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Symptoms · Published

Muehrcke線

Muehrcke's lines

別名
ミュールケ線Muehrcke linesMuehrcke line
臓器系
皮膚腎・泌尿器肝胆膵
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-20:ネフローゼ症候群と蛋白尿性疾患内科学 N-01:糸球体疾患内科学 L-50:肝硬変
関連疾患
クワシオルコルネフローゼ症候群肝硬変蛋白漏出性胃腸症慢性腎臓病

🧠 全体像:は、そのものではなくのの変化(浮腫による血管圧迫など)によって生じる「」であり、半月に平行な2本の(対になった淡い横走帯)として現れる12。⭐ ベッドサイドでの見分け方は「なし・圧迫で消える・爪が伸びても動かない」の3点である13。古典的には 2.2 g/dL未満の重度かつ長期の(・肝硬変・など)の身体所見として知られるが、アルブミンが正常でも殺細胞性抗がん薬や、などで生じる12。

定義と類似所見の整理

  • 1956年にRobert Muehrckeが、重度かつ長期の低アルブミン血症(2.2 g/dL未満)の患者にみられる身体所見として最初に報告した12。
  • 典型的には、半月と平行にを横断する対になった(2本の)幅の狭い弧状の淡い白色帯(幅約1 mm)が全20爪に生じ、手指では第2・第3・第4指で最も目立つ12。

1. 爪を横切る3つの線(横走病変)の鑑別

爪を横に走る線を見たときは、触れて(溝)があるか、爪を圧迫すると消えるか、爪の伸長とともに移動するかの3軸で切り分ける13。

所見 病変の場(解剖学的分類) 触知できる 指で圧迫したとき 爪の伸長に伴う移動 典型的な本数・見え方
()1 なし3 消退する13 移動しない(固定)24 半月に平行な2本の対になった淡い白色帯(第2〜4指で顕著)1
(のによるの)13 なし3 消えない13 遠位へ移動する14 単一または複数の白色横走帯(幅1〜2 mm)1
の表面(の一過性の増殖低下)3 あり(横走溝・陥凹)3 色ではなく陥凹の所見 遠位へ移動する 表面の横走する溝

2. 爪床が白く見える所見(見かけ上の爪甲白色症)同士の鑑別

と同じくのの変化で爪が白く見え、圧迫でし爪の成長とともに動かない仲間として、と(いわゆる)がある1。

所見 白色部と遠位帯のパターン 主な背景疾患

(横走型)
半月に平行な2本の横走する白色帯で、帯と帯の間にはのが残る12 重度の低アルブミン血症(・肝硬変・)、抗がん薬、、腎疾患13

(亜全型)
遠位端の20%未満(幅1〜2 mm)のピンク〜褐色帯を残して、近位のほぼ全体がすりに白くなり半月が見えなくなる1 肝硬変(原典で82%)、、、、成人発症糖尿病、加齢1

(部分型・)
遠位側の20〜60%が境界明瞭な赤・ピンク・褐色調を呈し、近位側がすりの白色になる1 ・の約10〜30%にみられる(腎移植成功後2〜3週で消失しうる)1

病態生理

flowchart TD
    A["重度の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoalbuminemia'>低アルブミン血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span><br>または抗がん薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinoid'>レチノイド</span>による血管変化"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail bed'>爪床</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial edema'>間質浮腫</span>や<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular bed'>血管床</span>の変化が生じる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail plate'>爪甲</span>下の毛細血管が圧迫・収縮し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail bed'>爪床</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>配列が変化する"]
    C --> D["その部分の血流が減少し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail plate'>爪甲</span>を透かして2本の白色帯に見える"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail plate'>爪甲</span>または指先を圧迫すると<br>浮腫が一時的に減り周囲の赤みと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anabolic'>同化</span>して消える"]
    E --> F["原因が解消すると<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail bed'>爪床</span>の浮腫が引き<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary pressure'>毛細血管圧</span>が高い遠位側から近位側へ消退する"]
  • なぜ白く見え、なぜ圧迫で消えるのか:自体は透明で異常がないが、の局所的な浮腫によって下の血管が圧迫・収縮し、のの配列が変化することで、下床の赤みが透けなくなり白く見える12。(またはダーモスコープのレンズ)で圧迫すると、の浮腫が一時的に減って血管の見え方が変わり、が消退する1。
  • 化学療法での機序:抗がん薬投与例ではを伴わないことも多く、化学療法による血管の異常と、それに伴うとの接着変化が関与すると考えられている2。
  • なぜ動かないのか:病変の場がで作られて伸びていくではなく、その下に固定されたにあるため、爪が伸びてもの位置は移動しない12。
  • 消退するときの方向:原因が取り除かれると、爪の根元から押し出されるの()とは逆に、に近くがわずかに高い遠位側から近位側へ向かって白色部が消えていく1。

原因疾患と誘因

古典的な「」だけでなく、アルブミンが正常な薬剤性・性の2つの軸で原因を整理する12。

分類 主な原因 臨床上の特徴
を伴う病態 、糸球体腎炎、肝硬変、重度の(など)、などの代謝ストレス123 原典では 2.2 g/dL未満の慢性で報告された。アルブミン値の正常化に伴い消失する1
を伴わない・医療処置 ()、腎移植後、活動性の関節リウマチ、後、装着後1 が正常範囲でも出現しうる1
殺細胞性抗がん薬 ()・・の併用、+、++など12 化学療法患者ではよくみられ、投与開始から3〜4週後に出現しやすい。同じ患者にや、が混在することもある12
(乾癬治療など)、(治療など)12 腎機能・肝機能・アルブミンが正常でも生じ、により数か月で消退する2

⚠️ 見逃してはいけない病態と鑑別の進め方

  • ⚠️ 新規にを見つけたら、まず薬剤歴(抗がん薬・)を確認し、該当薬剤がなければ・腎機能・尿蛋白・肝機能を測定する12。広範なでは、腎疾患・肝疾患などのを除外するための血液検査が不可欠である1。
  • ⚠️ 圧迫してもが消えない場合はではなく(の)である12。の上に超音波ゼリーなどのインターフェース液を置いてダーモスコープのレンズで圧迫すると、肉眼で迷う例でもの有無を確実に判定できる1。
flowchart TD
    A["多数の爪に半月と平行な<br>横走する白色帯を認める"] --> B{"触れて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='step-off'>段差</span>(溝)があるか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Beau lines'>Beau線</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal nail matrix'>近位爪母</span>の一過性の増殖低下)"]
    B -->|"なし"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail plate'>爪甲</span>または指先を圧迫すると消退するか"}
    D -->|"消えない・爪とともに移動する"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mees lines'>Mees線</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='true'>真性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukonychia'>爪甲白色症</span>)<br>抗がん薬・全身感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arsenic poisoning'>ヒ素中毒</span>などを評価"]
    D -->|"消退する・爪が伸びても移動しない"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Muehrcke&#39;s lines'>Muehrcke線</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apparent leukonychia'>見かけ上の爪甲白色症</span>)"]
    F --> G{"抗がん薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinoid'>レチノイド</span>の<br>投与歴があるか"}
    G -->|"あり"| H["薬剤性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Muehrcke&#39;s lines'>Muehrcke線</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug holiday (treatment interruption)'>休薬</span>・治療終了で自然消退するため経過観察)"]
    G -->|"なし"| I["血液・尿検査で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>を評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum albumin'>血清アルブミン</span>・尿蛋白・クレアチニン・肝機能"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nephrotic syndrome'>ネフローゼ症候群</span>・肝硬変・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malnutrition'>栄養失調</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic kidney disease, CKD'>慢性腎臓病</span>などの原因治療を行う"]

対応の考え方

  • ⭐ そのものに対する局所治療は不要である12。恒久的な爪の変形ではなく、の環境が整えば可逆的に消失する1。
  • 低アルブミン血症やが背景にある場合は、原疾患(や肝硬変など)の治療やの改善によりアルブミン値が回復すればは消える12。
  • 抗がん薬やなどの薬剤使用中に出現し、かつ全身状態・血液検査に新たな異常がない場合は、の良性所見であることを説明して患者を安心させ、不要な追加検査を避ける(薬剤中止後に消退する)2。

まとめ

  • は、半月に平行な2本の淡い横走白色帯が全20爪(特に第2〜4指)に現れるの所見()である。
  • がなく、爪の圧迫で消退し、爪が伸びても移動しないことで、内の白濁であるや表面の溝であると鑑別する。
  • 古典的には 2.2 g/dL未満の重度(・肝硬変・)の所見だが、アルブミン正常でも殺細胞性抗がん薬・・などで生じる。
  • 爪そのものの治療は不要であり、原因薬剤の確認と、未診断の・腎疾患・肝疾患の検索および原疾患の治療が対応の軸となる。

出典

  1. 1.Leukonychia: What Can White Nails Tell Us?(American Journal of Clinical Dermatology(Iorizzo M, Starace M, Pasch MC)・2022)PMC全文(PMC8809498)で、爪甲白色症が解剖学的に真性(爪母・爪甲の異常で圧迫で消退せず爪の成長とともに遠位へ移動する)・見かけ上(爪床・爪甲下組織の異常で圧迫により爪床の浮腫が一時的に減って血管が見えやすくなるため消退し爪が伸びても移動しない)・偽性(爪甲表面の鱗屑など)の3型に分けられること、見かけ上の爪甲白色症では爪床の浮腫が爪甲下血管を圧迫・収縮させ膠原線維の配列を変えることが一因であり原因が解消すると輸入細動脈に近い遠位側から近位側へ向かって消退すること、Muehrcke線が1956年にRobert Muehrckeにより重度かつ長期の低アルブミン血症(2.2 g/dL未満)の患者で最初に記述された横走する見かけ上の爪甲白色症であり、半月に平行な対になった幅の狭い弧状の淡い帯が全20爪に生じ第2〜4指で最も目立つこと、現在は低アルブミン血症がなくても腎疾患(腎移植後・慢性腎不全の血液透析患者)・活動性関節リウマチ・心臓移植後・左室補助人工心臓装着後や全身性レチノイド(アシトレチン・トレチノイン)・殺細胞性抗がん薬(シクロホスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン併用やフルオロウラシル併用レジメンなど)で生じること、恒久的ではなくアルブミン値の正常化など爪床の正常化により消失すること、同じ見かけ上の爪甲白色症であるhalf-and-half爪(Lindsay爪:遠位20〜60%が赤・ピンク・褐色で近位がすりガラス様の白色、慢性腎臓病の約10〜30%にみられる)やTerry爪(遠位20%未満すなわち1〜2 mmのピンク〜褐色帯を残して爪床全体が白くなり肝硬変の82%にみられたほか慢性腎不全・うっ血性心不全・加齢でも生じる)との鑑別、および広範な爪甲白色症では腎・肝などの全身疾患を除外するため血液検査が不可欠であることを確認した。閲覧 2026-10-25
  2. 2.Muehrcke's lines in a psoriatic patient: A possible association with acitretin therapy(Clinical Case Reports(Mohaghegh F, Danesh F)・2019)PMC全文(PMC6878044)で、Muehrcke線が爪床に半月と平行に走る2本の横走白線でありネフローゼ症候群などの慢性低アルブミン血症や代謝ストレスと関連して1956年にMuehrckeが報告したこと、指先や爪甲への圧迫で一時的に消退し爪の伸長に伴って遠位へ移動せず固定されていること、局所浮腫による爪床血管の圧迫が機序として考えられていること、低アルブミン血症がなくても化学療法薬(特にアントラサイクリン系・シクロホスファミド・ビンクリスチンで投与3〜4週後に出現しやすい)やレチノイド(トレチノイン・アシトレチン)で生じること、腎機能・肝機能・血清アルブミンが正常な54歳乾癬男性でアシトレチン25 mg/日内服5か月後に全指爪に幅1 mmの対の横走白線が出現し休薬2か月後に消退した症例を確認した。閲覧 2026-10-25
  3. 3.Mees lines and Beau lines after chemotherapy(CMAJ(Huang TC, Chao TY)・2010)PMC全文(PMC2826482)で、Muehrcke線が爪床の血管異常による対の白線であり圧迫で退色し爪の伸長とともに移動しないこと、肝疾患・ネフローゼ症候群・栄養失調・重度の低アルブミン血症に関連すること、これに対しMees線は遠位爪母の障害による爪甲腹側の錯角化で生じる真性の爪甲白色症で触知できる段差がなく圧迫で消えず爪の伸長とともに移動し、Beau線は近位爪母の有糸分裂停止による横走陥凹であることを確認した。閲覧 2026-10-25
  4. 4.Transverse leukonychia (Mees' lines) nail alterations in a COVID-19 patient(Dermatologic Therapy(Fernandez-Nieto D, et al.)・2020)PMC全文(PMC7323062)で、Muehrcke線が低アルブミン血症に伴う爪床血管の異常であり、爪甲そのものの角化異常であるMees線とは異なり、爪の圧迫で消退し爪の成長とともに遠位へ移動しないことを確認した。閲覧 2026-10-25