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Microbe Atlas · 細菌

Clostridium perfringens

ウェルシュ菌

分類
G+ 桿菌・芽胞形成 / Gram+ rods (spore)Clostridium
性状
Gram陽性 (G+)桿菌 Bacilli
科目
Medical Microbiology
トピック
2/26: Clostridium tetani2/27: Clostridium botulinum and C. difficile5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis
自然耐性薬
ゲンタマイシンアミカシントブラマイシン
原因となる疾患
壊死性軟部組織感染症細菌性急性胃腸炎
作用する薬剤
ペニシリンG過酸化水素

🧠 全体像は「酸素を締め出す壊死組織を自分で作り出す」菌として読む。が細胞膜を破壊して血球・血管内皮を壊死させ、それがさらに酸素の乏しい壊死組織を広げて菌にとって好都合なを自己増幅させる——「毒素産生→組織破壊→さらに→さらに増殖」という正のフィードバックがの急速な進行を説明し、が薬物療法だけでは代替できない理由でもある。同じ菌が全く別の機序でありふれたも起こす二面性を持つ。

微生物学的な特徴

グラム陽性の短く太い桿菌で、土壌に加えヒトのの一員でもある。に共通する性質(グラム陽性・)を持ち、卵形の芽胞は菌体中央よりやや端寄り(subterminal)に位置する。莢膜を持ち、CO₂・H₂S・CH₄などのガスを産生する——これがの「ガス」の由来である。・DNA分解酵素・リパーゼ・プロテアーゼなどの侵襲酵素により組織侵入を助ける。

病原性の仕組み

主要な病原性因子は——細胞膜のを分解する酵素で、赤血球・血小板・白血球・を傷害し大量溶血・組織破壊・肝毒性を起こす。このほかの原因)、(腸管)も産生する。

flowchart TD
    A["創傷(土壌・便で汚染)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic'>嫌気条件</span>下で芽胞が発芽<br>(潜伏1〜3日)"]
    B --> C["栄養型菌が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha toxin'>アルファ毒素</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lecithinase'>レシチナーゼ</span>)を産生"]
    C --> D["細胞<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane phospholipid'>膜リン脂質</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bilayer'>二重層</span>を破壊"]
    D --> E["赤血球・血小板・白血球・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial cell'>血管内皮細胞</span>の傷害"]
    E --> F["大量溶血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue necrosis'>組織壊死</span>・肝毒性"]
    F --> G["壊死組織が広がりさらに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic'>嫌気的</span>環境に<br>(正のフィードバック)"]

💡 同じ菌が全く異なる2つの臨床像を起こすのは、毒素のが組織か腸管かで変わるため。 創傷内でが組織を破壊すればになり、腸管内で毒素(主に)が産生されればになる——「どこで毒素が働くか」で臨床像が決まる点は他のクロストリジウム属(C. tetaniC. botulinum)とも共通する発想である。

感染経路と疫学

  • :土壌または糞便で汚染された創傷(外傷・手術・血流障害を伴う創)から発症
  • :食肉・鶏肉の代表的な汚染菌。により調理時の加熱に耐えて生存し、食品の冷却過程で発芽、16〜52℃で保存されると栄養型が増殖する。十分な再加熱なしに供されると生きた栄養型菌が摂食され、腸管内でを産生する
  • :潜伏期8〜12時間、主に豚肉が汚染源(産生のC型菌、まれ)

起こす疾患

疾患 押さえどころ
筋壊死) 急性・増悪する創部痛、ガスによるした組織、壊死。発熱・頻脈・発汗過多・蒼白で急速に進行。外傷・虚血組織で発症する古典的III型
感染性胃腸炎(A型菌 再加熱不十分な肉料理から芽胞が高濃度に増殖し摂食。潜伏期8〜24時間とやや長い。腸管内での産生により自然軽快する非炎症性の水様性下痢(発症後約24時間で軽快)
(C型菌 空腸の壊死性病変、血性下痢、腹膜炎、ショック——致死率が高い

診断

検査 所見
血液寒天培地 α・β溶血のが特徴的
検体 では膿・壊死組織・血液、では糞便・原因食品
血清を含む——活性の有無で判定
の確定 糞便検体からの検出、または原因食品1gあたり10⁵個以上・発症者便から10⁶個/g以上の培養

治療と予防

  • 迅速な(壊死組織の除去)が治療の本体。(静注、高用量)を併用し、切断術やを要することもある
  • :自然軽快する疾患であり、輸液など支持療法のみで抗菌薬は不要
  • 予防は創傷の適切な外科的管理によりの形成を防ぐ。は調理後の食品を速やかに冷却し、十分な再加熱を行う
  • ⚠️ はアミノグリコシド系にを持つ。 性の能動輸送でしか菌体内に取り込まれないため、の壊死組織のようなでは無効——治療の主軸はあくまでである

まとめ

  • はグラム陽性・で、ガス(CO₂・H₂S・CH₄)を産生し、の一員でもある。
  • 主要病原因子は——細胞膜を破壊してを広げ、それがさらにを自己増幅させる正のフィードバックでが急速進行する。
  • III型)と感染性胃腸炎、自然軽快する水様性下痢)という機序の異なる2つの臨床像を持つ。
  • 診断は血液寒天培地のでの活性が鍵。
  • 治療の要は迅速な高用量——を除去しない限り薬物療法だけでは制御できない。は支持療法のみでよい。