内科学

内科学 · I-02

主要抗菌薬I:ペニシリン・セファロスポリン・カルバペネム・グリコペプチド・メトロニダゾール

Common Antibiotics I: Beta-Lactams, Glycopeptides, and Metronidazole

前提:病態
ペプチドグリカン合成を障害する抗菌薬:ペニシリン・セファロスポリンペプチドグリカン合成を障害する抗菌薬:モノバクタム・カルバペネム・バシトラシン核酸合成レベルで作用する抗菌薬
疾患
バンコマイシン注入反応

🧠 全体像:はを阻害するで、感染臓器・・βラクタマーゼ・アレルギー歴を組み合わせて選ぶ。「世代が新しいほど強い」のではなく、菌種ごとのスペクトラムと感染部位へのを読むことが重要である。1

βラクタム系の共通原理

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-lactam antibiotic'>βラクタム系抗菌薬</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein, PBP'>ペニシリン結合蛋白</span>に結合"]
  B --> C["ペプチドグリカン架橋を阻害"]
  C --> D["細胞壁が不安定化"]
  D --> E["増殖中の細菌が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriolysis (lysis)'>溶菌</span>"]
  F["βラクタマーゼ"] --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-lactam ring'>βラクタム環</span>を加水分解"]
  G --> H["薬剤失活"]
  I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein'>PBP</span>変化・透過性低下・排出"] --> J["βラクタマーゼ以外の耐性"]
  • 効果はで、濃度がを超える時間(fT>)が重要である。
  • 薬が多く、腎機能に応じた用量・間隔調整が必要となる。
  • 重症感染では初回負荷量を確保し、延長投与やを検討する。

ペニシリン系

群 代表薬 主なスペクトラム・用途 主な弱点
、 梅毒、感受性、口腔内嫌気性菌 多くのブドウ球菌・グラム陰性桿菌
、、 MSSA、 、腸球菌、グラム陰性桿菌
アンピシリン、アモキシシリン 、Enterococcus faecalis、Listeria、一部の呼吸器・腸内細菌 βラクタマーゼ産生菌
配合 アモキシシリン/、アンピシリン/ 呼吸器、咬傷、。嫌気性菌もカバー AmpC、などには不十分
緑膿菌を含む重症 、。感染では感染源・重症度・を踏まえ、重症または尿路・胆道外では通常を優先2

製剤・投与経路の注意

  • 水溶性結晶は静注で重症感染に用いる。
  • とは筋注製剤である。
  • を静注してはならない。

βラクタマーゼ

機序 学習上の要点
多くのペニシリン、セファロスポリン、を分解する。重症・尿路外感染では通常を軸にし、非重症の尿路・胆道由来では感受性と感染源に応じ非も検討する2
AmpC を含む広いセファロスポリンを分解し、で十分阻害されない。菌種・感染部位に応じなどを選ぶ
、など。酵素型と感受性に基づき新規βラクタム/阻害薬やを選択する

「阻害薬が入っていればすべてのβラクタマーゼに効く」わけではない。

セファロスポリン系

世代・薬剤例 強み 重要な穴
第1世代:、 MSSA、。は周術期予防にも使用 腸球菌、、緑膿菌
第2世代: 呼吸器病原体を含むグラム陰性菌カバーが第1世代より広い 緑膿菌、腸球菌
:、 嫌気性菌を含む腹腔内・で使用 重症感染には不適
第3世代:セフトリアキソン、 肺炎、髄膜炎、菌血症など。セフトリアキソンは緑膿菌に無効 、腸球菌
第3世代:セフタジジム 緑膿菌 活性が弱い
第4世代: 緑膿菌、AmpC産生リスク菌を含む広いグラム陰性菌 、腸球菌、嫌気性菌
抗セファロスポリン: と一般的な呼吸器病原体 緑膿菌

セファロスポリンを世代だけで選ばず、セフトリアキソンとセフタジジムのような同世代内の差を覚える。多くのセファロスポリンは腸球菌、Listeria、に無効である。

カルバペネム系

薬剤 特徴
広域グラム陰性・陽性・嫌気性活性。髄膜炎にも使用
/ 広域。けいれんリスクに注意。E. faecalisに活性を持つことがある
1日1回投与が可能。緑膿菌、Acinetobacter、Enterococcusには無効
  • 産生Enterobacteralesによる重症・尿路外感染の重要な選択肢である。
  • を「念のため」使うと耐性選択を促すため、培養で狭域化する。
  • 緑膿菌感染でアミノグリコシドを常に併用する必要はなく、感受性判明後は有効な単剤へ整理するのが原則である。

モノバクタム系

はグラム陰性にのみ活性を持ち、緑膿菌も対象になり得る。グラム陽性菌と嫌気性菌には無効である。多くのペニシリン即時型アレルギーで使用可能だが、セフタジジムとは類似側鎖によるに注意する。

βラクタムアレルギー

「ペニシリンアレルギー」という記録だけでは不十分である。原因薬、症状、発症時期、治療、再曝露歴を確認する。

病歴 対応の考え方
悪心・下痢のみ、家族歴のみ、遠い過去の不明瞭な発疹 真のアレルギーでない可能性。評価・低リスクを検討
即時の蕁麻疹、、アナフィラキシー を想定。側鎖を考慮し代替薬・アレルギー評価
スティーヴンス・、、、臓器障害 原因薬と関連βラクタムの再投与を避け、へ相談

はそのものより側鎖類似性に左右されることが多い。不要な「全βラクタム禁止」は、より毒性の高い代替薬使用につながる。1

グリコペプチド系

バンコマイシン

  • 、βラクタム耐性グラム陽性菌に用いるが、グラム陰性菌には外膜のため無効である。
  • 静注バンコマイシンは全身感染に、は腸管内のClostridioides difficile感染症に用いる。では通常、全身感染を治療できない。
  • 重症感染ではだけでなくを用いたを行い、一般に 400〜600 mg·h/Lを目標とする。この範囲を非重症感染や以外へ機械的に外挿しない。3
  • 主な毒性は腎障害、好中球減少、まれな耳毒性である。

はに伴うで、・掻痒・低血圧を来す。IgEアレルギーとは異なり、投与中止、症状治療、次回の緩徐投与で管理できることが多い。

その他

などもグラム陽性菌に使用される。では感受性と感染部位に応じリネゾリドやなどを選び、グリコペプチドを漫然と継続しない。

メトロニダゾール

メトロニダゾールは下で還元され、を傷害する。

有効 無効・不適
Bacteroidesなどの、Clostridium属、原虫の一部 ・、口腔内嫌気性菌の一部で耐性、全ての腹腔内病原体を単剤でカバーする治療
  • ではセフトリアキソンなどグラム陰性菌を覆う薬剤と組み合わせることがある。
  • 主な有害事象は悪心、、長期投与時の末梢神経障害、ワルファリン作用増強である。
  • 飲酒との併用は製品情報に従って避けるのが実務的である。

まとめ

  • βラクタムはで、菌種・βラクタマーゼ・感染部位から薬剤を選ぶ。
  • セファロスポリンは世代だけでなく個々の薬剤のスペクトラムを確認する。
  • は緑膿菌に無効で、のルーチン併用療法は不要である。
  • バンコマイシンは、、腎毒性、を分けて理解する。
  • メトロニダゾールはに有効だが、を単剤で覆う薬ではない。

出典

  1. 1.Beta-Lactam Allergy and Cross-Reactivity: A Clinician's Guide to Selecting an Alternative Antibiotic(2021)βラクタム交差反応は主に側鎖類似性に依存し、病歴と反応型に基づく評価が必要なことを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Piperacillin-tazobactam vs. carbapenems for treating hospitalized patients with ESBL-producing Enterobacterales bloodstream infections: A systematic review and meta-analysis(2024)ESBL産生菌血流感染でのピペラシリン・タゾバクタムとカルバペネムの比較は感染源と重症度に左右されることを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Clinical Practice Guidelines for Therapeutic Drug Monitoring of Vancomycin in the Framework of Model-Informed Precision Dosing(2022)重症MRSA感染でのバンコマイシンAUC標的と安全なTDMを確認した。閲覧 2026-08-13