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Drug Atlas · B7 Calcium channel blockers / カルシウム拮抗薬

クレビジピン

clevidipine

分類
Calcium channel blockers / カルシウム拮抗薬
商品名(EU)
Cleviprex
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
B7: Ca++-channel blockers and other vasodilators06: Fluid therapy, shock and hypertensive emergency19: Hypertension
承認適応
高血圧症
禁忌疾患
大動脈弁狭窄症
副作用
頭痛悪心嘔吐低血圧頻脈

🧠 全体像:はの高いを、血中のエステラーゼですぐ分解される脂質乳剤にした静注薬で、細動脈だけを広げて血圧を下げる。作用は2〜4分で現れ、止めて5〜15分で戻るので、よりさらに細かく血圧を追える。覚えるのは3点——体内で肝腎に頼らず分解されること、との乳剤なので大豆・と異常が禁忌であること、脂質負荷のため24時間の投与量に上限があることである。日本の電子添文は確認できなかったため、本ノートの用法・禁忌は米国の添付文書による。

薬効群の中での位置づけ

静注でできるの中で、は作用の出入りが最も速い。

薬 血管への作用 作用発現と持続 特徴
細動脈を拡張(静脈には作用しない) 発現2〜3分、持続5〜15分1 肝腎に依存せず分解。脂質乳剤で、禁忌と投与量上限がある
細動脈を拡張 発現5〜15分、持続30〜40分1 国内で使える。(CYP)で、相互作用が多い
細動脈と静脈を拡張 数分以内に効き、止めるとすぐ切れる に注意。現在は他の可能薬があれば第一選択でない
心拍・心収縮を抑える(β1遮断) 心拍数も下げたいとき()に使う

ESC高血圧協議会の文書は、を重症高血圧に使われてきたの静注と述べつつ、広くは使えないとする。急性大動脈疾患ではにやのようなのを併用しうるとする1。同じ表のの行は肝不全を禁忌とするが、の禁忌欄は空である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clevidipine'>クレビジピン</span>が動脈平滑筋のL型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcium channel'>カルシウムチャネル</span>を遮断"] --> B["細胞内へのカルシウム流入が減る"]
    B --> C["細動脈が拡張し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic vascular resistance (SVR)'>全身血管抵抗</span>が低下"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mean arterial pressure, MAP'>平均動脈圧</span>が低下(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afterload'>後負荷</span>の軽減)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='baroreceptor reflex'>圧受容体反射</span>で心拍数が上がる"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reflex tachycardia'>反射性頻脈</span>・頭痛"]

では心臓への(前負荷)を下げず、静脈のには作用しない。効果は用量に応じてが約25%下がったところで頭打ちになり、の半分が得られる速度は約10 mg/時である。長期投与でも耐性やの所見はなかった2。

💡 ここが他のと違う点:は分子内にを持ち、肝臓のCYPではなく血液と組織のエステラーゼで加水分解される。だから肝・腎の機能に影響されにくく、を止めれば数分で血中濃度が落ちる。

薬物動態

項目 内容
分布 99.5%超。定常状態のは0.17 L/kg2
半減期 初期相約1分(消失の85〜90%を占める)、終末相約15分。多相性に低下する2
代謝 エステラーゼで加水分解され、活性のないカルボン酸体とになる。カルボン酸体はさらにか酸化を受ける。臨床濃度でCYPを阻害・誘導しない2
排泄 放射標識試験で83%が回収され、尿63〜74%、糞7〜22%。90%超は72時間以内に出る2
作用の出入り 周術期の患者では1〜2 mg/時の開始後2〜4分でが4〜5%低下する。中止後は多くが5〜15分で血圧が回復する2
肝・腎障害 78例、中等度〜高度の腎障害121例で投与され、開始量は通常と同じ1〜2 mg/時でよい2

主要代謝物のはの試験で陽性の一因とされるが、試験は短期使用を前提に行われていない2。

適応

米国の適応は経口療法が不可能または望ましくないときの血圧低下である2。病名の限定はなく、臓器障害ごとの目標と速さは病態で決まる。すべてを急いで下げるのではない——を急に下げすぎると脳・腎・心の灌流が落ちる。高血圧症の緊急症では、障害臓器に応じて薬と目標を選ぶ。

で確かめられた場面は次の2つである。

場面 試験 結果
心臓手術の ECLIPSE(対・・、1512例) 30日の死亡・心筋梗塞・脳卒中・は群間で差がなく、死亡はがより多かった(P=0.04)。目標血圧範囲の維持は・より優れ、と同等だった3
救急部・ICUの急性重症高血圧 VELOCITY(単群、126例) 81%がから臓器障害を伴い、30分以内に88.9%が目標範囲に入った(中央値10.9分)。92.3%は他のが不要で、91.3%がへ移行できた4

VELOCITYは対照群のない試験で、ECLIPSEは心臓手術に限られる。他の臓器障害(脳卒中・・など)での優劣を示す根拠として読まない。

用法・用量

項目 内容2
製剤 0.5 mg/mLの乳剤(50 mLまたは100 mLのバイアル)。希釈せずそのまま投与する。1 mg/時は2 mL/時、16 mg/時は32 mL/時
開始 1〜2 mg/時でを始める
増量 最初は90秒ごとに倍量にする。目標血圧に近づいたら倍未満の増量とし、5〜10分間隔にのばす。1〜2 mg/時の増量でがさらに2〜4 mmHg下がる
維持 多くは4〜6 mg/時。重症高血圧ではさらに高用量が要りうる
上限 大半は16 mg/時以下。32 mg/時までの短期投与の経験は限られる。脂質負荷のため24時間で1000 mL、または平均21 mg/時を超えない
期間 72時間を超える投与の経験は乏しい
への移行 を開始し、その効果発現までの遅れを考えて血圧の監視を続けながら、を中止または減量する
  • :でもでもよい。専用のラインで投与し、他の薬剤と同じラインに入れない。ただし水、、ブドウ糖液、、10%アミノ酸液とは併用できる。
  • :乳剤は微生物が増殖しうる。バイアルに針を刺したら12時間以内に使い、残りは廃棄する。
  • 保存:2〜8℃で冷蔵し、凍らせない。箱に入れたまま室温へ移すと2か月まで保存でき、冷蔵に戻さない。光で分解するので使うまで箱から出さない(投与中のは不要)。
  • 高齢者:用量範囲の下限から慎重にする。

体重換算の薬ではなく、絶対量(mg/時)で設計されている。日本で使うはμg/kg/分で書くので、用量の表記を取り違えない。

禁忌・注意

禁忌 理由2
大豆・大豆製品・卵・卵製品のアレルギー 乳剤の成分がとだから
異常(、、を伴う) 脂質を約0.2 g/mL(2.0 kcal/mL)含むから
高度の が下がると心筋へのが減ることが予想されるから
  • 低血圧と:急な増量で起こる。出たら減量する。頻脈の治療にβ遮断薬を短時間使う経験は限られ、そのための使用は勧められていない。
  • 心不全:はで心不全を悪化させうる。慎重に観察する。
  • β遮断薬の急な中止:はβ遮断薬ではなく心拍数を下げないので、離脱の影響は防げない。
  • :長く投与して他のへ移行しなかった場合は、中止後8時間以上は血圧を観察する。
  • :随伴する高血圧に使う指針となる情報がない。
  • 脂質摂取:の著しい異常がある患者では、同時に投与する脂質を減らして補う必要がある。
  • 妊娠:妊婦での使用データは危険性を判断するには不十分。動物では高用量で・胎児体重の低下・骨格発育の遅れが出た。母乳への移行は不明。
  • 小児:18歳未満の安全性と有効性は確立していない。

相互作用

臨床での相互作用試験は行われていない。と主要代謝物は臨床濃度でCYPを阻害・誘導しないので、学的な相互作用は起こりにくい2。で問題になる・の血中濃度上昇は、CYPを阻害しないこの薬では想定されていない。どうしのな加算は通常どおり考える。

副作用

頻度 内容
重症高血圧(VELOCITY、126例) 頭痛6.3%、悪心4.8%、嘔吐3.2%。中止に至った有害事象は4.8%2
(ECLIPSE) 手術に伴う有害事象が多く、との関連を区別しにくい。比較薬の平均より2%を超えて多い反応はなかった。有害事象による中止は5.9%(比較薬は3.2%)2
重大・まれ 心筋梗塞、心停止、失神、呼吸困難(重症・で1%未満)2
市販後 血中の上昇、イレウス、過敏症、低血圧、悪心、の低下(の可能性)、2

⚠️ 過のときは投与を止めるか減量し、血圧を支える。での経験はなく、最高106 mg/時、総量1153 mgまで投与された。過量で想定される主な影響は低血圧とで、中止後5〜15分でが弱まる2。

まとめ

  • はの高いの静注製剤で、動脈だけを拡張してする。作用は2〜4分で現れ、止めて5〜15分で戻る。
  • 血液と組織のエステラーゼで分解されるので、肝腎機能に影響されにくく、CYPを介した相互作用が少ない。
  • 脂質乳剤(・)なので、大豆・と異常が禁忌。24時間の投与量に上限がある(1000 mLまたは平均21 mg/時)。
  • 開始は1〜2 mg/時、最初は90秒ごとに倍量、維持は4〜6 mg/時。用量は絶対量(mg/時)で書く。
  • 米国の適応は経口不能時の血圧低下。周術期ではと同等の、急性重症高血圧では30分で約9割が目標範囲に入った。
  • 長期に投与したら中止後8時間以上はを観察する。日本の電子添文は確認できなかったので、国内での使用可否を本ノートで断定しない。

出典

  1. 1.ESC Council on hypertension position document on the management of hypertensive emergencies(European Heart Journal - Cardiovascular Pharmacotherapy(ESC Council on Hypertension)・2019)出版社ページの本文(前半10万字)で、クレビジピンの言及が2か所あることを確認した。悪性高血圧・高血圧性脳症の節でクレビジピンを重症高血圧に使われてきた超短時間作用型のカルシウム拮抗薬と述べつつ広くは使えないとすること、急性大動脈疾患の節でエスモロールにニトロプルシドやクレビジピンのような超短時間作用型血管拡張薬を併用しうるとすること、Table 4(静注薬)のクレビジピンの行が作用発現2〜3分・持続5〜15分・2 mg/時で開始し目標血圧まで2分ごとに2 mg/時ずつ増量・禁忌欄は空・副作用は頭痛と反射性頻脈であり、ニカルジピンの行が作用発現5〜15分・持続30〜40分・禁忌は肝不全であること(2回に分けて取得し、同じ内容を確認した)。閲覧 2026-10-31
  2. 2.CLEVIPREX (clevidipine) injectable emulsion, for intravenous use — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / labeler Chiesi USA, Inc.・2025)DailyMedのSPL全文(SPL版26、2025年11月公開)を取得して確認した。適応は経口療法が不可能または望ましくないときの血圧低下、開始は1〜2 mg/時で初期は90秒ごとに倍量、目標に近づいたら倍未満で5〜10分間隔、1〜2 mg/時の増量で収縮期圧がさらに2〜4 mmHg下がること、維持は4〜6 mg/時、大半は16 mg/時以下(32 mg/時までは経験が限られる)、脂質負荷のため24時間で1000 mLまたは平均21 mg/時を超えないこと、72時間を超える経験は乏しいこと、希釈せず中心静脈でも末梢静脈でも投与でき他剤と同じラインに入れないこと、穿刺後12時間で廃棄すること、禁忌は大豆・卵アレルギー・脂質代謝異常(病的高脂血症・リポイドネフローゼ・高脂血症を伴う急性膵炎)・高度の大動脈弁狭窄であること、低血圧と反射性頻脈では減量しその治療にβ遮断薬は勧めないこと、脂質約0.2 g/mL(2.0 kcal/mL)、心不全では陰性変力作用に注意、β遮断薬の急な中止は防げないこと、長期投与後は中止後8時間以上は反跳性高血圧を観察すること、褐色細胞腫の高血圧には使用の指針がないこと、薬効は収縮期圧の約25%低下で頭打ち、最大効果の半分を生じる速度が約10 mg/時、2〜4分で効き始め中止後5〜15分で血圧が回復すること、半減期は初期相約1分(消失の85〜90%)と終末相約15分、蛋白結合99.5%超、血中・血管外組織のエステラーゼで加水分解され肝腎機能の影響を受けにくいこと、主代謝物は降圧活性のないカルボン酸体とホルムアルデヒドでCYPを阻害・誘導しないこと、重症高血圧(VELOCITY、126例)の頭痛6.3%・悪心4.8%・嘔吐3.2%、市販後の中性脂肪上昇・イレウス・過敏症・酸素飽和度低下、2〜8℃で冷蔵保存し箱のまま室温に移すと2か月以内、を確認した。閲覧 2026-10-31
  3. 3.The ECLIPSE trials: comparative studies of clevidipine to nitroglycerin, sodium nitroprusside, and nicardipine for acute hypertension treatment in cardiac surgery patients(Anesthesia & Analgesia・2008)PubMed収載の抄録で確認した。心臓手術の周術期高血圧で、クレビジピンをニトログリセリン・ニトロプルシド・ニカルジピンと比べた3本の無作為化非盲検試験(61施設、組み入れ1964例のうち1512例が解析対象)で、主要評価項目(30日以内の死亡・心筋梗塞・脳卒中・腎機能障害)は各群で差がなく、死亡率はニトロプルシドがクレビジピンより有意に高く(P=0.04)、血圧を設定範囲内に保つ点ではニトログリセリン・ニトロプルシドより優れ(P=0.0006、P=0.003)、ニカルジピンとは同等だが範囲を狭めるとクレビジピンの方が逸脱が少なかったこと。抄録のみで確認した。閲覧 2026-10-31
  4. 4.Clevidipine, an intravenous dihydropyridine calcium channel blocker, is safe and effective for the treatment of patients with acute severe hypertension(Annals of Emergency Medicine・2009)PubMed収載の抄録で確認した。救急部・ICUの急性重症高血圧(収縮期180 mmHg超または拡張期115 mmHg超)126例の単群非盲検試験(VELOCITY)で、2 mg/時から3分ごとに倍量(最大32 mg/時)で30分間滴定し、18〜96時間続けたこと、81%(102/126)が来院時から臓器障害を伴っていたこと、30分以内に88.9%(104/117)が目標範囲に入り目標到達までの中央値は10.9分、18時間以上投与した患者の92.3%(108/117)は他の静注降圧薬が不要で、91.3%(115/126)が経口薬へ移行できたこと。抄録のみで確認した。閲覧 2026-10-31