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Symptoms · Published

Mees線

Mees' lines

別名
ミース線横走性爪甲白色症Mees lines
臓器系
皮膚
科目
Forensic Medicine
トピック
法医学 31:一酸化炭素中毒とヒ素・シアン化物・鉛・メタノール中毒
関連疾患
ヒ素中毒

🧠 全体像:は、の中に生じる横走する白色帯である。触れても(溝)はなく、指で圧迫しても消えず、爪が伸びるとともに遠位へ移動する12。⭐ 爪を横切る線を見たら、「溝があるか」「圧迫で消えるか」「移動するか」の3つで型を決める。は「溝なし・消えない・動く」であり、全身性の障害がに一過性の影響を及ぼした印である。 原典はだが、現在は抗がん薬やが原因として多く、に特異的な所見ではない3。

定義と用語の整理

  • 1919年にMeesが、の患者の近位部にみられた、半月と平行な幅1〜2 mmの淡い横走帯として報告した3。
  • 現在は、に限らず横走するの全般をと呼ぶ著者が多い。一方での名称をに限る著者もおり、用語の使い方に揺れがある2。
  • 以外の原因で生じた帯のうち、外傷によるものは、「の横走」と呼ぶ方が定義に合うとされる3。

爪を横切る線は、線がそのものにあるか、にあるか、の表面が凹んでいるかで整理する。

所見 病変の場 触知できる 指で圧迫したとき 爪の伸長に伴う移動
(の)3 なし1 消えない1 移動する2
()3 なし 消える1 移動しない1
の表面(の増殖低下) あり(陥凹) 色でなく陥凹の所見 移動する

は、対になった幅の狭い弧状の淡い帯が20爪すべてに現れ、第2〜4指で目立つ。のほか、腎疾患などでもみられ、が正常化すれば消える3。

病態生理

flowchart TD
    A["全身性の障害<br>(毒物・薬剤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>・重い感染)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distal nail matrix'>遠位爪母</span>の機能が一時的に乱れる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail matrix'>爪母</span>の成長は止まらず<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail plate'>爪甲</span>の腹側に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parakeratosis'>錯角化</span>が起こる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail plate'>爪甲</span>の中に白色の横走帯ができる<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='true'>真性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukonychia'>爪甲白色症</span>)"]
    D --> E["爪の伸長とともに帯が遠位へ移動する"]
    E --> F["原因が去れば新しい爪は正常になり<br>帯はやがて切り落とされる"]
  • やはの有糸分裂の中断で生じる。これに対しは、の障害で、の成長は止まらず、の角化だけが乱れるために生じる1。
  • いつの出来事かをできる。 手指の爪は約1 mm伸びるのに6〜10日かかり、帯が見えるようになるまでに数週を要する3。急性では曝露の40〜60日後に現れるとされる3。COVID-19では、入院中に気づいた帯が45日後も爪の伸長に伴って移動していた2。
  • ではの障害でなく、そのものが爪に沈着して帯を作るとする説もある3。

原因の切り分け——「どの爪に出ているか」から入る

最初の分岐は、指爪だけか、爪だけか、指との両方かである。

分布 主な原因 具体例
指爪だけ 局所の外傷 爪の手入れの失敗(マニキュア処置など)。単一の帯なら1回の外傷やの皮膚疾患3
爪だけ 局所の圧迫 長すぎる爪のに靴などから軸方向の圧が加わりが障害される3
指との両方 に毒性のある物質 、タリウム、ストロンチウムを含む汚染水3
抗がん薬(最多) 、、が特に多い。特定の薬だけが原因ではない3。の(・)後の例もある1
その他の薬剤 (、)、3
、心不全、、、高度の、32
感染症 、、COVID-19、、帯状疱疹32
環境 高所登山(低酸素とによる)3

⚠️ 見逃してはいけない病態

  • ⚠️ 原因が分からない多発のでは、を考える。 曝露源(井戸水・職業・薬)をし、必要なら爪の切片でを検出する3。
  • ⚠️ 指との両方に出ていれば全身性の原因を探す。 薬剤歴(特に抗がん薬)、数週間〜2か月前の重い感染や入院を確認する3。
  • ⚠️ 圧迫で消えるは、ではなくの所見である。 見つけたらアルブミン、腎機能、肝機能を調べる。広範なでは、腎・肝などのを除外するために血液検査が欠かせない31。は肝疾患、、、重度のに関連する1。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["爪を横切る線を認める"] --> B{"触れて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='step-off'>段差</span>(溝)があるか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Beau lines'>Beau線</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail matrix'>爪母</span>の増殖低下)"]
    B -->|"なし"| D{"爪を圧迫すると消えるか"}
    D -->|"消える・爪が伸びても動かない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Muehrcke&#39;s lines'>Muehrcke線</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail bed'>爪床</span>の所見)<br>アルブミン・腎・肝を確認"]
    D -->|"消えない・爪とともに移動する"| F{"どの爪に出ているか"}
    F -->|"指爪だけ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toe(s)'>足趾</span>爪だけ"| G["局所の外傷・圧迫を確認"]
    F -->|"指と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toe(s)'>足趾</span>の両方"| H["薬剤(抗がん薬)・毒物(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arsenic'>ヒ素</span>など)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>・重い感染を確認"]
    H --> I["原因不明なら爪の切片で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='arsenic'>ヒ素</span>を検出することを考慮"]

対応の考え方

  • そのものに治療はない。原因が去れば消える2。帯は爪とともに遠位へ移動し、最終的に切り落とされる。
  • 外傷が原因なら、爪を短く保つ、への圧迫や乱暴な手入れを避けるなど原因を取り除く3。
  • 抗がん薬が原因なら、帯が薬の影響であること、原因が去れば爪の伸長とともに消えていくことを説明する。などの毒物が疑われるときは、曝露源の同定と除去が優先される。

まとめ

  • は、内の横走する白色帯である。がなく、圧迫で消えず、爪とともに移動する。
  • 圧迫で消えるものはの、があるものはで、この3点で型を決める。
  • 原典はだが、現在は抗がん薬・・重い感染・外傷が原因として多い。指との両方に出ていれば全身性、片方だけなら局所の外傷や圧迫を考える。
  • 帯の位置から、数週〜2か月前の出来事をできる。原因不明の多発例ではを除外する。

出典

  1. 1.Mees lines and Beau lines after chemotherapy(CMAJ(Huang TC, Chao TY)・2010)PMC全文(PMC2826482)で、急性骨髄性白血病の導入化学療法(ダウノルビシン・シタラビン)後の27歳女性の全指爪に、指で圧迫しても消えない単一の横走白色帯(Mees線)が現れた症例と、ドセタキセル中の41歳女性にBeau線が現れた症例を示し、Mees線は触れて分かる隆起や陥凹のない真性の爪甲白色症であり半月と平行に爪床全体を横断する非退色性の白色帯であること、遠位爪母の障害で爪母の成長は止まらず爪甲腹側の錯角化が起こるためであること、Muehrcke線は爪床の血管うっ血による対の白線で圧迫で退色し爪の伸長とともに移動しないこと、Mees線はヒ素中毒・Hodgkinリンパ腫・カルチノイド腫瘍・化学療法に、Muehrcke線は肝疾患・ネフローゼ症候群・栄養失調・重度の低アルブミン血症に関連することを確認した。閲覧 2026-10-25
  2. 2.Transverse leukonychia (Mees' lines) nail alterations in a COVID-19 patient(Dermatologic Therapy(Fernandez-Nieto D, et al.)・2020)PMC全文(PMC7323062)で、軽症のCOVID-19肺炎で入院した47歳男性が入院中に全指爪へ横走する圧迫で消えない白線に気づき45日後に受診して、線が爪の伸長とともに遠位へ移動していたこと、Mees線が1919年にヒ素中毒で報告された真性爪甲白色症の亜型であり心不全・感染症・Hodgkinリンパ腫・抗がん薬など他の全身状態でも起こること、名称をヒ素中毒に限る著者もいること、全身疾患による爪甲成長の一過性の障害に伴う爪甲の異常な角化が原因と考えられること、原因が去れば消えること、Muehrcke線は爪床の血管の異常で低アルブミン血症に伴い圧迫で消え爪の成長とともに動かないことを確認した。閲覧 2026-10-25
  3. 3.Leukonychia: What Can White Nails Tell Us?(American Journal of Clinical Dermatology(Iorizzo M, Starace M, Pasch MC)・2022)PMC全文(PMC8809498)で、MeesとMuehrckeの線がいずれも横走する爪甲白色症の例であり、前者は爪甲が白くなる真性、後者は爪床が白く見える見かけ上の爪甲白色症であること、1919年にMeesがヒ素中毒患者の爪甲近位部に半月と平行する幅1〜2 mmの淡い横走帯を報告したこと、手指の爪が約1 mm伸びるのに6〜10日かかり帯が現れるまで数週を要すること、急性ヒ素中毒では40〜60日後に現れるとされること、ヒ素以外にも原因があり指のみなら爪の手入れの失敗、足趾のみなら長すぎる爪の遊離縁への圧迫、指と足趾の両方なら全身性の原因を除外し特にタリウム・ヒ素などの爪母毒性物質と抗がん薬が最多でシクロホスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチンが多いこと、全身性エリテマトーデス・心不全・膿胸・高度低カルシウム血症・全身感染症・COVID-19・高所登山でも起こること、Muehrcke線は圧迫で消退し対になった幅の狭い弧状の淡い帯が20爪すべてに生じ第2〜4指で目立ち低アルブミン血症などで生じてアルブミンの正常化で消えること、原因不明のMees線では爪の切片でヒ素中毒の検出を考慮でき広範な爪甲白色症では腎・肝などの全身疾患を血液検査で除外することを確認した。閲覧 2026-10-25