内科学

内科学 · L-05

心臓弁膜症

Valvular heart diseases

前提:病態
弁膜症とその結果変性性弁膜症
前提:正常
心周期:圧・容積の変化と心音胸部:心臓と心膜
疾患
三尖弁閉鎖不全症心臓弁膜症大動脈弁狭窄症

🧠 全体像:弁膜症は、狭窄によると逆流によるとして理解する。で病変を推定し、心エコーで弁形態・重症度・・肺高血圧を定量し、症状が出る前から介入時期を逃さないことが重要である。

総論

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heart murmur'>心雑音</span>・症状・偶発画像所見"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transthoracic echocardiography (TTE)'>経胸壁心エコー</span>"]
    B --> C["弁形態と重症度"]
    B --> D["左・右室機能と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chamber size (diameter)'>心腔径</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary artery pressure'>肺動脈圧</span>と他弁病変"]
    C --> F["症状・進行速度・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical risk'>手術リスク</span>を統合"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heart team'>ハートチーム</span>で経過観察/外科/経<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural intervention'>カテーテル治療</span>"]

身体所見だけで重症度を確定せず、を基本とする。所見が不一致なら、、、、を追加する。

左心系弁膜症

病変 病態・代表原因 典型的 主な臨床像 治療の軸
(AS) 石灰化、、。左室 右第2肋間をとする、頸部放散 、、失神 重症例は症状・・超高重症度・進行性を評価しSAVR/TAVI
大動脈弁逆流(AR) 、拡大、、解離 左の拡張期、 、、 急性重症は緊急手術評価。慢性重症は症状・左室機能/径で介入
(MS) 主に、 のと 呼吸困難、、肺高血圧、塞栓 解剖が適すれば経皮的、その他は手術
(MR) 変性・逸脱・、虚血性/機能性 の全、腋窩放散 呼吸困難、、左室 原発性重症はを優先。二次性は心不全治療後にTEER/手術を選択

大動脈弁狭窄の重症度評価

、平均、、流量、を統合する。**重症ASの基準は最大≥4.0 m/s、平均≥40 mmHg、<1.0 cm²(で補正した面積係数≤0.6 cm²/m²)**である1。では、真の重症狭窄か見かけ上の狭窄かをや石灰化で判定する。症候性重症ASは予後不良で、薬物は弁狭窄そのものを解除しない。

僧帽弁逆流の原発性と二次性

  • 原発性MR:・自体の。耐久性の高い修復が可能ならを優先する。
  • 二次性MR:左室または左房リモデリングで接合が破綻。まず心不全の薬物・デバイス治療を最適化する。

右心系弁膜症

病変 主な原因・所見 治療の考え方
(TR) 左心疾患・肺高血圧・による、、。吸気で増強する全 原因治療とうっ血への利尿薬。進行する右室障害の前に外科・経を評価
(TS) 主に。吸気で増強する、 重症・症候性で形成術/置換術を検討
(PS) 先天性が多い。左上の雑音 重症例ではバルーンが中心
(PR) 肺高血圧、術後、 原因治療。重症・機能障害では弁治療を評価

急性弁膜症は救急疾患

による急性MR、・による急性AR、は、慢性病変のような代償時間がなく肺水腫・ショックを来す。新規、、循環不安定では緊急心エコーと外科/評価を行う。

介入選択

2025年/EACTSガイドラインでは、複雑例をので評価し、年齢、解剖、耐久性、、併存症、、患者希望を統合する。無症候でも低下、著明な、超高重症度、急速進行などがあればを検討する1。

💡 無症候性重症ASを「症状が出るまで待つ」方針は揺らいでいる。 EARLY TAVR試験は無症候性重症AS 901例(平均75.8歳、83.6%が低)で早期TAVIと経過観察を比較し、死亡・脳卒中・計画外の心血管入院の複合が26.8%対45.3%(0.50)とが優れることを示した。しかも中央値3.8年の追跡で経過観察群の87.0%が結局は大動脈弁置換に至っている2。「無症候だから待つ」のではなく、待つ場合は6〜12か月ごとの厳密な追跡が前提になる。

重症ASにおけるTAVIとSAVRの選択

単に「低なら手術、高リスクならTAVI」と二分せず、現行は次の要素を組み合わせる。

⚠️ TAVIの適応は年齢・リスクとも拡大し、欧州と米国で線の引き方が違う。 当初TAVIは手術不能・高リスク例に限られていたが、低リスク例での試験を経て適応が広がった。/EACTS 2025は年齢閾値を70歳に明確化し(旧2021年版は75歳が目安)、解剖が適合する70歳以上でTAVIをClass I、70歳未満かつ低リスクでSAVRをClass Iとした1。一方、米国ACC/AHAの現行版(2020年)は65歳未満はSAVR優先、65〜80歳は、80歳超はTAVI優先という3区分を用いる3。どちらか一方が正しいのではなく、採用する指針で区分が違うことを押さえる。

SAVRを支持する要素 TAVIを支持する要素
若年で長期耐久性が重要 高齢、、が高い
病変、他弁手術、などを同時に要する アプローチが可能で、輸血・入院期間の低減を重視
、、TAVIに不利な・ 、胸部放射線治療後、損傷リスク

TAVIはカテーテルでを病的大動脈弁内に展開する。まず路を評価し、で径、石灰化、冠動脈高、アクセス血管を確認する。だけで決めず、耐久性、、、将来の冠動脈アクセスまでで検討する。

まとめ

  • 狭窄は、逆流はとしてを理解する。
  • は病変推定に有用だが、重症度と介入時期は心エコーを中心に決める。
  • 急性重症逆流は緊急疾患であり、慢性重症弁膜症では不可逆的心室障害が出る前に介入を評価する。

関連ノート

出典

  1. 1.2025 ESC/EACTS Guidelines for the management of valvular heart disease(European Society of Cardiology/European Association for Cardio-Thoracic Surgery・2025)重症大動脈弁狭窄の心エコー基準(最大血流速度4.0 m/s以上、平均圧較差40 mmHg以上、弁口面積1.0 cm²未満または面積係数0.6 cm²/m²以下)と介入適応を規定し、TAVI・SAVRの選択における年齢閾値を70歳に明確化した(旧版は75歳目安)。TAVIは解剖適合かつ70歳以上でClass I、SAVRは70歳未満かつ低リスクでClass I。これは欧州(ESC/EACTS)の基準であり、米国ACC/AHAの現行版(2020年)とは区分が異なる閲覧 2026-08-25
  2. 2.Transcatheter Aortic-Valve Replacement for Asymptomatic Severe Aortic Stenosis(The New England Journal of Medicine・2025)無症候性重症大動脈弁狭窄901例で、早期TAVIは経過観察に比べ死亡・脳卒中・計画外の心血管入院の複合を26.8%対45.3%(ハザード比0.50、95%信頼区間0.40〜0.63)に減らした。中央値3.8年の追跡で経過観察群の87.0%が結局は大動脈弁置換に至った閲覧 2026-08-25
  3. 3.2020 ACC/AHA Guideline for the Management of Patients With Valvular Heart Disease(American College of Cardiology/American Heart Association・2021)米国はSAVR・TAVIの選択を単純な70歳カットオフではなく、65歳未満はSAVR優先、65〜80歳は共同意思決定、80歳超はTAVI優先という3区分で扱う閲覧 2026-08-25