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Symptoms · Published

口角炎

Angular cheilitis

別名
口角唇炎perlècheangular stomatitis
臓器系
皮膚耳鼻咽喉科
科目
DermatologyInternal Medicine
トピック
皮膚科 1-21:カンジダ症の臨床病型内科学 H-02:鉄欠乏性貧血内科学 G-02:小腸疾患・吸収不良・消化不良
関連疾患
カンジダ症鉄欠乏性貧血

🧠 全体像は口角(口唇の)に生じる紅斑・・鱗屑の総称であり、単一の原因を持つ疾患ではなくの病態として捉えるところから始める。唾液が口角に溜まってする「局所の土台」にCandida albicansStaphylococcus aureusによる「感染」が乗り、鉄・や糖尿病、免疫抑制のような「全身的素因」が背景で関与する——という三層構造で整理すると、」という短絡を避けられる。頻度としては局所のとカンジダ感染の組み合わせが最も多い1

定義と用語の整理

は、口角という部位に限局する点で近縁の用語と区別しておく。

用語 内容
(本項) 口角のに限局する紅斑・・鱗屑。局所の・感染・全身的素因が重なって生じる
〜真皮に達する線状の裂け目全般を指す概念。に伴うはその一分症で、裂け目そのものの機械的機序は側で扱う
口角より内側の口腔粘膜の炎症・潰瘍。誘因は重なるが、限局する部位が異なる

病態生理

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ill-fitting dentures'>義歯不適合</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occlusal vertical dimension'>咬合高径</span>の低下<br>加齢による口角の垂れ下がり<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='drooling'>流涎</span>・口呼吸"] --> B["唾液の口角への貯留・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='maceration'>浸軟</span>"]
    B --> C["Candida albicans・黄色ブドウ球菌の<br>単独または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed infection (polymicrobial infection)'>混合感染</span>"]
    D["鉄・ビタミンB群・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zinc deficiency'>亜鉛欠乏</span><br>糖尿病・免疫抑制"] -.感染しやすい素地を作る.-> C
    C --> E["口角の紅斑・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fissure'>亀裂</span>・鱗屑"]

出発点は局所のである。 の低下・加齢による口角の垂れ下がり・・口呼吸はいずれも口角に唾液を溜め続け、のバリアを壊す1。唾液そのものとによる持続的な接触刺激も、このする2

このした環境にCandida albicansが定着する例が最も多く、培養で検出される頻度は高いが、単独病原体となるのはそのうち一部にとどまる。Staphylococcus aureus単独例もあり、両者のも少なくない1の臨床病型のひとつ(性・紅斑性と並ぶ型)としても位置づけられる。

全身的素因は、この局所+感染という土台に乗る形で関与する。鉄欠乏、ビタミンB2(リボフラビン)欠乏、ビタミンB12・葉酸欠乏欠乏、糖尿病、免疫抑制、Crohn病の口腔病変はいずれも誘因になりうるが、これらの欠乏が関与するのは症例の一部にとどまり1+カンジダ感染の組み合わせの方が頻度としては多い。糖尿病は唾液中グルコース上昇を介してカンジダの定着・増殖を促す点が機序として特徴的である1。ビタミンB群欠乏・鉄欠乏は単独の摂取不足でも生じるが、Crohn病のようなによる吸収不良が背景にあることもある。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ 単独で栄養欠乏と決めつけず、基礎疾患を探す。 反復・難治のHIV感染や悪性腫瘍に伴う免疫抑制の手掛かりになりうる1。糖尿病のコントロール不良も同様に誘因となる。栄養剤や外用薬だけで様子を見る前に、病歴での手掛かりを確認する。
  • ⚠️ 片側性・難治性でを伴うものは、の枠から外して考え直す。 あらゆる治療に反応しない特発性は、栄養欠乏の見落としか悪性腫瘍を疑う根拠になり、とくに片側性で難治のものは口唇・口角部の癌()を鑑別する。片側性の口角の粘膜疹は梅毒(第2期の粘膜疹)としても報告されており、性交渉歴があれば血清学的検査を検討する1
  • 小児の口角の紅斑は、習慣的な舐め癖による刺激性のでも生じる。反復して舐める動作の有無をし、感染性・欠乏性のと区別する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["口角の紅斑・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fissure'>亀裂</span>・鱗屑"] --> B{"義歯・咬合・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drooling'>流涎</span>など<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='local'>局所因子</span>があるか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='local'>局所因子</span>を是正し<br>抗真菌薬外用を開始"]
    B -->|"なし・是正しても難治"| D["栄養歴・既往歴を確認"]
    D --> E["鉄・ビタミンB群・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zinc deficiency'>亜鉛欠乏</span><br>糖尿病・免疫抑制を検索"]
    C --> F{"治療への反応は良好か"}
    E --> F
    F -->|"良好"| G["経過観察"]
    F -->|"不良・片側性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induration'>硬結</span>あり"| H["口唇癌・梅毒を鑑別し<br>生検・血清学的検査を検討"]

治療の考え方

の是正が根本であり、多くの特発性はこれだけで足りる。 義歯が不適合であれば歯科で調整し、を回復して口角のたるみを減らす。歯科的な咬合修正が難しい難治例では、などのフィラー注入や外科的で口角の解剖を戻し、唾液の貯留を減らす選択肢もある1。ワセリンなどの保護で口角を被覆することも局所是正の柱で、これだけで軽快する例も多い1

これに、・ミコナゾールなど)の抗真菌薬外用を併用する1。細菌の関与が疑われる、または培養で黄色ブドウ球菌が確認された例では、2%を1日3〜4回、または2%を追加する1

⚠️ 感染性を除外せずにステロイド外用を単独で使わない。 ステロイド外用は、炎症が主体の場合の単独療法、または抗真菌薬・抗菌薬への併用としての位置づけであり、感染を除外しないまま単独で使うと再発を繰り返しやすい1。全身的な精査は、局所是正への反応不良や病歴・身体所見で手掛かりがあるときに絞って行う。

まとめ

  • は局所のCandida albicansStaphylococcus aureus感染+全身的素因が重なって生じるの病態で、「=」と短絡しない。
  • 低下・・口呼吸)によるが土台を作り、そこにカンジダ・黄色ブドウ球菌が定着する。
  • 鉄・ビタミンB群・、糖尿病、免疫抑制、Crohn病の口腔病変は誘因になりうるが、頻度としては+感染の組み合わせの方が多い。
  • 難治・反復例ではHIV感染・糖尿病・悪性腫瘍に伴う免疫抑制を、片側性・を伴う例では口唇癌・梅毒を鑑別する。
  • 治療はの是正と保護が根本で、抗真菌薬外用を基本に、細菌併存例ではを追加する。ステロイド外用は感染除外前の単独使用を避ける。

出典

  1. 1.Angular Cheilitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)口角炎は感染性・機械的・栄養的・全身的因子による多因子性の病態であること、局所の浸軟(義歯不適合・咬合高径低下・唾液貯留)が発症機序の中心であること、Candida albicansが培養で93%に検出されるが単独病原体となるのは20〜50%にとどまり、Staphylococcus aureus単独例が約20%、両者の混合感染が60〜75%を占めること、鉄・ビタミンB群欠乏は最大25%の症例に関連すること、亜鉛欠乏やCrohn病を含む炎症性腸疾患も誘因として挙げられていること、糖尿病は唾液中グルコース上昇を介してカンジダ増殖を促すこと、HIV/AIDSや悪性腫瘍に伴う免疫抑制が背景になりうること、片側性・難治性の特発性口角炎は悪性腫瘍や第2期梅毒の粘膜疹を鑑別すべきであること、治療は義歯調整・咬合高径の回復や保護軟膏による局所是正が根本で、歯科的な咬合修正が困難な例にはコラーゲンやヒアルロン酸のフィラー注入・外科的インプラントで口角の解剖を戻し唾液の貯留を減らす選択肢が挙げられていること、抗真菌薬外用に加え細菌併存時にはムピロシン2%軟膏を1日3〜4回またはフシジン酸2%クリームを追加すること、感染を除外せずステロイド外用を単独使用しないことを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Angular cheilitis(DermNet NZ・2022)口角に長時間とどまる唾液とその消化酵素そのものが刺激性の接触皮膚炎を来す一因になることを確認した。閲覧 2026-08-04