Medical Microbiology

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受動免疫とそのリスク・副作用。化学予防

Passive immunization, and its risks and side-effects. Chemoprophylaxis

薬剤
抗狂犬病免疫グロブリン
疾患
血清病

🧠 受動免疫は「借りた免疫」、は「先回りした薬」——どちらも自分の免疫系が働き出す前に効かせる点で共通する。 受動免疫は抗体そのものを外から補充しはあるが記憶を残さず数週間で消える。は病原体ではなく薬で先手を打ち、曝露前後どちらのタイミングでも使われる。両者とも「今すぐの防御」を優先し、長期免疫の構築はに譲る、という役割分担で理解する。

受動免疫

受動免疫とは、宿主自身が産生したのではない、あらかじめ形成された(された)抗体または免疫反応性リンパ球を宿主に与えることをいう。典型的には短命で、効果は数週間しか持続しない。

免疫は、免疫系が抗原に曝露されなくても獲得できる——免疫を持つドナーから非免疫の個体へ、血清またはを移入することで成立する。免疫を持つ個体のを用いて免疫を移入することもある。

受動免疫の種類

  • :母から胎児へのIgGの、または母乳()を介したIgAの移行によって免疫が伝達される。母が持つ免疫を約6か月間児に与える
  • :他者または免疫を持つのIgG抗体を注射することで人工的に免疫を移入する。免疫グロブリンによる受動免疫移入は、以下のような急性の状況で行われる

受動免疫の利点

  • 迅速な防御・治療が可能
  • 免疫不全患者にも使用できる
  • (ワクチン)が利用できない場合の代替となる
  • 毒素が病因となる疾患(破傷風・・ジフテリアなど)に対するとして使える

受動免疫の欠点

  • 効果が一時的で、細胞を残さない
  • 副作用のリスクがある——特にで製造された場合

——外来タンパクとして認識される。

⚠️ )抗血清は、抗体そのものが「異物」になりうる。 ウマなどの動物で作られた・抗血清は、ヒトから見れば外来タンパクであり、アナフィラキシーのリスクが)製剤より高い。破傷風・ジフテリア・ボツリヌスのを投与する際は、この副作用のリスクを踏まえて適応を判断する。

化学予防

とは、が現れる前に、感染を予防する目的、または既に接触した感染を抑え込む目的で抗菌薬を投与することをいう。の意義と具体例も参照。

薬の使用は、対象とする感染症の疫学・臨床的影響についての知識に基づいて行われる。一般にが行われるのは、疾患の頻度が高いか、感染による臨床的インパクトが大きい場合である。

薬剤は曝露(pre-exposure prophylaxis、)または曝露の可能性が生じた(post-exposure prophylaxis、曝露後予防)に投与される。

化学予防の適応例

  • 免疫不全患者における感染予防のための
  • 流行の拡大を抑えるための
  • 感染の再発予防(例:尿路感染症の再発予防)
  • 結核の初期徴候に対して極めて有効
  • 心臓弁に障害のある患者における歯科処置前の予防的抗菌薬投与

化学予防の限界

  • すべての薬剤に副作用のリスクがある——利益がリスクを上回る場合にのみを行うべきである
  • 治療コストが高い場合や、の発生頻度が低い場合にはされにくい

状況別の化学予防(代表例)

状況 内容
感染者とのへの予防 髄膜炎菌患者のにはリファンピシン、結核患者のにはを投与しうる
歯科処置に対する抗菌薬予防 または心臓弁に障害のある患者に、心内膜炎予防のため(例:アモキシシリン
消化管・口腔咽頭などが豊富な粘膜を開く手術で特に重要。と全身感染を予防する(例:、アモキシシリン/
免疫不全患者における抗菌予防 臓器移植・患者(例:フルオロキノロン)。抗真菌薬・抗薬による予防も必要となる
新生児の眼感染予防(, Credé eye drop) 経腟分娩後の抗菌薬点眼(例:)。淋菌・クラミジアなどによる新生児眼感染を予防する。には点眼が用いられていた
新生児のB群レンサ球菌感染予防 妊娠中に腟内Streptococcus agalactiaeが陽性であった母体には、分娩時に静注ペニシリンまたはアモキシシリンを投与する
渡航地域による。例:率が高い地域ではを使用。渡航の数週間前から渡航中・渡航後まで継続し、蚊対策も重要
(Pneumocystis carinii/jirovecii pneumonia, PCP)の予防。患者・AIDS患者が対象。(trimethoprim-sulfamethoxazole, TMP-SMX、
HIV感染の 感染リスクの高い人に、低用量のを継続投与しHIV感染の可能性を下げる。例:
HIV陽性患者における感染予防 に応じて、潜伏感染の再活性化を予防する(例:結核、、カンジダ症、の予防)

まとめ

  • 受動免疫は抗体・を外から補充する免疫で、はあるがを残さず数週間しか持続しない。自然獲得(胎盤IgG・母乳IgA)と人工獲得(IgG注射)に分けられる。
  • 受動免疫は迅速な防御・免疫不全患者への使用・毒素性疾患への投与に利点があるが、)製剤は特にが高い。
  • が出る前に抗菌薬を投与して感染を防ぐ/抑え込む方法で、と曝露後予防に分けられる。頻度が高い・臨床的インパクトが大きい疾患で行われ、利益とリスク・コストのバランスで適応を判断する。
  • 代表的なには、予防(髄膜炎菌にリファンピシン、結核にINH)、歯科・外科手術前予防、免疫不全患者への予防、新生児眼感染予防()、GBS周産期予防、、PCP予防、HIVのPrEPと感染予防などがある。
  • の適応判断では、常に薬剤副作用のリスクと予防による利益、そしてコストを天秤にかける。