病理学

病理学 · B/02

腫瘍の組織学的分類(上皮性・間葉系・造血/リンパ系など)

Classification of neoplasms on histology basis

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
腫瘍の組織学的診断
疾患
脂肪腫

🧠 全体像:腫瘍の名前は「どの組織から生じたか(起源)」×「良性か悪性か」の2軸で決まる——上皮性の悪性は、の悪性は肉腫、良性は起源に「-oma」。そのうえで・(、核異型、異型、極性消失)の程度が悪性度を示し、上皮の悪性化はしばしば異形成→→浸潤という段階を踏む。

組織学的評価

組織像が腫瘍の挙動(良性//悪性/)を示す。評価で確立するのは:起源組織(型)、・の程度、局所浸潤(血管、リンパ管、神経周囲)、転移、その他の予後因子(例:乳癌の → 予後良好)。

💡 悪性度(グレード)は組織型を決めてから判定する。 成人の軟部肉腫では、が最も重要な予後因子で転移リスクの最良の指標とされる。主に用いられるフランス式・米国NCI式はいずれも3段階で、組織型・亜型、、を組み合わせて判定する。ただし異型のようなの腫瘍や型などには用いず、の小検体にも適さない1。

起源組織による分類

起源 良性 悪性
扁平上皮 扁平上皮乳頭腫 扁平上皮癌
腺・導管上皮 腺腫、、乳頭腫 腺癌、
肝細胞
結合組織 線維腫、、骨腫、 、、、
筋 、 、
血管 血管腫、 、リンパ管肉腫
血液・リンパ — 白血病、リンパ腫
唾液腺(混合) 悪性混合腫瘍
胚細胞 (卵巣の=、精巣の思春期前型) 、精巣の思春期後型、奇形癌

の例外(良性のように聞こえるが悪性):リンパ腫、黒色腫、、()、hepatoma(HCC)。

⚠️ の良悪性は「成熟しているか」だけでは決まらない。 卵巣のは良性だが、精巣では、(GCNIS)由来の思春期後型は成熟組織だけでできていても22〜37%で転移する悪性腫瘍として扱う。一方、GCNISとの思春期前型はをもたない2。

💡 ・・の違い:は胚細胞由来で複数の胚葉(外胚葉・中胚葉・内胚葉)の組織を含む真の腫瘍。はその部位にもともと存在する成熟組織が構成の乱れを伴って過剰増殖したもの。はその部位には本来存在しない組織が異所性に生じた塊である。とはいずれも良性のである3。

分化

腫瘍細胞が起源組織にどれだけ似ているか。

  • 良性 — 高分化で、正常細胞に似る( ≈ 脂肪)。
  • 悪性 — 高分化から未分化まで幅がある。良性との区別はしばしば浸潤・被膜破綻に依存する。
  • 良性の内分泌腫瘍はホルモンを過剰産生することがあり、低分化の非内分泌癌は異所性ホルモンを作ることがある。

退形成(悪性の特徴)

  1. — 細胞・核の大きさと形の多様性。
  2. 成熟のブロック・(例:)。
  3. 異常な核 — N:C比の増加、、不整な形、凝集したクロマチン。
  4. — 多数+異型(三極・)。
  5. 極性の消失。
  6. 化生 → 異形成 → → 浸潤による進行(例:気管支の)。
flowchart TD
    A["正常上皮"] --> B["化生"]
    B --> C["異形成"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carcinoma in situ, CIS'>上皮内癌</span>"]
    D --> E["浸潤癌"]

💡 ・肉腫様癌・:は上皮由来と分かるが特定の分化方向を欠く悪性腫瘍。は組織学的に肉腫に似るが上皮性の悪性腫瘍()である。などに関わる分子をする傾向があり、診断には・EMAなどのマーカーを含む免疫染色のパネルが用いられる。は成分と肉腫様の成分が混在する腫瘍だが、肺の2015年分類では多形癌・癌・巨細胞癌・肺芽腫とともに肉腫様癌の一型としてまとめられ、として扱われる4。名前に「肉腫」が入っていても、起源は上皮と考えられているわけである。

💡 ポイント: 起源組織+分化+浸潤+転移で分類する。上皮性悪性 = 、 = 肉腫。例外に注意:リンパ腫・黒色腫・・は悪性。(、N:C比増加、異型、極性消失)= 悪性の特徴。

まとめ

  • 腫瘍のは起源組織、・、局所浸潤、転移、予後因子(例:乳癌の)を確立する。
  • 起源組織別に扁平上皮、腺・導管上皮、結合組織、筋、血管などで良性・悪性の対応語が決まる。
  • の例外に注意:リンパ腫、黒色腫、、、hepatoma()は良性のように聞こえるが悪性。
  • 上皮の悪性化は、化生を背景に異形成→→浸潤と段階的に進むことが多い(例:気管支の)。
  • では、成熟組織だけのでも精巣の思春期後型は悪性として扱う。
  • の所見は、N:C比増加、、極性消失に整理される。

出典

  1. 1.Grading of soft tissue sarcomas: review and update(Archives of Pathology & Laboratory Medicine(Coindre JM.)・2006)抄録で、組織学的グレードが成人軟部肉腫で最も重要な予後因子かつ転移リスクの最良の指標であること、主に用いられるフランス式とNCI式はいずれも3段階で、主に組織型・亜型、腫瘍壊死、核分裂活性に基づくこと、グレーディングの前に組織型を明確にすべきで、異型線維黄色腫のような中間悪性度腫瘍や脱分化型脂肪肉腫などの一部の肉腫には用いるべきでないこと、成人軟部肉腫の90%超で有用であること、現行のグレーディングは針生検には適さないことを確認した。閲覧 2026-09-23
  2. 2.Gonadal Teratomas: A State-of-the-Art Review in Pathology(Cancers・2024)PMC全文(PMC11240729)で、精巣の思春期前型奇形腫はGCNIS非関連で転移能をもたない緩徐な腫瘍である一方、思春期後型奇形腫はGCNIS由来の非セミノーマ性胚細胞腫瘍の一部で、22〜37%で転移する悪性腫瘍であること、卵巣奇形腫は成熟嚢胞性奇形腫(類皮嚢胞とも呼ばれ卵巣奇形腫の95%超)・未熟奇形腫・単胚葉性奇形腫に分かれ、未熟奇形腫は未熟な神経上皮成分の割合による1〜3のグレードで予後と治療が変わることを確認した。閲覧 2026-09-23
  3. 3.Hamartomas and choristomas in the nervous system(Seminars in Diagnostic Pathology・2019)過誤腫(hamartoma)はその部位に本来存在する成熟組織が構成異常を伴い過剰増殖したもの(しばしば一つの成分が優位)であるのに対し、迷芽腫(choristoma)はその部位には本来存在しない、他の部位では組織学的に正常な組織塊(異所性/迷入)を指すこと、両者とも良性の腫瘍様病変で全身のどこにでも生じうることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Approaches to Tumor Classification in Pulmonary Sarcomatoid Carcinoma(Lung Cancer (Auckland, N.Z.)・2019)2015年WHO分類における肺肉腫様癌(pulmonary sarcomatoid carcinoma)は、非小細胞肺癌の通常成分を伴う、または全く欠く、組織学的に肉腫に類似した上皮性悪性腫瘍(癌腫)の総称で、多形癌・紡錘細胞癌・巨細胞癌・肺芽腫・癌肉腫を含むこと、ビメンチンなど上皮間葉転換に関連する分子を過剰発現する傾向があり、日常診断の免疫染色パネルには上皮系マーカー(サイトケラチン・EMA)、TTF-1、p40と陰性マーカーが含まれることを抄録で確認した閲覧 2026-09-23