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APACHE II

APACHE II

別名
APACHE IIスコアAcute Physiology and Chronic Health Evaluation II
臓器系
全身
科目
SurgeryInternal Medicine
トピック
外科学 G/04:術前管理内科学 L-53:急性膵炎外科学 O/16:急性膵炎の外科的側面(症状・診断・治療)
構成:症状
発熱低血圧頻脈頻呼吸意識障害
構成:検査値
血清ナトリウムカリウムクレアチニンヘマトクリット白血球数動脈血液ガス
適用疾患
急性膵炎

🧠 全体像:APACHE IIは、(ICU)に入室した重症患者の全身の生理学的異常・年齢・慢性健康状態を点数化し、を予測するシステムである。1985年にKnausらによって開発され、領域における多施設共同研究の重症度補正や診療の質の評価(ベンチマーク)における国際標準ツールとして長く君臨してきた。ベッドサイドで数分で計算できるqSOFAや日々の臓器障害を追跡すると異なり、入室後最初の24時間における最悪値を網羅して算出する。また消化器・救急領域では、の初期重症度予測スコアとしても広く参照されてきた。

目的と適用場面

項目 内容
目的 ICU入室重症患者のの層別化、疫学研究・における集団の重症度補正
対象 ICUに入室した成人の重症患者全般(補助的に患者)
使う場面 ICU入室後24時間の集計時点、臨床研究でのリスク調整、の重症化リスク予測
評価しないもの ベッドサイドでの即時、日々の臓器不全推移の追跡、小児・心臓外科術直後・

入室から24時間のあいだに記録された最も異常な値を集計して計算するため、入室直後その場での意思決定には使えない1。

構成要素と配点

スコアは、①(APS:0〜60点)、②年齢点数(0〜6点)、③(0〜5点)の3つの要素の合計(合計0〜71点)で構成される1。

1. 急性生理学的スコア(APS)

入室後24時間以内に測定された12の生理学的から、最も正常から乖離した最悪値を採用し、各0〜4点で採点する。

評価項目 高値側の異常配点(4〜1点) 正常範囲(0点) 低値側の異常配点(1〜4点)
体温( ℃) 41以上(4点)
39〜40.9(3点)
38.5〜38.9(1点)
36.0〜38.4 34.0〜35.9(1点)
32.0〜33.9(2点)
30.0〜31.9(3点)
29.9以下(4点)
(mmHg) 160以上(4点)
130〜159(3点)
110〜129(2点)
70〜109 50〜69(2点)
49以下(4点)
心拍数(回/分) 180以上(4点)
140〜179(3点)
110〜139(2点)
70〜109 55〜69(2点)
40〜54(3点)
39以下(4点)
呼吸数(回/分) 50以上(4点)
35〜49(3点)
25〜34(1点)
12〜24 10〜11(1点)
6〜9(2点)
5以下(4点)
酸素化(※分岐あり) FiO2 0.5以上:A-aDO2 500以上(4点)
350〜499(3点)
200〜349(2点)
A-aDO2 200未満
または PaO2 70超
FiO2 0.5未満:PaO2 61〜70(1点)
55〜60(3点)
55未満(4点)
7.7以上(4点)
7.6〜7.69(3点)
7.5〜7.59(1点)
7.33〜7.49 7.25〜7.32(2点)
7.15〜7.24(3点)
7.15未満(4点)
血清ナトリウム(mEq/L) 180以上(4点)
160〜179(3点)
155〜159(2点)
150〜154(1点)
130〜149 120〜129(2点)
111〜119(3点)
110以下(4点)
(mEq/L) 7.0以上(4点)
6.0〜6.9(3点)
5.5〜5.9(1点)
3.5〜5.4 3.0〜3.4(1点)
2.5〜2.9(2点)
2.5未満(4点)
(mg/dL) 3.5以上(4点)
2.0〜3.4(3点)
1.5〜1.9(2点)
0.6〜1.4 0.6未満(2点)
(%) 60以上(4点)
50〜59.9(2点)
46〜49.9(1点)
30〜45.9 20〜29.9(2点)
20未満(4点)
(/μL) 40,000以上(4点)
20,000〜39,999(2点)
15,000〜19,999(1点)
3,000〜14,999 1,000〜2,999(2点)
1,000未満(4点)
(GCS) — 15点(0点) 15から患者のGCSを減算した点数(0〜12点)

⭐ の注意点:患者が()を来している場合、クレアチニン項目の配点は2倍(最大8点)として計算する1。

2. 年齢点数

加齢に伴う生理的の低下を反映し、年齢に応じて加算する。

年齢区分 配点
44歳以下 0点
45〜54歳 2点
55〜64歳 3点
65〜74歳 5点
75歳以上 6点

3. 慢性健康状態点数

入室前6か月以内に重症の臓器機能不全や免疫抑制状態が存在した既往がある場合、入室区分に応じて加算する。

  • 非手術患者または緊急手術患者:5点
  • 予定手術患者:2点
  • 既往なし:0点

対象となる基礎疾患の基準:

  • 肝臓:生検で確定した、、の既往、肝性脳症の既往
  • 心血管:安静時または軽労作で症状を伴う高度な心不全(クラスIV)
  • 呼吸器:重度の・による低酸素血症・、、重度
  • 腎臓:慢性を受けている
  • 免疫不全:免疫抑制療法中、化学療法中、放射線治療中、・白血病・などによる高度な易感染性

解釈とカットオフ

合計点と院内死亡率

合計点(0〜71点)が高いほど、がに上昇する1。

APACHE II スコア 予測の目安
0〜4点 約4%
5〜9点 約8%
10〜14点 約15%
15〜19点 約25%
20〜24点 約40%
25〜29点 約55%
30〜34点 約75%
35点以上 80%超

急性膵炎における活用

の初期診療において、APACHE IIは早期の重症度予測ツールとして長年使用されてきた。

flowchart TD
    A["重症患者のICU入室"] --> B["入室後最初の24時間でバイタル・血液検査を継続測定"]
    B --> C["12項目の生理学的最悪値(APS:0〜60点)を算出"]
    C --> D["年齢点数(0〜6点)と慢性疾患点数(0〜5点)を加算"]
    D --> E{"合計スコア(0〜71点)の層別化"}
    E -->|"15点未満"| F["死亡リスク低〜中等度<br>一般<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intensive care'>集中治療</span>管理"]
    E -->|"15〜24点"| G["死亡リスク中等度〜高(25〜40%)<br>厳重な全身管理・臓器サポート"]
    E -->|"25点以上"| H["死亡リスク極めて高(50%超)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='multidisciplinary intensive care'>集学的集中治療</span>・多職種介入"]

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 入室直後の迅速には使えない。 最初の24時間の最悪値を用いるため、スコアが確定するのは入室後24時間である。救急搬送時や外来初診時のベッドサイド判定には、qSOFAやNEWSなどの即時を用いる。

⚠️ 個々の患者の治療撤退や延命中止の決定基準にしてはならない。 APACHE IIは集団レベルでのリスク補正と死亡率予測を目的に開発された疫学指標であり、個別の患者の生命予後を決定づけるものではない。35点以上の超高得点群であっても救命される患者は存在する。

⚠️ 特殊なICU集団には適応できない。 心臓科術直後の患者(の影響による一過性の血液ガス異常や不整脈)、患者、重度外傷患者、小児患者ではが検証されていないため、専用の重症度スコアを用いる。

⚠️ 日々の治療経過モニタリングにはを用いる。 APACHE IIは入室24時間の1時点評価を前提とした指標であり、日々の臓器不全の改善や悪化を追跡する用途にはが適している。

まとめ

  • APACHE IIは、12の生理学的(最悪値)・年齢・慢性疾患の3要素からなる入室患者の重症度・死亡リスク評価システムである。
  • 合計点(0〜71点)の上昇に伴ってがに増大し、ICUの集団間リスク補正の標準ツールとして用いられる。
  • では8点以上が重症化予測の古典的として用いられるが、計算の煩雑さから現在はBISAPなどの簡便指標も併用される。
  • 入室後24しないと確定できず、日々の経過観察にはが適している。

出典

  1. 1.APACHE II: a severity of disease classification system(Critical Care Medicine・1985)13施設のICU入室患者5,815例を対象に、12の生理学的指標(APS 0〜60点)、年齢点数(0〜6点)、慢性健康状態点数(0〜5点)からなるAPACHE II(0〜71点)を開発・検証し、スコアの上昇に伴って院内死亡率が指数関数的に増大すること、集団のリスク補正・予後層別化に高い判別能を有することを確認した。閲覧 2026-10-27
  2. 2.Comparison of BISAP, Ranson's, APACHE-II, and CTSI scores in predicting organ failure, complications, and mortality in acute pancreatitis(American Journal of Gastroenterology・2010)急性膵炎前向きコホート185例において、入室24時間のAPACHE IIが重症急性膵炎予測(AUC 0.78)や死亡予測においてBISAPやRansonと同等の判別精度を有すること、カットオフ8点以上が重症化予測指標として機能することを確認した。閲覧 2026-10-27