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Drug Atlas · B7 Vasodilators / 血管拡張薬

フェノルドパム

fenoldopam

分類
Vasodilators / 血管拡張薬
科目
Clinical Pharmacology
トピック
06: Fluid therapy, shock and hypertensive emergency19: Hypertension
承認適応
重症高血圧(米国の承認適応。悪性高血圧を含む)
副作用
頭痛悪心皮膚の紅潮低血圧頻脈
監視検査値
カリウム

🧠 全体像:フェノルドパムは、ドパミンD1様受容体の選択的作動薬で、にする速効・短時間作用型のである。腎・腸間膜・末梢の動脈を広げて血圧を下げ、半減期は約5分で、止めれば数十分で効果が切れる。米国の添付文書では、院内での重症高血圧(を含む)の短期(48時間以内)の管理に適応がある1。⚠️ 学習上の落とし穴が2つある。を増やすからといって腎保護薬ではない(の予防にも、心臓手術後のにも効かなかった)。また広くは入手できず2、日本のPMDAの添付文書検索では成分名・販売名の主な表記ゆれのいずれも該当がなかった(2026年11月6日確認)。

薬効群の中での位置づけ

のは、作用発現と持続の長さと、血管系への作用のしかたで使い分ける。の高血圧評議会の一覧では次のとおりである2。

薬剤 作用発現 持続 用量の始め方
フェノルドパム 5〜15分 30〜60分 0.1 µg/kg/分の静注で開始し、15分ごとに0.05〜0.1 µg/kg/分ずつ増量
2〜3分 5〜15分 2 mg/時で開始し、2分ごとに2 mg/時ずつ増量
5〜15分 30〜40分 5 mg/時で開始し、15〜30分ごとに2.5 mgずつ増量
1〜5分 3〜5分 5〜200 µg/分、5分ごとに5 µg/分ずつ増量
すぐ 1〜2分 0.3〜10 µg/kg/分、5分ごとに0.5 µg/kg/分ずつ増量

⭐ フェノルドパムは(・)やと作用機序が別で、D1様受容体を介する。この一覧ではフェノルドパムの禁忌と副作用の欄が空欄だが、空欄は「問題がない」という意味ではない(副作用は下の節に米国添付文書の記載をまとめた)。米国添付文書の禁忌欄は「None」で1、列挙された禁忌が無いことが特徴の一つである。

機序

flowchart TD
    A["フェノルドパムを静注"] --> B["D1様ドパミン受容体を刺激<br>α2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenergic receptor, adrenoceptor'>アドレナリン受容体</span>にも中等度に結合"]
    B --> C["動物では冠・腎・腸間膜・末梢の動脈が拡張"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral vascular resistance'>末梢血管抵抗</span>が下がり血圧が下がる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='baroreceptor reflex'>圧受容体反射</span>で心拍が上がる(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dose-dependent'>用量依存</span>の頻脈)"]
    C --> F["腎の輸入・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='efferent arteriole'>輸出細動脈</span>が拡張する"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure diuresis'>圧利尿</span>に伴うNa-K交換の増加などで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypokalemia'>低カリウム血症</span>を来しうる"]
    A --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>が上がることがある(緑内障・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular hypertension'>高眼圧症</span>)"]

電子添文はD1様受容体の作動薬であり、D2様受容体、α1・β受容体、、への有意な親和性はないと述べる。で、活性を担うのは(D1様受容体への親和性がの約250倍)である。非臨床の検討ではノルアドレナリンのを上げうる1。

💡 腎の血管を広げるという性質が、かつて「しながらを保つ」薬として注目された理由だが、この性質を腎保護に使う試みはで否定された(後述)。

薬物動態

項目 内容
(希釈して使う)
成人で約5分、定常状態に約20分(半減期の4倍)で達する。小児も3〜5分
用量との関係 0.01〜1.6 µg/kg/分で、定常状態のは注入速度に比例する
代謝・排泄 約90%が尿中、10%が糞便中。メチル化・・による抱合で消失し、チトクロームP-450を介さない。未変化体のは4%
臓器障害 中のと重症肝不全で、活性のあるのクリアランスは変わらない

上の数値は米国添付文書による1。⭐ 半減期が短いので、投与を止めれば血圧は戻る。 同文書は、48時間のを中止したとき、血圧が徐々に治療前の値に戻り、リバウンドの証拠はなかったと述べる。

適応

対象 適応
成人 院内での短期(48時間以内)の重症高血圧の管理。急速で、すぐ元に戻せる緊急のが臨床的に必要な場合で、を含む。血圧が安定すれば、いつでもへの移行を始められる
小児 院内での短期(4時間以内)の

⚠️ 日本の電子添文は確認できなかった。 ここに書いた適応は米国の添付文書の記載で、国内で同じ用途に使える薬ではない。国内のでは、他のの添付文書で適応と用量を確認する。

試験での成績

対象 成績
重症高血圧(120 mmHg以上)236例、との比較(2試験) 反応率はフェノルドパム79%(92/117)、77%(90/119)。フェノルドパムの用量は0.1〜1.5 µg/kg/分
94例(120 mmHg以上で臓器障害を伴う)、4用量の比較 1時間後のの低下は、0.01 µg/kg/分で5 mmHg、0.03で9、0.1で19、0.3で22 mmHg。用量に応じて下がり、心拍数は0.3 µg/kg/分で約11増えた

試験の成績は米国添付文書のの項による1。なお、この2試験にはプラセボ群が無い(との比較は)ため、1時間以降のの上積みが薬剤によるものかどうかは、文書自身が「薬剤由来でないかもしれない」と注記している。

用法・用量

項目 内容
成人の開始量 0.01〜0.3 µg/kg/分の持続静注から開始(欧州の位置づけ文書の一覧は0.1 µg/kg/分で開始)
増量 0.05〜0.1 µg/kg/分ずつ、15分以上あけて目標血圧まで。での最大は1.6 µg/kg/分
維持 48時間まで
小児 0.2 µg/kg/分で開始し、20〜30分ごとに0.3〜0.5 µg/kg/分ずつ増量、最大0.8 µg/kg/分。それ以上は血圧が下がらず頻脈だけが悪化した
調製 または5%ブドウ糖液で希釈し、成人は40 µg/mLにする(原液10 mg/mL:4 mLを1,000 mL、2 mLを500 mL、1 mLを250 mLに加える)。希釈後は室温で4時間、冷蔵で24時間を過ぎたら捨てる

用量の根拠は米国添付文書1と欧州の位置づけ文書2である。

💡 0.1 µg/kg/分未満で、ゆっくり増量すると、が少ない。 一方で、0.1を超える速い増量は頻脈の原因になる。血圧を急に下げず、目標に向けて段階的に下げるというの原則どおりに使う。

禁忌・注意

  • 米国添付文書の禁忌は「None」(記載なし)である1。⚠️ これは米国の1本の記載で、他国の文書の禁忌欄を確認したものではない。
  • ⚠️ 緑内障・ではが上がる。 またはの12例で、0.05〜0.5 µg/kg/分を3.5時間かけて増量すると、がに上がり、ピークで平均6.5 mmHg上昇した。中止後2時間でベースラインに戻った。
  • ⚠️ β遮断薬との併用を避ける。 β遮断薬が本剤に対する交感神経の反射を抑えるため、低血圧が起こりうる。併用する場合は血圧を頻回に監視する。
  • ⚠️ を含む(1 mg/mL)。感受性のある人にアナフィラキシー様症状やの発作を起こしうる。感受性は、喘息のある人でより多い。
  • :投与6時間未満でも起こりうる。に伴うカリウム・ナトリウム交換の増加または薬剤のと考えられ、を監視する。
  • 妊娠中の使用は、リスクを評価するのに十分なデータがない。授乳は、乳汁中に移行する可能性があり、投与中は避けるよう勧められている。過量では過度の低血圧が主で、中止と支持療法で対処する。以上は米国添付文書の記載である1。

副作用

頻度 内容
5%を超える 頭痛、皮膚の(血管拡張)、悪心、低血圧。固定用量の試験(125例)では頭痛24%、悪心12%、嘔吐6%、注射部位反応7%、心電図の6%
0.5〜5% 、不安、不眠、めまい、、、心不全、心筋梗塞、狭心症、頻脈、腹痛、多汗、乏尿、BUN・クレアチニンの上昇、胸痛、発熱など
市販後 、低血圧、、の低下など

頻度の区分は米国添付文書による1。⚠️ 頻脈はで、成人では0.1 µg/kg/分を超えると目立つ。0.1 µg/kg/分未満の用量に保てば、継続するうちに頻脈が弱まることがある。

腎保護には使えない

血管を広げてを増やすという薬理から、腎保護への期待が持たれたが、無作為化試験は2つとも否定的だった。

試験 対象 結果
CONTRAST(2003年) 60 mL/分未満で、造影を伴う心血管処置を受けた315例 は33.6%対30.1%(1.11、95%信頼区間0.79〜1.57、P=.61)。30日の死亡・透析・にも差はなかった3
心臓手術後の(2014年) 心臓手術後の早期667例 は20%対18%(P=.47)、30日死亡は23%対22%(P=.86)で差がなく、低血圧はフェノルドパム群で26%対15%と多かった。で無益性のため中止された4

⭐ 「を増やす」ことと「腎臓を守る」ことは別である。 薬理学的な予想が試験で否定された、教育上重要な例である。

まとめ

  • フェノルドパムはD1様ドパミン受容体の選択的作動薬で、静注の速効・短時間作用型の。半減期は約5分。
  • 米国の添付文書では、院内での重症高血圧の短期(48時間以内)管理に適応がある。成人の開始量は0.01〜0.3 µg/kg/分、15分以上あけて0.05〜0.1 µg/kg/分ずつ増量する。
  • 頭痛・・悪心・低血圧、の頻脈、、に注意し、β遮断薬との併用を避ける。米国添付文書の禁忌欄は「None」。
  • ⚠️ 腎保護やの治療には使えない(の予防でも、心臓手術後のでも有益性は示されなかった)。
  • 欧州の位置づけ文書は「広くは入手できない」とし、日本ではPMDAの添付文書検索に該当がなかった。国内の診療では他のを使う。

出典

  1. 1.CORLOPAM (fenoldopam mesylate) injection, for intravenous use — Prescribing Information(Hospira, Inc.(Pfizer。米国の添付文書。改訂2021年8月)・2021)全文を取得して確認した。1.1は成人で院内の短期(48時間以内)の重症高血圧の管理(悪性高血圧を含む)、1.2は小児で院内の短期(4時間以内)の降圧。2.1は成人で0.01〜0.3 µg/kg/分の持続静注から開始し、0.05〜0.1 µg/kg/分ずつ15分以上あけて増量、臨床試験での最大は1.6 µg/kg/分、0.1 µg/kg/分未満とゆっくりした増量で反射性頻脈が少なく、維持は48時間まで。4. 禁忌は「None」。5は用量依存性の頻脈(成人で0.1 µg/kg/分超)、投与6時間未満で生じる低カリウム血症、緑内障・高眼圧症12例で眼圧が平均6.5 mmHg上昇し中止後2時間で戻ること、亜硫酸塩(メタ重亜硫酸ナトリウム1 mg/mL)によるアレルギー反応。6は頭痛・紅潮・悪心・低血圧が5%超。7はβ遮断薬の併用を避ける。12.1はD1様ドパミン受容体作動薬でα2アドレナリン受容体に中等度の親和性、12.3は消失半減期約5分・約90%が尿中・チトクロームP-450を介さない抱合、12.2は重症高血圧236例でニトロプルシドとの比較(反応率79%対77%)。なお本文書は米国の先発品Corlopamの1本で、他国の文書は確認していない。閲覧 2026-11-06
  2. 2.ESC Council on hypertension position document on the management of hypertensive emergencies(European Heart Journal - Cardiovascular Pharmacotherapy(ESC Council on Hypertension)・2019)PMC掲載の全文(PMC13588668)で、Table 4の静注降圧薬の一覧にフェノルドパム(作用発現5〜15分・持続30〜60分・0.1 µg/kg/分の静注で開始し15分ごとに0.05〜0.1 µg/kg/分ずつ増量)が並ぶこと、禁忌と副作用の欄が空であること、本文が「フェノルドパムは短時間作用の選択的ドパミン1作動薬で、重症高血圧に使われてきたが広くは入手できない」と述べていることを確認した。閲覧 2026-11-06
  3. 3.Fenoldopam mesylate for the prevention of contrast-induced nephropathy: a randomized controlled trial(JAMA(Stone GW, McCullough PA, Tumlin JA, et al.; CONTRAST Investigators)・2003)抄録(Europe PMC、PMID 14600187)で、クレアチニンクリアランス60 mL/分未満の315例を、フェノルドパム(0.05から0.10 µg/kg/分に増量、造影の1時間前から12時間)とプラセボに無作為割付し、造影剤腎症(96時間以内にクレアチニン25%以上上昇)が33.6%対30.1%(相対リスク1.11、95%信頼区間0.79〜1.57、P=.61)で、30日の死亡・透析・再入院にも差がなかったことを確認した。誌面は購読制で未取得。閲覧 2026-11-06
  4. 4.Effect of fenoldopam on use of renal replacement therapy among patients with acute kidney injury after cardiac surgery: a randomized clinical trial(JAMA(Bove T, Zangrillo A, Guarracino F, et al.)・2014)抄録(Europe PMC、PMID 25265449)で、心臓手術後の早期急性腎障害667例(イタリアの19施設のICU)を0.1 µg/kg/分(範囲0.025〜0.3)で最長4日間のフェノルドパムとプラセボに二重盲検で無作為割付し、中間解析で無益性のため中止となったこと、腎代替療法が20%対18%(P=.47)、30日死亡が23%対22%(P=.86)で差がなく、低血圧がフェノルドパム群26%・プラセボ群15%(P=.001)と多かったことを確認した。誌面は購読制で未取得。閲覧 2026-11-06