Immunology

Immunology · 11.3

免疫付与とワクチン接種 I

Immunization and vaccination I

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W9Seminar / 演習
応用トピック
感染症予防と予防接種感染症の予防、予防接種ワクチン接種
薬剤
MMRワクチン狂犬病ワクチン抗狂犬病免疫グロブリン

🧠 ワクチン開発の難しさは「抗原を選ぶ」「量を決める」「を選ぶ」「を選ぶ」という4つのすべてを最適化しなければならない点に集約される、と読む。 (1796年)が原点。(active immunization:長い・長期記憶・予防向け)と受動免疫(passive immunization:・記憶なし・緊急対応向け)という対照的な2つの戦略があり、ワクチンの型(生ワクチン・・サブユニット・結合型)はそれぞれ異なるをもつ。

成功する免疫付与の4つの前提条件

①適切な抗原/エピトープの選択(エピトープ構造・MHC結合性・サイズ)、②の決定、③効果的なの選択、④最適なの選択——これらすべてを満たさなければならないことが、良いワクチン開発に長い時間を要する理由。

エピトープの構造とハプテン+担体

抗原にはがあり、どちらが「最良」かは病原体による。単独では非だが、担体と結合するとを獲得する——生成されるは、担体特異的・特異的・+担体複合体特異的の3種に分かれる。

⚠️ 中和できるかどうかは「どのエピトープを認識する抗体か」で決まる。 特定のエピトープを認識する抗体だけが病原体を完全に中和できる(中和機序:排除、結合の阻害、病原体のライフサイクル妨害等)。理想だが完全には到達できない目標は(例:麻疹)——多くのワクチンは感染を完全に防ぐのではなく、重症化を防ぐにとどまる。

抗原用量の効果

💡 低用量抗原は「排除」ではなく「Treg活性化」に偏る——量が質を決める。 低用量の抗原は、ペプチド-MHC-TCR結合が不釣り合いに多い一方で結合が少ない状況を作り、Th0細胞よりも高い抗原のTCRをもつTreg細胞を優先的に活性化する——同じ抗原でも用量次第で、免疫を「引き出す」方向にも「抑える」方向にも働きうる。

アジュバントの必要性と機序

抗原単独では、時間とともにを受けて消失する。細胞がエンドサイトーシスで抗原を取り込みMHCで提示しても、がなければが生じる——さらに、その抗原が中のT/B細胞と出会う確率自体が極めて低い。

の仕事は「炎症を起こして抗原提示の条件を整える」こと。 は自然免疫刺激を介して分子の発現を上昇させ、抗原提示に最適な条件を作り出す。結果として生じる炎症が、抗原認識の可能性を大きく高める——抗原だけを接種しても、免疫系の「」が欠けていれば十分な応答は起こらない。

アジュバントの種類

例・機序
油中水型(W/O)・水中油型(O/W)
ISCOM(免疫刺激複合体) コレステロール・リン脂質・サポニンの混合物から自発形成する直径40nm粒子
アルミニウム塩 、Th2に類似の機序)
TLR4(AS04、米国で使用) を介した自然免疫活性化

投与経路の違い

皮下・皮内・・腹腔内・では、免疫応答の性質そのものが異なる。

皮下/はリンパ節応答、経口/経鼻は粘膜応答——「入り口」が免疫の性格を決める。 皮下免疫後約7〜9日で所属リンパ節にT細胞が出現し、腹腔内免疫後約1〜2週間で脾臓にB細胞が出現し末梢血中が上昇する。されたタンパクには通常が成立する(食物・タンパクへの寛容と同じ機序)——それでも一部の病原体(例:)では経口免疫が必要かつ可能。

由来のIL-12はTh1(IFN-γ・IL-2)とIgG(貪食・)を誘導し、TGF-β1への応答はTreg+Th2とIgA(病原性因子・接着の阻害、中和)を誘導する——同じ抗原でも局所の微小環境によって異なる免疫応答が起こる。血流・体液経由で拡がる病原体(例:B型肝炎ウイルス)には全身性の防御が、に沿って拡がる病原体(例:)には粘膜免疫がそれぞれ対応する。

能動免疫 vs 受動免疫

受動免疫
内容 /死滅病原体またはその構成要素 抗体または細胞
誘導される 誘導されない
あり(7〜14日)、即時防御なし なし、即時防御
記憶 あり、長期防御(数年〜数十年) なし、長期防御なし
必要条件 十分に機能する免疫系が必要 緊急防御向け、免疫系の状態を問わない
用途 予防 治療(緊急時対応)

受動免疫の例: B型肝炎免疫グロブリン(曝露後予防、予防)、免疫グロブリン(曝露後予防)、破傷風免疫グロブリン(創傷予防・治療)、、重症COVID-19(、チキサゲビマブ+シルガビマブ)。

予防接種の基本概念

(抗原Aの投与)=を誘導し、後の感染/を誘導する。の目標は——良いワクチンは抗体産生・記憶細胞形成に加え長寿命形質細胞を生み、血中が持続する(すべてのワクチンに当てはまるわけではない)。

ワクチンの種類

分類 詳細
全粒子ワクチン:生/病原体 培養選択または遺伝子技術で。一般に非常に効果的でを与えることが多いが、軽度の感染症状を伴い、免疫不全患者には不適 MMR、結核、水痘、病、ポリオ
全粒子ワクチン:死滅/不活化病原体 熱・ホルマリン・・放射線で死滅させる。安全で保存しやすいが効果は劣り複数回の追加接種が必要、免疫期間も限定的。IgA・細胞性免疫は弱く、多くはのみ A型肝炎、、ポリオ(Salkワクチン)
中和・不活化された毒素
:多糖体 非ペプチド抗原はT細胞に提示されずT非依存性応答のみを誘導しがち、という問題を抱える 髄膜炎菌肺炎球菌
:結合型 多糖抗原をペプチドに結合させ、この問題を解決 b型多糖をに結合

病ワクチンは「生ワクチンの成功例」の代表格。 弱毒生病原体・強いPAMP効果・CD8+T細胞とB細胞双方の記憶を誘導し、単回接種で40年以上の防御を与える——ただし稀に(1:250,000)病の症状が発現し、その場合の致死率は50%に達する。1937年にMax Theilerが開発し、1951年にノーベル賞を受賞した。

💡 は「T非依存性抗原にT依存性のふりをさせる」トリック。 多糖抗原(T非依存性)をペプチド(強いをもつT依存性抗原)に人工的に結合させることで、IgMだけでなくIgGを誘導する応答に転換できる——乳児・高齢者・患者など、通常は多糖抗原への応答が弱い集団に特に有効な戦略(例:b型、髄膜炎菌、肺炎球菌)。

まとめ

  • 良いワクチンの開発には抗原/エピトープ選択・という4条件すべての最適化が必要で、これが開発に時間を要する理由。
  • 低用量抗原はTreg優位の応答を、による炎症は抗原提示・分子発現を促進し免疫を成立させる。(皮下/筋注 vs 経口/経鼻)は最終的な免疫応答の性質(リンパ節応答 vs 粘膜応答、Th1/IgG vs Treg・Th2/IgA)を左右する。
  • (長い・長期記憶・予防向け)と受動免疫(即時防御・記憶なし・緊急対応向け)は対照的な戦略で、が明確に異なる。
  • ワクチンは生・死滅不活化・・多糖体・結合型に分類され、それぞれ効果の持続性・・安全性プロファイルが異なる。病ワクチン(生ワクチンの成功例)と(T非依存性抗原の弱点克服)がその好例。