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Ranson基準

Ranson criteria

別名
ランソン基準Ranson's criteria
臓器系
肝胆膵
科目
SurgeryInternal Medicine
トピック
外科学 B/15:急性膵炎の外科的側面内科学 L-53:急性膵炎
構成:検査値
白血球数血糖値乳酸脱水素酵素アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)ヘマトクリット尿素窒素カルシウム低酸素血症

🧠 全体像:Ranson基準(Ranson criteria)は、の初期決定および・重症化リスクを予測するために策定された古典的スコアリングシステムである。入院時(初診時)の5項目と、入院後48時間以内の推移を捉える6項目の計11項目(では一部の項目と閾値を調整した10項目)で評価する。歴史的に広く普及したが、判定完了までに48時間を要するため超初期の集中輸液やの決定には遅れが生じやすい。現代の診療では、入院早期の迅速予測にはやAPACHE II、確定的なにはが標準として用いられている。

目的と適用場面

項目 内容
目的 発症早期における重症化・・の予測
対象 と診断された成人患者(および)
使う場面 入院時初期評価および入院後48時間時点での再評価
評価しないもの 48時間より前の確定的な(この役割はを評価するが担う)

構成要素と配点

非胆石性(アルコール性など)の通常版は計11項目、では年齢や検査閾値が異なりPaO₂を除く計10項目で評価する。各項目を満たす場合に1点を与える。

1. 非胆石性膵炎(通常版:全11項目)[^ranson-sgo-1974]

評価時期 項目 基準 配点
入院時(0時間) 年齢 55歳超 1
入院時(0時間) 16,000/μL超 1
入院時(0時間) 血糖値 200 mg/dL超(糖尿病の既往を除く) 1
入院時(0時間) 350 IU/L超 1
入院時(0時間) AST 250 IU/L超 1
48時間以内 低下 10%超(10ポイント超の低下) 1
48時間以内 上昇 5 mg/dL超の上昇 1
48時間以内 血清カルシウム 8.0 mg/dL未満 1
48時間以内 60 mmHg未満(低酸素血症) 1
48時間以内 4 mEq/L超 1
48時間以内 推定・喪失 6 L超 1

2. 胆石性膵炎版(全10項目)[^ranson-annsurg-1979]

では一過性の胆道閉塞や急激な酵素逸脱が起きやすいため、一部のが引き上げられ、PaO₂項目が除外されている。

評価時期 項目 基準 配点
入院時(0時間) 年齢 70歳超 1
入院時(0時間) 18,000/μL超 1
入院時(0時間) 血糖値 220 mg/dL超 1
入院時(0時間) 400 IU/L超 1
入院時(0時間) AST 250 IU/L超 1
48時間以内 低下 10%超(10ポイント超の低下) 1
48時間以内 上昇 2 mg/dL超の上昇 1
48時間以内 血清カルシウム 8.0 mg/dL未満 1
48時間以内 5 mEq/L超 1
48時間以内 推定・喪失 4 L超 1

解釈とカットオフ

陽性項目数の合計(通常版は0〜11点、胆石性版は0〜10点)によって重症度と死亡リスクを分類する。3点以上が重症の目安とされる1。

合計点数 重症度区分 推定死亡率 臨床的対応
0〜2点 軽症 約1% 一般病棟での標準的輸液・
3〜4点 中等症〜重症 15〜20% 厳密な監視、積極的輸液、ICU/HDU入室の検討
5〜6点 重症 約40% 管理、主要臓器障害のモニタリングと支持療法
7点以上 最重症 50%以上(100%に達することもある) に対する

(8.0 mg/dL未満)の出現は、のに伴うとカルシウムの結合()による消費を反映しており、局所壊死の広がりを示す古典的徴候である。また、や低下、BUN上昇はによるへの大量のとの強さを示している。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 48しないとスコアが完成しない:の転帰を左右する最も重要な介入(十分な、の安定化)は発症後最初の24時間以内に求められる。Ranson基準は48時間時点の推移項目(カルシウム、低下、BUN上昇など)を必須とするため、初診時の迅速なツールとしてはタイミングが遅すぎる本質的欠点がある。

⚠️ 病因別の使い分けが必要:非胆石性と胆石性で基準項目と閾値が異なるため、入院早期に胆道病変の有無(による胆石・拡張の評価)を確定しておかなければ正確な採点ができない。

⚠️ 確定的なではない:Ranson基準はあくまで発症初期の予測スコアであり、確定的なには用いない。現代のガイドラインでは、呼吸・腎・循環の臓器不全が48時間を超えて持続するかどうかで判定するが国際標準である2。

まとめ

  • Ranson基準は、患者の重症化および死亡リスクを入院時5項目と48時間後6項目(計11項目、胆石性は計10項目)で予測する古典的スコアである。
  • 3点以上で重症のリスクが有意に高まり、点数上昇とともに死亡率が急増する。
  • 評価完了までに48時間を要するため、超早期のにはなどを用い、確定的なはに基づいて行う。

出典

  1. 1.Prognostic signs and the role of operative management in acute pancreatitis(Surgery, Gynecology & Obstetrics・1974)急性膵炎患者において、入院時5項目(年齢55歳超、白血球数16,000/μL超、血糖値200 mg/dL超、LDH 350 IU/L超、AST 250 IU/L超)および入院48時間以内6項目(ヘマトクリット低下10%超、BUN上昇5 mg/dL超、血清カルシウム8 mg/dL未満、PaO2 60 mmHg未満、塩基欠乏4 mEq/L超、推定体液喪失6 L超)の計11予後因子を同定し、陽性項目数が3項目以上で重症化・死亡リスクが著明に上昇することを示した。閲覧 2026-10-28
  2. 2.Classification of acute pancreatitis--2012: revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus(Gut・2013)急性膵炎の重症度は持続性臓器不全(48時間を超える臓器不全)の有無を中心に軽症・中等症・重症に分類されると規定した。Ranson基準などの古典的スコアは入院時点・早期の予後予測を担う補助的道具に位置づけられる。閲覧 2026-10-28
  3. 3.The timing of biliary surgery in acute pancreatitis(Annals of Surgery・1979)胆石性急性膵炎患者を対象として予後予測因子を再検討し、非胆石性膵炎と異なる基準(入院時:年齢70歳超、白血球数18,000/μL超、血糖値220 mg/dL超、LDH 400 IU/L超、AST 250 IU/L超;48時間以内:ヘマトクリット低下10%超、BUN上昇2 mg/dL超、血清カルシウム8 mg/dL未満、塩基欠乏5 mEq/L超、体液喪失4 L超の計10項目)を報告した。閲覧 2026-10-28