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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬

ニタゾキサニド

nitazoxanide

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬Antiprotozoals / 抗原虫薬
商品名(EU)
Alinia
科目
PharmacologyMedical Microbiology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs4-16: Cryptosporidium spp. and Blastocystis hominis
承認適応
腸管原虫感染症
標的微生物
Cryptosporidium parvumGiardia lambliaHymenolepis nana
副作用
腹痛下痢悪心頭痛めまい濃色尿

🧠 全体像:は、酵素であるピルビン酸:フェレドキシン(PFOR)の経路を阻害する広域である。後に速やかにされてチゾキサニドに変換され、原虫や嫌気性菌のを遮断する1。米国FDAでは1歳以上の小児および成人におけるおよび(ランブル症)による下痢症の治療薬として承認されている2。特に下痢症に対して承認された唯一のであるが、HIV/AIDSなどの高度免疫不全患者(CD4数≤50〜100/µL)では単独での効果に限界があり、(ART)によるが治療のとなる3。に対してはメトロニダゾールやと同等の高い有効性を示し、が少なくが利用できるため小児でも使いやすい。日本では未承認薬である。

薬効群の中での位置づけ

腸管寄生に対する治療薬は、標的生物の代謝特性に応じて使い分けられる。

系統・薬剤 標的病原体 作用機序 臨床上の特徴・位置づけ
、ジアルジア、 PFOR阻害 免疫正常者のの承認薬。小児用あり。広域な抗寄生虫活性1
ジアルジア、、 還元によるDNA切断 単回投与で高い治癒率。やアルコール相互作用に注意
メトロニダゾール ジアルジア、、嫌気性菌 還元によるDNA切断 世界的標準薬。5〜7日間の内服を要する。には無効
()、 阻害 消化管アミノグリコシド。への併用代替薬
条虫、吸虫(、吸虫症) のCa2+透過性亢進 の。は代替選択肢となる

⭐ 免疫状態による治療戦略の違い:免疫正常者ではは通常1〜2週間で自然軽快し、の内服によって下痢の持続期間と排出期間を有意に短縮できる。一方、HIV/AIDSなどの進行した例では激しい水様性下痢が慢性化して致命的となりうる。これらの患者では単独による完全な寄生虫排除は期待できず、ARTを開始してCD4陽性T細胞数を100/µL超へ回復させることが唯一確実な根本治療である3。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitazoxanide'>ニタゾキサニド</span>を経口内服(食事とともに)"] --> B["小腸吸収時および血中で速やかに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deacetylation'>脱アセチル化</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span>チゾキサニドが生成"]
    C --> D["原虫・嫌気性菌のPFOR(ピルビン酸:フェレドキシン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidoreductase'>酸化還元酵素</span>)に結合"]
    D --> E["ピルビン酸からフェレドキシンへの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electron transport'>電子伝達</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-competitive'>非競合的</span>に阻害"]
    E --> F["嫌気性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Energy Metabolism'>エネルギー代謝</span>が停止しATP産生が枯渇"]
    C --> G["嫌気性微生物の膜電位破綻および細胞質アシドーシス"]
    F --> H["原虫(Cryptosporidium、Giardia等)の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth arrest'>増殖停止</span>および死滅"]
    G --> H

は体内で直ちにされ、であるチゾキサニドとなる。

  1. PFOR酵素の遮断:原虫や嫌気性菌は、ピルビン酸:フェレドキシン(PFOR)を用いてピルビン酸からアセチルCoAを合成しエネルギーを獲得する。チゾキサニドはこのフェレドキシン依存的な電子移動反応を特異的に阻害する。ヒトはを用いるため、選択的毒性が発揮される。
  2. 細胞膜電位の:チゾキサニドは酸性分子として原虫の細胞膜電位を脱分極させ、を崩壊させる付加的機序も知られる。

薬物動態

項目 特徴・数値
吸収 後、良好に吸収される。食事とともに服用することでが約2倍に増加する
代謝 血漿中で速やかに加水分解され、チゾキサニドとなる。その後肝臓でチゾキサニドに代謝される
チゾキサニドとしてに極めて高度に結合する(99%以上)
半減期 チゾキサニドの見かけのは約1〜1.6時間
排泄 チゾキサニドおよびそのとして、糞便中に約66%、尿中に約33%が排泄される

適応

疾患・感染症 原因微生物 臨床上の推奨と位置づけ
Cryptosporidium parvum、C. hominis 1歳以上の免疫正常患者における下痢症。FDA承認薬2
(ランブル症) Giardia lamblia 1歳以上の下痢症。やメトロニダゾールと並ぶ第一選択4
() Hymenolepis nana() 不耐例や小児における代替選択肢

用法・用量

米国FDAで承認されている標準用法(Alinia錠または内用)は以下の通りである。いずれの用量も必ず食事とともに服用する(吸収を高め消化器副作用を軽減するため)2。

年齢区分 1回用量 投与回数・期間
1〜3歳 100 mg(5 mL) 1日2回(12時間ごと)、3日間
4〜11歳 200 mg(10 mL) 1日2回(12時間ごと)、3日間
12歳以上・成人 500 mg(1錠または25 mL) 1日2回(12時間ごと)、3日間
  • に対する期間:免疫正常者では3日間の投与での軽快が得られることが多い。症状が遷延する場合は追加投与が検討されることがある。
  • の調製:粉末に規定量の水を加えて振り混ぜ均一にする。調製後は室温保存で7日間有効である。

禁忌・注意

禁忌

  • 本剤の成分に対する過敏症の既往

使用上の注意

  • ⚠️ 高度免疫不全患者における効果の限界:CD4数が著明に低下したHIV感染患者や重度複合免疫不全の患者では、本剤単独投与によるの完全排除率は低い。下痢の重症化・脱水・胆管炎の進行を防ぐため、迅速な(ART)の導入と経口・・補液管理を同時に進める3。
  • ⚠️ 脱水に対する補水療法の優先:激しいを伴う原虫性下痢症では、の内服と並行して(ORS)やによる水分・電解質の補正が生命予後を左右する。
  • 糖尿病患者への配慮:内用製剤は矯味のためにショ糖()を多く含有するため、厳重なを要する患者では糖分摂取量に留意する。
  • 高い:チゾキサニドは率が99%を超えるため、同じくの高い薬剤(ワルファリンなど)との併用時には置換による作用増強に注意を払う。

副作用

性は概して良好であり、重篤な有害事象の頻度は低い。

臓器・系統 主な症状 特徴と注意点
腹痛、下痢、悪心、嘔吐、腹部膨満 消化器症状が最も多くみられる(数%程度)。食後服用で軽減可能
精神神経系 頭痛、めまい 軽度かつ一過性
腎・泌尿器・皮膚 (尿の鮮黄色化)、 代謝物チゾキサニド自体の黄色色素の排泄による無害な着色。患者への事前説明が重要
過敏症 発疹、皮膚 稀。発現時は投与中止を検討

まとめ

  • は、PFOR依存的を阻害する広域である。
  • 米国FDA承認薬であり、1歳以上のおよびに対して3日間の内服で治療が行われる。
  • 免疫正常者のの下痢期間を短縮するが、HIV/AIDS等の者ではARTによるが治療の中核となる。
  • メトロニダゾールに比べが少なく小児用があるためが高い。により尿が鮮黄色に着色することがある。

出典

  1. 1.Nitazoxanide: a new thiazolide antiparasitic agent(Clinical Infectious Diseases (Fox LM, Saravolatz LD)・2005)チアゾリド系合成抗原虫薬ニタゾキサニドの薬理・臨床総説で、ピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素(PFOR)依存的電子伝達を阻害する機序、活性代謝物チゾキサニドへの速やかな変換、1歳以上の小児および成人におけるCryptosporidium属およびGiardia属による下痢症に対する有効性、良好な消化管耐容性を確認した。閲覧 2026-11-02
  2. 2.ALINIA (NITAZOXANIDE) POWDER, FOR SUSPENSION [LUPIN PHARMACEUTICALS, INC.](U.S. National Library of Medicine (DailyMed) / Lupin Pharmaceuticals, Inc.・2024)米国電子添文で、適応が1歳以上の患者におけるGiardia duodenalisまたはCryptosporidium parvumによる下痢症であること、用法が1〜3歳で100 mgを1日2回3日間、4〜11歳で200 mgを1日2回3日間、12歳以上で500 mgを1日2回3日間であり必ず食事とともに経口投与すること、主な副作用が腹痛・頭痛・悪心であり尿の着色(黄変)が起こりうること、HIV感染者での有効性が確立していないことを確認した。閲覧 2026-11-02
  3. 3.Past, current, and potential treatments for cryptosporidiosis in humans and farm animals: A comprehensive review(Frontiers in Cellular and Infection Microbiology・2023)クリプトスポリジウム症の治療総説で、ニタゾキサニドが免疫正常者では下痢期間とオーシスト排出を有意に短縮するものの、CD4数50/µL以下の高度免疫不全AIDS患者では寄生虫クリアランス効果に乏しく、HIV合併例では抗レトロウイルス療法(ART)による免疫再構築が治療の中核(mainstay)であることを確認した。閲覧 2026-08-26
  4. 4.Clinical Care of Giardia Infection(Centers for Disease Control and Prevention・2024)米国CDCの診療指針で、ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)の推奨治療薬としてチニダゾール、ニタゾキサニド、メトロニダゾールが同等の主要選択肢として位置づけられ、脱水に対する補液の重要性と再発時の異系統併用が示されていることを確認した。閲覧 2026-10-03