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Drug Atlas · A20 Antidepressants / 抗うつ薬 · 必修

フェネルジン

phenelzine

分類
Antidepressants / 抗うつ薬
商品名(EU)
Nardil
科目
Pharmacology
トピック
A20: Non-reuptake-inhibitor antidepressants. Agents used for treatment of manic phase of bipolar disorders
承認適応
うつ病(非定型うつ病)
禁忌疾患
褐色細胞腫
副作用
めまい頭痛便秘体重増加
相互作用
デキストロメトルファンフルオキセチンペチジン(メペリジン)
原因となる疾患
セロトニン症候群

🧠 全体像は古典的な非可逆的・非選択的MAO阻害薬の中で最ものエビデンスが豊富な薬であり、同時にヒドラジン骨格を持つという一点で同系統のと化学的に区別される。ヒドラジンはMAOと不可逆的に共有結合するだけでなく、それ自体が肝毒性の懸念を持つ骨格でもあり、「効くが管理が重い」という古典的MAOI全体の性格を最も体現する薬である。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 化学骨格 際立つ特徴
非可逆的・非選択的MAOI(ヒドラジン系) ヒドラジン骨格 を伴う)でのエビデンスが最も豊富なのは。ヒドラジン系は肝毒性の懸念が非ヒドラジン系より強く意識される
非可逆的・非選択的MAOI(非ヒドラジン系) シクロプロピルアミン(類縁構造) 刺激性・作用を併せ持ち、が前景の内因性うつ病で好まれる傾向1
可逆的・選択的MAO-A阻害(RIMA) リスクが低く食事制限がほぼ不要。詳細はのノートを参照

3剤の古典的MAOIはいずれも「不可逆的・非選択的(MAO-A+B)」という核は共通するが、化学骨格が臨床像を左右する。 ヒドラジン系()は鎮静的でに強く、非ヒドラジン系のだけが類縁構造による作用を持つ。3剤とも新しい酵素が合成されるまで約2週間は阻害が持続するため、制限・薬物相互作用の管理は3剤共通の最重要課題になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phenelzine'>フェネルジン</span>がMAO-A・MAO-Bの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='active site'>活性部位</span>と不可逆的に共有結合"] --> B["ヒドラジン骨格が酵素タンパクを化学的に修飾"]
    B --> C["新規酵素が合成されるまで(約2週間)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoamine'>モノアミン</span>分解能が失われる"]
    C --> D["シナプス内NA・5-HT・DA濃度が持続的に上昇"]
    D --> E["抗うつ効果(特に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical depression'>非定型うつ病</span>)"]
    F["食事性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyramine'>チラミン</span>が大量に流入"] --> G["MAO-Aによる分解ができず<br>未代謝<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyramine'>チラミン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic nerve terminal'>交感神経終末</span>に蓄積"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyramine'>チラミン</span>が神経終末から<br>ノルアドレナリンを大量に遊離させる"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertensive crisis'>高血圧クリーゼ</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cheese reaction'>チーズ反応</span>)"]

💡 「不可逆的」は効果のだけでなく、危険のでもある。 MAOがいったん破壊されると、体は新しい酵素をゼロから作るまで無防備なままになる。だから中止後も約2週間は制限と薬の回避を続ける必要があり、他の抗うつ薬へ切り替えるときのもこの「新規酵素合成にかかる時間」が根拠になる。

適応

領域 使いどころ
精神科 を特徴とする)。他クラスの抗うつ薬で効果不十分な症例に用いる第二選択以降の位置づけ2

として使われることは少なく、SSRIなどの高い薬剤が無効・だった場合に検討される。

用法・用量

1回15 mgを1日3回のから開始し、を見ながら比較的速やかに1日60 mgまで増量する。効果不十分であれば1日90 mgまで増量することもある。臨床的な改善が現れるまで1日60 mgで少なくとも4週間の継続を要することが多い。は1日15 mgまでできることがある2。実際の用量・増量ペースは年齢・肝機能・併用薬で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ ・自殺行動):抗うつ薬に共通するが1本置かれており、小児・青年・若年成人(24歳以下)で・自殺行動のリスクがより増加する。25歳以上ではこの増加は示されず、65歳以上ではむしろ低下する。開始時・用量変更時には全年齢で臨床的悪化・・行動変化を注意深く観察する。は小児への適応を持たない2
  • 禁忌(カテコールアミン代謝阻害によりを誘発)、他のMAO阻害薬との併用
  • 禁忌:SSRI・SNRI・TCAなどをはじめとする一部オピオイドとの併用(興奮・痙攣・高熱・に至る
  • :他の抗うつ薬・への切り替えでは中止後少なくとも14日間の間隔をあける。からの切り替えは半減期が長いため中止後少なくとも5週間、逆にからへ切り替える場合も少なくとも14日間をあける2
  • 制限食:熟成チーズ、ピクルスニシン、ビール・ワイン、レバー、酵母エキス、乾燥ソーセージ、そら豆の莢、ヨーグルトなど高食品を避ける。・チョコレートの過量摂取も控える
  • 類・)との併用ものリスクがあり避ける

副作用

頻度 内容
高頻度 めまい頭痛、傾眠、便秘体重増加
重篤・まれ (後頭部痛・・発汗・を伴いのリスクを持つ)、、痙攣、

⚠️ は「後頭部痛」が典型の初発症状。 通常の片頭痛様頭痛と異なり後頭部に強いの痛みが急激に出現し、・発汗・を伴う場合は・薬物相互作用によるを疑い、直ちに評価する。

まとめ

  • 古典的な非可逆的・非選択的(MAO-A+B)MAO阻害薬のうち、ヒドラジン骨格を持ちのエビデンスが最も豊富な薬。
  • 不可逆的なのため、新規酵素合成まで約2週間は作用(と危険)が持続する。この時間がの根拠になる。
  • の制限、・SSRI/SNRI/TCA・とのを含む古典的MAOI全体に共通する管理の核。
  • は後頭部痛・・発汗・を特徴とし、のリスクを伴う。
  • は抗うつ薬共通の・自殺行動(小児・青年・若年成人)1本2は本文のに含まれるがとしては立てられていない点が、2本立てのとの違いになる。
  • 化学骨格の違いから、類縁構造を持ち刺激性を併せ持つとは臨床像が異なる。

出典

  1. 1.NARDIL (phenelzine sulfate) tablet, film coated — full prescribing information(米国FDA / DailyMed(Validus Pharmaceuticals)・2025)フェネルジンがヒドラジン系の非可逆的MAO阻害薬であり、初期用量・チラミン制限食品・他の抗うつ薬への切り替え時の休薬期間(フルオキセチンからは5週間、それ以外は原則14日間)、メペリジンとの併用禁忌、高血圧クリーゼの臨床像を確認した。また添付文書冒頭に「Suicidality and Antidepressant Drugs」という枠組み警告が1本置かれ、小児・青年・若年成人での自殺念慮・自殺行動のリスク増加と、本剤が小児適応を持たないことが記載されていることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Tranylcypromine(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)・2025)古典的MAOIのうち精神運動制止が前景の内因性(メランコリー型)うつ病ではトラニルシプロミンが、非定型うつ病ではフェネルジンが相対的に好まれるという使い分けの記載を確認した閲覧 2026-08-10