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Symptoms · Published

食欲亢進

Increased appetite

別名
食欲増進
臓器系
全身内分泌・代謝
科目
PharmacologyInternal Medicine
トピック
薬理学 B26:ヒスタミンおよび抗ヒスタミン薬内科学 E-06:糖質コルチコイド欠乏と過剰
起因薬
シプロヘプタジン

🧠 全体像:は、と対をなす症状でありながら臨床での扱われ方はまったく異なる。の多くは「原因疾患を探す入口」だが、の多くは特定の薬剤の既知の作用として説明がつく——副腎皮質ステロイドと一部の抗ヒスタミン薬・抗セロトニン薬が二大原因であり、内分泌疾患そのものが原因になることは相対的に少ない。もう一つの要点は、「食欲が増える」ことと「体重が増える」ことを同じ現象として扱わないこと。日本の添付文書の多くはだけを副作用欄に挙げ、体重増加は別項目として扱う。

定義と用語の整理

()は、空腹感やもっと食べたいという欲求そのものが亢進する症状を指す。患者が「よく食べるようになった」「お腹がすきやすい」と訴える場合に対応する。

⚠️ と体重増加は別の症状として扱う。 体重増加はの結果として起こることもあるが、・の低下・量の減少など食欲とな機序でも起こる。ハンガリーのの添付文書は「代謝および栄養」の項にを、「臨床検査」の項に体重増加を別々の項目として置き、日本の電子添文はのみを副作用欄に記載して体重増加という語を用いていない12。「/体重増加」と一括りに書かれた記述を見ても、両者が常に同時に起こるとは限らないことを念頭に置く。

病態生理

の原因は、薬剤性が圧倒的多数を占める。機序で大きく2群に整理できる。

💡 薬剤性以外では、甲状腺機能亢進症や糖尿病の改善期など、代謝が変化する場面で二次的に食欲が亢進することがある。 ただしこれらはだけをに受診することは少なく、他の症候(・体重減少・多汗など、あるいは口渇・など)が先に問題になることが多い。

原因薬剤・状況ごとの整理

薬剤性の症状であるため、鑑別というより「どので、どの程度の頻度で起こるか」を整理する枠組みが実務的である。

薬剤群 想定される機序 対応の考え方
副腎皮質ステロイド など、視床下部の摂食調節系への関与 治療上必要な用量である限り許容し、体重・血糖・など他の徴候も併せて経過を追う
抗ヒスタミン・抗セロトニン薬(等) の5-HT2A拮抗 アレルギーなら副作用として説明し、食欲刺激がの場合はむしろ期待される効果として扱う
その他(・・・等) 薬剤ごとに異なる 個別の添付文書で頻度区分を確認する
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased appetite'>食欲亢進</span>の訴え"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medication history'>薬歴</span>と時期は一致するか"}
    B -->|"一致する"| C{"薬剤群は"}
    C -->|"副腎皮質ステロイド"| D["用量・期間依存性を確認し<br>体重・血糖など随伴所見も追う"]
    C -->|"抗ヒスタミン/抗<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serotonergic system'>セロトニン系</span>"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic aim'>治療目的</span>か副作用かを整理する<br>(食欲刺激が目的のこともある)"]
    C -->|"その他の薬剤"| F["当該薬剤の添付文書で<br>個別に頻度区分を確認する"]
    B -->|"一致しない・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medication history'>薬歴</span>なし"| G["甲状腺機能亢進症や<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycemic control'>血糖コントロール</span>改善期など<br>代謝性の要因を検討する"]
    D --> H["原因薬の継続が必要かを再評価し<br>減量・中止で軽快するか確認する"]
    E --> H
    F --> H

対症療法の考え方

  • そのものを薬物療法で抑える標準治療は確立していない。まず原因薬剤の必要性を再評価し、減量・中止が可能かを検討することが基本になる。
  • 治療上その薬剤を継続する必要がある場合(長期ステロイド治療など)は、食事指導や活動量の維持など生活面での対応を優先し、そのものを問題視しすぎない。
  • のように食欲刺激がで用いられている場合は、体重増加が得られているかを定期的に評価し、が背景にあるなら効果が乏しいことをあらかじめ説明しておく4。

まとめ

  • はの対概念だが、多くは特定の薬剤で説明がつく点で臨床的な位置づけが異なる。
  • と体重増加は別の症状であり、添付文書でも別項目として扱われることがある。一括りにしない。
  • 機序は大きく、副腎皮質ステロイドによるなど摂食調節系への関与と、抗ヒスタミン・抗セロトニン薬によるの5-HT2A拮抗の2群に整理できる。
  • は同じ機序を逆手に取り、栄養不良患者へのとしても用いられるが、が背景にある場合は効果が乏しい。
  • 対応の基本は原因薬剤の必要性の再評価であり、そのものを標的にした確立した薬物療法はない。

出典

  1. 1.Peritol tabletta — Alkalmazási előírás(Országos Gyógyszerészeti és Élelmezés-egészségügyi Intézet (OGYÉI)・2023)ハンガリーのPeritol錠添付文書が「代謝および栄養」の項に食欲不振と食欲亢進を、「臨床検査」の項に体重増加を別々の副作用として置いていること、食欲不振・消耗状態の患者の食欲改善が承認適応の一つであることを確認した。閲覧 2026-09-08
  2. 2.ペリアクチン錠4mg/ペリアクチン散1% 電子添文(2023年4月改訂 第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)添付文書情報・2023)日本の電子添文が11.2その他の副作用の頻度不明欄に「食欲亢進」を単独の項目として挙げ、体重増加という語は用いていないことを確認した。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Glucocorticoids, stress and eating: The mediating role of appetite-regulating hormones(Obesity Reviews (Kuckuck S, van der Valk ES, Scheurink AJW, et al.)・2023)慢性ストレス・疾患・薬剤によるグルココルチコイド過剰がレプチンなどホルモン性の食欲シグナルの破綻をもたらし、報酬関連の摂食行動の制御不全を介して食欲亢進・体重増加につながりうるという概念的枠組みを確認した。閲覧 2026-09-08
  4. 4.Use of cyproheptadine to stimulate appetite and body weight gain: A systematic review(Appetite (Harrison ME, Norris ML, Robinson A, et al.)・2019)RCT32件を含む46件の研究を統合した系統的レビューで、39件(約85%)でシプロヘプタジンが対象集団に有意な体重増加をもたらした一方、HIVや悪性腫瘍など消耗性疾患の患者では効果が乏しいこと、最も高頻度の副作用が一過性の軽度〜中等度の鎮静であったことを確認した。閲覧 2026-09-08