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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

セバベルチニブ

sevabertinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
ヒアニュオ
科目
PharmacologyPulmonology and Thoracic Surgery
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)32: Chemo-, immune- and targeted therapy of lung cancer
承認適応
非小細胞肺癌
副作用
下痢皮疹口内炎爪囲炎悪心
監視検査値
トランスアミナーゼ左室駆出率
影響検査値
トランスアミナーゼ

🧠 全体像:は、進行の難治性異常であるHER2を標的とする経口の可逆的である。不可逆的()阻害薬であるとは対照的に、による様式を採用しており、HER2 exon 20や点変異に加えてEGFRにもを示す1。第I/II相SOHO-01試験において、既治療・HER2標的薬未使用例で64%、未治療例で71%、既治療例でも38%のを示し、経口の選択肢を確立した2。

薬効群の中での位置づけ

HER2変異陽性のは、と新規TKIの登場により大きく進展した。

薬剤名 分子特性・分類 結合様式 標的スペクトラム 主な特徴と使いどころ
抗体結合+阻害 HER2・変異腫瘍 既治療後の代表的治療薬。に厳重な警戒を要する
経口低分子TKI 不可逆的(Cys805共有結合) HER2選択的(野生型EGFR温存型) EGFR由来の皮膚・消化管毒性が比較的軽度。1日1回投与
経口低分子TKI 可逆的()1 HER2+EGFR(野生型EGFRに対し選択的)1 既治療例で64%・未治療例で71%。1日2回食後投与23

⭐ 「」と「幅広いHER2変異への対応」がの特徴である。 TKIが特定のとのに依存するのに対し、はATP結合ポケット内部でによる可逆的な結合を形成する。モデルではHER2 exon 20のみならず、点変異、野生型ERBB2増幅、さらにNRG1融合依存性に対しても抗腫瘍活性が確認されている1。一方、臨床ではEGFR/HER2経路阻害に伴う下痢や発疹が高頻度に発現するため、食後投与と早期からの支持療法が重要となる3。

機序

flowchart TD
    A["HER2遺伝子変異<br>(exon 20<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insertional mutation'>挿入変異</span>・チロシンキナーゼ領域点変異)"] --> B["受容体の自律的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dimerization'>二量体化</span>・恒常的リン酸化"]
    B --> C["下流のRAS-RAF-MEK-ERKおよびPI3K-AKT経路が活性化"]
    C --> D["腫瘍細胞の増殖促進およびアポトーシス抑制"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sevabertinib'>セバベルチニブ</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>HER2のATP結合ポケットへ進入"]
    F --> G["ポケット内部と可逆的(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-covalent bond'>非共有結合</span>)に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high affinity'>高親和性</span>結合"]
    G --> H["ATP結合を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に遮断"]
    H --> I["HER2チロシンキナーゼ活性を可逆的に阻害"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>伝達遮断→細胞増殖停止・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>"]
    F -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>EGFRにも選択的活性"| K["野生型EGFRに対する選択性を保ちつつ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dual inhibition'>二重阻害</span>活性を発揮"]

💡 野生型EGFRに対する選択性を備えた可逆的EGFR/HER2。 (開発コードBAY 2927088)は、野生型EGFRよりもを有するHER2およびEGFRに対して選択的に作用するよう設計された可逆的TKIである。半減期が約5.6時間と比較的短くであるため、1日2回で血中濃度を維持しつつ、有害事象発現時には・減量による速やかな曝露調整が行いやすい31。

薬物動態

項目 特徴
(1回20 mgを1日2回、食後)3
吸収・食事の影響 食後投与でTmax中央値は約3時間。空腹時と比べ後ではCmaxが0.44倍、AUCが0.72倍となり、承認用法は食後投与である3
分布 ヒトは95.3%3
代謝・半減期 主にCYP3A4により(主要代謝物M1)を受ける。単回食後投与時のは5.61時間、1日2回時の蓄積率は1.653
排泄 投与量の84%が糞中、10%が尿中(未変化体として尿中1%)に排泄3
薬物相互作用 強いCYP3A阻害薬(併用でAUC 2.3倍)や強い・中程度のCYP3A(カルバマゼピン併用でAUC 0.21倍)の影響を受けるほか、CYP3A・CYP1A1・CYP2C8・P-gp・MATE1/MATE2-K阻害作用を示す3

適応

対象病態 位置づけ
HER2遺伝子変異陽性のな進行・再発 日本ではHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性のな進行・再発に対して承認。米国でも2025年11月の既治療例への初回後、2026年9月改訂でHER2陽性の局所進行・転移性へ適応が拡大された34
既治療後の進行例 SOHO-01試験において、HER2標的既治療コホート(55例)でも38%の(中央値8.5か月)が確認されている2

用法・用量

日本および米国の添付文書とも、通常、成人にはとして1回20 mgを1日2回食後にする34。 副作用発現時や、強いCYP3A阻害薬との併用が避けられない場合の段階的減量は、1段階減量が1回10 mg 1日2回、2段階減量が1回10 mg 1日1回であり、1回10 mg 1日1回で不能な場合(または10 mg 1日1回投与中に強いCYP3A阻害薬を要する場合)は投与または併用を行わない34。

禁忌・注意

  • 禁忌:日本の電子添文では本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者が禁忌と定められている(米国添付文書では禁忌の設定なし)34
  • ⚠️ 重度の下痢:最も頻度の高い有害事象であり(電子添文で下痢72.7%・重度の下痢13.9%、SOHO-01試験全体で84〜91%)、脱水や電解質異常(など)を招きうる。排便回数増加の初期から等のと十分な補液を導入し、必要に応じて・減量を行う32
  • ⚠️ :AST・ALTやビリルビンの上昇(電子添文で25.4%)が生じるため、投与開始前および投与中は定期的に肝機能検査を実施し、基準に従って・減量または中止する3
  • ⚠️ ・:呼吸困難、咳嗽、発熱などの初期症状と胸部画像所見を観察し、日本の電子添文ではが確認された場合は全グレードで投与を中止する3
  • ⚠️ ・・・:投与前および投与中の定期的なLVEF評価(心エコー等)に加え、角膜障害などの出現時の眼科受診、・リパーゼ上昇の監視、ならびに投与中および最終投与後1週間の確実なを行う34

副作用

頻度 主な症状・異常所見
極めて高頻度(50%以上) 下痢(72.7%)、皮疹(67.0%)3
高頻度(20〜50%未満) (34.0%)、(30.6%)、・AST・ALT上昇(25.4%)、(20.6%)3
中等度(10〜20%未満) 悪心、嘔吐、、そう痒症、、リパーゼ・増加、体重減少、貧血、疲労3
重篤・重要 重度の下痢・脱水、、低下、眼障害(・角膜炎等)、QT延長34

まとめ

  • は、進行のHER2を標的とする経口の可逆的TKIであり、野生型EGFRに対する選択性を保ちながらHER2およびEGFRを阻害する。
  • SOHO-01試験において、既治療・HER2標的薬未使用例で64%、未治療例で71%、HER2標的既治療例でも38%のを示した。
  • 通常用量は1回20 mgの1日2回食後投与であり、減量は10 mg 1日2回、次いで10 mg 1日1回の段階で行う。
  • 下痢、発疹、、、が高頻度にみられ、(全グレードで中止)やLVEF低下を含めた計画的なモニタリングと早期の支持療法が治療継続の鍵となる。

出典

  1. 1.Sevabertinib, a Reversible HER2 Inhibitor with Activity in Lung Cancer(Cancer Discovery・2026)セバベルチニブ(BAY 2927088)が野生型EGFRに対する選択性を備えた可逆的なEGFR/HER2二重阻害薬であり、HER2 exon 20挿入変異、点変異、野生型ERBB2増幅、およびNRG1融合依存性モデルに対して前臨床で抗腫瘍活性を示すことを抄録で確認した。閲覧 2026-11-02
  2. 2.Sevabertinib in Advanced HER2-Mutant Non-Small-Cell Lung Cancer(The New England Journal of Medicine・2025)進行HER2変異陽性非小細胞肺癌209例にセバベルチニブ20 mg 1日2回を投与した第I/II相SOHO-01試験(2025年6月27日カットオフ)の抄録を確認した。盲検下独立中央判定による客観的奏効率は、既治療・HER2標的薬未使用のコホートD(81例)で64%(95% CI 53〜75%、奏効期間中央値9.2か月、無増悪生存期間中央値8.3か月)、HER2標的抗体薬物複合体既治療のコホートE(55例)で38%(95% CI 25〜52%、奏効期間中央値8.5か月、無増悪生存期間中央値5.5か月)、未治療のコホートF(73例)で71%(95% CI 59〜81%、奏効期間中央値11.0か月)であり、最も多い有害事象は下痢(84〜91%、Grade 3以上は5〜23%)で、薬剤関連有害事象による投与中止は3%であった。閲覧 2026-11-02
  3. 3.ヒアニュオ錠10mg 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(バイエル薬品、2026年9月改訂・第2版)・2026)日本の電子添文(2026年9月改訂・第2版)本文を取得して確認した。効能又は効果はHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、用法及び用量は成人1回20 mgを1日2回食後に経口投与(1段階減量は1回10 mg 1日2回、2段階減量は1回10 mg 1日1回、1回10 mg 1日1回で忍容不能なら中止)、禁忌は本剤成分に対する過敏症既往歴である。間質性肺疾患は全グレードで投与中止と定められ、強いCYP3A阻害薬との併用が避けられない場合は1段階減量する。薬物動態では単回食後投与時の半減期5.61時間、反復投与時の蓄積率1.65、高脂肪食後のCmax 0.44倍・AUC 0.72倍(対空腹時)、血漿蛋白結合率95.3%、主にCYP3A4で代謝され、放射能投与量の84%が糞中・10%が尿中に排泄される。重大な副作用は重度の下痢(13.9%)、肝機能障害(25.4%)、間質性肺疾患(頻度不明)、その他の副作用(20%以上)は下痢(72.7%)、発疹(67.0%)、口内炎(34.0%)、爪囲炎(30.6%)、低カリウム血症(20.6%)である。閲覧 2026-11-02
  4. 4.HYRNUO (sevabertinib) tablets, for oral use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Bayer HealthCare Pharmaceuticals、2026年9月改訂版)・2026)米国添付文書(2026年9月改訂)を確認した。2025年11月の初回迅速承認(既治療例)に続き、2026年9月改訂でHER2(ERBB2)チロシンキナーゼドメイン活性化変異陽性の局所進行・転移性非扁平上皮非小細胞肺癌に適応が拡大されたこと、推奨用量が1回20 mg 1日2回食後投与(減量は10 mg 1日2回→10 mg 1日1回)であり禁忌の設定はないこと、警告・注意事項として下痢、肝毒性、間質性肺疾患・肺臓炎、左室機能不全、眼毒性、膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)上昇、胚・胎児毒性が規定されていることを確認した。閲覧 2026-11-02