薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · 22 Thyroid drugs / 甲状腺薬

カルビマゾール

carbimazole

分類
Thyroid drugs / 甲状腺薬
商品名(EU)
Neo-Mercazole
科目
Clinical PharmacologyPediatrics
トピック
09: Drug-induced hematologic toxicity22: Hyperthyroidism and hypothyroidism37: Disease of the thyroid gland
承認適応
バセドウ病中毒性多結節性甲状腺腫
副作用
発熱皮疹黄疸
監視検査値
甲状腺刺激ホルモン絶対好中球数

🧠 全体像:は、体内で速やかにへ変換されて作用するのである。を阻害して新規甲状腺ホルモンの合成を止める。英国をはじめとする欧州諸国や英連邦諸国においてによる甲状腺機能亢進症のとして広く処方されている。日本や米国ではである()が直接用いられるが、や臨床的注意点(や催奇形性、肝障害)はと本質的に共通である。

薬効群の中での位置づけ

甲状腺機能亢進症に対する薬物療法は、(、、)が中心となる。

薬剤 分類・位置づけ 特徴と使い分け
英国・欧州での第一選択。10 mgが約6 mgに相当12
活性体() 自体 日本・米国での第一選択。作用持続が長く1日1回投与が可能
自体 ()やで使用。重篤な肝障害リスクに注意
ヨウ素 無機ヨウ素 イオン 甲状腺ホルモン放出を速やかに阻止。のため短期使用や手術に限定

は後、でほぼ完全にへと加水分解される。そのため、力価比(約15 mg = 約10 mg)を換算すれば、と同一の臨床効果が得られる。

機序

自体には抗甲状腺作用がなく、でカルボエトキシ基が切断されてとなることで薬効を発揮する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbimazole'>カルビマゾール</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GI absorption'>消化管吸収</span>および血流中で速やかに加水分解"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='thiamazole'>チアマゾール</span>が生成<br>(10 mg <span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbimazole'>カルビマゾール</span> ≒ 6 mg <span class='jp-term jp-term-diagram' title='thiamazole'>チアマゾール</span>)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid follicular cell'>甲状腺濾胞細胞</span>内に選択的に濃縮"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid peroxidase, TPO'>甲状腺ペルオキシダーゼ</span>(TPO)を阻害"]
    E --> F["ヨウ素の酸化および<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organification'>有機化</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine residue'>チロシン残基</span>への結合)を阻害"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoiodotyrosine, MIT'>モノヨードチロシン</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diiodotyrosine, DIT'>ジヨードチロシン</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='coupling reaction'>カップリング反応</span>を阻害"]
    F --> H["新規の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroxine, T4'>サイロキシン</span>(T4)および<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='triiodothyronine, T3'>トリヨードサイロニン</span>(T3)合成が低下"]
    G --> H
    H --> I["甲状腺内に貯蔵された既存ホルモン枯渇後<br>(2〜4週間)に血中ホルモン値が低下"]

の甲状腺内への能動輸送()や、すでに濾胞腔内のに蓄積されているからのホルモン放出は阻害しない。そのため、投与開始から臨床効果の発現までには数週間のタイムラグを要する。

薬物動態

項目 特徴
吸収 消化管から速やかに吸収される
吸収過程および中で酵素的・にへ完全変換される。血中に未変化体はほとんど検出されない
分布 として全身に分布し、特に甲状腺組織内に高濃度で蓄積・保持される
代謝・排泄 肝臓で代謝され、主として尿中に排泄される
胎盤を通過し、胎児甲状腺機能やに影響を与えうる
半減期 血漿中の半減期は約4〜6時間だが、甲状腺内半減期が24時間以上と長いため1日1回投与が可能

適応

  1. による甲状腺機能亢進症の寛解導入および維持療法
  2. やにおける機能正常化
  3. 術前の(甲状腺機能を正常化させて術中クリーゼを防ぐ)
  4. の前後における甲状腺機能の安定化

用法・用量

成人の初期投与量は、甲状腺機能亢進の程度に応じて1日20〜60 mgを1〜3回に分割する2。通常、投与開始後3〜6週間で甲状腺機能が正常化に向かうため、遊離T4および値の改善を確認しながら徐々に減量し、1日5〜15 mgのへ移行する。維持療法は12〜18か月間継続し、(TRAb)の陰性化などを確認してを検討する。

禁忌・注意

  • または重篤な骨髄抑制の既往:本剤または他の薬剤による重篤なの既往がある患者には再投与禁忌である。
  • 重篤な:肝不全の既往がある患者では慎重な判断を要する。
  • の既往:または投与後にを発症した患者では再投与禁忌である(再投与により急速に再発し致死的となる恐れがある)2。
  • ():胎児症や、などの(/胎児症)のリスクが報告されている。妊娠初期にが必要な場合は、への変更を考慮する1。
  • :で重篤な副作用(や血管炎)を起こした症例に対し、へ切り替えることは厳禁である(が同一であるため)。またとの間にも一定の(約50%)が存在するため、や手術への移行を優先する。

副作用

の副作用プロファイルはと一致する。

  1. (好中球数 < 500/μL):発生頻度は0.2〜0.5%と稀であるが、致死的な感染症を招く重篤な副作用である13。投与開始後2〜3か月以内に好発する。発熱やなどの初期症状が出現した場合は直ちに服薬を中止させ、緊急でを含む血液検査を実施する。
  2. 皮疹・掻痒:比較的頻度が高く(約5%)、軽微な蕁麻疹や丘疹は抗ヒスタミン薬の併用で軽快することもあるが、への進展に注意する。
  3. 肝障害:主としてを呈する(が様・を呈しやすいのと対照的である)。
  4. 関節痛・関節炎:多発性関節痛が出現することがあり、(ANCA)関連血管炎の鑑別を要する。

まとめ

  • はでへ変換されて作用するであり、欧州諸国などで治療のとして用いられる。
  • を阻害してホルモン合成を抑制するが、既存ホルモンの放出は阻害しないため効果発現まで2〜4週間を要する。
  • 10 mgのが約6 mgのに相当する。
  • 最も警戒すべき副作用はであり、発熱・出現時の即時受診・血算測定を患者に徹底指導する。のにはリスクに留意する。

出典

  1. 1.2016 American Thyroid Association Guidelines for Diagnosis and Management of Hyperthyroidism and Other Causes of Thyrotoxicosis(American Thyroid Association・2016)カルビマゾールはチアマゾールのプロドラッグであり10 mgが約6 mgのチアマゾールに相当すること、成人のバセドウ病薬物治療で第一選択となること、無顆粒球症リスク(0.2〜0.5%)や妊娠第1三半期の催奇形性(頭皮欠損等)を考慮し妊娠初期はPTUを優先することを確認した。閲覧 2026-10-30
  2. 2.Neo-Mercazole 5mg Tablets - Summary of Product Characteristics (SmPC)(Electronic Medicines Compendium (emc)・2024)カルビマゾールが体内で速やかにチアマゾールに代謝されること、バセドウ病を含む甲状腺機能亢進症への適応、開始用量1日20〜60 mgおよび維持量5〜15 mg、無顆粒球症・急性膵炎・催奇形性の警告を確認した。閲覧 2026-10-30
  3. 3.Systematic Review: Agranulocytosis Induced by Nonchemotherapy Drugs(Annals of Internal Medicine・2007)非抗がん薬による無顆粒球症の系統的レビューにおいて、カルビマゾールおよびチアマゾールが最も頻繁に関連する確実な原因薬剤の上位に含まれ、好中球数0.5×10^9/L未満の重篤な好中球減少を引き起こすことを確認した。閲覧 2026-10-30