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Drug Atlas · A18 Antipsychotics / 抗精神病薬

アセナピン

asenapine

分類
Antipsychotics / 抗精神病薬
商品名(日本)
シクレスト
商品名(EU)
Saphris
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
A18: Antipsychotics13: Affective disorders: depression and bipolar disorder
承認適応
統合失調症双極I型障害の躁病・混合性エピソード(米国)
禁忌疾患
肝硬変(Child-Pugh分類C)
副作用
アカシジア傾眠めまい体重増加
影響検査値
血糖

🧠 全体像:アセナピンは、として使うである。セロトニン、ドパミン、アドレナリン、ヒスタミンの幅広い受容体に作用する一方、にはほとんど結合しないため、の副作用は目立たない。日本の効能はで、米国ではの躁病・エピソードにも使われる。飲み込むと効かない(舌下の粘膜から吸収させる)ので、投与後10分間は飲食を避ける。傾眠・・口のが主な副作用で、他の抗精神病薬と同様に高血糖・体重増加・・に注意する。

薬効群の中での位置づけ

薬 剤形・特徴 臨床での位置づけ
・・ 経口。代謝系の副作用などで使い分ける との躁病
・ブレクスピプラゾール D2 など
アセナピン 。幅広い受容体に作用し、M1にはほとんど結合しない (日本)。の躁病にも(米国)

抗うつ薬・の薬物療法のトピックでは、CANMAT/ISBDの2018年版指針が、急性躁病の第一選択の単剤にアセナピンを挙げ、維持療法にもアセナピンを挙げている。・・と並び、またはバルプロ酸との併用も第一選択に入っている。

機序

flowchart TD
    A["アセナピン<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sublingual'>舌下投与</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serotonin receptors'>セロトニン受容体</span>の幅広い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Subtype'>サブタイプ</span>に作用<br>5-HT1A・1B・2A・2B・2C・6・7"]
    A --> C["ドパミンD1・D2・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dopamine D3 receptor'>D3受容体</span>に作用"]
    A --> D["アドレナリンα1A・α2A・2B・2Cと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histamine receptor'>ヒスタミン受容体</span>に作用"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscarinic receptor'>ムスカリン受容体</span>にはほとんど結合しない"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positive symptoms'>陽性症状</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='manic state'>躁状態</span>の改善"]
    C --> F
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orthostatic hypotension (postural hypotension)'>起立性低血圧</span>・眠気"]
    E --> H["抗コリン性の副作用は目立たない"]

日本の電子添文は、アセナピンが、5-HT1A・1B・2A・2B・2C・6・7、ドパミンD1・D2・D3、アドレナリンα1A・α2A・α2B・α2C、ヒスタミンH1・H2といった多くの受容体に結合することをin vitroで示している。では条件回避反応を抑制し、を起こす作用は弱かった1。米国の添付文書は、への親和性はなく、M1のKi値が8128 nMと述べている2。

薬物動態

項目 内容
日本人(5 mg単回舌下) Cmax 3.31±1.71 ng/mL、T1/2 17.1±6.1時間、AUC0-∞ 26.4±8.0 ng・hr/mL1
吸収(米国) で速やかに吸収され、最高濃度は0.5〜1.5時間。5 mgののは35%2
消失(米国) 直接の(UGT1A4)と(主にCYP1A2)。は約24時間で、1日2回ので3日以内に定常状態に達する

⭐ CYP1A2で代謝され、CYP2D6を弱く阻害する。 日本の電子添文は、などのCYP1A2阻害薬で本剤の血中濃度が増えて作用が強まるおそれがあるとしている。逆に、本剤の投与中にを単回投与すると、のCmaxが82%、AUCが92%増加したとの報告があり、を開始する場合は開始量を減らすなどの配慮が必要である1。

適応

  • (日本)。日本人273例を含む525例の期の患者に、5 mgまたは10 mgを1日2回6週間した試験で、PANSS合計スコアは両用量ともベースラインから減少し、その変化量はプラセボ群より有意に大きかった1。
  • 米国:成人の、(躁病またはエピソードの急性〔10〜17歳を含む〕、またはバルプロ酸への追加、成人の維持)2。

用法・用量

通常、成人は1回5 mgを1日2回から開始し、は1回5 mgを1日2回、年齢・症状に応じて増減して最高は1回10 mgを1日2回までとする(日本)1。米国は、の急性期で開始・推奨量とも5 mgを1日2回、は5〜10 mg、の躁病は成人で5〜10 mg、10〜17歳は2.5 mgから開始(2.5〜10 mg)、またはバルプロ酸への追加は5 mgから開始する。いずれも最大は10 mgを1日2回である2。

  • シートから取り出して舌下に入れる。飲み込まない。吸湿性があるので使用直前に乾いた手で取り出し、をつぶさない。
  • 水なしで投与し、後10分間は飲食を避ける。

禁忌・注意

日本の禁忌は5つである1。

禁忌(日本) 理由
本剤の成分への過敏症の既往
昏睡状態の患者 昏睡を悪化させるおそれ
誘導体などのの強い影響下にある患者 作用が増強するおそれ
アドレナリンを投与中の患者(アナフィラキシーの救急治療や歯科のに使う場合を除く) の遮断でβ受容体刺激作用が優位になり、血圧降下が強まる
重度の(C)

米国の禁忌は、重度のと、アセナピンへの過敏症の既往である2。として、の高齢者は抗精神病薬で死亡リスクが高まり、本剤はこの患者には承認されていない。

  • 慎重投与(日本):心・血管疾患・・低血圧(血圧降下)、てんかん等の痙攣性疾患(を下げるおそれ)、不整脈の既往・(QT延長)、の既往、糖尿病や高血糖・肥満などの危険因子、パーキンソン病や(が起こりやすい。の悪化)、不動状態・・肥満・脱水()、中等度の。
  • 高血糖・低血糖:高血糖や糖尿病の悪化からや昏睡に至ることがあり、低血糖も起こりうる。
  • :投与初期、再投与時、増量時にα交感神経遮断作用で起こりうる。
  • 体重の変動(増加・減少)、眠気・注意力の低下(運転は控える)。
  • 併用注意:・アルコール、(作用が互いに弱まる)、剤(が増強)、のある薬、CYP1A2阻害薬(など)、、QT延長を起こす薬。

副作用

頻度(日本) 内容
5%以上 傾眠(12.9%)、口の(10.1%)、、、
1〜5%未満 、、、、頭痛、、鎮静、振戦、便秘、悪心、口腔内不快感、、嘔吐、口の、
1%未満 ・減退、、攻撃性、不安、、、、、、高血圧・低血圧、呼吸困難、形成、発疹 など

重大な副作用は、(1%未満)、(1%未満)、、ショック・アナフィラキシー、(1%未満)・咽頭浮腫、高血糖・・糖尿病性昏睡、低血糖、、・、肺塞栓症・、痙攣(1%未満)、である1。

長期投与の試験では、副作用が58.2%(117/201例)と58.0%(91/157例)にみられ、傾眠10.4〜11.5%、体重増加7.5〜8.3%、6.5%、口の10.2%が主なものだった。

まとめ

  • の。多くの受容体に作用し、にはほとんど結合しない。日本の効能は、米国はの躁病・エピソードにも使う。
  • 1回5 mgを1日2回、最高10 mgを1日2回。舌下に入れ、飲み込まない。投与後10分間は飲食を避ける。
  • 禁忌は過敏症・昏睡・の強い影響下・アドレナリン投与中・重度の(日本)。高齢のでは死亡リスクが高まる(米国の)。
  • 傾眠と口の、が主な副作用。高血糖・低血糖、体重変動、、に注意する。
  • CYP1A2で代謝されるため、で血中濃度が上がる。の血中濃度を上げることもある。

出典

  1. 1.シクレスト舌下錠5mg/シクレスト舌下錠10mg 電子添文(Meiji Seika ファルマ/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2025)2025年6月改訂(第5版)の電子添文で、効能が統合失調症、用法が1回5 mgを1日2回舌下投与から開始し最高1回10 mgを1日2回であること、舌下投与後10分間は飲食を避けることと飲み込まないこと、禁忌が過敏症・昏睡状態・中枢神経抑制剤の強い影響下・アドレナリン投与中・重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)であること、CYP1A2の基質でCYP2D6を軽度に阻害すること、パロキセチンとの併用でパロキセチンのCmaxが82%・AUCが92%増加した報告があること、日本人健康成人5 mg単回舌下投与の薬物動態、日本人273例を含む525例のプラセボ対照試験の結果、重大な副作用の一覧、傾眠12.9%・口の感覚鈍麻10.1%を確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.SAPHRIS (asenapine) sublingual tablets — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Allergan, Inc.・2025)2025年1月31日有効の米国添付文書で、枠組み警告が認知症関連精神病の高齢者での死亡率の増加であること、適応が成人の統合失調症と双極I型障害(躁病または混合性エピソードの急性単剤療法〔10〜17歳を含む〕、リチウムまたはバルプロ酸への追加、維持単剤療法)であること、用量が1回5〜10 mgを1日2回・最大10 mgを1日2回であること、禁忌が重度の肝機能障害(Child-Pugh C)と過敏症であること、舌下投与のバイオアベイラビリティが5 mgで35%・最高濃度到達約1時間・終末半減期約24時間であること、ムスカリン受容体にほとんど親和性がないこと(M1のKi値8128 nM)を確認した。閲覧 2026-11-06