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Microbe Atlas · 細菌

Clostridium perfringens

ウェルシュ菌

分類
G+ 桿菌・芽胞形成 / Gram+ rods (spore)Clostridium
性状
Gram陽性 (G+)桿菌 Bacilli
科目
Medical Microbiology
トピック
2/25: Gas-gangrene clostridia5/10: Bacterial pathogens of food-poisoning and toxico-infections (list)5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis
自然耐性薬
ゲンタマイシンアミカシントブラマイシン
原因となる疾患
壊死性軟部組織感染症気腫性胆嚢炎細菌性急性胃腸炎
作用する薬剤
ペニシリンG過酸化水素

🧠 全体像:は「酸素を締め出す壊死組織を自分で作り出す」菌として読む。()が細胞膜を破壊して血球・血管内皮を壊死させ、それがさらに酸素の乏しい壊死組織を広げて菌にとって好都合なを自己増幅させる——「毒素産生→組織破壊→さらに→さらに増殖」という正のフィードバックがの急速な進行を説明し、が薬物療法だけでは代替できない理由でもある。同じ菌が全く別の機序でありふれたも起こす二面性を持つ。

微生物学的な特徴

グラム陽性の短く太い桿菌で、土壌に加えヒトのの一員でもある。に共通する性質(グラム陽性・・)を持ち、卵形の芽胞は菌体中央よりやや端寄りに位置する。莢膜を持ち、CO₂・H₂S・CH₄などのガスを産生する——これがの「ガス」の由来である。・・分解酵素・リパーゼ・プロテアーゼなどの侵襲酵素により組織侵入を助ける。

病原性の仕組み

主要な病原性因子は()——細胞膜のを分解する酵素で、赤血球・血小板・白血球・を傷害し大量溶血・組織破壊・肝毒性を起こす。このほか(の原因)、・(腸管)も産生する。

flowchart TD
    A["創傷(土壌・便で汚染)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic'>嫌気条件</span>下で芽胞が発芽<br>(潜伏1〜3日)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vegetative bacteria'>栄養型菌</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha toxin'>アルファ毒素</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lecithinase'>レシチナーゼ</span>)を産生"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane phospholipid'>細胞膜リン脂質</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bilayer'>二重層</span>を破壊"]
    D --> E["赤血球・血小板・白血球・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial cell'>血管内皮細胞</span>の傷害"]
    E --> F["大量溶血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue necrosis'>組織壊死</span>・肝毒性"]
    F --> G["壊死組織が広がりさらに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic'>嫌気的</span>環境に<br>(正のフィードバック)"]

💡 同じ菌が全く異なる2つの臨床像を起こすのは、毒素のが組織か腸管かで変わるため。 創傷内でが組織を破壊すればになり、腸管内で毒素(主に)が産生されればになる——「どこで毒素が働くか」で臨床像が決まる点は他のクロストリジウム属(C. tetani・C. botulinum)とも共通する発想である。

感染経路と疫学

  • :土壌または糞便で汚染された創傷(外傷・手術・血流障害を伴う)から発症
  • :食肉・鶏肉の代表的な汚染菌。により調理時の加熱に耐えて生存し、食品の冷却過程で発芽、16〜52℃で保存されると栄養型が増殖する。十分な再加熱なしに供されると生きたが摂食され、腸管内でを産生する
  • :潜伏期8〜12時間、主に豚肉が汚染源(産生のC型菌、まれ)

起こす疾患

疾患 押さえどころ
(・筋壊死) 急性・増悪する創部痛、ガスによるした組織、壊死。発熱・頻脈・・蒼白で急速に進行。外傷・虚血組織で発症する古典的III型
(産生株による。現在の分類ではF型、旧来の教科書ではA型)1 再加熱不十分な肉料理から芽胞が高濃度に増殖し摂食。潜伏期8〜24時間とやや長い。腸管内での産生により自然軽快する非炎症性の水様性下痢(発症後約24時間で軽快)
(C型菌) 空腸の壊死性病変、血性下痢、腹膜炎、ショック——致死率が高い

診断

検査 所見
血液寒天培地 α・β溶血のが特徴的
検体 では膿・壊死組織・血液、では糞便・原因食品
抗血清を含む——活性の有無で判定
の確定 糞便検体からの検出、または原因食品1gあたり10⁵個以上・発症者便から10⁶個/g以上の培養

治療と予防

  • :緊急のと(壊死組織の除去)が治療の本体で、切断術を要することもある。原因菌が確定するまではバンコマイシンに・、、またはを加えた広域治療とし、筋壊死と確定したらペニシリン+クリンダマイシンの併用を確定治療とする2
  • 💡 なぜペニシリン単独ではなくクリンダマイシンを重ねるのか。 実験的ではクリンダマイシンやテトラサイクリンのほうがペニシリンより有効で、一方での約5%はクリンダマイシンに耐性であるため、両者を併用する。でも、抗菌薬の中ではとくに細菌の蛋白合成を阻害する薬の効果が大きい2
  • ⚠️ は推奨されない。 患者への利益が証明されておらず、蘇生とを遅らせうるためである2
  • :自然軽快する疾患であり、輸液など支持療法のみで抗菌薬は不要
  • 予防:は創傷の適切な外科的管理によりの形成を防ぐ。は調理後の食品を速やかに冷却し、十分な再加熱を行う
  • ⚠️ 嫌気性菌は通常アミノグリコシド系に耐性である3。アミノグリコシドは性の能動輸送でしか菌体内に取り込まれないため、の壊死組織のようなでは無効——治療の主軸はあくまでとペニシリン+クリンダマイシンである

まとめ

  • はグラム陽性・ので、ガス(CO₂・H₂S・CH₄)を産生し、の一員でもある。
  • 主要は()——細胞膜を破壊してを広げ、それがさらにを自己増幅させる正のフィードバックでが急速進行する。
  • (III型)と(、自然軽快する水様性下痢)という機序の異なる2つの臨床像を持つ。
  • 診断は血液寒天培地のとでの活性が鍵。
  • 治療の要は緊急のと、確定治療としてのペニシリン+クリンダマイシン併用——を除去しない限り薬物療法だけでは制御できない。は推奨されない。は支持療法のみでよい。

出典

  1. 1.Expansion of the Clostridium perfringens toxin-based typing scheme(Anaerobe・2018)抄録で、アルファ・ベータ・イプシロン・イオタの4毒素によるA〜E型の分類を改訂し、エンテロトキシン(CPE)を産生しベータ・イプシロン・イオタ毒素を産生しない株を新設のF型としたこと、ヒトの食中毒と抗菌薬関連下痢症を起こす株がF型に含まれることを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Skin and Soft Tissue Infections: 2014 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2014)学会サイトの全文(2026年9月27日時点で「CURRENT」表示)の推奨Xで、ガス壊疽が疑われる部位の緊急の外科的探索と罹患組織のデブリードマン(strong, moderate)、原因が確定するまではバンコマイシンにピペラシリン・タゾバクタム、アンピシリン・スルバクタム、またはカルバペネムを加えた広域治療(strong, low)、クロストリジウム性筋壊死の確定治療としてペニシリン+クリンダマイシン(strong, low)が推奨され、高気圧酸素療法は患者への利益が証明されておらず蘇生とデブリードマンを遅らせうるため推奨されない(strong, low)ことを確認した。根拠の要約には、実験的ガス壊疽ではテトラサイクリン・クリンダマイシン・クロラムフェニコールがペニシリンより有効であり、C. perfringensの5%がクリンダマイシン耐性であるためペニシリン+クリンダマイシン併用を推奨すること、動物モデルでは高気圧酸素単独の効果は乏しい一方、抗菌薬単独、とくに細菌の蛋白合成を阻害する薬の効果が大きいことが記されている。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月。2026年9月27日時点でEUCASTの想定表現型ページに掲載されている版)のTable 5で、嫌気性菌は通常アズトレオナム・アミノグリコシド系・ポリミキシンB/コリスチン・ナリジクス酸に耐性であると記載されていることを確認した。閲覧 2026-09-27