産科学

産科学 · 12

自然流産・早期妊娠喪失

Spontaneous abortion

前提:正常
染色体異常ヒトの血液型システム
疾患
抗リン脂質抗体症候群自然流産

🧠 全体像:妊娠初期の出血・腹痛では、まずを安定化し、を除外したうえで、超音波と必要時の連続β-から妊娠生存性を慎重に判定する。確定したには、薬物、の3選択肢があり、緊急性と本人の希望で選ぶ。

用語と定義

は歴史的な医学用語だが、本人への説明では流産またはがより配慮ある表現である。

  • :一般に第1三半期の非生存子宮内妊娠。
  • 流産との境界は国・法制度で20週、22週、24週など異なる。地域定義を確認する。
  • 早産は生児が以降、37週未満に出生することであり、流産と区別する。
  • は、現在は2回以上のから評価を考慮する指針が多く、3回連続を待つ必要はない1。ESHREは2022年の更新でもこの定義を変えておらず(とは除外する)、同時に「2回」という区切り自体はエビデンスではなくコンセンサスであると明記している2。ただしと数える回数の定義そのものが国・学会で一致しておらず、英国RCOGは2023年改訂版でも引き続き3回以上を定義としている3。
用語 意味
意図しない
薬物または手術によるな
医学的適応による 妊婦の生命・健康または重篤な胎児病態などを理由とする。法制度・本人の価値観に従う

頻度と原因

臨床的に確認された妊娠の約10〜15%がとなり、妊娠初期出血は約20〜30%にみられる。

原因・関連因子 要点
胚の染色体異常 第1三半期流産の最も多い原因。多くは偶発的
母体年齢 年齢とともに胚が増加
子宮形態 、、癒着など
内分泌・代謝 コントロール不良糖尿病、など
免疫・血栓 は反復喪失の治療可能原因
生活・曝露 喫煙、、、高用量など
感染 全例の主要原因として広範な感染検査はしない。症状・曝露に応じ評価

通常の活動、運動、性交、就労が偶発的な染色体異常流産を起こしたわけではないことを説明し、を軽減する。

臨床型

病型 出血 妊娠組織 要点
あり 閉鎖 排出なし 子宮内妊娠が生存している可能性
あり 開大 排出前 排出が避けられない状態
あり 多くは開大 一部排出 遺残により出血・感染
あり、その後減少 閉鎖しうる 全て排出 を除外し完全排出を確認
なし〜少量 閉鎖 非生存妊娠が子宮内に残る 症状が乏しい
敗血症性流産 様々 様々 感染組織 発熱、悪臭、、敗血症

初期評価

flowchart TD
    A["妊娠初期の出血・腹痛"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodynamics'>循環動態</span>不安定・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritoneal signs'>腹膜刺激</span>・大量出血?"}
    B -->|"はい"| C["蘇生・採血・緊急超音波・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstetrics and gynecology'>産婦人科</span>介入"]
    B -->|"いいえ"| D["病歴・診察・β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human chorionic gonadotropin'>hCG</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transvaginal ultrasound, TVUS'>経腟超音波</span>"]
    D --> E{"子宮内妊娠を確実に確認?"}
    E -->|"いいえ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pregnancy of unknown location, PUL'>妊娠部位不明</span>として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ectopic pregnancy'>異所性妊娠</span>を追跡"]
    E -->|"はい"| G{"生存性が確定?"}
    G -->|"不明"| H["十分な間隔で再超音波±連続β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human chorionic gonadotropin'>hCG</span>"]
    G -->|"非生存確定"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機</span>・薬物・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine aspiration'>吸引手術</span>を選択"]

病歴・診察

  • 出血量、・組織排出、疼痛、、失神、発熱、LMP、既往を確認する。
  • バイタル、腹部圧痛・、腟鏡で出血源・組織・頸管、必要時にを評価する。
  • 血算、ABO/RhD、必要時、β-を行う。

超音波診断

による生存妊娠の中断を避けるため、保守的基準を用いる。下の表はSRU(Society of Radiologists in Ultrasound)の多学会コンセンサス会議(2012年10月)の基準で、対象は「子宮内にを認めるが心拍が無く、を確定する所見も無い妊娠(生存性が不確実な子宮内妊娠)」に限られる4。

所見 判定
7 mm以上で心拍を認めない を確定する
25 mm以上でを認めない を確定する
卵黄嚢を伴わないを確認した検査から2週間以上経っても、心拍のあるを認めない を確定する
卵黄嚢を伴うを確認した検査から11日以上経っても、心拍のあるを認めない を確定する
7 mm未満で心拍なし/16〜24 mmでなし/から6週以上経ってもが見えない/空の羊膜/卵黄嚢腫大(7 mm超)/の大きさに比してが小さい(との差が5 mm未満) 「疑わしいが確定的でない」所見。一般に7〜10日後の再検査で発育・心拍を確認する

💡 前半2つは1回の検査で判定でき、後半2つは前回の検査からのを基準にする。なお、既に心拍を確認していた妊娠がその後に心拍を失った場合は、この表が対象とする「生存性が不確実な妊娠」の枠の外である(表の4項目には含まれない)4。

⚠️ 確定基準を満たしても、1回の検査だけで診断してよいかは指針で違う。 英国の NG126は「1回のによる流産の診断は100%正確であるとは保証できない」とし、7.0 mm以上で心拍が見えない場合・25.0 mm以上でが見えない場合のいずれも、生存性についてのセカンドオピニオンを求めるか、初回から最低7日後に再検査してから診断することを求めている(閾値未満の場合も最低7日後、経腹では最低14日後)5。

  • 1回の超音波やβ-だけで確定できない場合は再評価する。
  • β-は正常妊娠でも必ず48時間で倍増するわけではない。
  • が高いのに子宮内が見えないという固定「discriminatory zone」だけで治療せず、として安全に追跡する。

⚠️ 早期ので、非生存組織が数週残っただけを理由に毎週フィブリノゲンを測る必要は通常ない。長期の胎児死亡保持によるは主に後期妊娠の問題である。

切迫流産

  • 超音波で生存子宮内妊娠を確認し、出血量・疼痛・貧血を評価する。
  • が流産を防ぐという根拠はなく、一律に活動を禁止しない。
  • 妊娠初期出血があり、過去に流産歴がある人では、地域指針によりを提案する場合がある。
  • ビタミンD欠乏の一律検査・補充を治療として行う根拠は十分でない。
  • 妊娠が継続する場合、他の妊娠と同様に・胎児形態スクリーニングの選択肢を提示する。

確定した妊娠喪失の管理

感染・大量出血・循環不安定がなく、本人が十分な説明を受けた場合、3方法はいずれも選択肢となる。

方法 利点 注意点
手術・薬剤を避ける 時間が予測しにくく、出血・緊急手術の可能性
薬物療法 自宅または外来で完結しうる 強い腹痛・出血、追加投与・手術の可能性
迅速で成功率が高い 手技・麻酔・感染・穿孔などのリスク

薬物療法

⚠️ 病型で薬が変わる。「・」とひとまとめにしない。

病型 NG126の薬物管理
200 mg経口 → 48時間後に800 µg(腟・経口・舌下のいずれか)。ただし既にが排出されていれば不要(推奨1.11.1)
600 µg単回(プロトコルを揃えるため800 µgでもよい、推奨1.11.3)。は用いない(推奨1.11.4、逐語で Do not offer mifepristone as a treatment for incomplete miscarriage.)
  • 米国の(PreFaiR)では、200 mg経口の約24時間後に800 µgをする群の1回投与での完全排出が83.8%(124/148例)、単独群が67.1%(100/149例、1.25、95%CI 1.09〜1.43)で、子宮内容吸引術も8.8%対23.5%と少なかった6。⚠️ 2剤の間隔は試験(約24時間)と(48時間)で異なる。
  • ⚠️ この試験の組入れは妊娠5〜12週の非生存子宮内妊娠(無妊娠または・胎児死亡)で、・は「単独で有効性が高いため」除外されている6。にを足す根拠はこの試験からは出てこない。
  • が使えない場合は単独とし、必要時反復する。
  • 鎮痛、予想される出血、緊急受診基準を説明する。は薬物管理の3週間後に自宅でを行わせ、陽性なら遺残・・の除外のため受診させるとしている5。
  • ⚠️ 薬事承認と指針の推奨は別物である。 自身が推奨1.11.1・1.11.3の/をと明記している5。日本では・の配合製剤(メフィーゴパック)が承認されているが、効能・効果は「子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)以下の者に対する」で、流産の管理は承認範囲に含まれない。用法も200 mgの36〜48時間後に800 µgをバッカル投与(ではない)で、母体保護法指定のみが使用できる7。

手術療法

  • 循環不安定、持続大量出血、感染、重度貧血、本人の希望、他法不成功ではを行う。
  • のみより吸引法を優先し、感染を施設プロトコルで用いる。
  • で症状がなく消失を確認できれば、子宮内膜が厚いだけで手術しない。

RhD免疫グロブリン

RhD陰性・未感作の患者に(RhIg)を投与する目的は、次回妊娠でのの原因となる感作の成立を防ぐことである。妊娠12週未満の扱いは国・学会で分かれており、「多くの指針が推奨する」と一括りにできない。 週数・管理法・国の3つをそろえて確認する。

発行元 12週未満(11週6日まで) 12週0日〜12週6日
NG126(英国、2026年6月改訂) ・流産・には投与しない。外科的処置を受ける場合も含む(従来からの変更点)5 内科的管理または外科的処置を受けるRhD陰性例に250 IU(50 µg)以上を「提供する(offer)」。多量または反復する出血を伴うでは同量を「検討する(consider)」5
ACOG(米国、2024年の臨床実践アップデート) ・(自然・吸引・薬物)ではルーチンのRhD検査とRhIg投与を省略してよい(suggests forgoing)。のもとで個別に検査・投与を考慮することは妨げない8 12週0日以降はRhD検査とRhIg投与を従来どおり推奨(本文が明記)8
SMFM(米国、2024年の声明) 検査・投与が現実的・経済的に可能で医療へのアクセスを妨げない環境では、12週未満でもRhD検査とRhIg投与を提示することを推奨(根拠は「差し控えの安全性を説得的に示したデータが無い」こと)9 本声明の対象は12週未満で、12週以降には触れていない
日本の電子添文(抗D人免疫グロブリン筋注用1000倍「JB」) 効能・効果は「流産後、後、後…等のD(Rho)感作の可能性がある場合」で、週数による限定は書かれていない。用法は72時間以内に1バイアル筋注10 同左
  • が12週未満で投与しないとした根拠は、「12週未満の予防投与に利益を示す根拠が無く、・流産に対する内科的介入と外科的介入とで感作率に差があるという根拠も無い」ことである5。ACOGも同じ方向へ動いたが、SMFMは差し控えを支持するデータが不十分だとして反対のを出しており、米国内でも一致していない89。
  • ⚠️ は文書ごとに扱いが違う。 は11週6日までは投与しないと明示し、日本の電子添文は週数を問わず効能・効果に挙げている10。一方ACOGの2024年アップデートが扱うのはとで、は推奨の対象になっていない8。
  • 既に感作されている場合、RhIgは治療にならない(日本の電子添文も「予防は無効であるため、投与しないこと」と明記している)10。
  • ⚠️ 上表は各文書の記載であって、日本国内の実際の運用(学会の指針や施設プロトコル)を代表するものではない。自施設・地域の指針と本人の意向を踏まえて判断する。

敗血症性流産

発熱、悪寒、悪臭、、、低血圧を呈しうる産科救急である。

  1. 敗血症蘇生、血液・培養、広域IV抗菌薬を開始する。
  2. 抗菌薬開始後、感染妊娠組織を速やかに吸引除去する。
  3. 穿孔、膿瘍、壊死、、臓器不全を評価する。

感染はが多く、大腸菌、・ブドウ球菌、Bacteroidesなどの嫌気性菌を含むため、好気性・嫌気性菌を覆う。

心理的支援と次回妊娠

  • 反応、不安、抑うつ、PTSDを評価し、本人・パートナーへ支援を提供する。
  • 1回の流産後、多くは次回に正常妊娠が期待できる。
  • 2回以上のでは、子宮形態、、甲状腺、遺伝要因などを病歴に応じ評価する。
  • 排卵は早期に再開しうる。妊娠再開時期は医学的回復と本人の準備に基づき相談する。

まとめ

  • 妊娠初期出血では、まずとを評価する。
  • は保守的超音波基準または十分な間隔の再検で確定し、単独で決めない。SRUの確定基準は7 mm以上で心拍なし、25 mm以上でなしのほか、卵黄嚢の有無に応じて前回検査から2週間以上/11日以上で心拍のあるを認めないことを含み、は確定基準を満たしてもセカンドオピニオンか最低7日後の再検査を求める。
  • 安定例では、薬物、を本人の希望で選べる。薬物療法は病型で分かれ、はに200 mgの48時間後に800 µg、には600 µg単回でを用いないとしている。
  • RhIgの12週未満の扱いは(投与しない。外科的処置を含む)・ACOG(ルーチンは省略可)・SMFM(引き続き提示を推奨)・日本の電子添文(週数の限定なし)と分かれる。週数・管理法・国の3つをそろえて確認する。
  • は広域IV抗菌薬と迅速なを要する救急である。

出典

  1. 1.ESHRE guideline: recurrent pregnancy loss(European Society of Human Reproduction and Embryology (ESHRE) / Human Reproduction Open・2018)ESHRE(欧州)の反復流産ガイドライン2018年版は、反復妊娠喪失(RPL)を「2回以上の妊娠喪失」と定義しており、3回連続を待つ必要はないとしている(自然妊娠・生殖補助医療いずれの喪失も含み、異所性妊娠・胞状奇胎・着床不全は除く)。閲覧 2026-08-26
  2. 2.ESHRE guideline: recurrent pregnancy loss: an update in 2022(Human Reproduction Open (European Society of Human Reproduction and Embryology)・2023)オープンアクセス全文(PMC9982362)で確認した。逐語で「RPL is defined as the loss of two or more pregnancies.」「It excludes ectopic pregnancy and molar pregnancy.」とあり、2022年の更新でも「there was no need to revise the definition of RPL or the proposed terminology」と定義は変更されていない。同時に「The update of the literature failed to find evidence for a definition of RPL」「As in 2017, providing an evidence-based definition was not feasible」とも述べており、2回という区切りはエビデンスではなくコンセンサスである。閲覧 2026-09-17
  3. 3.Recurrent Miscarriage (Green-top Guideline No. 17)(Royal College of Obstetricians and Gynaecologists (RCOG)・2023)英国RCOGのグリーントップガイドライン17(2023年改訂第4版)は、反復流産を「3回以上の初期流産」と定義しており、ESHRE(2回以上)と国・学会間で反復流産の定義回数が異なることを示す一例である。ただし病的な性質が疑われれば2回目以降でも臨床的裁量で精査してよいとしている。閲覧 2026-08-26
  4. 4.Diagnostic criteria for nonviable pregnancy early in the first trimester(The New England Journal of Medicine・2013)全文で確認した(カリフォルニア大学のリポジトリ escholarship.org/uc/item/3g86q83k にNEJM誌面版(369巻15号1443-1451頁)のPDFが無料公開されている)。Table 1 は「生存性が不確実な子宮内妊娠」を「経腟超音波で子宮内に胎嚢を認めるが胎芽心拍が無く、妊娠喪失を確定する所見も無いもの」と定義し、Table 2 はこの集団に対する基準である。Table 2 の確定所見は「Crown–rump length of ≥7 mm and no heartbeat」「Mean sac diameter of ≥25 mm and no embryo」「Absence of embryo with heartbeat ≥2 wk after a scan that showed a gestational sac without a yolk sac」「Absence of embryo with heartbeat ≥11 days after a scan that showed a gestational sac with a yolk sac」の4つ。「疑わしいが確定的でない」欄には頭殿長7 mm未満で心拍なし、平均胎嚢径16〜24 mmで胎芽なし、最終月経から6週以上経っても胎芽なし、空の羊膜、卵黄嚢腫大(7 mm超)、胎芽に比して小さい胎嚢(平均胎嚢径と頭殿長の差が5 mm未満)が並び、脚注に「follow-up ultrasonography at 7 to 10 days」が一般に適切とある。基準はSociety of Radiologists in Ultrasoundが2012年10月に開いた多学会コンセンサス会議によるもの。閲覧 2026-09-17
  5. 5.Ectopic pregnancy and miscarriage: diagnosis and initial management(National Institute for Health and Care Excellence・2026)ブラウザUA付きcurlでガイドライン本体のPDF全文(52頁、2019年4月17日公開・2026年6月17日最終更新)を取得して確認した。1.11の冒頭に「In August 2023, the use of mifepristone and misoprostol in recommendations 1.11.1 and 1.11.3 was off label.」とあり、英国でも流産の薬物管理は適応外使用である。推奨1.11.1は稽留流産の薬物管理を「200 mg oral mifepristone and 48 hours later, 800 micrograms misoprostol (vaginal, oral or sublingual) unless the gestational sac has already been passed」とし、推奨1.11.3は不全流産をミソプロストール600 µg単回(腟・経口・舌下。プロトコルを揃えるため800 µgも可)、推奨1.11.4は逐語で「Do not offer mifepristone as a treatment for incomplete miscarriage.」とする。推奨1.11.7は薬物管理の3週間後に自宅で尿妊娠反応を行わせる。超音波では推奨1.6.1が「1回の超音波検査による流産の診断は100%正確であるとは保証できない」とし、推奨1.6.4(頭殿長7.0 mm以上で心拍なし)・推奨1.6.7(平均胎嚢径25.0 mm以上で胎芽なし)のいずれもセカンドオピニオンおよび/または最低7日後の再検査を求め、閾値未満(1.6.3・1.6.6)も最低7日後、経腹走査(1.6.5・1.6.8)は最低14日後の再検査とする。推奨1.10.1は流産確定例の第一選択を7〜14日間の待機管理とする。2026年6月改訂の推奨1.18.1は「Do not offer anti-D immunoglobulin prophylaxis ... for an ectopic pregnancy, miscarriage or threatened miscarriage up to and including 11+6 weeks' gestation」(最終月経と超音波で週数が食い違えば超音波を採る)、推奨1.18.2はRhD陰性で妊娠12+0〜12+6週に内科的管理または外科的処置を受ける場合に250 IU(50 µg)以上を「offer」、推奨1.18.3は同じ週数で多量または反復する出血を伴う切迫流産に同量を「consider」とする。改訂の解説には「12週未満の予防投与に利益を示す根拠が無く、異所性妊娠・流産に対する内科的介入と外科的介入とで感作率に差があるという根拠も無い」「外科的処置を受ける人を含め、11+6週までは抗D免疫グロブリンはもはや提供されない」とある。閲覧 2026-09-17
  6. 6.Mifepristone Pretreatment for the Medical Management of Early Pregnancy Loss(The New England Journal of Medicine・2018)全文で確認した(PMC6437668)。組入れは超音波で妊娠5〜12週の非生存子宮内妊娠が確認された18歳以上の女性で、無胎芽妊娠または胎芽・胎児死亡が確認された300例。⚠️ 逐語で「We excluded women who had an incomplete or inevitable abortion (defined as the absence of a gestational sac, an open cervical os, or both) because of the high efficacy of misoprostol use alone in women with these diagnoses.」とあり、不全流産・進行流産はこの試験の対象外である。プロトコルはミフェプリストン200 mg経口の「approximately 24 hours later」にミソプロストール800 µgを腟内投与するもので、主要評価項目はミソプロストール1回投与での胎嚢完全排出かつ30日以内に追加介入を要さないこと。完全排出はミフェプリストン前投与群124/148例(83.8%、95%CI 76.8〜89.3)、ミソプロストール単独群100/149例(67.1%、95%CI 59.0〜74.6)、相対リスク1.25(95%CI 1.09〜1.43)。子宮内容吸引術は8.8%対23.5%(相対リスク0.37、95%CI 0.21〜0.68)。閲覧 2026-09-17
  7. 7.メフィーゴパック 電子添文(ミフェプリストン錠・ミソプロストールバッカル錠)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2026年1月改訂(第2版、2023年4月作成、承認番号30500AMX00126000、YJコード249910AX1028)の電子添文本文で確認した。「4. 効能又は効果」は「子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)以下の者に対する人工妊娠中絶」であり、⚠️ 流産(早期妊娠喪失)の管理は国内の承認された効能・効果に含まれない。「6. 用法及び用量」は「ミフェプリストン錠1錠(ミフェプリストンとして200mg)を経口投与し、その36〜48時間後の状態に応じて、ミソプロストールバッカル錠4錠(ミソプロストールとして計800µg)を左右の臼歯の歯茎と頬の間に2錠ずつ30分間静置する」で、投与経路はバッカル(口腔内静置)であり腟内投与ではない。ヘッダに「本剤は母体保護法指定医師のみが使用すること」とある。閲覧 2026-09-17
  8. 8.ACOG Clinical Practice Update: Rh D Immune Globulin Administration After Abortion or Pregnancy Loss at Less Than 12 Weeks of Gestation(American College of Obstetricians and Gynecologists・2024)補足資料(Supplemental Digital Content, Appendix 1。https://links.lww.com/AOG/D839 が cdn-links.lww.com のPDFへ転送され、認証なしで取得できる)とEurope PMCの抄録で確認した。Appendix 1 はACOG自身の推奨を逐語で「For patients at less than 12+0 weeks of gestation who are undergoing abortion (managed with uterine aspiration or medication) or experiencing pregnancy loss (spontaneous or managed with uterine aspiration or medication): ACOG suggests forgoing routine Rh testing and RhIg prophylaxis.」「Although not routinely indicated, Rh testing and RhIg administration can be considered on an individual basis in the context of a shared decision-making discussion about the potential benefits and risks.」と掲げる。抄録は本文書がPractice Bulletin No. 225・No. 200・No. 181を更新するものであり、対象が「less than 12 0/7 weeks of gestation」であることを明記している。本文は出版社(journals.lww.com)が402/403を返すため Wayback の id_ 付きスナップショットで取得し、UPDATED CLINICAL RECOMMENDATIONS に続けて「Routine Rh testing in patients with unknown Rh status and administration of RhIg continue to be recommended for Rh-negative, unsensitized patients undergoing abortion or experiencing pregnancy loss at or beyond 12 0/7 weeks of gestation.」と12週0日以降は従来どおりであることを明記しているのを確認した。⚠️ 本文書が扱うのは人工妊娠中絶と妊娠喪失であり、異所性妊娠は推奨の対象になっていない(本文全体で ectopic の語が出るのはNICE NG126を挙げた参考文献15の題名だけである)。Appendix 1 は同じ表にSMFM・Society of Family Planning・SOGC・FIGO・NICE・RCOG・WHOの勧告を逐語で並べており、WHOは「For both medical and surgical abortion at < 12 weeks: Recommend against anti-D immunoglobulin administration.」、SOGCは8週未満と8〜12週に分けて(異所性妊娠・胞状奇胎を含め)投与しないことを推奨・提案している。閲覧 2026-09-17
  9. 9.Society for Maternal-Fetal Medicine Statement: RhD immune globulin after spontaneous or induced abortion at less than 12 weeks of gestation(American Journal of Obstetrics and Gynecology・2024)抄録(声明の要旨そのもの)で確認した。逐語で「In care settings in which RhD testing and RhIg administration are logistically and financially feasible and do not hinder access to abortion care, we recommend offering both RhD testing and RhIg administration for spontaneous and induced abortion at <12 weeks of gestation in unsensitized, RhD-negative individuals」。根拠は「These existing guidelines are based on limited data that do not convincingly demonstrate the safety of withholding RhIg for first-trimester abortions or pregnancy losses」で、「Guidelines for RhD testing and RhIg administration in the first trimester must balance the prevention of alloimmunization with the individual- and population-level harms of restricted access to abortion」と結ぶ。閲覧 2026-09-17
  10. 10.抗D人免疫グロブリン筋注用1000倍「JB」 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2023)2023年11月改訂(第1版、YJコード6343407X2074)の電子添文本文で確認した。「4. 効能又は効果」は「D(Rho)陰性で以前にD(Rho)因子で感作を受けていない女性に対し、以下の場合に投与することにより、D(Rho)因子による感作を抑制する。分娩後、流産後、人工妊娠中絶後、異所性妊娠後、妊娠中の検査・処置後(羊水穿刺、胎位外回転術等)又は腹部打撲後等のD(Rho)感作の可能性がある場合」「妊娠28週前後」で、⚠️ 妊娠週数による限定は書かれていない。「6. 用法及び用量」は〈分娩後、流産後、人工妊娠中絶後、異所性妊娠後、妊娠中の検査・処置後又は腹部打撲後〉に「72時間以内に本剤1バイアルを筋肉内に注射する」、〈妊娠28週前後〉に1バイアルの筋注とする。5.3は「既にD(Rho)因子で感作され抗D(Rho)抗体を持っている女性…には、本剤投与による予防は無効であるため、投与しないこと」と述べている。閲覧 2026-09-17