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Lab values · Published

カルシウム負荷試験

Calcium stimulation test

別名
カルシウム刺激試験グルコン酸カルシウム負荷試験
臓器系
消化器内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 E-07:神経内分泌腫瘍病理学 C/89:多発性内分泌腫瘍症(MEN)/カルチノイド症候群
関連疾患
カルチノイド症候群・神経内分泌腫瘍(ゾリンジャー・エリソン症候群、インスリノーマを含む)

🧠 全体像は、:ZES)のにおいての次に置かれる二番手の検査である。原理はほどではなく単純——カルシウムは産生腫瘍細胞からの分泌をそのまま刺激する。主役はあくまでであり、このノートの価値は「いつからカルシウムに切り替えるか」という判断軸と、カルシウムを人為的に負荷すること自体のリスクを整理する点にある。

何を見ているか

カルシウムは細胞からのの分泌を直接刺激する。のような「正常組織では抑制、腫瘍細胞では刺激」という逆転現象ではなく、カルシウムという生理的な分泌刺激因子に対する腫瘍細胞の過大な反応を利用する検査である。

を一定時間かけてし、投与前後で血清の推移を追う。

セクレチン刺激試験との使い分け

flowchart TD
    A["ZESを疑う臨床像<br>境界域<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrin'>ガストリン</span>・PPI<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug holiday (treatment interruption)'>休薬</span>下"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secretin stimulation test'>セクレチン刺激試験</span><br>(第一選択)"]
    B --> C{"判定"}
    C -->|"陽性"| D["ZESを支持<br>局在診断へ"]
    C -->|"陰性だが臨床的疑いが強い"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcium stimulation test'>カルシウム負荷試験</span><br>(第二選択)"]
    E --> F{"判定"}
    F -->|"陽性"| D
    F -->|"陰性"| G["ZES以外の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypergastrinemia'>高ガストリン血症</span>を<br>再検討"]
項目
位置づけ 第一選択 第二選択(陰性かつ臨床的疑いが強い例)
感度 94%1 62%1
陰性例での陽性率 38~50%1
選ばれる理由・避けられる理由 感度が高く手技も簡便で副作用が少ない1 感度で劣り、カルシウム負荷自体にリスクを伴う

は「が使えない、または陰性だが臨床的に強く疑う」場面の二番手であり、最初から選ぶ検査ではない。この序列を逆にしない。

手技と判定基準

項目 内容
PPIを少なくとも1週間、を48時間する2
投与 10%をカルシウムとして5 mg/kg/時(として約54 mg/kg/当)の速度で3時間持続静注する1
採血 投与開始30分または15分前、直前、投与開始後30・60・90・120・150・180分に血清と血清カルシウムを同時に測定する1
試験の 血清カルシウムが投与前より1.5 mEq/L以上上昇していることを、その回の測定を判定に使える条件とする1

判定基準は複数が併存し、感度と特異度がの関係にある。以下の感度・特異度は、空腹時が10倍未満の上昇にとどまる例(=刺激試験の適応そのもの、NIH 142例)での値である。全例を対象にすると感度はいずれも1〜2割高く出る1

基準 特徴
増加量基準 増加≥395 pg/mL 感度54%・特異度100%。特異度は高いが陽性になりにくい1
増加率基準 ベースラインから>50%上昇 感度78%・特異度83%。感度は高いが偽陽性が増える1
別の増加量基準 増加≥450 pg/mL 感度51%とされる1

⚠️ 測定上の注意

⚠️ PPIが前提だが、自体にリスクがあると同様、PPI服用中は施行できない。PPIは抑制作用が最大1週間持続し、健常者の80~100%にを来すため、判定前のが前提になる3。ただし、真にZESである患者でPPIを急に中止すると、急速に消化性潰瘍の出血・穿孔などのが生じうる。このため一部のグループは、せずで被覆しながらする運用を提唱している。を選ぶ場合も、無症候で活動性の酸ペプティック病変がない患者に限り、慎重にモニタリングしながら行うべきである3するかどうかは検査精度と患者の安全を天秤にかける臨床判断であり、機械的にを指示しない。

⚠️ のリスク:この検査はカルシウムを人為的に静注して負荷をかける。既にがある患者、腎疾患・心疾患を有する患者、全身状態が不安定な患者は施行対象から除外される1に伴うでは、しばしばによるが併存する。副甲状腺由来のを既に持つ患者にさらにカルシウムを負荷することになるため、この組み合わせでは特に危険性が高く、適用そのものを慎重に判断する。

  • 他のの除外なPPI使用、Helicobacter pylori感染、、腎不全はいずれもを来しうる2。これらを除外・考慮せずに刺激試験へ進むと、陽性・陰性の解釈がぶれる。

名前が同じ「カルシウム負荷試験」との違い

」という名前は複数の文脈で使われ、もホルモンも目的も異なる。混同を避けるため、ここで扱う診断のための試験と区別しておく。

検査名 刺激されるホルモン 目的
(本ノート) 生化学的確認
カルシトニン刺激試験 の一亜型) カルシトニン の診断・術後モニタリング
インスリン 局在診断(責任領域の同定)

⚠️ 特には、名前に「カルシウム」「動脈内」が入りの検査と紛らわしいが、目的の段階がまったく異なるが未確定な段階で行うのに対し、が既に確定したあと、画像で腫瘍が指摘できない場合に責任領域を絞り込むための局在診断であり、生化学的確認そのものではない。非糖尿病性低血糖の局在診断の節を参照。

位置づけ/次に進むべき検査

(または)が陽性になれば、次はではなく局在診断の段階に進む。

検査 何がわかるか 使いどころ
など) ・遠隔転移の全身検索 感度が高く、転移検索の中心になる
(EUS) 膵・十二指腸のの描出 断層画像で指摘できない小さなの検出に優れる
造影CT/MRI 腫瘍の局在・血管への近接 手術計画に必須だが、小さな十二指腸原発病変は見逃しやすい

局在が確認できれば外科的切除、・転移例ではなどや高用量PPIによる制御が治療の中心になる。詳細はを参照。

まとめ

  • は、細胞からの分泌をカルシウムで直接刺激し、な血清の上昇を見る検査である。
  • が第一選択であり(感度94%)、(感度62%)はが使えない、または陰性だが臨床的疑いが強い場合の二番手に位置づけられる。陰性ZES患者の38~50%がで陽性になる。
  • 判定基準は複数併存し、増加≥395 pg/mL(特異度100%・感度54%)と増加率>50%(感度78%・特異度83%)が代表的である。
  • PPI服用中は施行できない。 は消化性潰瘍出血・穿孔のリスクを伴うため、するかどうかは臨床判断になる。
  • カルシウムを人為的に負荷する検査であり、既存の・腎疾患・心疾患があれば施行できない。 に伴うの併存例では特に慎重な適用判断を要する。
  • ・腎不全など他のを除外してから行う。
  • 名前が似たカルシトニン刺激試験)、の局在診断)とは対象・目的が異なり、混同しない。
  • 陽性後は・EUSによる局在診断へ進む。

出典

  1. 1.Serum Gastrin in Zollinger-Ellison Syndrome: II. Prospective Study of Gastrin Provocative Testing in 293 Patients From the National Institutes of Health and Comparison With 537 Cases From the Literature(Medicine (Baltimore)(Berna MJ, Hoffmann KM, Long SH, et al.)・2006)カルシウム負荷試験はグルコン酸カルシウム10%をカルシウムとして5 mg/kg/時(グルコン酸カルシウムとして約54 mg/kg/時相当)の速度で3時間持続静注し、投与開始30分または15分前・直前・投与開始後30・60・90・120・150・180分に血清ガストリンと血清カルシウムを測定するプロトコルであること、血清カルシウムが投与前より1.5 mEq/L以上上昇して初めてその回の測定を判定に使えること、判定基準は空腹時ガストリンが10倍未満の上昇にとどまるNIH 142例において増加≥395 pg/mLで感度54%・特異度100%、増加率>50%で感度78%・特異度83%、増加≥450 pg/mLで感度51%であり全例を対象にするといずれも感度が高く出ること、同じ集団でセクレチン刺激試験の感度94%はカルシウム負荷試験の感度62%より高く第一選択とされる根拠になっていること、ZES疑いでセクレチン刺激試験が陰性だった患者の38~50%がカルシウム負荷試験で陽性となるためセクレチン陰性だが臨床的疑いが強い例に位置づけられること、高カルシウム血症・腎疾患・心疾患・全身状態が不安定な患者はこの試験の対象から除外されることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.ENETS Consensus Guidelines Update for the Management of Patients with Functional Pancreatic Neuroendocrine Tumors and Non-Functional Pancreatic Neuroendocrine Tumors(Neuroendocrinology(Falconi M, Eriksson B, Kaltsas G, et al.)・2016)ガストリン刺激試験はPPI服用中は施行できずPPIは酸分泌抑制作用が最大1週間持続し健常者の80~100%に高ガストリン血症を来すため休薬が前提になること、一方で真のZES患者でPPIを急に中止すると急速に酸ペプティック合併症が生じうるため一部の専門家グループは休薬せず漸減する運用を提唱していること、休薬する場合は無症候かつ活動性の酸ペプティック病変がない患者に限りH2受容体拮抗薬で被覆しながら慎重にモニタリングして行うべきであることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Gastrinoma(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)高ガストリン血症の鑑別として慢性的なPPI使用・萎縮性胃炎や自己免疫性胃炎・Helicobacter pylori感染・G細胞過形成・胃出口閉塞・腎不全が挙げられること、検査前にはPPIを少なくとも1週間・H2受容体拮抗薬を48時間休薬することが薬理学的な干渉を避けるために重要であることを確認した閲覧 2026-08-04