精神医学

精神医学 · A-02

精神医学で重要な検査:臨床検査・心理検査・脳画像・電気生理

Important test procedures in psychiatry: laboratory, psychological, brain imaging and electrophysiology

スコア
MoCA

🧠 全体像:精神疾患の多くに単独で確定診断できる検査はない。検査の目的は、①身体疾患・物質による症状を除外する、②認知・人格・症状を定量化する、③治療前後の安全性を監視する、④が疑われるときに画像・で確かめる、の4つである。

検査を選ぶ順序

flowchart TD
    A["病歴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mental status examination'>精神状態診察</span>・身体/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological examination'>神経診察</span>"] --> B{"急性発症・意識/注意変動・神経徴候があるか"}
    B -->|"ある"| C["せん妄・中毒・感染・代謝異常を緊急検索"]
    B -->|"ない"| D["症状と治療に応じた選択的検査"]
    C --> E["血液・尿・毒物・画像・EEGなど"]
    D --> F["心理尺度・認知検査・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug safety'>薬物安全性</span>検査"]

臨床検査

検査 何を見つけるか 典型的な場面
血算 貧血、感染、血球減少 ・認知変化、などの安全性監視
電解質・血糖・Ca、肝腎機能 、低Na血症、臓器障害 急性混乱、摂食障害、薬物開始前後
± 甲状腺機能亢進/低下 抑うつ、、不安、
ビタミンB12・葉酸など 可逆性の認知・ 栄養不良、貧血、
尿・血中毒物検査、血中アルコール 中毒・離脱・物質誘発性障害 、意識変容、原因不明の興奮
妊娠検査 催奇形性・周産期リスクを考慮 妊娠可能性があり薬物療法を選ぶとき
薬物血中濃度 有効域、服薬状況、中毒 、バルプロ酸、カルバマゼピンなど

コルチゾールや性ホルモンは全例のルーチンではなく、や内分泌疾患を示す所見がある場合に選択する。は一部の代謝・予測を補助するが、臨床像と通常のを置き換えない。

心理・神経心理検査

領域 代表例 評価内容
知能 、Stanford-Binet 全般知能と指標間の偏り
認知スクリーニング Montreal Cognitive Assessment() を含む複数認知領域12
・注意 Trail Making Test 、視覚的注意、課題切替
人格・ Minnesota Multiphasic Personality Inventory(MMPI) 症状・人格傾向と回答
Rorschach、Thematic Apperception Test(TAT) 仮説形成の補助;単独で診断しない
症状尺度 BDI、HAM-Aなど 重症度と

検査結果は、言語、文化、感覚障害、努力、薬物、睡眠の影響を受ける。標準化された条件と臨床面接を併用する。

💡 はより高感度だが、26点は偽陽性を生みやすい。 原著の検証ではの感度90%に対し特異度は87%にとどまり1、系統的レビューでものは( 0.780)より高い一方2、26点をそのまま用いると健常な高齢者やの短い人の一部を「異常」と判定しうる。いずれの尺度もスクリーニングであり、診断は臨床像と合わせて行う。

脳画像

検査 精神科での主な位置づけ
速く、・大きなを評価 外傷、急性神経徴候、救急での除外
軟部組織の詳細、萎縮・腫瘍・炎症・血管病変 初発で非典型、局在徴候、
fMRI 血流依存信号から機能ネットワークを評価 主に研究;通常の精神疾患確定診断には用いない
/ 代謝・血流・標的分子を評価 選択された認知症鑑別や研究
血漿(p-tau217等) ・と相関する血中マーカー 病理の判別( 0.89〜0.96)。・より低侵襲だが単独で確定診断はしない

電気生理・睡眠検査

検査 測定対象 適応の例
頭皮上の電気活動 てんかん、、脳症・せん妄、昏睡
視覚・聴覚・体性感覚刺激への反応 障害;精神疾患のルーチン診断ではない
EEG、眼球運動、、呼吸、、心拍 睡眠時無呼吸、、睡眠時
(MEG) 神経活動が作る磁場 研究、てんかん焦点や術前機能マッピング

💡 血漿が・を補いつつある。 血漿p-tau217はの病理を高い精度( 0.89〜0.96)で判別でき3、2024年の改訂はをではなく生物学的過程として定義し、正確な血漿を含む診断枠組みを提案した4。ただし血液検査単独が臨床診断や画像検査に取って代わるものではない。

要点:検査は「精神疾患を証明する」よりも、「見逃すと危険・治療可能な別の原因を除外する」という目的で優先順位をつける。

まとめ

  • 精神疾患の多くには単独で確定診断できる検査がなく、検査の目的は身体疾患の除外、症状の定量化、治療の安全性監視、の確認の4つに整理できる。
  • 急性発症・意識/注意変動・神経徴候があれば、せん妄・中毒・感染・代謝異常を緊急検索する。
  • 臨床検査では、電解質・血糖・Ca、ビタミンB12・葉酸、尿・血中毒物検査などが症状の背景にある身体的原因の鑑別に用いられる。
  • 心理・(WAIS、、MMPIなど)の結果は、言語、文化、感覚障害の影響を受けるため、標準化条件と臨床面接を併用する。
  • 脳画像はが・の評価に、が非典型例やの評価に用いられ、fMRIは主に研究用途にとどまる。
  • 検査は「精神疾患を証明する」ためではなく、見逃すと危険な治療可能な原因を除外する目的で優先順位をつける。

出典

  1. 1.The Montreal Cognitive Assessment, MoCA: a brief screening tool for mild cognitive impairment(Journal of the American Geriatrics Society・2005)MoCAの原著validation研究。カットオフを26点としたとき、MCIの検出感度はMMSEが18%だったのに対しMoCAは90%であり、軽度アルツハイマー病ではMMSE 78%に対しMoCA 100%だった(特異度はMMSE 100%、MoCA 87%)閲覧 2026-08-26
  2. 2.Is the Montreal Cognitive Assessment (MoCA) screening superior to the Mini-Mental State Examination (MMSE) in the detection of mild cognitive impairment (MCI) and Alzheimer's Disease (AD) in the elderly?(International Psychogeriatrics・2019)34件の研究を対象にした系統的レビューで、MCIと健常高齢者を判別する精度がMoCA(AUC平均0.883、95%CI 0.855-0.912)でMMSE(AUC平均0.780、95%CI 0.740-0.820)より有意に高かった(p<0.001)こと閲覧 2026-08-26
  3. 3.Discriminative Accuracy of Plasma Phospho-tau217 for Alzheimer Disease vs Other Neurodegenerative Disorders(JAMA・2020)3つの独立コホート(計1402例)で血漿p-tau217を測定し、神経病理学的に確定したアルツハイマー病を非アルツハイマー病から判別する精度がAUC 0.89(コホート1、95%CI 0.81-0.97)であり、既存の血漿バイオマーカー(p-tau181・NfL)より有意に高精度で、CSFやPETベースの指標と同等の性能であったこと閲覧 2026-08-26
  4. 4.Revised criteria for diagnosis and staging of Alzheimer's disease: Alzheimer's Association Workgroup(Alzheimer's Association・2024)2024年6月公表の改訂基準がアルツハイマー病を臨床症候群でなく生物学的過程として定義し、正確な血漿バイオマーカー(特にp-tau217)を含む改訂版バイオマーカー分類・病期分類の枠組みを提案したこと閲覧 2026-08-26