臨床薬理学

臨床薬理学 · 12

てんかんの薬物療法

Epilepsy

前提:病態
抗てんかん薬・鎮痛補助薬

🧠 全体像:てんかんの慢性期治療は「発作型に合った1剤を、ゆっくり増やして、長く続ける」ことである。選び方の軸は3つある。①発作型(かか、・を悪化させないか)、②患者背景(妊娠の可能性、年齢、型)、③相互作用(か否か、バルプロ酸と、)。急性期のはのABCDE評価と、妊娠中の扱いは妊娠中のとてんかんで扱う。

出発点:痙攣性てんかん重積のアルゴリズム

慢性期の治療に入る前に、発作が止まらないときの時間軸を確認しておく。米国てんかん学会(2016年)の提案アルゴリズムは、救急外来・病棟・訓練を受けた救急隊の現場を想定し、各段階で「発作が続くか」を判定して次へ進む。止まって患者が普段の状態に戻れば、対症的な医学的管理へ移る。

時間 段階 内容
0〜5分 安定化 ①気道・呼吸・循環・で安定化 ②発作の開始時刻を記録し、を監視 ③酸素化を評価し、経鼻カニューラかマスクで酸素投与、呼吸補助が要れば挿管を考慮 ④心電図モニターを開始 ⑤指先で血糖を測定し、60 mg/dL未満なら成人は100 mg静注ののち50%ブドウ糖50 mL静注、2歳以上の小児は25%ブドウ糖2 mL/kg静注、2歳未満は12.5%ブドウ糖4 mL/kg静注 ⑥を試み、電解質・血液学的検査・中毒スクリーニング・(必要なら)の血中濃度を採血 —
5〜20分 初期治療 ベンゾジアゼピンが第一選択。同等な3つから1つ:筋注(40 kg超10 mg、13〜40 kg 5 mg、1回のみ)、静注(0.1 mg/kg、1回最大4 mg、1回まで反復可)、静注(0.15〜0.2 mg/kg、1回最大10 mg、1回まで反復可) A
5〜20分 初期治療(上が使えないとき) 静注15 mg/kg(1回のみ) A
直腸0.2〜0.5 mg/kg(最大20 mg、1回のみ) B
、 B
20〜40分 第二治療 エビデンスに基づく優先薬はない。1つを単回投与で:静注20 mgフェニトイン換算量/kg(最大1,500 mg換算量)、静注バルプロ酸40 mg/kg(最大3,000 mg)、静注60 mg/kg(最大4,500 mg) U、バルプロ酸B、U
20〜40分 第二治療(上が使えないとき) 静注15 mg/kg(未投与なら、1回のみ) B
40〜60分 第三治療 明確な根拠はない。第二治療薬の反復、または麻酔量の・・ペントバルビタール・(いずれも監視下) U

のAは確立した有効性、Bはおそらく有効、Uは根拠が不十分で判断できないことを表す。各薬の・安全管理(フェニトインのと心電図監視など)、英国の急性期アルゴリズム、ESETT試験の結果は07のノートで詳しく扱う。

💡 重積の治療は「慢性期の薬選び」の予告編でもある。 第二治療のバルプロ酸・・フェニトインは、慢性期にもそのまま候補になる。重積が止まったら、原因検索と並行して「どの薬で維持するか」を決める必要があり、その判断材料がこのノートの内容である。

抗てんかん薬治療の原則

NG217は、次の原則を示している1。

  • できる限り単剤で治療する。
  • を最適用量まで使っても発作が続くときは、まず診断を見直す(、失神などの見落とし)。
  • 単剤が無効で診断が確かなら、別の単剤へ切り替える(切り替え方は次節)。
  • 単剤が無効なら追加療法を考え、慎重に増量し、鎮静などの副作用を頻回に確認する。
  • 追加療法でも発作が減らなければ、効果と副作用の釣り合いが最もよい処方を選ぶ。
  • 発作を抑えるのに必要な最小限の薬にとどめる利点を話し合う。

抗てんかん薬の切り替え方

旧薬を急に止めて新薬へ置き換えると、その間に血中濃度の谷ができ、発作や離脱による発作が起こる。そこで重ねてから外す。

段階 旧薬 新薬
1. 導入 期待治療量のまま維持 少量から始め、期待治療量までゆっくり増量
2. 重複 維持 期待治療量で維持
3. 離脱 ゆっくりして中止 維持
へ切り替える場合 新薬の到達が遅れるぶん、間を延ばしてから 増量速度をさらに遅くする(皮疹の予防)
flowchart TD
  A["旧薬を治療量で継続"] --> B["新薬を少量から開始し<br>期待治療量まで漸増"]
  B --> C{"新薬で発作が<br>抑えられた?"}
  C -->|"はい"| D["旧薬をゆっくり<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>して中止"]
  C -->|"いいえ"| E["新薬をゆっくり<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>し<br>別の選択肢を検討"]
  B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamotrigine'>ラモトリギン</span>の場合<br>増量をさらに遅く<br>旧薬の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>開始も遅らせる"]
  F --> C

の手順も同じで、2剤目をゆっくり増量する間は1剤目を維持し、2剤目が有効なら1剤目をゆっくりし、無効なら2剤目をして別の薬を考える1。

💡 だけ特に遅い理由。 の重い皮疹は、開始量が多いときと増量が速いときに起こりやすい2。このため数週単位で段階的に増やす決まった漸増表があり、治療量に届くまでに1〜2か月かかる。その間、旧薬を減らし始めることはできない。

発作型別の薬の選び方(NICE NG217)

NG217は2022年4月に公開された。発作型ごとの薬の順位は2022年版から変わっていないが、2025年1月にのバルプロ酸・に合わせてが加わり、2026年8月に最終更新されている1。

焦点発作(両側強直間代発作への進展の有無を問わない)

段階 2022年版 現行(2026年8月更新版)
第一選択の単剤 か。不適・なら他方へ切り替え 同じ1
第二選択の単剤 カルバマゼピン、、。不適・なら残りのいずれかへ 同じ1
第三選択の単剤 同じ1
追加療法の第一選択 カルバマゼピン、、、、、(妊娠可能な女性では下でのみ)、。無効ならまずこの中で切り替え 同じ1
追加療法の第二選択 、セノバマート、エスリカルバゼピン、、 同じ(セノバマートは技術評価指針に沿って、追加薬が1剤以上無効だった後)1
追加療法の第三選択 、フェニトイン、バルプロ酸(妊娠可能な女性では下でのみ)、、 同じ。順位は2022年版のままで、バルプロ酸には2025年1月からの安全対策(下記)が条件として付く1

全般強直間代発作

段階 2022年版 現行(2026年8月更新版)
第一選択の単剤 、、バルプロ酸。1剤目が無効なら2剤目、さらに3剤目を試す 3剤から選ぶ点は同じ。バルプロ酸はの安全対策に従う1
追加療法の第一選択 、、、、バルプロ酸、 同じ。は妊娠可能な女性ではの条件下でのみ1
追加療法の第二選択 、、、、 同じ1

の追加療法は、2022年版の要約ではしばしば省かれるが、ガイドライン本文には2022年版から載っている。

の第一選択はで、無効なら・・バルプロ酸を単剤または追加で用いる1。

⚠️ 発作を悪化させる薬がある。 カルバマゼピン、、()、、フェニトイン、、、は、や(を含む)を悪化させうる1。ではも悪化因子に挙がる1。に強いNa⁺薬が、が関わるではかえって逆効果になる。

バルプロ酸の現行規制

2022年版の段階では、バルプロ酸との条件は「妊娠可能な女性ではの下でのみ」だった。2025年1月の改訂で、の措置に合わせて性別を問わない処方制限が加わった1。

対象 措置( NG217が引くの安全対策)
55歳未満の男女 新たに始めない。例外は、2人の専門医が独立に「他に有効でできる治療がない」と判断して記録した場合、または生殖に関わる危険が当てはまらないやむを得ない理由がある場合
男性・男児 治療中と中止後3か月は有効な避妊(とパートナーの避妊)を勧める。1年以内に子どもを望むなら妊孕性への影響と治療の選択肢を話し合う。後の父親のバルプロ酸使用と子のとの関連の可能性に注意する(は不明)
妊娠可能な女性・女児 の条件を満たさない限り使わない(も同じ)

の具体的な条件、妊娠中の奇形・の頻度、服用中に妊娠したときの対応は、正本である妊娠中のとてんかんで扱う。

⭐ 2022年版と現行の最大の違いはバルプロ酸のである。 では、までの時間でバルプロ酸を上回る薬がなかったが1、催奇形性と出生児ののため、いまは55歳未満なら男女とも2人の専門医の判断なしに新たに始められない。順位表に名前が残っていても「最初に選べる薬」ではない。

特異体質性の副作用:皮疹と重症薬疹

副作用 関わる薬と条件
皮疹・剥脱 よくある副作用。フェニトイン、カルバマゼピン、、エスリカルバゼピン、
で最も多く、とくに急速な増量やバルプロ酸との併用のとき
-B*15:02をもつアジア系の患者がカルバマゼピンやフェニトインを使うとき
ほかに、エスリカルバゼピン、、、、、、、バルプロ酸、でも報告

現行の添付文書と指針による補足を並べる。

  • :米国のは、・を含む重篤な皮疹の危険因子として、バルプロ酸との併用、推奨開始量の超過、推奨増量速度の超過に加え、2025年10月の改訂で-B*1502の保有を挙げている。成人のてんかん試験では、皮疹による入院がバルプロ酸併用で1%、非併用で0.16%だった2。
  • 民族背景:フェニトインは漢民族系・タイ系で、カルバマゼピンと構造の似た薬(、エスリカルバゼピン)は漢民族系・タイ系・欧州系・日本人で重い皮膚反応の危険が高い1。欧州系・日本人で問題になるのは主に-A*31:01である。

⚠️ 皮疹が出たら、原因が明らかに別でない限り中止する。 軽い皮疹からへの進行を最初の段階で見分けることはできない。発熱・・水疱・リンパ節腫脹・肝障害を伴えば、やを疑う()。(フェニトイン・カルバマゼピン・・・)どうしはがありうるので、代わりの薬はやバルプロ酸など構造の異なるものから選ぶ。

薬物相互作用

酵素誘導薬

分類 薬 誘導する
広域の 、2A6、2B6、2C8/9、3A4
、2B6、2C8/9、3A4
フェニトイン CYP2B6、2C8/9、2C19、3A4
カルバマゼピン 、2B6、2C8/9、2C19、3A4
CYP3Aの選択的 高用量で
高用量で

💡 誘導は「遅く来て、遅く去る」。 は転写(の・CARを介した遺伝子の発現増加)によるので、効果が完成するまで1〜2週かかり、中止後も酵素が入れ替わるまで数週残る。を始めた後に併用薬(ワルファリン、経口避妊薬、他の、抗がん薬、など)の効果が遅れて落ち、を止めた後に併用薬の濃度が遅れて上がって中毒になる。カルバマゼピンは自分自身の代謝も誘導するため、開始後数週で血中濃度が下がる()。

⚠️ は骨にも影響する。カルバマゼピン・フェニトイン・・バルプロ酸の長期使用で骨密度低下との危険が高まるため、危険のある人ではビタミンDとカルシウムの補充を考える1。

相互作用の少ない薬

多くのがの相互作用を起こすが、を誘導も阻害もしないと考えられる薬もある。

の誘導・阻害をほとんど起こさない薬 補足
、、 が主で、の相互作用がほとんどない。腎機能低下で減量
の影響は小さいが、を介した相互作用は大きい(後述)
、、、 自らは誘導・阻害しにくいが、で代謝されるものはで濃度が下がる
レチガビン 販売中止

💡 「相互作用が少ない」は2方向で考える。 その薬がほかの薬に影響しない(誘導・阻害しない)ことと、その薬がほかの薬から影響を受けないことは別である。は前者だが、エストロゲン・バルプロ酸・から大きな影響を受ける。

ホルモン避妊薬との相互作用

米国てんかん学会(2015年)とGaffieldらの総説(2011年)は、の効果を下げうる性のとして次の10剤を挙げ、これらを服用する女性にはが望ましいとしている。

の効果を下げうる
カルバマゼピン
エスリカルバゼピン
(を含む)
フェニトイン

も、カルバマゼピン・・フェニトイン・などがの効果を下げうるとしている1。とは用量が高いときに問題になる。

米国の避妊法の医学的適用基準(2024年)は、避妊法ごとに次のように分類している(1は制限なし、2は利点が危険を上回ることが多い、3は危険が利点を上回ることが多い)3。

避妊法 性の(フェニトイン・カルバマゼピン・バルビツレート・・・)
付加 1 1
1 1
() 2 1
デポ型酢酸注射 1 1
単剤の 3 1
3 3(単剤の場合)
  • をと併用するのは有害ではないが、避妊効果が落ちる可能性が高い。長期に使う人には他の方法を勧め、を選ぶなら30 µg以上の製剤を使う3。
  • デポ型酢酸はで効果が落ちないのでカテゴリー1である3。
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antiepileptics'>抗てんかん薬</span>を服用中の女性の避妊"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enzyme inducers'>酵素誘導薬</span>を使っている?"}
  B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrauterine device (IUD)'>子宮内避妊具</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copper'>銅</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='levonorgestrel'>レボノルゲストレル</span>)<br>またはデポ型注射が第一候補"]
  B -->|"いいえ"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamotrigine'>ラモトリギン</span>単剤?"}
  D -->|"はい"| E["エストロゲン含有薬は<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamotrigine'>ラモトリギン</span>濃度を下げる<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrauterine device (IUD)'>子宮内避妊具</span>が第一候補"]
  D -->|"いいえ"| F["多くの方法が使える<br>バルプロ酸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topiramate'>トピラマート</span>は<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pregnancy prevention programme'>妊娠防止プログラム</span>の避妊基準に従う"]
  C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='combined oral contraceptive (COC)'>複合経口避妊薬</span>を選ぶなら<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ethinylestradiol'>エチニルエストラジオール</span>30 µg以上"]

💡 が勧められる理由。 付加はホルモンを使わず、は子宮内で局所的に作用するため、肝臓のの影響を受けにくい。米国の基準でも、どちらも・のいずれと併用してもカテゴリー1である3。しかもの濃度も変えない。

ラモトリギンの相互作用

経口避妊薬とラモトリギン

従来の要点(米国てんかん学会2015年など) 添付文書・指針での確認
のクリアランスはエストロゲン、とくにで大きく増える は主にで代謝される2。エストロゲン含有とはの効果を下げうる1
経口避妊薬は濃度を最大50%下げる エストロゲン含有経口避妊薬で約50%低下2
週(の週)に濃度が大きく上がりうる 週に徐々に一過性に上昇しうる。週の直前・最中に増量するとさらに上がる2
を服用する女性にはが第一選択 単剤ではのみカテゴリー33
  • を始めるときは、のを最大2倍まで増やす必要がある。やめるときは最大50%減らす2。
  • 実際に、とを併用した女性で発作が増えた例がある3。
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ethinylestradiol'>エチニルエストラジオール</span>"] --> B["肝の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='UDP-glucuronosyltransferase, UGT'>グルクロン酸転移酵素</span>を誘導"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamotrigine'>ラモトリギン</span>の代謝が速まる"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active drug (as opposed to placebo)'>実薬</span>期間:濃度が約50%低下<br>発作が増える危険"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug holiday (treatment interruption)'>休薬</span>週:エストロゲンが抜けて<br>濃度が上がる"]
  E --> F["めまい・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diplopia'>複視</span>・失調などの<br>中毒症状が出うる"]

バルプロ酸とラモトリギン

は肝臓でを受けて不活化される。バルプロ酸はを阻害するので、濃度が上がる。添付文書では2倍を超えて上がるとされる2。

併用の状況 への影響 対応
バルプロ酸と併用 濃度が2倍超に上昇 開始量・増量速度・目標量を減らす。重篤な皮疹の危険が高い
と併用(バルプロ酸なし) 濃度が低下 開始量・目標量を増やす
エストロゲン含有避妊薬と併用 濃度が約50%低下 を最大2倍に
上のいずれもない 基準 標準の漸増表

💡 バルプロ酸とは「効果では相性がよく、安全面では危険な組み合わせ」。 2剤の併用は難治性のでに効くことが知られ、実際に使われる。だからこそ、を半分以下の速さで増やし、皮疹を注意深く観察することが欠かせない。米国の避妊法の適用基準も、とバルプロ酸を併用している場合はと相互作用しないとしている3。バルプロ酸の阻害作用がエストロゲンの誘導作用を打ち消すためと考えられる。

催奇形性

項目 内容
バルプロ酸、カルバマゼピン、、でな影響が示されている
単剤より危険が高い
バルプロ酸 、、、、、、(従来は「?」付きで扱われた)
カルバマゼピン
フェニトイン、、カルバマゼピン、

かつて「?」付きで扱われたバルプロ酸によるは、現在では出生児のとして確立した危険とみなされ、上記のの根拠になっている。も、妊娠可能な女性には・・の危険を説明し、バルプロ酸との危険を特に話し合うよう求めている1。奇形ごとの頻度、妊娠前の葉酸、妊娠中の薬の選択と血中濃度の監視(は妊娠中に濃度が下がる)は妊娠中のとてんかんで扱う。

血中濃度の測定

多くの患者では定期的な血中濃度測定は不要で、次の場合に考慮する1。

測定を考える状況 理由
発作が抑えられない 用量不足か、か、相互作用による濃度低下かを見分ける
副作用が出た に入っていないかを確認する
妊娠・腎不全など注意を要する状態 妊娠中の濃度低下、薬(・)の蓄積
が疑われる 濃度で確認する

のをもつフェニトインは、血中濃度の測定が特に役立つ(07のノート参照)。

まとめ

  • の米国てんかん学会アルゴリズムは0〜5分安定化(低血糖なら成人100 mg→50%ブドウ糖50 mL)、5〜20分ベンゾジアゼピン(レベルA)、20〜40分・バルプロ酸・を単回、40〜60分麻酔薬(監視)。
  • 慢性期は単剤で始め、無効なら診断を見直し、別の単剤へ「重ねてから外す」方法で切り替える。は増量が特に遅い。
  • NG217:は・→カルバマゼピン・・→。は・・バルプロ酸。は。カルバマゼピン・フェニトイン・・などは・を悪化させうる。
  • バルプロ酸は55歳未満の男女で2人の専門医の判断なしに新たに始めない(2025年1月からに反映)。男性には治療中と中止後3か月の避妊を勧める。妊娠可能な女性ではバルプロ酸・ともが必要で、詳細は14のノートへ。
  • 皮疹はフェニトイン・カルバマゼピン・・エスリカルバゼピン・で多い。はの急速増量・バルプロ酸併用、-B*15:02保有のアジア系でのカルバマゼピン・フェニトインで起こりやすい。
  • は・・フェニトイン・カルバマゼピン(広域)、・(高用量で)。誘導は遅れて始まり遅れて消え、骨密度も下げる。
  • はの効果を下げる。(・)とデポ型注射は影響を受けない。を使うなら30 µg以上。
  • エストロゲンは濃度を約50%下げ、週に上げる。バルプロ酸はを阻害して濃度を2倍超に上げ、重い皮疹の危険を高める。
  • 催奇形性はバルプロ酸で最も強く(・・・など、)、でで増える。妊娠中の詳細は14のノートへ。
  • 臨床面の詳細はてんかんの臨床管理を参照。

出典

  1. 1.Epilepsies in children, young people and adults (NICE guideline NG217)(National Institute for Health and Care Excellence・2026)第4章・第5章(2022年4月27日公開、最終更新2026年8月5日の版)で、可能な限り単剤で治療すること(4.1.3)、単剤が無効なら2剤目をゆっくり増量しながら1剤目を維持し、2剤目が有効なら1剤目をゆっくり漸減すること(4.1.5)、フェニトインは漢民族系・タイ系で、カルバマゼピンと構造の似た薬(オクスカルバゼピン・エスリカルバゼピン)は漢民族系・タイ系・欧州系・日本人で重い皮膚反応の危険が高いこと(4.3.2〜4.3.3)、カルバマゼピン・フェニトイン・プリミドン・バルプロ酸の長期使用で骨密度低下と骨軟化症の危険があること(4.3.4)、カルバマゼピン・オクスカルバゼピン・フェニトイン・トピラマートなどがホルモン避妊薬の効果を下げ、エストロゲン含有ホルモン避妊薬とホルモン補充療法がラモトリギンの効果を下げること(4.3.10〜4.3.11)、バルプロ酸とトピラマートは妊娠可能な女性で妊娠防止プログラムの条件を満たさない限り使わないこと(4.3.9)、血中濃度の測定を発作が抑えられないとき・副作用・妊娠や腎不全・服薬不遵守で考慮すること(4.4.3)、MHRAの措置として55歳未満の男女にバルプロ酸を新たに始めるのは2人の専門医が独立に他に有効で忍容できる治療がないと合意し記録した場合などに限ること(box 2)、全般強直間代発作の第一選択単剤がラモトリギン・レベチラセタム・バルプロ酸で、追加の第一選択がクロバザム・ラモトリギン・レベチラセタム・ペランパネル・バルプロ酸・トピラマート、第二選択がブリバラセタム・ラコサミド・フェノバルビタール・プリミドン・ゾニサミドであること(5.1.1〜5.1.3)、欠神発作やミオクロニー発作を悪化させうる薬(5.1.4)、焦点発作の第一選択単剤がラモトリギンかレベチラセタム、第二選択がカルバマゼピン・オクスカルバゼピン・ゾニサミド、第三選択がラコサミドで、追加療法の第一選択がカルバマゼピン・ラコサミド・ラモトリギン・レベチラセタム・オクスカルバゼピン・トピラマート・ゾニサミド、第二選択がブリバラセタム・セノバマート・エスリカルバゼピン・ペランパネル・プレガバリン、第三選択がフェノバルビタール・フェニトイン・バルプロ酸・チアガビン・ビガバトリンであること(5.2.1〜5.2.6)、これらの推奨は2022年公開時のもの([2022]の表示)で、焦点発作の追加療法の第三選択にバルプロ酸が入るのも2022年版からであり、2025年1月の改訂はバルプロ酸・トピラマートの推奨にMHRA規制の条件を加えたもの(更新情報の章)であること、5.1節の根拠の説明で全般強直間代発作の治療失敗までの時間ではバルプロ酸を上回る薬がなかったこと、4.3.5の根拠の説明で父親のバルプロ酸使用と子の神経発達障害の関連は1件の後ろ向き観察研究によるもので因果関係は不明とされること、欠神発作の第一選択がエトスクシミドであること(5.3.1)、欠神発作を悪化させうる薬にフェノバルビタールも含まれること(5.3.3)を確認した。閲覧 2026-09-26
  2. 2.LAMICTAL (lamotrigine) tablets, chewable dispersible tablets, and orally disintegrating tablets — full prescribing information(米国FDA / DailyMed(GlaxoSmithKline LLC)・2025)改訂表示10/2025の版で、ラモトリギンが主にグルクロン酸抱合で代謝されること、バルプロ酸がグルクロン酸抱合を阻害してラモトリギン濃度を2倍超に上げること、エストロゲン含有経口避妊薬がラモトリギン濃度を約50%下げ、実薬を含まない休薬週にラモトリギン濃度が徐々に一過性に上がりうること、エストロゲン含有経口避妊薬を始めるときは維持量を最大2倍に増やし、やめるときは最大50%減らす必要があることを確認した。枠組み警告で、スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症を含む生命を脅かす重篤な皮疹が起こること、危険因子がバルプロ酸との併用・推奨開始量の超過・推奨増量速度の超過・HLA-B*1502の保有であること、成人のてんかん試験でバルプロ酸併用584例の1%が皮疹で入院したのに対しバルプロ酸非併用では2,398例の0.16%だったことを確認した。閲覧 2026-09-26
  3. 3.U.S. Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use, 2024(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Recommendations and Reports)・2024)PMC11315372の全文(Europe PMCのfullTextXML)で、抗痙攣薬の相互作用の行を確認した。一部の抗痙攣薬(フェニトイン・カルバマゼピン・バルビツレート・プリミドン・トピラマート・オクスカルバゼピン)は銅付加子宮内避妊具1、レボノルゲストレル放出子宮内システム1、インプラント2、デポ型酢酸メドロキシプロゲステロン1、プロゲスチン単剤経口薬3、複合ホルモン避妊薬3で、複合ホルモン避妊薬の効果を下げる可能性が高いので長期使用者には他の方法を勧め、複合経口避妊薬を選ぶならエチニルエストラジオール30 µg以上の製剤を使うこと、デポ型酢酸メドロキシプロゲステロンは効果が落ちないのでカテゴリー1であること。ラモトリギンは複合ホルモン避妊薬のみ3(ほかは1)で、これはラモトリギン単剤の場合に限り、バルプロ酸など酵素誘導作用のない抗てんかん薬との併用では複合経口避妊薬と相互作用しないこと、複合経口避妊薬の使用中にラモトリギン濃度が有意に下がり、発作が増えた例があることを確認した。閲覧 2026-09-26