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Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

ラムシルマブ

ramucirumab

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
サイラムザ
商品名(EU)
Cyramza
科目
Pharmacology
トピック
B36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)
承認適応
肺癌胃癌大腸癌肝細胞癌
副作用
出血血栓塞栓症
影響検査値
アルブミン尿

🧠 全体像:はと同じ「腫瘍への血管新生を止める兵糧攻め」の薬だが、狙う相手がリガンドそのものではなく、リガンドを受け取る側の(受容体)という点が違う。ヒトモノクローナル抗体としてのに結合し、・-C・-Dいずれのリガンドが来ても受容体を作動させない。単剤ではなく既存の(・・)にする「併用の薬」として使われることが多く、副作用の構図はと共通(出血・血栓・高血圧・創傷治癒遅延・消化管穿孔)。

薬効群の中での位置づけ

標的 代表薬 発想 主な適応
(リガンド) リガンドを中和する 大腸癌・肺癌・卵巣癌など多癌種
(受容体) 受容体そのものを塞ぐ ・胃癌・大腸癌・

💡 「リガンドを捕まえるか、受容体を塞ぐか」という対比で覚える。 がだけを中和するのに対し、は受容体側を塞ぐため、に結合しうる複数のファミリーリガンド(/C/D)の作用をまとめて遮断できる点が理屈の上での違いになる。臨床上の使い分けは、癌種ごとに確立された併用レジメンと試験データに基づく。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ramucirumab'>ラムシルマブ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='VEGF receptor 2'>VEGFR-2</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular domain'>細胞外ドメイン</span>に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial growth factor A'>VEGF-A</span>/C/Dが結合できなくなる"]
    B --> C["内皮細胞の増殖・遊走シグナル遮断"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor angiogenesis'>腫瘍血管新生</span>の抑制"]
    D --> E["腫瘍への酸素・栄養供給↓"]
    A --> F["正常組織の血管維持シグナルも同時に抑制"]
    F --> G["創傷治癒遅延"]
    F --> H["消化管粘膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular permeability'>血管透過性</span>・修復能低下"]
    H --> I["消化管穿孔"]
    F --> J["凝固・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular permeability'>血管透過性</span>の変化"]
    J --> K["出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial thromboembolism'>動脈血栓塞栓症</span>・高血圧"]

薬物動態

項目 値・特徴
構造 ヒトモノクローナル抗体(を標的)
代謝・排泄 抗体としてを受ける。肝・腎のは関与しない

適応

添付文書上、単剤ではなく既存の標準治療へのとして各癌種に適応がある1。

領域 使いどころ
呼吸器 による治療後に増悪した転移性に併用。EGFR exon 19欠失・L858R陽性の一次治療では併用
消化器 または治療後の進行・転移性胃癌・腺癌に単剤または併用
消化器 ・・既治療後の転移性大腸癌に併用
肝胆膵 400 ng/mL以上で既治療後のに単剤

⭐ での併用が第2選択の中心的な位置づけ。 プラチナ+免疫療法後に進行した患者では、単剤または+が次の選択肢になる。第III相REVEL試験(±、治療後に増悪した進展期 1253例)では、中央値が併用群10.5か月・対照群9.1か月(0.86)、中央値が4.5か月・3.0か月(0.76)と、いずれも併用群で有意に上回った2。

用法・用量

NSCLCでは10 mg/kgを60分かけてし、21日サイクルのDay 1に投与の前に行う1。胃癌・大腸癌・では8 mg/kgを2週毎に投与する1。実際の用量・基準は適応・レジメン・添付文書で確認する。

禁忌・注意

添付文書上のは無い(“None”)が、以下で・永久中止の基準がある1。

  • ⚠️ 出血:Grade 3または4の重篤な出血が起きたら永久中止
  • ⚠️ 消化管穿孔:発現したら永久中止
  • ⚠️ 創傷治癒遅延:の28日前から
  • ⚠️ :発現したら永久中止
  • 医学的に重大な高血圧:永久中止基準に該当しうる
  • と併用するでは、扁平上皮癌・喀血既往・気道近傍への浸潤などと共通の出血リスク要因を評価する

副作用

頻度 内容
高頻度 高血圧、
注意 出血、、創傷治癒遅延
重篤・まれ 消化管穿孔

⚠️ 単剤より毒性が増える。 腫瘍出血・喀血、、制御不良の高血圧、血栓・創傷治癒などを評価してからを決める。

まとめ

  • ヒト抗体として(受容体)を塞ぐ。リガンドを中和するとは狙う相手が違う。
  • NSCLCではプラチナ+免疫療法後に進行した患者への併用(第2選択)が中心的な使いどころ。REVEL試験で・無増悪生存とも有意な延長を示した。
  • 胃癌・腺癌、大腸癌(併用)、(高値、既治療後)にも適応があり、いずれも既存治療へのとして使う。
  • ⭐ 高血圧・出血・血栓・創傷治癒遅延・消化管穿孔という副作用の構図はと共通で、「正常組織の血管維持機能まで止める」という一つの機序から説明できる。
  • の28日前からの、禁忌が無い代わりに複数の永久中止基準を持つ添付文書の書き方に注意する。

出典

  1. 1.CYRAMZA (ramucirumab) injection, for intravenous use — Prescribing Information(Eli Lilly and Company / DailyMed・2025)非小細胞肺癌(NSCLC)の適応文言が "CYRAMZA, in combination with docetaxel, is indicated for the treatment of adults with metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC) with disease progression on or after platinum-based chemotherapy." であること、用量が "10 mg/kg administered by intravenous infusion over 60 minutes on Day 1 of a 21-day cycle prior to docetaxel infusion" であること、禁忌欄が "None" であること、重大な警告として出血(Grade 3/4で永続中止)・消化管穿孔(発現時に永続中止)・創傷治癒(待機的手術の28日前から休薬)・動脈血栓塞栓症(発現時に永続中止)・高血圧(医学的に重大なら永続中止)が挙げられていることを確認した。加えて胃・胃食道接合部腺癌(フルオロピリミジンまたはプラチナ製剤治療後、単剤またはパクリタキセル併用、8 mg/kg 2週毎)、NSCLC一次治療でのEGFR exon19欠失/L858R陽性例に対するエルロチニブ併用、大腸癌(ベバシズマブ・オキサリプラチン・フルオロピリミジン既治療後、FOLFIRIの前に8 mg/kg 2週毎)、AFP≥400 ng/mLでソラフェニブ既治療後の肝細胞癌(単剤、8 mg/kg 2週毎)にも適応があることを確認した。版は2025年8月改訂(Revised 8/2025)。閲覧 2026-09-22
  2. 2.Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel for second-line treatment of stage IV non-small-cell lung cancer after disease progression on platinum-based therapy (REVEL): a multicentre, double-blind, randomised phase 3 trial(Lancet・2014)プラチナ製剤による一次治療後に増悪した進展期NSCLC患者1253例を対象にドセタキセル75 mg/m²にラムシルマブ10 mg/kgまたはプラセボを上乗せした第III相REVEL試験で、全生存期間の中央値がラムシルマブ群10.5か月・対照群9.1か月(ハザード比0.86、95%信頼区間0.75-0.98、p=0.023)、無増悪生存期間の中央値がラムシルマブ群4.5か月・対照群3.0か月(ハザード比0.76、95%信頼区間0.68-0.86)と、いずれもラムシルマブ併用群で有意に延長したこと、扁平上皮癌・非扁平上皮癌の両方が組み入れられたことを、抄録(PMID 24933332)で確認した。閲覧 2026-09-22