臨床薬理学

臨床薬理学 · 06

輸液療法・ショック・高血圧緊急症の薬物療法

Fluid therapy, shock and hypertensive emergency

前提:病態
カテコールアミンカルシウム拮抗薬およびその他の血管拡張薬

🧠 全体像:救急の循環管理は3つの問いに集約できる。輸液では「入れた水はどの区画に行くか」、ショックでは「灌流を支えるのに前負荷・収縮力・のどれを補うか」、では「どの臓器が傷んでいて、どれだけ・どれほど速く下げるか」。輸液は溶質の分布で、カテコールアミンは受容体で、は障害臓器で選ぶ。

輸液療法

体内の水はどこにあるか

成人のは体重の約60%で、次のように分かれる。

区画 に占める割合 体重60 kgの成人での目安
約2/3(67%) 約24 L
約1/3(33%) 約12 L
├ の3/4 約9 L
└ 血管内(血漿) の1/4 約3 L

は年齢とで変わる。乳児期は体重の70〜75%、小児期は65〜70%で、思春期以降はおよそ60%で落ち着く。脂肪組織は筋より水分が少ないため、肥満者や、平均して筋肉に対する脂肪の比率が高い女性では、体重に占めるの割合が低い。

輸液はどこへ分布するか

静注した輸液の行き先は、溶けている浸透圧物質がどの区画まで移動できるかで決まる。溶質が区画の間を移動できれば、輸液は各区画の大きさの比に従って分布する。

輸液 溶質が移動できる範囲 1 L投与したときの分布の原則
5%ブドウ糖液() ブドウ糖は代謝されて消え、水は全区画へ とに比例配分され、血管内に残るのはごく一部
(0.9%食塩液、) Naは全体へ 約3/4(750 mL)が間質、約1/4(250 mL)が血管内
高分子がへ出にくい 原則として全量が血管内にとどまる
血漿(高張の) 高分子が血管内にとどまり、しかも血漿より高張 間質・細胞内から水を引き込み、投与量以上に血管内容量が増える
flowchart TD
  A["輸液1 L を静注"] --> B{"溶質はどこまで移動できる?"}
  B -->|"ブドウ糖(代謝されて水だけ残る)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracellular fluid, ICF'>細胞内液</span>2/3・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular fluid, ECF'>細胞外液</span>1/3へ<br>血管内に残るのはわずか"]
  B -->|"Na(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular fluid, ECF'>細胞外液</span>に分布)"| D["間質に約750 mL<br>血管内に約250 mL"]
  B -->|"高分子(血管内にとどまる)"| E["ほぼ全量が血管内"]
  E --> F["高張なら間質・細胞内から水を引き込む"]
  F --> G["ただし溶質が排泄・分解されれば<br>水は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extravascular'>血管外</span>へ出ていく"]

⚠️ この比率は、区画を隔てる膜の透過性が正常であることが前提である。血管内皮表面のは、虚血再灌流、、高血糖、で最も傷みやすく、傷むともへ漏れ、分布の比率は崩れる。敗血症での「血管内にとどまる」利点が期待どおりに出にくいのはこのためである。

輸液製剤の種類

種類 例 性質
5%ブドウ糖液 とに比例配分される。血管内容量を増やす目的には向かない
0.9%食塩液() 0.9% NaCl Na・Clとも154 mEq/Lで、血漿に比べて高Cl・高Na。大量投与でを起こす
、酢酸・グルコン酸加の平衡電解質液(イソライト) 血漿に近い塩濃度に、乳酸・酢酸・グルコン酸などのを加えて等浸透圧に保つ。高Cl・高Naにならず、高Cl性アシドーシスを起こさず、腎障害を起こしにくい
・血漿 アルブミン、、ゼラチン 高分子が血管内にとどまる。高張のものは血漿として働くが、効果は溶質の半減期に依存する

血漿と晶質液の組成

Na⁺(mEq/L) K⁺(mEq/L) Ca²⁺ Mg²⁺ Cl⁻(mEq/L) 酢酸(mEq/L) 乳酸(mEq/L) グルコン酸(mEq/L) pH
血漿 135〜145 3.5〜5 2.2〜2.6(総Ca) 0.8〜1 94〜111 − 1〜2 − 7.35〜7.45 275〜295
0.9%食塩液 154 − − − 154 − − − 4.5〜7 308
酢酸・グルコン酸加の平衡電解質液(イソライト) 140 5 − 3 98 27 − 23 7.4 294
130 4 2.7 − 109 − 28 − 6〜7.5 273

血漿のCa(総Ca)とMgの値はmmol/L単位のに相当し(総Ca 2.2〜2.6 mmol/L)、輸液側の値とは単位の読み方に注意する。

💡 なぜ0.9%食塩液でアシドーシスになるのか。 血漿のClは約100 mEq/Lなのに、0.9%食塩液は154 mEq/Lある。大量に入れると血中Clが上がり、その分だけが押し下げられてになる。はClの一部を乳酸・酢酸・グルコン酸に置き換えてあり、これらは肝などで代謝されてになるので、この問題を避けられる。

膠質液の比較

5%アルブミン 20%アルブミン (6〜10%) ゼラチン
69 69 130〜220 30〜35
290 310 300〜310 300〜350
半減期(時間) 16〜24 16〜24 50(ただし容量増加効果はアルブミンより短いことがある) 2〜9
最大容量増加効果(投与量に対する%) 70〜100 300〜500 100〜200 70〜80
副作用 過敏反応、感染 過敏反応、感染 腎不全、、掻痒、アナフィラキシー 過敏反応、高熱

💡 20%アルブミンの容量増加効果が投与量の300〜500%に達するのは、高張の血漿として間質から水を引き込むからである。

⚠️ 現行の推奨では、は第一選択ではない。 敗血症・の成人に対し、Surviving Sepsis Campaign 2026は次のように推奨している1。

論点 推奨
第一選択の輸液 晶質液(強い推奨)
晶質液の種類 では0.9%食塩液よりを提案。を合併していれば0.9%食塩液
アルブミン 晶質液単独を提案。大量の晶質液を投与した後や肝硬変ではアルブミン追加が適切でありうるが、では避ける
用いない(強い推奨、確実性は高い)
ゼラチン 用いないことを提案
初期輸液量 最初の3時間に少なくとも30 mL/kgの晶質液を提案し、頻回に再評価する

を容量補充の選択肢として並べるのは旧来の扱いであり、現行ではその腎不全・のために敗血症では使わない。

容量療法の考え方

容量療法の目的は、血管内容量を調整して心拍出量とを保ち、にも働きかけること、あるいは水・電解質バランスを回復させることである。

ただし、体液の不足量を正確に計算できる単一の指標はない。複数の方法を組み合わせて評価する。

方法 例
侵襲的 動脈圧波形解析で心拍出量と容量指標を求めるPiCCO、(Swan-Ganzカテーテル)
低侵襲・非侵襲 身体所見、体重減少、尿量、下大静脈の超音波

ショックと循環作動薬

ショックの定義

ショックとは、原因を問わず、急性の循環障害(微小循環と大循環の障害)によって組織の灌流・酸素化が不十分になり、に至りうる状態である()。

心室の収縮機能を決める3因子

因子 意味 評価のしかた
前負荷・とな、心筋そのものの収縮する力 実験的には圧を記録し、圧容積関係の傾きから求める。臨床ではや収縮期のdP/dtで代用するが、dP/dtは負荷の影響を受ける
前負荷 収縮前に心室を満たす量。Frank-Starling機序により、ある点までは前負荷が増えるほど拍出量が増える 左心は、右心はから推定する。PiCCOで心室のを求められる
心室が打ち勝つべき抵抗 が上がるとが増え、その結果も増える

💡 はこの3因子のどれかに働く。輸液は前負荷を、(など)はを、(ノルアドレナリン)は血管抵抗すなわちを上げる。ショックの型ごとに「どこが足りないか」を見極めて薬を選ぶ。

ショックの型と治療の軸

型 主な病態 代表的な原因 治療の軸
前負荷の低下 出血(消化管出血など)、脱水 輸液・輸血、出血源の制御
の低下 、心筋症 ・、、・・などの補助循環
閉塞性 心臓への流入・の物理的障害 心タンポナーデ、、肺塞栓 ・胸腔のなど原因の解除
血管抵抗の低下 敗血症、アナフィラキシー、 輸液と、原因治療

代償性ショックから非代償性ショックへ

flowchart TD
  A["循環障害の発生"] --> B["代償性ショック"]
  B --> B1["循環の中心化<br>心臓と脳の灌流を優先して保つ"]
  B --> B2["カテコールアミン放出で<br>血圧などの大循環指標はまだ正常"]
  B --> B3["しかし<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcirculatory dysfunction'>微小循環障害</span>はすでに存在"]
  B3 --> C["この段階で支持療法と原因治療を開始<br>見逃さない兆候を探す"]
  C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary refill time (CRT)'>毛細血管再充満時間</span>の延長<br>末梢の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cold sensation'>冷感</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal paralysis'>腸管麻痺</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced renal perfusion'>腎灌流低下</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oliguria'>尿量減少</span>)<br>アシドーシスの代償<br>意識障害"]
  B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompensated'>非代償性</span>ショック"]
  D --> D1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='critical pH'>臨界pH</span>に達しカテコールアミンが効かなくなる<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='counteract mechanism'>代償機構</span>の破綻"]
  D1 --> D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central circulation'>中心循環</span>も障害される"]
  D2 --> D3["閉ざされていた領域が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recanalization'>再開通</span>し<br>乳酸などの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metabolite'>代謝産物</span>が流れ出る"]
  D3 --> D4["アシドーシスの増悪"]
  D4 --> E["死亡"]

⭐ 血圧が保たれていてもショックは始まっている。 にはカテコールアミンの作用で大循環の指標が正常に見えるため、、皮膚温、尿量、意識、乳酸・アシドーシスといった微小循環の兆候を拾うことが早期治療の鍵になる。

救急で使う循環作動薬

薬 作用する受容体 生理学的作用 主な適応 禁忌
エピネフリン(アドレナリン) α1、α2、β1、β2 低用量ではが主で、全はやや下がることがある。・は上がるがは下がる。高用量ではが強くなる アナフィラキシー、中、の第二選択、難治性の、抵抗性の徐脈 なし
ノルアドレナリン α1 > α2 > β1 。全が著明に上がり、平均・収縮期・がいずれも上がる の第一選択、で90 mmHg未満のときの第一選択 なし
β1、β2 ≫ α1 ・、軽い血管拡張 90 mmHg以上の、またはで血行動態が安定した後 過敏症、
D1、D2、β1(高用量では選択性が失われる) ・、腸間膜と腎の血管拡張が目立つ 徐脈による、高度の大動脈弁逆流(適応外:・ペーシング抵抗性の房室ブロック) (製剤に亜硫酸水素ナトリウムを含む)、、

💡 禁忌の理由を受容体から考える。

  • は収縮力を強めるので、などのでは動的な狭窄を悪化させる。
  • はで内因性カテコールアミンの作用にされ、や不整脈を招く。
  • エピネフリンは低用量ではβ2作用で骨格筋の血管が拡張するためが下がり、高用量でα1作用が勝つと昇圧が前面に出る。

現行ガイドラインでの位置づけ

(Surviving Sepsis Campaign 2026)1

  • 初期の目標は65 mmHg。
  • ノルアドレナリンが第一選択で、・エピネフリンより優先する(に対する優位は確実性が高い)。
  • ノルアドレナリンを増量しても足りなければを追加し、なお不十分ならエピネフリンを追加する。
  • を合併していれば、ノルアドレナリンかエピネフリンのどちらを第一選択にしてもよい(頻脈ではノルアドレナリン、徐脈ではエピネフリンが好ましい)。
  • 十分な輸液と血圧があってもと低灌流が続くときは、ノルアドレナリンにを追加するか、エピネフリン単独とする。はの代わりではなく追加である。

( 2026心不全ガイドライン)2

  • 血圧と重要臓器の灌流を上げるため、を考慮してよく、望ましいのはノルアドレナリンである(推奨クラスIIb)。
  • は、輸液負荷を含む標準治療に反応しない90 mmHg未満で低灌流のある患者に考慮してよい(推奨クラスIIb)。
  • 原因を問わないショックの無作為化試験で、はノルアドレナリンより不整脈が多かった。

⚠️ を一般に用いるのは旧来の使い方で、現行では昇圧にはノルアドレナリンを優先する。

flowchart TD
  A["ショック:低灌流の兆候"] --> B{"主な病態は?"}
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypovolemia'>循環血液量減少</span>"| C["晶質液(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='balanced crystalloid'>平衡晶質液</span>を優先)<br>出血なら輸血と止血"]
  B -->|"血液分布異常:敗血症"| D["晶質液30 mL/kgを目安に開始<br>ノルアドレナリンで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mean arterial pressure, MAP'>平均動脈圧</span>65 mmHg"]
  D --> D1["不足なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasopressin'>バソプレシン</span>追加<br>さらにエピネフリン追加"]
  D --> D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac dysfunction'>心機能障害</span>と低灌流が続けば<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dobutamine'>ドブタミン</span>追加またはエピネフリン単独"]
  B -->|"血液分布異常:アナフィラキシー"| E["エピネフリン<br>難治例は静注・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repeated/continuous dosing'>持続投与</span>"]
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>"| F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systolic blood pressure, SBP'>収縮期血圧</span>"}
  F -->|"90 mmHg未満"| G["ノルアドレナリンで昇圧"]
  F -->|"90 mmHg以上で低灌流"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dobutamine'>ドブタミン</span>などの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inotropic agent'>強心薬</span>"]
  G --> H
  H --> I["原因治療:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percutaneous coronary intervention'>PCI</span>・補助循環"]
  B -->|"閉塞性"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericardiocentesis'>心嚢穿刺</span>・胸腔の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evacuation of air'>脱気</span>など原因の解除"]

高血圧緊急症

この節は科目内のの正本である。慢性期の高血圧治療は高血圧を参照。

定義:数値ではなく臓器障害で決まる

  • 高度の高血圧(収縮期180 mmHg以上かつ/または拡張期110 mmHg以上)は、一部の患者で急性の命に関わる合併症を起こす。この閾値は2018年の/ガイドラインで「3度高血圧」と呼ばれた区分に当たる。
  • 現行の 2024は、を「180/110 mmHg以上の血圧に急性の高血圧性臓器障害を伴うもの」と定義し、しばしば症状を伴い、多くは静注薬による迅速かつ慎重なを要するとする3。
  • を伴わない重症高血圧()は、通常入院を要さず、で下げ、早めの外来再診で管理する3。
  • 痛みや不安で一時的に上がった血圧は、その原因を和らげれば正常化することが多く、治療は要らない3。
の型 内容
他の急性疾患を伴う重症高血圧 急性、、子癇、心不全
極端なと急性の。腎・網膜・脳の小動脈のが本態で、網膜の・・、、脳症(約15%)、、急性腎機能低下を起こす
による急激な重症高血圧 高度のを起こしうる

3

症状は障害臓器によって異なり、頭痛、、胸痛、、めまい、が出る。では、傾眠・・・がに先行しうる。はまれで、あれば脳卒中を疑う3。

診断のための検査

区分 検査
全例の血液・尿検査 ヘモグロビン、、クレアチニン、Na、K、、、尿蛋白の定量、尿沈渣(赤血球・白血球・円柱)
全例の診察・検査 心電図(虚血・不整脈・)、
必要に応じて ・・、()、胸部X線()、心エコーまたは心臓・肺の超音波、をみる/、胸腹部(急性大動脈疾患)、

4

💡 上昇・低下・・血小板減少がそろえば、に伴うを考える。

治療の原則

は次の3点で決める3。

  1. どの標的臓器が障害され、以外の特異的な介入が必要か。
  2. 急なの誘因や、治療計画を変える併存状態(妊娠など)があるか。
  3. 安全に下げるためのの時間と大きさ。
  • 静注の短半減期でしやすい薬を、持続的なができる場所で使うのが理想である3。
  • 急速で制御されない過度のは避ける3。の50%を超える低下はや死亡と関連した4。
  • 多くの緊急症は静注薬で治療するが、低用量のやなど短時間作用型のも院内で有効でありうる。患者は感受性が高いので、少量から始める3。
  • の患者はで脱水になっていることが多く、急激に血圧が下がりすぎたら食塩液の静注で補正できる4。

💡 なぜ急に下げてはいけないのか。 慢性の高血圧では脳・腎・冠動脈のの範囲が高い側へずれている。正常血圧まで一気に下げると、その臓器にとっては「低血圧」となり、・腎障害・を起こす。例外は、血圧そのものが臓器を壊し続ける・肺水腫・子癇で、これらは直ちに目標まで下げる。

flowchart TD
  A["血圧180/110 mmHg以上"] --> B["測定を確認し、痛み・不安・尿閉などの誘因を評価"]
  B --> C{"急性の高血圧性臓器障害がある?"}
  C -->|"ない"| D["重症高血圧(切迫症)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral drugs'>経口薬</span>で数時間〜数日かけて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antihypertensive (blood-pressure lowering)'>降圧</span><br>短時間作用型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nifedipine'>ニフェジピン</span>は使わない<br>早期の外来再診"]
  C -->|"ある"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertensive emergency'>高血圧緊急症</span><br>監視下で静注薬を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='titration'>滴定</span>"]
  E --> F{"障害臓器・病態は?"}
  F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aortic dissection'>大動脈解離</span>"| G["直ちに収縮期120 mmHg未満<br>心拍60/分未満"]
  F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute coronary syndrome, ACS'>急性冠症候群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic pulmonary edema'>心原性肺水腫</span>"| H["直ちに収縮期140 mmHg未満"]
  F -->|"子癇・重症<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preeclampsia'>子癇前症</span>"| I["直ちに160/105 mmHg未満<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnesium sulfate, MgSO4'>硫酸マグネシウム</span>・分娩の検討"]
  F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malignant hypertension'>悪性高血圧</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertensive encephalopathy'>高血圧性脳症</span>"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mean arterial pressure, MAP'>平均動脈圧</span>を20〜25%低下<br>脳症は直ちに、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malignant hypertension'>悪性高血圧</span>は数時間で"]
  F -->|"脳卒中"| K["病型別に慎重な目標<br>下げすぎない"]

主な静注降圧薬

薬 作用機序 作用発現 作用持続 禁忌
α1・β1・遮断 経口20分〜2時間、静注5分 経口8〜12時間、静注16〜18時間() 喘息、過敏症、、徐脈
β1(作用) 静注2〜10分 静注10分 過敏症、、徐脈
末梢α1受容体遮断と中枢の5-HT1A受容体刺激 静注2〜8分 静注3〜5時間 過敏症、
遮断(で血管に選択的) 経口30分〜2時間、静注2〜5分 0.5〜8時間 過敏症、
細動脈と静脈の平滑筋を直接弛緩させる 静注2分以内 静注1〜10分 過敏症、、全が低下した状態での
主に、より弱く動脈の平滑筋でを活性化し、cGMPを増やして弛緩させる 舌下1〜3分、静注ただちに、経皮30分 舌下25分、静注3〜5分、経皮120分 過敏症、、心タンポナーデ、頭蓋内圧亢進、

用量・増量の間隔まで含めた 2024年版の12剤の一覧(・・フェノルドパム・エナラプリラート・・を含む)は高血圧の薬物療法にまとめてある。

補足として、主な副作用と注意点を押さえる4。

薬 副作用・注意点
、。2度・3度房室ブロックや収縮不全の心不全でも避ける。静注の作用持続は3〜6時間とする文献もあり、長く効くぶん過時にすぐ戻せない
徐脈。半減期が非常に短く、止めればすぐ効果が切れる
頭痛、。肝不全では禁忌
。肝不全・腎不全では。妊娠中は胎児ののため禁忌
頭痛、。高用量が必要になることがある
と比べを起こさずにできる

⚠️ のは5-HT1A受容体を刺激することによる(遮断ではない)。中枢α2受容体の刺激を挙げる説明もあるが、主なは5-HT1A刺激である。これにより交感神経の出力が下がり、末梢α1遮断による血管拡張で起こりがちなが出にくい。

⚠️ は阻害薬(など)の服用中に併用すると高度の低血圧を起こすため、使用前にを確かめる。

💡 が多くので禁忌なのは、狭い弁のために心拍出量を増やせず、血管抵抗が下がるとそのまま血圧とが落ちるからである。心タンポナーデ・でが禁忌なのも、前負荷を下げると心室が十分に満たされなくなるためである。

病態別の降圧目標・速度・第一選択薬

病態 目標血圧 の速さ 代替・補足
特異的な症状のない180/120 mmHg超の高血圧 を20〜25%低下 数時間かけて 、、(または経口の・) ⚠️ 旧来の扱い。現行では臓器障害がなければ緊急症ではなく、で緩やかに下げる(下記)
腎不全(、・の有無を問わない) を20〜25%低下 数時間かけて 、、 代替に。がまちまちで阻害薬の効き方は予測しにくい
を20〜25%低下 直ちに 、、 はしてもを比較的保ち、頭蓋内圧を上げない
収縮期140 mmHg未満 直ちに 、、 は部の局所血流を下げ、の心筋障害を増やすので避ける。頻脈があればβ遮断を追加
急性肺水腫 収縮期140 mmHg未満 直ちに 、(必ずなどのと併用) 代替に+。も有用
急性 収縮期120 mmHg未満かつ心拍60/分未満 直ちに と(または、) 代替に、。β遮断薬が先
子癇・重症・症候群 収縮期160 mmHg未満かつ拡張期105 mmHg未満 直ちに 、、、 は禁忌。利尿薬は避ける

4

各病態の要点

臓器障害のない重症高血圧(旧来の「差し迫った」)

  • 180/120 mmHgを超えてもがなければ、ではない。静注薬で数時間のうちに下げる必要はなく、(、、など)の開始・再開・増量で対応する4。
  • 急速なはを招くので避け、短時間作用型は使わない。薬を追加したら少なくとも2時間観察して効果と安全性を確かめる4。 2024も、この群は通常入院を要さずで管理するとしている3。

急性

  • 大動脈壁へのを下げるため、収縮期120 mmHg以下・心拍60/分以下まで直ちに下げる。第一選択はβ遮断薬である4。
  • を先に使うとで壁へのが増すので、必ずβ遮断が先、が後。は短時間作用型の(など)と組み合わせやすい。のやも使えるが、作用が長いので過時にすぐ戻せない4。詳細はを参照。

と

  • では、心拍数を上げずにを下げてを減らす。またはを使う4。
  • 高血圧性のでは、とが前負荷とを同時に下げる。を併用してを減らす4。 2026心不全ガイドラインも、110 mmHg超のでを初期治療として考慮してよいとしている2。

子癇・重症(・子癇・症候群)

  • 静注またはとを用い、収縮期160 mmHg未満・拡張期105 mmHg未満を目標に150〜180分以内に下げる。母体の状態が安定したら分娩を検討する3。
  • は子癇の治療だけでなく、重症高血圧と蛋白尿または神経症状を伴うにも用いる(4 gを5分で静注し、以後1 g/時)。との併用では低血圧に注意する3。
  • 2剤を用いても360分以内に下がらなければ、での管理と分娩を検討する。肺水腫を伴えばの持続静注を使う。ではが減っているため利尿薬を避ける3。
  • を伴わない妊娠中の重症高血圧には、静注、経口、経口を用い、静注は第二選択である3。
  • ⚠️ は胎児ののため妊娠中は禁忌。はを防ぐため量を24時間で800 mg以内にとどめ、胎児心拍を監視する4。

脳卒中(表にない病態だが、を控える方向の例外として重要)

病態 現行の 2024の推奨
の対象でないで220/110 mmHg以上 最初の24時間で約15%を慎重に下げる(推奨クラスIIa)
を行う 投与前に185/110 mmHg未満、その後24時間は180/105 mmHg未満に保つ
発症6時間以内に収縮期140〜160 mmHgを目標に下げることを考慮(推奨クラスIIa)。収縮期220 mmHg以上では、治療開始1時間以内に70 mmHgを超えて下げない(推奨クラスIII)

3

💡 脳卒中の急性期は脳のが壊れ、が全身血圧に直接依存する。虚血巣の周囲を守るため、をしないではかなり高い血圧でも急いで下げない。

と

  • やによるでは、まずを使う。追加のが必要なら、、を考える。β遮断薬(を含む)は冠動脈の収縮を抑えにくく、相対的に避ける4。 2024もこの状況でのβ遮断薬に注意を促している3。
  • ではで高血圧がかえって悪化した報告があり、、、、を使う4。

💡 β遮断薬を単独で先に使うと、β2による血管拡張が失われてα作用だけが残り(拮抗されないα刺激)、かえって血圧が上がりうる。カテコールアミン過剰の状態では「α遮断が先」と覚える。

予後と退院後

のは数十年で大きく改善したが、なお心血管・腎疾患のリスクは高い。のスクリーニングを行い、に移行して外来で厳重に追う3。慢性期の管理は高血圧とと緊急症を参照。

まとめ

  • 成人のは体重の約60%で、2/3・1/3、は間質3/4・血管内1/4に分かれる。1 Lは約250 mLしか血管内に残らず、5%ブドウ糖液はとして全区画に広がる。が傷むとこの比率は崩れる。
  • 0.9%食塩液はCl 154 mEq/Lで高Cl性アシドーシスを起こしうる。(など)はこれを避ける。現行の敗血症治療では晶質液が第一選択で、はを優先し、は用いない。
  • ショックは原因を問わないの障害で、は血圧が保たれていてもが始まっている。・皮膚温・尿量・意識・乳酸で早期に気づく。
  • はノルアドレナリンで65 mmHgを目指し、不足すれば、次いでエピネフリンを追加する。も昇圧はノルアドレナリンを優先し、低灌流が続けばを加える。は不整脈が多く、現行では優先しない。
  • は180/110 mmHg以上にを伴うもので、臓器障害がなければで緩やかに下げる。静注の短時間作用型薬を監視下でし、急速な過を避ける。
  • 病態別の目標:・脳症は20〜25%低下、・肺水腫は収縮期140未満、は収縮期120未満かつ心拍60未満(β遮断が先)、は160/105未満(・+、禁忌)。脳卒中は下げすぎない。

出典

  1. 1.Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2026(Society of Critical Care Medicine / European Society of Intensive Care Medicine・2026)発行元SCCMの成人推奨一覧のページ(DOI本体はbot判定で取得できないため)で逐語を確認した。蘇生の第一選択は晶質液(強い推奨・中等度)、初期蘇生では0.9%食塩液より平衡晶質液(条件付き・中等度、外傷性脳損傷の合併例は0.9%食塩液)、補充アルブミン併用より晶質液単独(条件付き・中等度、大量の晶質液投与後や肝硬変ではアルブミンが適切でありうる、外傷性脳損傷では避ける)、デンプン製剤は用いない(強い推奨・高い)、ゼラチンは用いない(条件付き・中等度)。最初の3時間に少なくとも30 mL/kgの晶質液(条件付き・低い、頻回の再評価)。初期MAP目標65 mmHg(強い推奨・中等度)。ノルアドレナリンをドパミン・アドレナリン・セレプレシンより第一選択とする(強い推奨、確実性はドパミンに対して高い)、増量中のノルアドレナリンにバソプレシンを追加(条件付き・中等度)、なお不十分ならアドレナリンを追加(条件付き・きわめて低い)、心機能障害合併例ではノルアドレナリンかアドレナリンを第一選択とする(条件付き・きわめて低い)、心機能障害と低灌流が続く例ではノルアドレナリンにドブタミンを追加するかアドレナリン単独とする(条件付き・きわめて低い)、強心薬は昇圧薬の代わりでなく追加として使う。閲覧 2026-09-26
  2. 2.2026 ESC Guidelines for the management of heart failure(European Society of Cardiology (ESC)・2026)出版社ページのWayback Machine保存版(20260910061149)の本文で逐語を確認した。心原性ショックでは血圧と重要臓器灌流を上げるため昇圧薬(望ましくはノルアドレナリン)を考慮してよい(IIb/C)、輸液負荷を含む標準治療に反応しない収縮期血圧90 mmHg未満かつ低灌流の患者に強心薬を考慮してよい(IIb/C)、収縮期血圧110 mmHg超の非代償性心不全では初期治療として静注血管拡張薬(ニトログリセリン・ニトロプルシド)を考慮してよい(IIb/C)こと、7.5.9節がドパミンやアドレナリンよりノルアドレナリンを第一選択とすることを支持する研究があり、原因を問わないショックのRCTでドパミンは不整脈イベントが多かったと述べることを確認した。閲覧 2026-09-26
  3. 3.2024 ESC Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension(European Society of Cardiology (ESC)・2024)本文10章で、高血圧緊急症を急性の高血圧性臓器障害を伴う180/110 mmHg以上の血圧と定義し、急性臓器障害として大動脈解離・心筋虚血・子癇・心不全、悪性高血圧(網膜の火炎状出血・綿花様白斑・乳頭浮腫、脳症は約15%)、褐色細胞腫を挙げること、臓器障害のない重症高血圧(高血圧切迫症)は通常入院を要さず経口薬で下げること、コカイン・メタンフェタミンではβ遮断薬に注意すること、短半減期の静注薬で監視下に滴定し急速・過度の降圧を避けること、低用量のカプトプリル・メトプロロールなど経口薬も院内で有効でありうること、脳内出血では発症6時間以内に収縮期140〜160 mmHgを目標とすること(IIa A)と収縮期220 mmHg以上で1時間以内に70 mmHgを超えて下げないこと(III B)、再灌流療法の対象でない虚血性脳卒中で220/110 mmHg以上なら最初の24時間で約15%下げること(IIa C)、子癇前症・子癇の高血圧クライシスに静注ラベタロールまたはニカルジピンと硫酸マグネシウム(I C)、肺水腫合併例に静注ニトログリセリン(I C)、妊娠中の重症高血圧に静注ラベタロール・経口メチルドパ・経口ニフェジピン(ヒドララジン静注は第二選択)を推奨し、150〜180分以内の降圧、硫酸マグネシウム4 gを5分で静注後1 g/時、利尿薬を避けることを述べていることを確認した。閲覧 2026-09-26
  4. 4.ESC Council on hypertension position document on the management of hypertensive emergencies(European Heart Journal - Cardiovascular Pharmacotherapy(ESC Council on Hypertension)・2019)ESH掲載の全文PDFで確認した。臓器障害のない重症高血圧は経口薬で治療し急速な降圧を避け短時間作用型ニフェジピンを使わず、投与後少なくとも2時間観察すること。Table 3で病態別の時間と目標・第一選択・代替薬(悪性高血圧は数時間でMAPを20〜25%低下・ラベタロール/ニカルジピン・代替ニトロプルシド/ウラピジル、高血圧性脳症は直ちにMAP 20〜25%低下、急性冠イベントは直ちに収縮期140 mmHg未満・ニトログリセリン/ラベタロール、急性心原性肺水腫は直ちに収縮期140 mmHg未満・ニトロプルシドまたはニトログリセリン+ループ利尿薬、急性大動脈疾患は直ちに収縮期120 mmHg未満かつ心拍60/分未満・エスモロール+ニトロプルシド/ニトログリセリン/ニカルジピン、子癇・重症子癇前症/HELLPは直ちに収縮期160未満・拡張期105 mmHg未満・ラベタロールまたはニカルジピン+硫酸マグネシウム)を示すこと。MAPの50%を超える低下が虚血性脳卒中・死亡と関連したこと、圧利尿で脱水があり急な低下時は食塩液で補正できること、脳症ではラベタロールが脳血流を保ち頭蓋内圧を上げないこと、冠イベントでニトロプルシドは局所血流を下げること、大動脈疾患ではβ遮断薬が第一選択であること、妊娠でニトロプルシドは胎児シアン中毒のため禁忌でラベタロール累積量は800 mg/24時間を超えないこと、コカイン・アンフェタミンではまずベンゾジアゼピンを使い、褐色細胞腫ではラベタロールで高血圧が悪化した例があること、Table 2の診断検査とTable 4の静注薬の作用発現・持続・禁忌・副作用を確認した。閲覧 2026-09-26