Internal Medicine

Internal Medicine · E-08

性腺機能異常

Disorders of the gonads

前提:病態
男性性腺機能低下症とアンドロゲン不応症
前提:正常
性成熟の内分泌生理学。男性生殖生理学女性性内分泌学染色体異常
疾患
Kartagener症候群クラインフェルター症候群ターナー症候群多嚢胞性卵巣症候群男性性腺機能低下症
症状
卵巣機能不全

🧠 全体像は「性腺そのものの障害か、視床下部・下垂体からの刺激不足か」をLH・FSHで分ける。や不妊を診るときも、妊娠を最初に確認してから同じ視床下部‐下垂体‐へ戻る。

視床下部‐下垂体‐性腺軸

flowchart TD
    A["視床下部<br>GnRHを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulsatile'>拍動性</span>に分泌"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span><br>LH・FSHを分泌"]
    B --> C["卵巣/精巣"]
    C --> D["エストラジオール・プロゲステロン(progesterone)<br>テストステロン"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibin B'>インヒビンB</span>(inhibin B)・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gametogenesis'>配偶子形成</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary sex characteristics'>二次性徴</span>・性機能・骨・筋・代謝"]
    D --> A
    E --> B

性腺は性ステロイド、(anti-Müllerian hormone:AMH)、などと、または精子を産生する。障害時期により表現型が異なる。

発症時期 主な影響
早期のアンドロゲン作用不足 46,XY(disorder/difference of sex development:DSD)、外性器の男性化不全
後半
思春期前 の遅延、精巣・陰茎の発育不全、類宦官体型、
成人期 、無月経、不妊、筋量・骨量低下、

「男性」のような旧称は用いず、核型・性腺・内外性器・遺伝学的原因を具体的に記述する。

性腺機能低下症の分類

分類 LH・FSH 性ステロイド 主な原因
原発性/ 高値 低値 、感染、化学療法、放射線、手術
中枢性/ 低値または 低値 、下垂体腫瘍、プロラクチン高値、、浸潤性疾患、、過剰運動、薬剤

中枢性では他の、プロラクチン、鉄過剰、薬剤、視野・頭痛を確認し、必要ならを行う。などの浸潤性疾患も視床下部・下垂体機能を障害し得る。

卵巣生理と月経

  • 卵巣の卵胞はから一次、二次、へ成熟し、排卵後は黄体となる。
  • エストラジオール、生殖器粘膜増殖、骨形成、脂質・代謝に関与する。
  • プロゲステロンは主にに分泌され、エストロゲンで増殖した子宮内膜をへ変え、を粘稠化し、着床・妊娠初期を支える。
  • にはがあり、28日をな正常値とはしない。はエストロゲン、はプロゲステロンの作用が中心となる。

無月経の評価

は15歳までにがない、または開始から3年以上がない場合を目安とする。は従来、規則的月経が3か月、または不規則月経が6か月途絶した状態をいう。

flowchart TD
    A["無月経"] --> B["妊娠反応"]
    B -->|"陽性"| C["妊娠として評価"]
    B -->|"陰性"| D["病歴・栄養・運動・薬剤<br>TSH・プロラクチン・FSH・エストラジオール"]
    D --> E["FSH高値<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary ovarian insufficiency, POI'>原発性卵巣機能不全</span>を考える"]
    D --> F["FSH低値/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inappropriately normal'>不適切正常</span><br>視床下部・下垂体を評価"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='androgen excess (hyperandrogenism)'>アンドロゲン過剰</span><br>PMOS・腫瘍・副腎疾患を評価"]
    D --> H["子宮・流出路の解剖評価"]

先天性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症

は、GnRHの産生・作用に関わる遺伝学的異常の総称である。を伴うIHHがで、正常嗅覚型もある。

  • 女性では不全、、不妊、男性では、体毛・声変わり・筋発達の不足を来す。
  • LH・FSHとエストラジオール/テストステロンは低値で、他の下垂体疾患を除外する。
  • の誘導・骨保護には段階的な性ステロイド補充を行う。
  • 妊孕性獲得にはGnRHまたはゴナドトロピン(LH/hCGとFSH)を用い、女性では排卵、男性では精巣発育・精子形成を促す。

15番染色体のゲノム刷り込み(imprinting)疾患

疾患 発現を失う領域 主な所見
父由来15q11-q13 新生児、その後の・肥満、性器低形成、、行動・発達上の問題
母由来UBE3A領域 重い発達障害、、痙攣、特徴的な興奮性・笑い

の原因になり得る。両者を「同じ欠失」と一括りにせず、どちらの発現が失われるかを区別する。

原発性卵巣機能不全

は40歳未満で卵巣機能が低下する状態で、無月経・、不妊、骨量低下を来す。

現在は、4か月以上の月経不順または無月経と1回のFSH >25 IU/Lを診断の軸にする。診断が不確実な場合に限りFSHを再検し、妊娠、、プロラクチン異常などを除外する。1 原因不明例では核型、FMR1、自己免疫の評価を検討する。

禁忌がなければ、症状緩和だけでなく骨・心血管保護のため自然閉経年齢頃までを続ける。子宮があればエストロゲンにを併用し、を防ぐ。子宮摘出後は通常エストロゲン単独でよい。

ターナー症候群

はX染色体の全欠失・部分欠失・モザイクによるの代表である。

系統 主な所見
生殖・内分泌 、POI、不妊、異常
身体 、幅広い胸郭、骨量低下
心血管 、大動脈拡張・解離、高血圧
などの

成長、、HTに加え、生涯にわたり心エコー/、血圧、甲状腺、、聴覚、骨を追跡する。大動脈病変がある場合は妊娠が高リスクとなる。

多嚢胞性卵巣症候群(PMOS、旧PCOS)

は、を中心とする一般的な内分泌疾患である。2026年5月、国際的な合意を経てpolyendocrine metabolic ovarian syndrome(PMOS)への改称が提案され、移行期間を含む実装が進められている。2 月経不順、不妊、、肥満・代謝異常を伴い得る。

成人では他疾患を除外したうえで、の3項目中2項目で診断する。

  1. または月経不順
  2. 臨床的または生化学的
  3. 超音波上の多嚢胞卵巣形態。成人では状況によりAMHを代替に使えるが、単独診断には用いない
目標 第一に考える治療
妊娠を希望しない月経不順・ 生活支援、。代謝リスクにはを検討
で妊娠を希望 によるが第一選択。妊娠前に体重、血圧、を最適化
子宮内膜保護 周期的またはCOCPで長期無月経を避ける

⚠️ COCPとの使い分けを逆にしない。COCPは排卵を抑えるため、妊娠希望時の薬ではない。

男性性腺機能低下症

男性では症状・徴候に加え、別日の朝の低値を2回確認して診断する。SHBGが大きく変動する肥満、甲状腺・肝疾患などではの評価を補う。LH・FSHで原発性と中枢性を分け、必要に応じてプロラクチン、鉄、下垂体を調べる。

テストステロン補充

補充により性機能、筋・骨、貧血が改善し得るが、注射、ゲルなどの剤形ごとに・皮膚移行・利便性が異なる。

  • 妊孕性を近く希望する男性には、精子形成を抑制する外因性テストステロンを投与しない。
  • 禁忌・回避条件には乳癌・前立腺癌、評価未了の前立腺異常、、未治療の重症睡眠時無呼吸、制御不良心不全、直近6か月の心筋梗塞/脳卒中などがある。
  • 増加、乳房症状、、浮腫、、注射痛・皮膚刺激が起こり得る。
  • 開始後3~6か月、その後は少なくとも年1回、症状、テストステロン、を評価する。年齢・リスクに応じて前立腺評価をする。 ≥54%なら一旦中止し原因を評価する。
  • や腹部肝超音波を全例に定期実施するという監視法は採らず、製剤と臨床リスクに応じる。

原発性精巣障害と関連疾患

疾患 原因・検査 主な特徴
多くは47,XXY、テストステロン低値、LH・FSH高値 小さく硬い精巣、、長い四肢、骨量低下、学習・言語面の困難、リスク増加
に生殖細胞を欠く。Y染色体AZF欠失を含む原因 非閉塞性、FSH高値になりやすい。テストステロンは正常のことがある
RAS/MAPK経路のによる 、特徴的。核型は通常46,XXまたは46,XYで、染色体数異常ではない
・筋力低下、、前頭部脱毛、・不妊、認知・発達上の問題
線毛構造・機能異常 慢性副鼻腔・気管支疾患、を伴う型、精子運動不良による不妊。テストステロン低下とは別機序

では妊孕性温存を早めに相談し、症候性で生化学的低値ならテストステロン補充、骨・代謝・乳房のリスク管理を行う。

性分化疾患とアンドロゲン不応症

46,XX精巣性DSDは、多くでSRYのX染色体への転座などにより精巣分化経路が作動する。性腺は正常精巣から異形成精巣まで幅があり、外見だけで核型・生殖機能を推定しない。

は、遺伝子のにより46,XY個体のアンドロゲン作用が完全または部分的に低下する。

  • 完全型では女性型外性器、腟、子宮欠如、の乏しさ、を呈する。精巣由来AMHのためMüller管構造を欠く。
  • テストステロンは男性域で、LH高値とによるエストロゲンがみられ得る。核型、ホルモン、画像、遺伝学的検査で確認する。
  • 性腺摘出の要否と時期は、悪性化リスク、自然な思春期、本人の価値観を踏まえて専門チームで決める。完全型では思春期後まで延期する選択が一般的で、画一的な早期摘出はしない。
  • 性腺摘出後は適切な性ホルモン補充を行い、を重視する。

まとめ

  • 低性ステロイドに対しLH・FSH高値なら原発性、低値・なら中枢性を考える。
  • 無月経は妊娠を最初に除外し、FSH、プロラクチン、TSH、アンドロゲンと解剖を系統的に評価する。
  • PMOSでは妊娠希望なら、非希望時の月経・アンドロゲン症状にはCOCPが基本である。
  • テストステロン補充は症状と反復低値を確認し、妊孕性・・前立腺・心血管リスクを管理する。

出典

  1. 1.Evidence-based guideline: premature ovarian insufficiency(Human Reproduction Open・2024)POIは1回のFSH高値で診断でき、診断不確実時に再検を行うという現行基準閲覧 2026-08-09
  2. 2.Polyendocrine metabolic ovarian syndrome, the new name for polycystic ovary syndrome: a multistep global consensus process(The Lancet・2026)PCOSからPMOSへの名称変更に関する国際合意と移行期間を含む実装計画閲覧 2026-08-09