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Symptoms · Published

陰茎持続勃起症

Priapism

別名
持続勃起症
臓器系
腎・泌尿器血液
科目
UrologyPathologyRehabilitation
トピック
泌尿器科学 U-08:泌尿器科救急疾患泌尿器科学 U-19:男性生殖器疾患の診断と治療泌尿器科学 U-23:男性性機能障害病理学 C/79:陰茎・陰嚢・精巣上体の疾患リハビリテーション 04:脊髄損傷のリハビリテーション
関連疾患
鎌状赤血球症
起因薬
アルフゾシンアルプロスタジルウラピジルセトメラノチドタムスロシンテラゾシンドキサゾシントラゾドンプラゾシン

🧠 全体像は「性的刺激とに4時間以上続く勃起」という時間の定義で入口が決まるが、本当に押さえるべきは虚血性か非虚血性かの二択である。虚血性はそのものであり分単位で不可逆な変化に近づく泌尿器科的緊急症、非虚血性は会陰部外傷によるで疼痛に乏しく緊急性がない。この二つを取り違えて非虚血性に虚血性の治療(穿刺・)を行う、あるいは虚血性を経過観察してしまうことが最大の落とし穴であり、鑑別の決め手は海綿体血液ガスである。

定義と用語の整理

  • 性的刺激と4時間以上持続する勃起12表記は」「の両方が使われ、同一の病態を指す。
  • 所見の主体はである。・亀頭は軟らかいまま残ることが多く、触診でこの左右非対称な硬さの分布を確認することが診察の要点になる。

病型分類

項目 虚血性(低流量/型) 非虚血性(/動脈型) 間欠性
疼痛 強い 乏しい〜なし は疼痛を伴いうる
海綿体血液ガス 低酸素・高・アシドーシス(暗赤色)1 動脈血に近い性状(色)1 発作が遷延すれば虚血性に準じる
発症経緯 、薬剤性が主体 会陰部・陰茎の外傷による 鎌状赤血球症患者で3〜4時間未満の短時間発作を反復3
緊急性 泌尿器科的緊急症 緊急ではない 個々の発作が4時間を超えれば虚血性として扱う
治療 海綿体穿刺・吸引+海綿体内注入、不応なら外科的シャント まず経過観察、遷延例に塞栓術 対応に加え再発予防の検討

虚血性=であり、非虚血性=血流過多の外傷 この対比を取り違えないことが本ノートの核心で、非虚血性に虚血性と同じ穿刺・薬物治療を行う必要はない。

原因の群分け

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ 4時間を超える有痛性の勃起は泌尿器科的緊急症である。 虚血性か非虚血性かの確定診断(血液ガス採取)を待つ間も、疑った時点で直ちに泌尿器科へ紹介する。
  • ⚠️ 時間が経つほど不可逆になる。 発症から約6時間で微細な組織障害が始まり、14時間で不可逆なが生じる。24時間を超えるとのリスクが著明に増し、72時間を超えると回復が見込みにくくなる2。「様子を見よう」で時間を空費しないこと。
  • ⚠️ 非虚血性に虚血性の治療を当てはめない。 疼痛がなく外傷歴があるからといって放置してよいわけではないが、緊急の穿刺・投与は不要であり、無用な侵襲を避けるためにも血液ガスでの鑑別を省略しない。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["4時間以上持続する勃起<br>(性的刺激と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indifference'>無関係</span>)"] --> B{"疼痛の有無・<br>会陰部外傷の既往"}
    B -->|"疼痛が強い"| C["海綿体血液ガスを穿刺採取"]
    B -->|"疼痛に乏しく外傷歴あり"| D["非虚血性を疑う"]
    C --> E{"低酸素・高<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbon dioxide, CO₂'>二酸化炭素</span>・<br>アシドーシスか"}
    E -->|"はい(暗赤色)"| F["虚血性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='priapism'>持続勃起症</span><br>直ちに治療を開始"]
    E -->|"いいえ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bright red (fresh blood color)'>鮮紅</span>色)"| D
    D --> G["診断が不確実なら<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='color Doppler'>カラードプラ</span>で血流を評価"]
    G --> H["非虚血性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='priapism'>持続勃起症</span><br>まず経過観察"]
    F --> I["海綿体穿刺・吸引+<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenergic agonist'>アドレナリン作動薬</span>海綿体内注入"]
    I --> J{"改善するか"}
    J -->|"不応"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical shunt'>外科的シャント術</span>を検討"]

治療の考え方

  • 虚血性:海綿体穿刺・吸引でうっ滞した血液を排出し、などのを海綿体内へ洗浄併用で追加する。これが手術に先立つ第一選択であり、保存的な経過観察だけで済ませない1。反応しなければに進む。
  • 非虚血性:緊急疾患ではないため、まず経過観察を勧める。観察後も遷延し治療を希望する場合は塞栓術が第一選択になる1。虚血性と同じ穿刺・薬物治療を行う必要はない。
  • 間欠性(鎌状赤血球症に多い):発作そのものへの対応に加え、再発予防という別の課題がある。(GnRHなど、生殖機能への影響に留意)、低用量による海綿体内投与などが試みられているが、確立された最適戦略は無いことも患者に伝える13

まとめ

  • は性的刺激とに4時間以上続く勃起で、表記は「」「」の両方が使われる。所見上はのみがし、・亀頭は軟らかいまま残る。
  • 最大の虚血性(低流量/型)か非虚血性(/動脈型)かで、海綿体血液ガスが決め手になる。虚血性はとしての泌尿器科的緊急症、非虚血性は会陰部外傷による動脈瘻で緊急性がない。
  • 原因は(鎌状赤血球症が代表)、薬剤性(・抗精神病薬・ED治療薬・)、神経性()、・外傷に群分けできる。
  • 4時間を超える有痛性の勃起は確定診断を待たず泌尿器科へ紹介する。24時間を超えるとのリスクが著明に増し、72時間を超えると回復が見込みにくい。
  • 治療は虚血性なら穿刺・吸引+海綿体内注入を第一選択とし不応なら外科的シャント、非虚血性なら経過観察を優先し遷延例に塞栓術を行う。
  • 鎌状赤血球症では間欠性の短時間発作を反復しやすく、発作対応とは別に再発予防(・低用量指導など)を検討する。

出典

  1. 1.The Diagnosis and Management of Recurrent Ischemic Priapism, Priapism in Sickle Cell Patients, and Non-Ischemic Priapism: An AUA/SMSNA Guideline(American Urological Association (AUA) / Sexual Medicine Society of North America (SMSNA)・2022)持続勃起症の定義(4時間超)、虚血性(海綿体血液ガスpO2<30mmHg・pCO2>60mmHg・pH<7.25)と非虚血性の鑑別、虚血性への第一選択治療(海綿体内フェニレフリン+穿刺吸引を手術に先立って行う)、非虚血性はまず経過観察し遷延例には塞栓術を第一選択とすること、間欠性(再発性虚血性)持続勃起症の再発予防に確立した最適戦略は無いことを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Priapism(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)虚血性持続勃起症がコンパートメント症候群としての病態(海綿体内圧上昇による組織虚血・低酸素・アシドーシス)であること、発症から約6時間で微細な組織障害が始まり14時間で不可逆な構造変化が生じること、24時間を超えると勃起不全のリスクが著明に増し72時間を超えると回復が見込みにくくなること、鎌状赤血球症が成人の虚血性持続勃起症の35〜80%を占める原因であることを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Stuttering Priapism (Recurrent or Intermittent Priapism)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)間欠性持続勃起症が3〜4時間未満の自然軽快する勃起を反復する病態であり鎌状赤血球症患者に多いこと(持続勃起症を経験するSCD患者の82%が間欠性型)、再発予防としてホルモン療法(GnRHアゴニスト・抗アンドロゲン薬など、いずれも生殖機能に影響しうる)、低用量PDE5阻害薬、ヒドロキシ尿素、自己注射によるフェニレフリン海綿体内投与などが試みられていることを確認した閲覧 2026-08-03