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Drug Atlas · B18 Insulins / インスリン製剤 · 必修

アスパルトインスリン

aspart insulin

分類
Insulins / インスリン製剤
商品名(日本)
ノボラピッド
商品名(EU)
NovoRapid
科目
Pharmacology
トピック
B18: Pancreatic hormones and parenterally applied antidiabetic drugs
承認適応
1型糖尿病2型糖尿病妊娠糖尿病
副作用
発汗振戦意識障害
監視検査値
血糖
原因となる疾患
低血糖(非糖尿病性)

🧠 全体像は、ヒトインスリンのB鎖28番目のに置き換えたアナログである。この一点の置換が分子どうしの)を弱め、皮下注射後にへ速やかに解離させることで「食事に合わせて効く」インスリンを作り出す。(basal-bolus therapy)におけるの主力であり、が担っていた「食前30〜45分待つ」という不便さを「食直前(あるいは食直後)でよい」というに変えた薬である。

薬効群の中での位置づけ

作用発現・ピーク・で分類され、この時間プロファイルがそのまま臨床上の役割(食事用のか、24時間持続するか)を決める。

代表薬 発現 ピーク 主な役割
10〜20分 1〜3時間 3〜5時間 食直前の追加()インスリン
(ヒトインスリン) 約30分 2〜4時間 6〜8時間 唯一の静注可。DKA/HHS・周術期
NPH( 1〜2時間 4〜12時間(不明瞭) 12〜18時間 (旧来の混合療法)
1〜2時間 目立たない〜緩やか 約20〜24時間
約1時間 平坦(実質ピークなし) 42時間超 。柔軟な注射時刻

(basal-bolus regimen)は、1日を通じてを抑える「基礎(など)」と、食事のたびに立ち上がる血糖を処理する「追加()」を組み合わせる考え方で、正常な膵臓の分泌パターンを模倣する。はこの追加成分の代表であり、より速く効いて速く切れるため、を抑えつつ食間のを減らせる。

機序

flowchart TD
    A["B28<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proline'>プロリン</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aspartate'>アスパラギン酸</span>置換"] --> B["分子間の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='self-assembly'>自己会合</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hexamer formation'>六量体形成</span>)が弱まる"]
    B --> C["皮下注射後、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monomer'>単量体</span>・二量体へ速やかに解離"]
    C --> D["毛細血管への吸収が速い(発現10〜20分)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target cell'>標的細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin receptor'>インスリン受容体</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine kinase type'>チロシンキナーゼ型</span>)に結合"]
    E --> F["受容体の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autophosphorylation'>自己リン酸化</span>→IRS-1/2を動員"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PI3K-Akt signaling'>PI3K-Aktシグナル伝達</span>を活性化"]
    G --> H["GLUT4が細胞膜へ移動→骨格筋・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adipocyte'>脂肪細胞</span>へのブドウ糖取り込み↑"]
    G --> I["肝臓:糖新生を抑制、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycogen synthesis'>グリコーゲン合成</span>を促進"]
    F --> J["Na+/K+-ATPase活性化→細胞内へK+シフト"]

💡 「効く仕組み」自体はヒトインスリンと同じで、違うのは「皮下から血中に出てくる速さ」だけである。ヒトインスリンは6量体を作りやすく、皮下組織でに解離するのに時間がかかるため吸収が遅れる。はこの解離ステップを速めることで発現を早めた、いわば吸収速度だけを改造したヒトインスリンである。

薬物動態

項目 値・特徴
経路 皮下注射(ペン型注射器、CSIIポンプでの使用に最適)
発現 10〜20分
ピーク 1〜3時間
持続 3〜5時間
代謝・排泄 ・肝・腎ので分解。腎機能低下では作用遷延しうる

⭐ 発現が速いため食直前〜食直後の投与でよく、のように食前30〜45分待つ必要がない。この俊敏さは裏を返せば低血糖へのも速いということであり、食事量が読めない小児・高齢者では食直後投与ですることもある。

適応

領域 使いどころ
糖尿病治療 1型糖尿病2型糖尿病における追加(食事時)インスリン、CSIIポンプの唯一の充填液。適応は1歳以上1
妊娠 でインスリンが必要な場合の食事時インスリン(胎盤をほとんど通過しない)1
補正投与 食前高血糖に対する

用法・用量

食事の直前(10〜15分前が目安、状況により食直後も可)に皮下注射する。基礎-追加療法では、の上に炭水化物量・食前血糖・活動量に応じて用量を調整する()。(CSIIポンプ)では単独で使用する。実際の用量は年齢・体重・腎肝機能・活動量・血糖トレンドで大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:過敏症、進行中の低血糖
  • ⚠️ の代わりにはならないだけを打ち続けても空腹時・夜間の高血糖は防げない
  • 腎機能低下・肝機能低下ではインスリン必要量が変化しうるため頻回のモニタリングが必要
  • のある患者では、K+の細胞内シフトによりさらに悪化しうる

副作用

頻度 内容
高頻度 低血糖(発汗振戦などの自律神経症状)
注意 注射部位の・萎縮(同一部位への反復注射で生じる。ローテーションで予防)
重篤・まれ 重症低血糖による意識障害・痙攣、アナフィラキシー

まとめ

  • ヒトインスリンB28置換によりが弱まったアナログ。
  • 発現10〜20分、ピーク1〜3時間、持続3〜5時間。基礎-追加療法の追加()インスリンの代表。
  • 受容体レベルの機序はヒトインスリンと同一(→PI3K-Akt→GLUT4)で、違いは吸収速度のみ。
  • 食直前投与でよく、CSIIポンプにも使用できる。
  • の代わりにはならない点に注意。単独ではを防げない。
  • 主な副作用は低血糖で、より「速く効いて速く切れる」ぶんと食間低血糖のどちらも減らせる。

出典

  1. 1.NovoRapid Penfill 100 units/ml - Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium(Novo Nordisk)・2026)適応は1歳以上の糖尿病(全病型)。投与は食直前が基本で、必要時は食直後も可。妊娠中の1型・2型・妊娠糖尿病における使用データも記載。閲覧 2026-08-03