スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

気管支拡張症重症度指数

Bronchiectasis Severity Index

別名
気管支拡張症重症度スコア
臓器系
呼吸器
科目
Pulmonology
トピック
呼吸器内科 24:気管支炎と気管支拡張症
構成:症状
呼吸困難
構成:検査値
スパイロメトリー
適用疾患
気管支拡張症

🧠 全体像は、診断ではなく、将来の増悪・入院・死亡という予後を予測するための9項目加算スコアである。年齢・体格・肺機能という患者背景、入院歴・増悪頻度・呼吸困難という臨床経過、緑膿菌定着・画像上の拡張範囲という病原体・形態情報を1つの点数にまとめ、治療強度(の追加)と経過観察の頻度を決める材料に使う。単一のより多因子・評価を重視するという発想は、肝硬変におけるに近い。

目的と適用場面

内容
目的 患者の将来の増悪・入院・死亡リスクを層別化する
対象 HRCTで診断が確定したの成人患者
使う場面 診断確定後の重症度層別化、など治療強度を積み増す判断材料、外来頻度の決定
評価しないもの そのものの診断(HRCTで確定済みであることが前提)、原因検索、そのものの重症度

構成要素と配点

⭐ 9項目を加算し、合計0〜26点で評価する。各項目の区分・配点は次のとおり。

年齢

0点 2点 4点 6点
50歳未満 50〜69歳 70〜79歳 80歳以上

0点 2点
18.5 kg/m²以上 18.5 kg/m²未満

💡 側だけが加点され、・肥満側(BMIが高い側)には加点も減点もない。原著の表は18.5〜25・26〜29・30以上を別の行に分けているが、いずれも0点である1

0点 1点 2点 3点
80%超 50〜80% 30〜49% 30%未満

過去2年の入院歴

0点 5点
なし あり(の増悪による入院)

⭐ 単独項目としては最大の配点(5点)で、1項目だけで軽症の上限(4点)を超える。

過去1年の増悪回数

0点 2点
0〜2回 3回以上

⚠️ ここでいうは、古典的な1〜5の5段階(Fletcher分類系)である。COPDなどで使われる0〜4の5段階とは刻み方も点数も異なり、そのまま流用すると誤る。

0点 2点 3点
グレード1〜3 グレード4 グレード5

緑膿菌の定着

0点 3点
なし あり

緑膿菌以外の病原体の定着

0点 1点
なし あり(黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)、肺炎球菌、など)

罹患数・画像パターン

0点 1点
3葉未満、かつなし 3葉以上、またはあり

解釈とカットオフ

合計点 分類
0〜4点 軽症
5〜8点 中等症
9点以上 重症

導出コホート(608例、4年追跡)は全体で死亡62例(10.2%)・入院189例(31.1%)で、リスク群(軽症・中等症・重症)間で増悪頻度・QOLに明確な差があった(P < 0.0001)。死亡予測のAUCは導出コホートで0.80(95%0.74〜0.86)、4つの検証コホートで0.81〜0.84。入院予測のAUCは導出コホートで0.88(95%0.84〜0.91)、検証コホートで0.80〜0.88と、いずれも高い判別能を示した1

💡 項目ごとの重みは、予測する転帰によって異なる。 で入院を独立に予測したのは入院歴・MRCスコア・FEV1 30%未満・緑膿菌または他の病原体の定着で、死亡を独立に予測したのは高齢・FEV1低下・BMI 18.5未満・入院歴・年3回以上の増悪だった。合計点は9項目をまとめて1つの数字にするが、内訳を見ると「入院を押し上げる因子」と「死亡を押し上げる因子」は完全には一致しない1

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 嚢胞性線維症(CF)によるには使わない。 原著の導出・検証コホートはCF、、活動性を含む、HIVの患者を除外しており、専用のスコアである12

⚠️ 開発・検証コホートが欧州中心。 導出は単施設、検証も英国(Dundee・Newcastle)・ベルギー(Leuven)・イタリア(Monza)の4施設に限られる1の頻度が高い中国のコホートでは入院・増悪の予測能に限界が報告され、インドのコホートでは死亡と関連する病原体が緑膿菌ではなくなどの腸内細菌目であるなど、欧州由来の重み付け(緑膿菌定着に3点)がそのまま当てはまらない集団があることが指摘されている3

⚠️ という別の重症度スコアがある。 EDはFEV1・年齢・緑膿菌定着・数・呼吸困難の5項目のみで0〜7点と簡便だが、は9項目・0〜26点とより多くの臨床情報を組み込む。研究の蓄積では、入院・増悪頻度・QOL・・肺機能低下の予測はが優れる一方、ある比較研究では15年という長期死亡率の予測はEDが上回った。「どちらが優れるか」は予測したい転帰次第で変わり、一律にEDの互換というわけではない2

⚠️ 単独でを決めない。 年齢・BMI・FEV1・入院歴など、を構成する因子の多くは臨床的に修正できない。点数が高いこと自体は治療を強化すべき根拠にはなっても、点数だけでの要否を機械的に決めるべきではなく、増悪の実際の頻度・重症度・患者の意向と合わせて判断する3

⚠️ 原著の登録時点で長期の経口・治療を受けていた患者は除外されており、すでに中の患者集団での点数の解釈には注意を要する1

まとめ

  • は年齢・BMI・・過去2年の入院歴・過去1年の増悪回数・(1〜5)・緑膿菌定着・他病原体定着・罹患数の9項目を加算する、である。
  • 合計0〜26点で、0〜4点=軽症、5〜8点=中等症、9点以上=重症と分類し、死亡・入院いずれの予測でも高いAUC(0.80台)を示す。
  • は1〜5の古典的段階であり、などで使う(0〜4)とは別物であるため混同しない。
  • 開発・検証コホートは欧州中心で、非欧州集団(が多い地域、腸内細菌目優位の感染プロファイルを持つ地域)への外挿には限界がある。
  • という簡便な代替があり、は入院・増悪予測に強い一方、長期死亡率の予測ではEDが優れたとする報告もある。
  • 子の多くはなため、単独でを決めず、実際の増悪状況・患者の意向と併せて判断する。

出典

  1. 1.The Bronchiectasis Severity Index. An International Derivation and Validation Study(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(Chalmers JD, et al.)・2014)BSIの9項目(年齢・BMI・FEV1予測値%・過去2年の入院歴・過去1年の増悪回数・MRC息切れスケール・緑膿菌定着・他病原体定着・放射線学的重症度)の区分と配点、低リスク0〜4点・中間リスク5〜8点・高リスク9点以上という3群カットオフ、嚢胞性線維症・活動性悪性腫瘍・活動性非結核性抗酸菌症を含む活動性抗酸菌症・HIVを除外基準としたことを確認した。Edinburgh導出コホート(608例、2008〜2012年、4年追跡で死亡62例10.2%・入院189例31.1%)と、Dundee・Leuven(ベルギー)・Monza(イタリア)・Newcastleの4検証コホート(計702例)で、死亡予測のAUCが導出0.80(検証0.81〜0.84)、入院予測のAUCが導出0.88(検証0.80〜0.88)であったことも確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.The Bronchiectasis Severity Index and FACED score for assessment of the severity of bronchiectasis(Pulmonology(Sociedade Portuguesa de Pneumologia; Costa JC, et al.)・2018)BSIの合計点範囲が0〜26点であること、比較対象のFACEDスコア(FEV1・年齢・緑膿菌定着・放射線学的肺葉数・mMRC呼吸困難の5項目、0〜7点、軽症0〜2/中等症3〜4/重症5〜7)の構成、BSIが入院・増悪頻度・QOL・呼吸器症状・運動耐容能・肺機能低下の予測でFACEDより優れるとされる一方、ある比較研究では15年死亡率の予測はFACEDが優れたことを確認した(この優劣の比較は本論文自身の結果ではなく、考察で引用されている先行研究の知見)。両スコアとも非CF気管支拡張症を対象とすることも確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Disease Severity and Activity in Bronchiectasis: A Paradigm Shift in Bronchiectasis Management(Tuberculosis and Respiratory Diseases(Im Y, Chalmers JD, Choi H)・2024)BSIが英国での導出・欧州中心の検証コホートに基づくため、結核後気管支拡張症を含むアジア人集団では入院・増悪の予測能に限界が報告されていること(中国のコホートでの検討)、インド人集団では緑膿菌ではなく肺炎桿菌などの腸内細菌目が死亡と関連するなど欧州由来の重み付けと異なる感染プロファイルが報告されていること、重症度スコアを構成する因子の多くは臨床的に修正不能であるため単独で治療強度を決定すべきでないという指摘を確認した。閲覧 2026-08-04