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Drug Atlas · 18 Antianginal drugs / 抗狭心症薬

ニコランジル

nicorandil

分類
Antianginal drugs / 抗狭心症薬
商品名(日本)
シグマート
商品名(EU)
Ikorel
科目
Clinical Pharmacology
トピック
18: Ischemic heart disease: chronic and acute coronary syndromes
承認適応
慢性冠症候群
禁忌疾患
循環不全(ショック)(英国SmPC)肺水腫(急性、英国SmPC)
副作用
頭痛めまい顔面紅潮低血圧悪心嘔吐角膜潰瘍性器潰瘍皮膚のびらん・潰瘍
影響検査値
カリウム血小板数アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)
相互作用
シルデナフィルタダラフィルバルデナフィルリオシグアト

🧠 全体像:ニコランジルは、アミドに基をもつ構造ので、と同じcGMP経路による血管拡張と、を開く作用の二つを併せもつ。冠動脈を拡張し、にはしない。日本では「狭心症」に広く用いられるが、英国では第一選択で不十分か使えないに限る二次的な位置づけである。⚠️ ・とはで、口腔・消化管・肛門・眼・皮膚などの潰瘍を起こしうる点が最大の注意である。12

薬効群の中での位置づけ

のは、血行動態を動かす薬と代謝を変える薬に分けて組み合わせる。

群 代表薬 主な作用 位置づけ
β遮断薬・ — 心拍数・・血管抵抗を下げる 初期治療の中心
、 NO→cGMPで血管(主に静脈)を拡張 発作の即時寛解、長時間作用型は追加薬
ニコランジル (本薬) 基によるcGMP増加+Kチャネル開口 追加薬。動脈と静脈の双方を拡げる
抑制薬 心拍数のみを下げる が低下した例の追加薬
代謝作用薬 血行動態を動かさない 追加薬

(ESC)2024年版は、症状が残る場合の追加薬としてニコランジルまたはを考慮してよいとする(クラスIIb)。詳細はの薬物療法を参照。

機序

flowchart TD
    A["ニコランジルを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitric acid'>硝酸</span>基からの作用<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='guanylate cyclase'>グアニル酸シクラーゼ</span>活性化"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP-sensitive potassium channel'>ATP感受性Kチャネル</span>の開口"]
    B --> D["細胞内のcGMPが増加"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venodilation'>静脈拡張</span>で前負荷が減る<br>冠動脈も拡張"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>が過分極"]
    F --> G["動脈拡張で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afterload'>後負荷</span>が減る<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary vasospasm'>冠血管攣縮</span>を抑える"]
    E --> H["心筋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxygen demand'>酸素需要</span>が減り<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial oxygen supply'>酸素供給</span>が保たれる"]
    G --> H

Kチャネル開口はに似た作用にも関わると考えられている。正常な冠動脈と狭窄部位の双方を拡張し、は伴わない。2 日本の添付文書は、冠血管拡張はcGMPの増加、増加との抑制は過分極などが関わるとしている。1 IONA試験での使用者が除外されたのは、同薬がKチャネルを閉じて作用を弱めうるためとされる。2

薬物動態

項目 特徴
吸収 速やかかつ完全で、食事の影響を受けない。は約75%、は有意でない。は30〜60分2
分布 血清蛋白結合率は低い(34〜42%)1
代謝 肝でほぼされ、心血管活性のない代謝物(N-(2-ヒドロキシエチル))になる1
排泄 主に代謝物として尿中へ。24時間のは、未変化体0.7〜1.2%、代謝物6.8〜17.3%1
半減期 短い。日本の健常成人(10 mg単回)で約0.75時間。英国SmPCは主相がで約1時間(このでは約2時間)、その後に約12時間のゆっくりした相があるとする12
腎・肝障害 英国SmPCは特別なを要しないとする。日本は重篤な肝障害で肝機能検査値の異常に注意する

適応

  1. 狭心症(日本。国内の一般21報で、各種狭心症の有効率は全体で72.2%、安静狭心症94.3%、73.0%であった)1
  2. のうち、第一選択のβ遮断薬・で十分にコントロールできない、または禁忌・不耐の成人(英国)2

IONA試験では、標準的な治療への追加で、冠動脈疾患死・非致死的心筋梗塞・による入院のが減った(0.83)。一方、冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞だけでは有意差がなかった。3

用法・用量

日本では成人1日量15 mgを3回に分割してし、症状により増減する。高齢者は少量から始める。1 英国では1回10 mgを1日2回から始め、必要に応じて最大1回40 mgを1日2回まで増やす。頭痛を起こしやすい患者は1回5 mgから始め、高齢者は最小を用いる。2

禁忌・注意

  • (・・)・()の投与中は禁忌(日英とも)。どちらもcGMPを増やす系統で、併用するとが強まり重い血圧低下を起こす。投与前にこれらの薬を服用していないことを確認し、投与中・投与後も服用しないよう指導する。1
  • 英国SmPCは、過敏症、ショック(を含む)、高度の低血圧、の低い、、も禁忌とする2。日本の添付文書の禁忌は上の1項目のみで、国による差が大きい。
  • 潰瘍が出たら中止する。消化管の潰瘍は同じ患者の複数の部位に生じ、治療抵抗性で、中止でしか治らないことが多い。開始直後から数年後まで、いつでも出うる。憩室疾患の患者は瘻孔・穿孔の危険が高く、アスピリン・NSAIDsの併用は消化管出血、副腎皮質ステロイドの併用は消化管穿孔の報告があるため注意する。眼の潰瘍(角膜)にも注意し、症状を患者に説明して観察する。2
  • 緑内障の患者ではが上がるおそれがある(日本)。1
  • 妊婦には投与しないことが望ましい(日英とも)。12
  • :重いが極めてまれに報告されており、カリウムを上げる他の薬との併用では、特に中等度〜高度の腎障害患者で注意する。2

副作用

  1. 頭痛:最も多い。日本の添付文書では3%以上、英国SmPCでは30%超で、治療開始数日に多い。低用量から始めて漸増すると減る。と同じ血管拡張によるの頭痛で、強ければ減量か中止する。12
  2. 潰瘍:口内・舌・肛門・消化管(日本の重大な副作用)に加え、角膜・・皮膚・性器にも報告されている。12
  3. ・黄疸、血小板減少(日本の重大な副作用。頻度不明)。1
  4. めまい、、、血圧低下、悪心・嘔吐、血中カリウム上昇。英国SmPCでは第3・第6(頭痛を伴うことが多い)も挙がっている。12

まとめ

  • ニコランジルは、と同じcGMP経路とKチャネル開口の二つの機序をもつで、冠動脈を拡張しには作用しない。
  • 日本では狭心症に広く、英国では第一選択で不十分なのに用いる。ESC 2024ではクラスIIbの追加薬。
  • ・と。潰瘍(口腔・消化管・肛門・眼・皮膚)は治療抵抗性で、出たら中止する。
  • 最も多い副作用は頭痛で、低用量から漸増すると減る。

出典

  1. 1.シグマート錠2.5mg/シグマート錠5mg 添付文書(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/中外製薬・2022)2022年1月改訂(第1版)の添付文書で確認した。効能は狭心症、用法は成人1日量15 mgを3回に分割、禁忌はPDE5阻害薬(シルデナフィル・バルデナフィル・タダラフィル)とリオシグアトの投与中のみ、重大な副作用は肝機能障害・黄疸、血小板減少、口内潰瘍・舌潰瘍・肛門潰瘍・消化管潰瘍(いずれも頻度不明)、その他の副作用に頭痛(3%以上)・角膜潰瘍・皮膚潰瘍・性器潰瘍、緑内障患者で眼圧上昇のおそれ、妊婦には投与しないことが望ましい、作用機序がグアニル酸シクラーゼ活性化によるcGMP増大とKチャネルに関わる過分極、健常成人の半減期約0.75時間、ほぼ脱ニトロ化されて代謝されること。閲覧 2026-10-30
  2. 2.Nicorandil 10mg Tablets - Summary of Product Characteristics (SmPC)(Dexcel Pharma / electronic medicines compendium (emc, UK)・2025)2025年11月25日改訂版で確認した。適応が、第一選択の抗狭心症治療(β遮断薬・カルシウム拮抗薬など)で十分にコントロールできない、または禁忌・不耐の安定狭心症であること、1回10 mgを1日2回から開始し最大1回40 mgを1日2回、禁忌が過敏症・ショック(心原性を含む)・高度の低血圧・充満圧の低い左室機能不全・PDE5阻害薬・可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬・循環血液量減少・急性肺水腫であること、潰瘍(消化管・皮膚・粘膜・眼)が治療抵抗性で発現したら中止すること、憩室疾患・アスピリン・NSAIDs・副腎皮質ステロイドとの併用で重い合併症の危険があること、頭痛が30%超で治療開始数日に多いこと、作用機序がKチャネル開口と硝酸基によるcGMP増加であり盗血現象を伴わず心収縮力に直接作用しないこと。閲覧 2026-10-30
  3. 3.Effect of nicorandil on coronary events in patients with stable angina: the Impact Of Nicorandil in Angina (IONA) randomised trial(The Lancet(IONA Study Group)・2002)安定狭心症で追加の危険因子をもつ5,126例を、標準的な抗狭心症治療に加えてニコランジル1回20 mg 1日2回またはプラセボへ割り付けた試験で、主要複合エンドポイント(冠動脈疾患死・非致死的心筋梗塞・心臓性胸痛による予定外入院)がニコランジル群13.1%、プラセボ群15.5%(ハザード比0.83、95%信頼区間0.72〜0.97)で、冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞のみでは有意差がなかった(0.79、0.61〜1.02)ことを抄録で確認した。平均追跡期間は1.6年。閲覧 2026-10-30