臨床薬理学

臨床薬理学 · 13

気分障害(うつ病・双極性障害)の薬物療法

Affective disorders: depression and bipolar disorder

前提:病態
モノアミン再取り込み阻害薬非再取り込み阻害型抗うつ薬・双極性障害躁状態治療薬抗精神病薬薬剤性有害反応:セロトニン症候群

🧠 全体像:の薬物療法は、最初の一問「躁病・のエピソードがあったか」で二つに分かれる。無ければで、と抗うつ薬(第一選択は)で症状を持ち上げる治療になる。あればで、主役は(・バルプロ酸・)とであり、目的は「上下の揺れを止める」ことである。抗うつ薬は受容体の作用で副作用が決まり、では単独で使うとを招く。

気分障害の二つの型

は、抑うつだけを繰り返すと、躁病(または)と抑うつを繰り返すに分かれる。はかつて躁うつ病と呼ばれた。

あり(、または軽症うつ病・) ほとんどの例であり あり
気分の高揚側 躁病・の既往が無い 躁病エピソードがある エピソードがある(躁病は無い)
治療の軸 +抗うつ薬 ・ ・

単極性うつ病と診断するための前提

(、または軽症うつ病・)と診断するには、次の2条件を満たす必要がある。

  1. 症状が、に伴う反応や、ほかの確かな疾患(甲状腺機能低下症、の使用など)でよりよく説明できないこと。
  2. 躁病・の既往が無いこと。既往があればとして扱う。
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='depressive disorder'>抑うつ症</span>状で受診"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='grief'>悲嘆</span>反応・身体疾患・<br>物質使用で説明できる?"}
  B -->|"はい"| C["原因への対応<br>例:甲状腺機能低下症の補充療法"]
  B -->|"いいえ"| D{"躁病・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypomania'>軽躁病</span>の<br>既往がある?"}
  D -->|"躁病あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bipolar I disorder'>双極I型障害</span>"]
  D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypomania'>軽躁病</span>のみ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bipolar II disorder'>双極II型障害</span>"]
  D -->|"なし"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unipolar depression'>単極性うつ病</span><br>重症度で治療を選ぶ"]
  E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mood stabilizers'>気分安定薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical antipsychotics'>非定型抗精神病薬</span><br>抗うつ薬の単剤は使わない"]
  F --> H

💡 なぜ診断の入口で既往を問うのか。 の人が抑うつ期に受診し、として抗うつ薬だけを投与されると、躁病・への転換()や病相の頻回化を招く。躁病の既往は本人が病気と認識していないことが多いので、家族からも聴取する。

大うつ病エピソードの症状

のは、次の症状のうち5つ以上が2週間以上ほぼ毎日続き、そのうち1つが「」か「興味・喜びの喪失」であることを求める。症状の詳細な評価と鑑別はの病因・診断・経過を参照。

領域 症状
気分 1日の大半、ほぼ毎日続く
意欲 ほとんどすべての活動への興味・喜びの喪失
食欲・体重 著しい体重減少または増加、食欲の低下または亢進
睡眠 不眠または
精神運動 部屋の中を歩き回るような目的のない動き、精神運動性のまたは制止
活力 疲労感、気力の減退
自己評価 、、自責
思考 思考力・集中力の低下、決断困難
死 死についての反復思考、具体的計画の無い反復的な、または具体的な自殺計画

経過と、治療しない場合の帰結

  • のは、60%を超える例で再発性または慢性の経過をとる。再発を重ねるほどエピソードは長くなり、症状も重くなる。
  • 治療しないうつ病の主な合併症は、持続的な就労不能・早期の障害、二次的な飲酒・薬物使用、身体的(主にの)死亡率の上昇、そしてでの著しい自殺リスクの上昇である。

⭐ だからうつ病の治療は「今の症状を消す」だけでなく、再発予防と自殺予防までを目標に含める。自殺の危険評価と予防はを参照。

躁病エピソードの症状

は、躁病(双極I型)または(双極II型)のエピソードとが繰り返し現れる病気である。ではは1週間以上(入院を要すれば期間を問わない)、は4日以上続くことを求める。

領域 症状
活動性 とくに活力・活動性の亢進、落ち着きのなさ
気分 異常に高揚した多幸的な気分、著しい
思考・会話 思考の加速()、せかせかした態度、異常な多弁
睡眠 の減少(1日2〜4時間以下でも平気)
自己評価 非現実的な自尊心の肥大、
性行動 の亢進、性的逸脱、無責任な性行動
対人行動 挑発的・的な行動、攻撃的な言動
判断 無責任な決定(浪費、無謀な投資、非現実的な事業計画)
物質 飲酒・薬物使用の増加
まれに・
の欠如

うつ病の治療方針

重症度で出発点が変わる。

  • 軽症うつ病・:が主体(、、)。やなどのは、必要な場合に限って考慮する。
  • 中等症〜重症:通常はと併せて抗うつ薬による薬物療法が必要になる。
  • 薬物療法の第一選択は一般にである。

現行の指針もこの骨格を保っているが、表現には差がある。

論点 な整理 NG222(2022年) 2023年版
軽症 が主体、は必要時のみ 誘導型セルフヘルプなど負担の少ない治療から考え、抗うつ薬は本人が希望した場合を除き第一選択としてには勧めない1 と薬物療法の効果は同程度だが、利益と危険の釣り合いから、利用できるならを優先する2
中等症〜重症 抗うつ薬+ 重症では個人と抗うつ薬の併用を表の最に置く1 中等症では構造化と抗うつ薬のどちらも初期治療になり、併用も考慮する2
薬の第一選択 は一般にと安全性が良く、多くの人でまず考える薬とする。三環系はで危険1 31種のうち17種を第一選択とし、効果・副作用・費用・好みで選ぶ2
開始後の見直し — 通常2週以内に効果と副作用を確認し、18〜25歳や自殺の危険が特に心配な人では開始1週後に見る。寛解後も含め少なくとも6か月続ける1 —
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unipolar depression'>単極性うつ病</span>と診断"] --> B{"重症度"}
  B -->|"軽症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysthymia'>気分変調症</span>"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychotherapy'>心理療法</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive behavioral therapy, CBT'>認知行動療法</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interpersonal therapy (IPT)'>対人関係療法</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychoeducation'>心理教育</span>"]
  C --> C2["必要なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selective serotonin reuptake inhibitor'>SSRI</span>を考慮"]
  B -->|"中等症〜重症"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychotherapy'>心理療法</span>+抗うつ薬<br>第一選択は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selective serotonin reuptake inhibitor'>SSRI</span>"]
  D --> E["通常2週以内に効果と副作用を確認<br>18〜25歳・自殺の危険では1週後<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='suicidal ideation'>自殺念慮</span>を監視"]
  E --> F{"十分な用量・期間で<br>反応した?"}
  F -->|"はい"| G["寛解後も少なくとも6か月継続し<br>再発を予防"]
  F -->|"いいえ"| H["増量・切り替え<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='augmentation therapy'>増強療法</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esketamine'>エスケタミン</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='electroconvulsive therapy (ECT)'>電気けいれん療法</span>"]

抗うつ薬の分類

系統 代表薬
(第一世代) 、()
、、、、、
SNRI 、
選択的
ノルアドレナリン・阻害薬
阻害薬 、(米国の)
非定型抗うつ薬 、、、、

略称は流儀によって揺れる。をSSNRIと書くこともあり、を「選択的」、を「」と語順を入れ替えて呼ぶこともあるが、中身は同じである。第二世代の抗うつ薬は、作用の仕方で次の4群に整理できる。

群 作用の軸 薬
I 薬 輸送体を阻害してのを増やす 、、、(は逆に再取り込みを促進するとされた例外)
II 阻害薬 の分解を止める 、
III 受容体に作用する非定型薬 再取り込みではなく受容体の遮断・刺激で伝達を変える 、
IV セロトニン調節薬 に5-HT受容体への作用を組み合わせる 、

第一世代:三環系・四環系抗うつ薬

群 薬 作用機序 そのほかの標的 特徴・副作用
三環系 ノルアドレナリンとセロトニンの(セロトニン側がより強い) H1・M1・α1受容体の遮断 強い鎮静、体重増加、低血圧、
三環系 、 同上 H1・M1・α1受容体の遮断(より弱い) 同上
マプロチリン ノルアドレナリン 強いH1遮断、より弱いM1・α1遮断 —
遮断、ノルアドレナリン、中等度の遮断 強いH1遮断、より弱いM1・α1遮断 著しい鎮静、は弱い

受容体親和性で副作用を読む

次の値はKi(nM)で、数字が小さいほど強く結合する。太字は薬の性格を決める特徴的な値である。

薬 :5-HT :ノルアドレナリン :H1 α1 α2 M1 5-HT2A
2.8〜36 19〜102 0.5〜1.1 6.5〜25 114〜690 12 18〜23
1.3〜1.4 20〜37 7.6〜37 32 3,100 42 80〜150
0.14〜0.28 38〜53.7 13〜31 3.2〜38 525〜3,200 37 27〜35.5
マプロチリン 5,800 11〜12 0.79〜2.0 90 9,400 570 51
4,000超 71 0.30〜1.7 34 73 820 1.6〜55

表の読み方を薬ごとに押さえる。

  • :H1のKiが1 nM前後と、より強い。だから鎮静と体重増加が前面に出る。M1も12 nMと強く、口渇・便秘・尿閉・・せん妄が出やすい。α1遮断はを起こす。
  • :5-HT輸送体のKiが0.14〜0.28 nMと極端に小さく、三環系で最もセロトニン選択的である。に使われる理由がここにある。
  • マプロチリン:5-HT輸送体には5,800 nMとほとんど結合せず、ノルアドレナリン選択的である。M1は570 nMと弱く、は三環系より軽い。一方でH1は強い。
  • :再取り込みはほぼ阻害せず(5-HT 4,000 nM超)、α2(73 nM)と5-HT2A・H1への結合が主体である。抗うつ作用はα2遮断によるノルアドレナリン放出の増加で説明され、強いH1遮断が鎮静を生む。M1は820 nMと弱い。

💡 副作用は「どの受容体を塞ぐか」の地図になる。 H1遮断は眠気・体重増加、M1遮断は口渇・便秘・尿閉・眼の調節障害・、α1遮断は・めまいを起こす。抗うつ効果そのもの(やα2遮断)とは別の受容体なので、効き目を落とさずに副作用だけを減らす方向で第二世代の薬が作られた。

⚠️ はで心毒性(QRS幅の拡大・不整脈)、けいれん、意識障害を起こし、致死的になりうる。も、の危険が大きい人ではを優先して考えるよう求め、は第二選択に下げている2。心毒性の機序はを参照。一方でには今も役割があり、は疼痛を伴う例、はを伴う例で選ばれる2。

第二世代 I:再取り込み阻害薬

SSRI

、、、、、の6剤である。

⭐ で押さえるのは阻害の強さである。

薬 主な上の特徴 臨床での意味
、 の強い阻害薬 で代謝される併用薬(、多くのβ遮断薬・抗精神病薬など)の濃度を上げる。で活性化されるの効果を弱める
の強い阻害薬(CYP2C19・も阻害) で代謝される薬(、など)の濃度を上げる
、 酵素への影響が最も小さい の患者で選びやすい

も、とをの、を・CYP2C19・の強い阻害薬とし、それ以外のは相互作用が少ないとしている2。ただしには延長の危険がある(臨床上の危険は小さく、には意味のあるは無い)2。

SNRI

とで、セロトニンとノルアドレナリンの両方の再取り込みを阻害する。ノルアドレナリン作用のため、疼痛を伴ううつ病で使われる一方、に注意する(後述)。

選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬:レボキセチン

ノルアドレナリン輸送体だけを阻害する。

ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬:ブプロピオン

  • 単環系で、構造はに似る。
  • ノルアドレナリンよりドパミンの再取り込みをより強く阻害するとされる。
  • に作用しないため、と体重増加がほとんど無い(副作用表を参照)。

⚠️ はにを下げる。けいれん性疾患や、けいれんを起こしやすい摂食障害の患者では避ける。

選択的セロトニン再取り込み促進薬:チアネプチン

  • 再取り込みを阻害するのではなく促進するとされた、例外的な抗うつ薬である。
  • 近年の研究では、(・NMDA受容体)の活性を調節し、BDNFの発現を増やすことが示唆されている。
  • ストレスで誘発されるの反応を抑える。

⚠️ にはへの作動作用もあり、高用量での乱用・依存が問題になっている。

第二世代 II:MAO阻害薬

薬 分類 特徴
の薬 可逆的なので、を含む食品を摂ると競合して外れ、食事制限が緩い
の薬(米国でが抗うつ薬として使われる) 低用量では選択的だが、抗うつ用量のでは脳内のも阻害する。で腸管のを阻害しにくい

⚠️ 阻害薬は、・・・などの薬との併用でを、を多く含む食品(熟成チーズ、加工肉、発酵食品)でを起こしうる。はこのため不可逆的阻害薬を第三選択としている2。の機序は薬剤性:を参照。

第二世代 III:受容体に作用する非定型抗うつ薬

ミルタザピン

ノルアドレナリン作動性・特異的抗うつ薬と呼ばれる。

  • の構造だが、作用は無い。と、5-HT2・を遮断する。
  • 強いH1遮断薬で、M1・α1への親和性は低い。
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mirtazapine'>ミルタザピン</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic alpha-2 receptor'>シナプス前α2受容体</span>を遮断"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoreceptor'>自己受容体</span>・ヘテロ受容体の<br>ブレーキが外れる"]
  C --> D["ノルアドレナリンと<br>セロトニンの放出が増える"]
  A --> E["5-HT2・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT3 receptor'>5-HT3受容体</span>を遮断"]
  D --> F["増えたセロトニンは<br>5-HT1A受容体に偏って作用"]
  E --> F
  F --> G["抗うつ作用<br>吐き気・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sexual dysfunction'>性機能障害</span>・不眠は少ない"]
  A --> H["強いH1遮断"]
  H --> I["鎮静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased appetite'>食欲亢進</span>・体重増加"]

💡 5-HT2を塞ぐのでと不眠・が少なく、5-HT3を塞ぐので吐き気も少ない。の苦手な副作用を裏返したような性格で、不眠・食欲低下の強い患者に向く。も短期の安全性は良いが、食欲・体重の増加と長期の代謝リスクがあるとしている2。

アゴメラチン

  • 二環系でに似た構造をもち、MT1・MT2受容体の作動薬であり、5-HT2C受容体の拮抗薬である(5-HT2Cの遮断でノルアドレナリンとドパミンの放出が増える)。ほかの受容体には結合しない。
  • ⚠️ 肝毒性がありうるので、を監視する。肝疾患はである。 も、は肝障害の危険が高い薬の一つで、定期的な肝機能検査が添付文書で求められていると記載している2。

第二世代 IV:セロトニン調節薬

トラゾドン

セロトニン拮抗・薬と呼ばれる。

  • 5-HT2A・5-HT2C受容体の拮抗薬で、弱い5-HT作用をもつ。ノルアドレナリン系・ドパミン系への作用はわずかである。
  • 作用はである。低用量では5-HTが、高用量では5-HT刺激作用()が前面に出る。副作用も用量で変わる。
  • 強いH1遮断と、の遮断をもつ。まれなはの遮断による。は無い。

💡 低用量のがの代わりに使われるのは、この用量ではH1遮断と5-HT2A遮断(深い睡眠を増やす)が主体で、抗うつ作用が出る前の用量だからである。

ボルチオキセチン

標的 作用
5-HT輸送体
() 強い拮抗
5-HT7・5-HT1D受容体 弱い拮抗
5-HT1B受容体 部分作動
5-HT1A受容体 完全作動

この複雑な5-HT作用の結果、脳の部位ごとにセロトニン・ノルアドレナリン・アセチルコリン・ドパミンの濃度を上げると考えられている。は、現在のエピソードで2剤以上の抗うつ薬に反応しなかった場合の選択肢としてを挙げている1。

抗うつ薬の副作用の比較

0=なし、+〜++++=軽度〜高度。「0/+」のような幅は、同じ群の中でも薬や用量で差があることを示す。*はを表す。のQT延長とに付く#は定義の示されていない印で、薬ごとの差が大きい項目を指すとみられる。

群・薬 消化器症状 QT延長 体重増加 不眠・
++/+++ ++/+++ 0/+ ++/+++ +++/++++ +++/++++ 0/++
SSRI 0/+ + +* 0/+ +++/++++ + +/++
SNRI 0 + +* 0/+# 0/+++# 0/+ +
セロトニン調節薬:* 0 0/+++ +/+++ +/++ + 0/+ 0
セロトニン調節薬: 0 0 +++ 0 + 0 0
非定型: + + 0 + + ++++ 0
非定型: 0 0 + 0 0/+ 0 +
非定型: 0 0 ++ + 0 0 +/++

の副作用プロファイルは非常に悪く、第二世代では大きく改善した。不安症にも広く使われるが最も好ましい。も、とでは消化器症状とが、では口渇・便秘などのが多いとまとめている2。

副作用の各論

副作用 内容と理由
けいれん すべての抗うつ薬がけいれんの危険を上げうる
吐き気・胃腸の不快感 とのすべてで治療開始時に特徴的。腸管の刺激による。数週で慣れることが多い
副作用が少ないでも(ではやや少なく)起こり、を強く損なう。患者から言い出しにくいのでから尋ねる
で起こりうる2
抗コリン様作用 はに結合しないのに、口渇・便秘・尿閉・眼の調節障害を起こしうる。ノルアドレナリン作用の亢進が原因と考えられる。を介してを悪化させるので、従来の整理ではで禁忌とされる(現行の添付文書では、未治療の閉塞隅角を禁忌とするか・慎重投与とするかが製剤と国で異なる)
妊娠 は妊娠中に最も安全な抗うつ薬とされてきた。は先天性の危険を上げる
の特殊性 の中でセロトニン作用が最も強いが、も最も強い
出血 はと消化管出血の危険を上げうる(ではやや弱い)。血小板のセロトニン取り込みを阻害して血小板内のセロトニンを枯渇させること(止血の低下)が主因で、の増加も消化管出血に加わると説明される
・はの危険を上げうる

⚠️ 出血の危険は併用で重なる。 との併用は消化管出血の危険を上げ、で軽減できる。と利尿薬の併用は、とくに高齢者での危険を上げる2。

💡 「が妊娠中に最も安全」という整理は、半減期が長く新生児のが少ないことなどによる古くからの見方である。現在はなど複数のに妊娠中の使用経験が蓄積しており、1剤だけが安全と決めつけず、それまでの反応と危険を個別に比べて選ぶ。

セロトニン症候群

は、セロトニン濃度の上昇によって数時間〜数日のうちに起こる、生命を脅かしうる副作用である。最も多い原因は急な増量である。重症例では次の3系統の症状がそろう。

系統 症状
自律神経 、高血圧、の亢進(激しい下痢)
精神状態 、最終的には昏睡
神経筋 、てんかん様けいれん
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serotonergic system'>セロトニン系</span>の薬を増量・追加"] --> B["数時間〜数日で<br>セロトニン作用が過剰"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agitation'>焦燥</span>・発汗・振戦・下痢"]
  C --> D["重症化<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperthermia'>高体温</span>・高血圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigidity (muscle rigidity)'>筋強剛</span>・けいれん"]
  D --> E["昏睡・死亡の危険"]
  B --> F["治療:原因薬の中止"]
  F --> G["支持療法と体温を下げる処置"]
  G --> H["必要なら5-HT拮抗薬<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyproheptadine'>シプロヘプタジン</span>"]

治療は、原因薬の中止、支持療法、体温を下げる処置で、場合により5-HT拮抗薬のを使う。⚠️ のへの効果は証明されていない。 とという共通点からやと混同しないことが要点である。

セロトニン症候群の危険を高める薬

機序 薬
・、セロトニン調節薬、、、バルプロ酸、カルバマゼピン、
セロトニン放出の増加 、、類、、
セロトニン不活化の阻害 阻害薬、類、リネゾリド
の刺激 、、オピオイド(例:)
セロトニン合成の増加 (阻害薬の服用中に摂取したとき)
の感受性の変化

⚠️ リネゾリドは抗菌薬だが弱い阻害作用をもつので、服用中の患者に処方するときに見落としやすい。阻害薬と食事の組み合わせでは、の負荷はを、の負荷は()を起こす。両者は別の反応として区別する。機序の詳細は薬剤性:を参照。

抗うつ薬に反応しない患者への新しい選択肢

抗精神病薬による増強療法

現行の指針は、薬ごとに推奨の強さを分けている。

薬 2023年版での位置づけ2 主な理由
、ブレクスピプラゾール 第一選択の追加薬 有効性と。と体重増加に注意
第二選択 研究数が少ない
第二選択 体重増加・代謝系の副作用
第二選択 鎮静・代謝系の副作用
第二選択 ・・

も、抗うつ薬で効果が乏しい場合の併用として、別系統の抗うつ薬の追加(にや)、(・・・)やの追加、・・による増強を挙げ、・・と阻害薬の併用は避けるよう求めている1。

エスケタミン

項目 内容
作用機序 ので、NMDA受容体を遮断する→グルタミン酸の放出が増える→が刺激される
効果 で、効果は4〜7日続く。ほかの抗うつ薬に反応しない患者でも効きうる
適応(欧州の承認内容) またはとの併用に限り、現在の中等症〜重症のエピソードで2種類以上の抗うつ薬治療に反応しなかった成人
副作用 解離、めまい、精神症状、、頻脈
除外を考える既往 高血圧またはその危険、精神病の既往
用法 点鼻薬。週1〜2回、の監督下でのみ投与する
投与後の監視 が約40分で頂点になるため、投与後少なくとも2時間観察する

の適応は国で違う。米国の添付文書(2026年改訂)では、に単剤または経口抗うつ薬との併用で、急性の・自殺行動を伴うには経口抗うつ薬との併用で使える。は鎮静・解離・呼吸抑制・乱用と誤用・で、と呼ばれる限定された流通プログラムのもとでのみ供給される3。は週2回投与である3。

💡 「約40分」と「2時間」の意味。 血圧の上昇は投与約40分後、つまりの時点で頂点になり、約4時間続く3。はを通って脳へ直接届くと説明されることもあるが、この経過はからに入った薬の濃度の推移と一致している。鎮静・解離・呼吸抑制も投与直後に集中するので、毎回少なくとも2時間は医療者のもとで観察し、安定を確認してから帰宅させる3。

2023年版は、点鼻と静注に速い抗うつ効果との軽減を認めつつ、血圧と解離の監視という実施上の負担から、どちらも追加療法の第二選択としている2。

自殺の危険を下げる目的で併用する薬

群 例 役割
、 抗うつ薬が効くまでの不安・・不眠を抑える
第二世代(非定型)抗精神病薬 、 ・を抑える
5-HT受容体の感受性を高める。抗自殺効果がある

はで増強するとき、服用12時間後の血中濃度で監視して1.0 mmol/Lを超えないようにし(増強の治療域は通常0.4 mmol/L以上、65歳以上では0.4〜0.6 mmol/Lを考慮)、体重・腎機能・甲状腺機能・カルシウムを治療前と少なくとも6か月ごとに確認するよう求めている。診察のたびに下痢・嘔吐・な振戦・・・けいれんといった中毒徴候を確認し、阻害薬・II受容体拮抗薬・利尿薬・など濃度を変える併用薬の変更にも注意する1。

⚠️ は依存との危険があるので、短期間の補助にとどめる。

双極性障害の治療

の治療はの治療と根本的に異なる。要点は気分の安定を保ち、揺れを避けることである。薬物療法の目標は次の3つである。

  1. の治療
  2. の治療
  3. 維持療法(再発予防)

気分安定薬と非定型抗精神病薬:用量と単剤療法での有効性

ハンガリーの指針による、通常の1日治療量とでの有効性である(+=中等度の効果、++=顕著な効果、?=効果の証明が不十分。−は定義が示されていないが、有効性が示されていないことを表すとみられる)。

薬 通常の治療量(mg/日) 躁病 抑うつ 予防
500〜1,500 ++ ++ ++
バルプロ酸 600〜2,400 ++ ++ ++
カルバマゼピン 200〜800 ++ + +
100〜400 − ++ ++
5〜20 ++ + ++
300〜800 ++ ++ ++
80〜160 ++ +? +?
15〜30 ++ −? +
2〜6 ++ ? +?

💡 表を縦に読むと、薬の「得意な方向」が見える。 ・バルプロ酸・は3方向すべてに効く。は抑うつと予防に強く、躁病には効かない(「下から支える」薬)。・・は躁病には強いが、抑うつへの効果ははっきりしない(「上から抑える」薬)。

病相別の薬の選び方

病相 薬
(、のバルプロ酸)、第二世代(非定型)抗精神病薬。必要なら併用。無効ならのカルバマゼピン、、場合により
、の、。併用ならまたはバルプロ酸+、+
維持療法 、、。注射抗精神病薬(例:)。必要なら併用
  • ⚠️ はと併用する場合に限って使える。に抗うつ薬のは勧められない。
  • はに、はにより有効である。には自殺予防の効果があると考えられる。
  • ⚠️ は少しずつ増量する(生命を脅かす皮疹の危険)。
  • 抗うつ薬はの長期(予防)治療ではごく限られた役割しかもたない。と併用しても・躁の危険を上げる。抗うつ薬の使用中に「再発」が起きたら、抗うつ薬を中止する。
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bipolar disorder'>双極性障害</span>"] --> B{"現在の病相"}
  B -->|"躁病"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lithium'>リチウム</span>・バルプロ酸<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical antipsychotics'>非定型抗精神病薬</span><br>必要なら併用"]
  C --> C2{"無効?"}
  C2 -->|"はい"| C3["カルバマゼピン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='haloperidol'>ハロペリドール</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='electroconvulsive therapy (ECT)'>電気けいれん療法</span>"]
  B -->|"抑うつ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lithium'>リチウム</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamotrigine'>ラモトリギン</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='quetiapine'>クエチアピン</span>"]
  D --> D2["併用:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mood stabilizers'>気分安定薬</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selective serotonin reuptake inhibitor'>SSRI</span><br>抗うつ薬の単剤は使わない"]
  C --> E["維持療法<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lithium'>リチウム</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamotrigine'>ラモトリギン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quetiapine'>クエチアピン</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-acting (depot)'>持効性</span>注射抗精神病薬"]
  C3 --> E
  D --> E
  D2 --> E
  E --> F{"抗うつ薬の使用中に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='switch to mania (manic switch)'>躁転</span>・病相の悪化?"}
  F -->|"はい"| G["抗うつ薬を中止"]

現行指針(CANMAT/ISBD 2018年版)との対比

薬の顔ぶれはほぼ同じだが、現行指針は安全性を加味して推奨の段階を細かく分けている。ジバルプロエクスはバルプロ酸の製剤である。

病相 第一選択 第二選択・注意点
急性躁病 、、ジバルプロエクス、アセナピン、、、、。・・・アセナピンとまたはジバルプロエクスの併用も第一選択4 ・カルバマゼピン・・は有効だが安全性の理由で第二選択。も第二選択。は急性躁病に推奨しない4
双極I型うつ病 、、、(とは追加療法でも第一選択)4 ジバルプロエクス単剤、またはの追加、、、・配合が第二選択。抗うつ薬のは用いない4
維持療法 、、ジバルプロエクス、、アセナピン、(経口・月1回注射)、またはと/ジバルプロエクスの併用4 (代謝系の副作用)、注射、カルバマゼピンは第二選択4

表の違いを押さえる。

  • バルプロ酸の抑うつへの効果:ハンガリーの表では「++」だが、では単剤は第二選択にとどまる。
  • +:な整理ではの併用療法の一つだが、は効果が小さいことを重く見て、以前の第一選択から第二選択に下げた4。
  • :躁病への効果は強いが、代謝系の副作用のため現行指針では躁病でも維持療法でも第二選択である。抑うつにはとの配合で用いる。
  • 注射抗精神病薬:な例はだが、で第一選択に入るのは月1回注射で、注射は第二選択である。

⚠️ は、ジバルプロエクスとカルバマゼピンをの女性では慎重に使うよう注記している4。妊娠を考える女性へのの選び方、バルプロ酸の妊娠予防プログラム、の妊娠中のは妊娠中のとてんかんにまとめた。

💡 の抗自殺効果。 も、(より弱く)がと自殺死の予防に寄与しうるとしている4。一方では治療域が狭く、で致死的になりうるので、処方量との徴候に注意する。

⚠️ の重い皮疹(・)は、推奨を超える初回量・速すぎる増量・バルプロ酸との併用(バルプロ酸がのを阻害して濃度を上げる)で起こりやすい。バルプロ酸を併用するときは、開始量・増量幅・目標量をいずれも低く設定する。皮疹の見分け方はを参照。

薬以外の治療

  • (を含む)
  • 薬を使わない生物学的治療:部分、
  • 全身麻酔と筋弛緩下で行う(とくに薬物療法抵抗性の例やの症状がある例で必要になる)

各治療の詳細はの急性期・長期治療とその他の生物学的治療を参照。

まとめ

  • は、躁病・の既往の有無でと(I型は躁病、II型は)に分かれる。と診断する前に、反応・甲状腺機能低下症・物質使用を除外する。
  • は60%超で再発・慢性化し、未治療では就労不能・物質使用・・自殺が増える。
  • 軽症はが主体(もも同じ方向)、中等症〜重症は+抗うつ薬で、第一選択は一般に。
  • 三環系はに加えてH1・M1・α1を遮断し、鎮静・体重増加・・・時の心毒性が問題。はセロトニン選択的、マプロチリンはノルアドレナリン選択的、はα2遮断が主体。
  • の阻害:・は、は。・は影響が小さいが、は延長に注意。
  • ・は治療初期の吐き気、、出血(頭蓋内・消化管・分娩後)、はと抗コリン様作用。は先天性。は肝機能を監視し肝疾患で禁忌。は。
  • は急な増量で数時間〜数日に起こり、・高血圧・下痢・・・けいれん・昏睡。治療は中止・支持療法・冷却・で、の効果は証明されていない。阻害薬・リネゾリド・・トリプタンとの併用に注意。
  • 抗うつ薬に反応しなければ、低用量のによる増強(現行では・ブレクスピプラゾールが第一選択)や点鼻(投与後2時間の監視、血圧は約40分で頂点)を考える。
  • の目的は気分の安定。躁病は・バルプロ酸・、抑うつは・・、維持は・・。抗うつ薬の単剤は使わず、使用中にしたら中止する。はゆっくり増量する。

出典

  1. 1.Depression in adults: treatment and management (NG222) — Recommendations(National Institute for Health and Care Excellence (NICE)・2022)推奨の章(2022年6月29日公表)で、軽症のうつ病では誘導型セルフヘルプなど最も負担の少ない治療から考え、抗うつ薬を第一選択として日常的には勧めない(本人が情報を得たうえで希望した場合のみ)こと(1.5.3)、重症のうつ病では個人CBTと抗うつ薬の併用が表の最上位に置かれていること、効果不十分時の併用として別系統の抗うつ薬の追加(SSRIにミルタザピンやトラゾドン)、第二世代抗精神病薬(アリピプラゾール・オランザピン・クエチアピン・リスペリドン)やリチウムの追加、電気けいれん療法・ラモトリギン・リオチロニンによる増強が挙がり、SSRI・SNRI・三環系抗うつ薬とMAO阻害薬の併用は避けるべきとされること(1.9.9)、表1でSSRIは一般に忍容性と安全性が良く多くの人で最初に考えるべき薬とされ、三環系は過量服薬で危険とされること、抗うつ薬の開始後は通常2週以内(18〜25歳や自殺の危険が特に心配な場合は1週後)に見直し、寛解後も含め少なくとも6か月続けること、リチウム増強では服用12時間後の血中濃度で監視し1.0 mmol/Lを超えないようにし(増強の治療域は通常0.4 mmol/L以上、65歳以上では0.4〜0.6 mmol/Lを考慮)、体重・腎機能・甲状腺機能・カルシウムを治療前と少なくとも6か月ごとに確認し、診察ごとに下痢・嘔吐・粗大振戦・運動失調・錯乱・けいれんなどの中毒徴候と、ACE阻害薬・ARB・利尿薬・NSAIDsなど濃度に影響する併用薬の変更に注意すること(1.4.24〜1.4.28)、現在のエピソードで2剤以上の抗うつ薬に反応しない場合にボルチオキセチンが技術評価指針TA367で選択肢とされていること(1.9.7)を確認した。閲覧 2026-09-26
  2. 2.Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments (CANMAT) 2023 Update on Clinical Guidelines for Management of Major Depressive Disorder in Adults(Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments(Canadian Journal of Psychiatry)・2024)全文(PMC11351064)で、軽症で安全上の危険が低い大うつ病エピソードでは心理療法を第一に勧め、中等症では構造化心理療法と抗うつ薬のどちらも初期治療になり併用も考慮すること、31種の抗うつ薬のうち17種が第一選択であること、三環系抗うつ薬は第二選択・不可逆的MAO阻害薬は第三選択に下げられていること、フルオキセチンとパロキセチンはCYP2D6の、フルボキサミンはCYP1A2・CYP2C19・CYP3A4の強い阻害薬であること、シタロプラムにはQTc延長の危険があるがエスシタロプラムには臨床的に意味のある上乗せは無いこと、SNRIが血圧を上げること、アゴメラチン・ブプロピオン・デュロキセチンは肝障害の危険が高く、アゴメラチンは定期的な肝機能検査が求められること、MAO阻害薬はセロトニン再取り込み阻害薬・デキストロメトルファン・チラミンを多く含む食品との併用でセロトニン症候群や高血圧クリーゼを起こしうること、三環系抗うつ薬は過量服薬で意識障害・心毒性・けいれんを起こすため過量服薬の危険が大きい人ではSSRIを優先すること、三環系は治療抵抗性うつ病で役割がありアミトリプチリンは疼痛を伴う例・クロミプラミンは強迫性障害を伴う例に特異性がありうること、SSRI・SNRIの主な副作用は消化器症状と性機能障害で三環系は口渇・便秘などの抗コリン作用であること、SSRIとNSAIDsの併用は消化管出血の危険を上げプロトンポンプ阻害薬で軽減でき、SSRIと利尿薬の併用は特に高齢者で低ナトリウム血症の危険を上げること、ミルタザピンは短期の安全性に優れるが食欲・体重増加と長期の代謝リスクがあること、増強療法ではアリピプラゾールとブレクスピプラゾールが第一選択・カリプラジンが第二選択で、オランザピン・クエチアピン徐放錠・リスペリドンは副作用のため第二選択とされること、鼻腔内エスケタミンは2剤以上の抗うつ薬が無効の患者でSSRI/SNRIなどへの追加として承認されているが、血圧と解離症状の監視が必要なため第二選択とされることを確認した。閲覧 2026-09-26
  3. 3.SPRAVATO (esketamine) nasal spray, for intranasal use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed(Janssen Pharmaceuticals)・2026)米国添付文書(Revised 3/2026)で、治療抵抗性うつ病に単剤または経口抗うつ薬との併用で、急性の自殺念慮・自殺行動を伴う大うつ病の抑うつ症状に経口抗うつ薬との併用で適応があること、枠組み警告が鎮静・解離・呼吸抑制・乱用と誤用・自殺念慮で、各回の投与後少なくとも2時間の監視が必要なこと、血圧上昇は投与約40分後(最高血中濃度の時点)に頂点となり約4時間続くこと、導入期は週2回投与であること、REMSという限定プログラムでのみ供給されることを確認した。閲覧 2026-09-26
  4. 4.Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments (CANMAT) and International Society for Bipolar Disorders (ISBD) 2018 guidelines for the management of patients with bipolar disorder(CANMAT / International Society for Bipolar Disorders(Bipolar Disorders)・2018)全文で、急性躁病の第一選択単剤がリチウム・クエチアピン・ジバルプロエクス・アセナピン・アリピプラゾール・パリペリドン・リスペリドン・カリプラジンで、非定型抗精神病薬とリチウムまたはジバルプロエクスの併用も第一選択であること、オランザピン・カルバマゼピン・ジプラシドン・ハロペリドールは有効だが安全性の理由で第二選択とされ、電気けいれん療法も第二選択であること、ラモトリギンは急性躁病に推奨されないこと、双極I型うつ病の第一選択がクエチアピン・リチウム・ラモトリギン・ルラシドン(ルラシドンとラモトリギンは追加療法でも第一選択)で、ジバルプロエクス単剤とSSRI/ブプロピオンの追加は第二選択、オランザピン・フルオキセチン配合とカリプラジンも第二選択であり、抗うつ薬の単剤療法は双極I型うつ病に用いてはならないこと、SSRI/ブプロピオンの追加は前回のCANMAT指針では第一選択だったが効果が小さいことから第二選択に変更されたこと、維持療法の第一選択がリチウム・クエチアピン・ジバルプロエクス・ラモトリギン・アセナピン・アリピプラゾール(経口・月1回注射)とクエチアピンまたはアリピプラゾールとリチウム/ジバルプロエクスの併用で、オランザピン・持効性注射リスペリドン・カルバマゼピンは第二選択であること、ジバルプロエクスとカルバマゼピンは妊娠可能年齢の女性で慎重に使うこと、リチウム(より弱く抗てんかん薬)が自殺企図・自殺死の予防に寄与しうることを確認した。閲覧 2026-09-26