIVOT 試験では、のない例を24時間以内、例を72時間以内に治療している2。

まとめ

  • と網膜は一体で病む。はとコラーゲンのゲルで、加齢でし、ラクナとコラーゲンの束()ができる。・乳頭・黄斑が網膜との病的な接点。
  • はとの間の剥離。(裂孔からが流入)、(の牽引)、(網膜下への漏出。体位で液が動く)の3型で、治療はそれぞれ・膜の除去・原因疾患の治療。
  • 年間は10万人あたり10〜15(米国眼科学会の指針では10〜18)。危険因子は()、外傷、、反対眼の剥離(約10%)、。一般の人への予防法はない。
  • 症状は、(牽引)、黒い雪(出血と色素)、黒いカーテン(剥離範囲の)。に伴う裂孔は従来約20%とされ、米国眼科学会の指針では初診時5.4〜8%。裂孔は数週後に現れることもある。
  • 症状だけでは裂孔の有無を区別できない。し、倒像+でまで診る。眼底が見えなければ B モード超音波(乳頭に付く膜状の強いエコー)。
  • 症状のある裂孔は50%が剥離になり、・で5%に下がる。急性の症候性裂孔とは速やかに治療する。
  • はの上から凍らせて瘢痕を作るが、痛みとが欠点。
  • 剥離の手術は、内陥術(若い)、(ポート作成→→裂孔の検索と牽引解除→排出→→タンポナーデ→体位保持)、(上方の狭い裂孔。PIVOT で視力はを上回り、1回での復位率はやや低い)。
  • 合併症のない剥離の95%超は復位できる。黄斑に及ぶ前の修復ほど成績がよい。再剥離の最大の原因は。

出典

  1. 1.Posterior Vitreous Detachment, Retinal Breaks, and Lattice Degeneration Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology(Kim SJ ほか。Ophthalmology 2025;132:P163-P196、doi 10.1016/j.ophtha.2024.12.023)・2025)AAO公式PDFの本文で、後部硝子体剥離は通常45〜65歳に起こり外傷と近視では早いこと、急性の後部硝子体剥離の症状で受診した初診時の網膜裂孔の頻度は5.4〜8%で硝子体出血の量と相関し、裂孔のない例も数週のうちに約2%が裂孔を生じるため、硝子体の色素・出血・牽引があれば6週以内か新しい症状が出たときにすぐ再診させること、症状から裂孔の有無は区別できないので強膜圧迫を併用した倒像検眼鏡による周辺部の検査が必要なこと、裂孔原性網膜剥離の年間発生率は10万人あたり約10〜18で20〜40%に白内障手術歴・10%に外傷歴があること、危険因子は近視・格子状変性・白内障など内眼手術・YAGレーザー・外傷・縮瞳薬・反対眼の網膜剥離・Stickler症候群・一親等の家族歴であること、牽引の残る未治療の症候性裂孔の少なくとも半数が網膜剥離になり、網膜脈絡膜の癒着を速やかに作ると危険は5%未満になること、急性症候性の馬蹄形裂孔と裂孔を伴う鋸状縁断裂は速やかに治療し、無症候の円孔・弁蓋のある裂孔はまれにしか治療しないこと、合併症のない裂孔原性網膜剥離の95%超は復位でき、黄斑に及ぶ前の早期の修復ほど成功率と視力がよいこと、硝子体手術と強膜内陥術で解剖学的・視力の成績にほとんど差がないとする系統的レビューがあることを確認した。あわせて、非外傷性の裂孔原性網膜剥離の既往がある人の反対眼には約10%の網膜剥離の危険があること、初診時に裂孔が見つかった人の5〜14%は長期の経過で追加の裂孔を生じ最初の裂孔の治療法によらないこと、裂孔の治療が失敗する最多の原因は特に前縁の不十分な凝固であること、症状のある患者には緊急の眼科的評価が必要で倒像検眼鏡に習熟した眼科医ができるだけ早く診るべきとされることを本文で、同じPPPのSummary Benchmarks(2024年12月)で、裂孔も高リスク所見もない症候性後部硝子体剥離は新たな症状がなければ4〜6週後、網膜出血を伴えば1〜2週後、硝子体出血は消えるまで毎週(必要に応じて超音波)に再診とされていることを確認した閲覧 2026-09-29
  2. 2.The Pneumatic Retinopexy versus Vitrectomy for the Management of Primary Rhegmatogenous Retinal Detachment Outcomes Randomized Trial (PIVOT)(Ophthalmology(Hillier RJ ほか)・2019)抄録(Europe PMC、PMID 30468761)で、剥離した網膜の裂孔が単一か1時間の範囲内の一群で8時〜4時の子午線より上方にある裂孔原性網膜剥離176例を気体網膜復位術と硝子体手術に無作為に割り付け、12か月のETDRS視力は気体網膜復位術が4.9文字上回り(79.9対75.0文字)、垂直方向の変視も少なかったこと、1回の手術での復位は80.8%対93.2%と硝子体手術が高く、追加手術を含めた復位はともに約99%だったこと、有水晶体眼で12か月以内に白内障手術を受けたのは硝子体手術群65%対16%だったこと、この条件を満たす患者では気体網膜復位術を第一選択として考慮すべきと結論したこと、黄斑剥離のない例は24時間以内・黄斑剥離例は72時間以内に治療されたことを確認した閲覧 2026-09-29